葬式費用はどこまで控除できる?領収書の残し方と対象外の注意
結論から言うと、相続税の計算では、一定の条件を満たす「葬式費用」を遺産総額から差し引けます。
ただし、何でも引けるわけではありません。特に「香典返し」「お墓」「法要」は対象外になりやすく、領収書の残し方も差がつきます。
この記事では、控除できる範囲と対象外の線引き、そして領収書・メモの残し方を、初心者の方でも迷わない順番で解説します。
「葬式費用の控除」って何?どの税金の話?
ここでいう「控除」は、相続税の計算の話です。
相続税では、遺産(預貯金・不動産など)の合計から、一定の債務(借金・未払金など)や葬式費用を差し引いて、課税対象を計算します。
つまり、「葬式費用を控除できる」とは、
葬儀代が“返ってくる”という意味ではなく、
相続税の対象となる遺産が減る(結果的に相続税が下がる場合がある)という意味です。
まず押さえる:控除できる人・できない人(負担者の考え方)
基本はシンプルで、相続人(や包括受遺者)が負担した葬式費用が控除の対象になります。
逆に、相続人ではない親族・知人が立替えて、そのまま精算しないような形だと、控除関係がややこしくなります。
ポイントは「誰が払ったか」と「最終的に誰の負担か」です。
例えば、相続人Aがカードで決済し、あとで相続財産から精算する予定なら、証拠(精算メモや振込記録)があると安心です。
控除できる葬式費用:ざっくり5分類(具体例つき)
葬式費用として差し引ける範囲は、国税庁の整理だと大きく5つに分かれます。
ここでは、実務で出てきやすい形に言い換えて具体例を並べます。
① 火葬・埋葬・納骨のための費用
- 火葬料、待合室使用料
- 骨壺・骨箱など(葬儀社の一式に含まれることも多い)
- 納骨に必要な作業費(納骨そのものに直接必要な範囲)
② 遺体・遺骨の回送や運搬にかかる費用
- 寝台車・霊柩車
- 遠方からの搬送費(医療機関→自宅/式場→火葬場など)
③ 通夜・葬式の前後で「通常欠かせない」費用
- 式場使用料、祭壇、棺、遺影、会葬礼状など、葬儀社への基本料金
- 通夜振る舞い・精進落とし等の飲食(葬儀の一環として行う範囲)
- 受付用品や運営のために通常必要といえる費用
※「通常欠かせない」の線引きは、地域性や規模でぶれやすいので、請求書の内訳を残すのが大切です。
④ 読経料など寺院等へのお礼(お布施など)
- お布施、読経料(名目が様々でも「葬儀の読経等への謝礼」)
- 御車代・御膳料(慣習として一体で渡す場合)
⑤ 死体の捜索、遺体・遺骨の運搬にかかった費用(特殊ケース)
- 事故等で捜索が必要になった場合の費用
- 通常ではないが、葬送の前提として必要になった運搬費
対象外になりやすい費用:ここで失敗が増えます
「葬式に関係している気がする」費用でも、相続税の控除では対象外になるものがあります。代表的なものは次の3つです。
- 香典返し(返礼品・挨拶状・送料なども含めて対象外になりやすい)
- 墓石・墓地の購入費、墓地を借りる費用
- 初七日など法事(法要)の費用
ここで迷いがちなポイントは、「葬儀(通夜・告別式・火葬・納骨)そのもの」と、「その後の供養・お墓・返礼」が混ざりやすいことです。
請求書に内訳があるなら、まずは内訳ごとに仕分けしましょう。
【早見表】これはOK?NG?迷いどころを整理
| 費用の例 | 目安 | 考え方(実務のコツ) |
|---|---|---|
| 葬儀社の基本料金(祭壇・棺・式場等) | OK | 「通常の葬式に欠かせない費用」に当たりやすい。内訳は保存。 |
| 火葬料・骨壺等 | OK | 火葬・埋葬・納骨に直接必要な範囲。 |
| 霊柩車・寝台車 | OK | 遺体・遺骨の回送・運搬に当たりやすい。 |
| お布施・読経料・御車代など | OK | 領収書が出ないことがあるため、メモ・振込記録等で補強。 |
| 通夜振る舞い・精進落とし | ケース | 葬儀の一環として一般的に行う範囲は含めやすいが、内訳・常識的範囲を意識。 |
| 香典返し(返礼品・送料) | NG | 代表的な対象外。請求書が混ざるときは必ず分ける。 |
| 墓石・墓地購入、永代使用料・管理料 | NG | 「お墓」の費用は対象外として扱われる。 |
| 初七日・四十九日・一周忌など法要 | NG | 「法事の費用」は対象外として扱われる。 |
領収書の残し方:あとで困らない「3点セット」
相続税の控除で一番もったいないのは、本当は対象なのに証拠が薄くて計上しにくいケースです。
葬儀の直後は忙しいので、最初から「3点セット」で残すと安心です。
葬式費用の証拠:3点セット
- 請求書・領収書(原本):発行元・日付・金額・但し書きが分かるもの
- 支払いの記録:振込控え、クレカ明細、引落し明細、現金なら出金メモ
- 仕分けメモ:対象/対象外(香典返し・墓地・法要等)を丸印で分類
おすすめの保管方法(誰でもできる)
- クリアファイルを2つ用意:「葬儀(控除候補)」と「対象外(香典返し・墓・法要)」
- 請求書が届いたら、まずはどちらかに入れる(迷うものは「保留」でもOK)
- 最後に一覧表(支払先/内容/金額/日付)を作って家族共有
領収書がない(お布施・心付け等)ときの対処法
お布施などは性質上、領収書が出ないことがあります。そんなときは、「代わりの記録」を残しておくのが現実的です。
まずできること:発行してもらえるか確認
お寺によっては、お願いすれば領収書を発行してくれることもあります(但し書きは「葬儀のお布施として」等で問題になりにくいことが多いです)。
領収書が難しい場合の「メモ」テンプレ
メモに書く項目(最低限)
- 支払日
- 支払先(寺院名など)
- 住所・電話番号(分かる範囲で)
- 金額
- 目的(例:葬儀の読経料/御車代/御膳料)
- 支払った人(相続人の氏名)
封筒(表書き)や、渡した金額の控え写真があると、さらに説明しやすくなります。
請求書が一式で分かれていない時のコツ(按分・メモ)
葬儀社の請求書は「一式」になりがちで、内訳に香典返しや法要関連が混ざることがあります。
この場合は、次の順で整理すると失敗が減ります。
- 請求書の明細を見て、明らかに対象外(香典返し、墓地、法要など)を先に抜く
- 残りを「葬儀一式」としてまとめる(ただし内容が分かる内訳は保存)
- 区分が難しいものは、葬儀社に「内訳が分かる資料が出せるか」相談
迷いどころが残るときは、「控除に入れる/入れない」の前に証拠を固めるのが先です。
後から思い出すのは本当に大変なので、「今」メモしておく価値が大きいです。
相続税申告でのまとめ方:家族が揉めない整理術
葬式費用は、相続税の計算だけでなく、家族間で「誰がどれだけ負担したか」の話にもつながりやすい項目です。
後日の誤解を減らすには、一覧表+証拠フォルダが一番効きます。
一覧表に入れる項目(これだけで十分)
- 支払先(葬儀社/火葬場/寺院など)
- 内容(例:式場費、火葬料、お布施)
- 金額
- 支払日
- 支払者(誰が立替えたか)
- メモ:対象外混在の有無/精算予定の有無
家族向けの一言テンプレ:
「葬儀費用は、相続税の計算で差し引けるもの・引けないものがあるので、領収書を見ながら整理して一覧にしています。あとで共有しますね。」
よくあるQ&A:香典・法要・納骨・墓地はどうなる?
Q1. 香典返しは控除できますか?
相続税の計算で差し引く「葬式費用」としては、香典返しは対象外として整理されています。請求書に混ざりやすいので必ず分けましょう。
Q2. 初七日や四十九日など法要は?
相続税の「葬式費用」としては、法事の費用は対象外として整理されています。
ただし実務では、葬儀と同日に行う儀式が「一体で請求されている」等、区分のされ方で悩むことがあるため、請求書の内訳とメモが大切です。
Q3. 納骨はどこまで入りますか?
「火葬・埋葬・納骨をするためにかかった費用」は控除対象に含まれます。
ただし、墓石の購入や墓地の取得・使用料は別枠で対象外になりやすいので、混ざらないように注意しましょう。
Q4. 領収書がどうしてもない…それでも控除できますか?
まずは発行依頼をして、それが難しければ、日付・支払先・金額・目的・支払者を明記したメモと、支払いの状況が分かる資料(出金記録等)を揃えるのが現実的です。
不安が残る場合は、申告前に専門家へ相談すると安心です。
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