相続で「ポイント・マイル」はどうなる?|失効を防ぐ確認ポイント

ポイント・マイルは相続財産になるか:法的な整理

「亡くなった親が貯めていたポイントが何十万ポイントもある。相続できるか?」——この質問は相続の現場でよく出てきます。結論から言うと、ほとんどのポイント・マイルは法律上の「相続財産」には該当せず、原則として相続人が引き継ぐことはできません。

ポイントやマイルは、発行会社(企業)と会員(個人)との間の「契約上の利益」であり、サービスの利用規約によって「本人死亡により消滅する」と定められていることがほとんどです。法律が優先するのではなく、各社の利用規約が適用されるという点が重要です。

💡 この記事でわかること:
ポイント・マイルの法的な位置づけ、相続できない理由、死亡後の失効の流れ、生前の「使い切り戦略」、主要サービス別の対応、相続税上の扱い、生前の棚卸し方法、遺族が直面するケース別対応まで網羅しています。

「相続できない」ポイント・マイルがほとんどである理由

なぜポイント・マイルは相続できないのかを整理します。

⚖️ ポイント・マイルが相続できない主な理由
一身専属性
の規定
ほとんどのポイントサービスは「会員資格は本人に帰属し、譲渡・相続はできない」と利用規約に明記している。これは民法上の「一身専属的な権利」に準じた取り扱いで、死亡によって消滅すると解釈される
財産権としての
認定が難しい
ポイントは現金・有価証券のような財産権として法律で明確に定義されているわけではない。企業が付与する「サービス上の特典」という性質が強く、法律よりも各社の規約が優先される
会員資格の
消滅
多くのサービスは「会員の死亡により会員資格が消滅する」と規定しており、ポイントもその消滅に伴って失効する
例外:一部のポイントは家族への移行・使用が認められています:
全てが「相続不可・即失効」というわけではありません。家族カードで共有しているポイント・生前に家族会員として利用権を持っていたポイント等は、引き続き利用できる場合があります。各サービスの規約確認が必須です(Section 4参照)。

死亡直後に起きること:アカウント凍結・ポイント失効の流れ

亡くなった方のポイント・マイルに何が起きるかを時系列で整理します。

📅 死亡後のポイント・マイルの流れ
死亡直後〜
連絡前
企業に死亡の連絡をしていない段階では、アカウントはまだ有効な状態。この期間に家族がログインしてポイントを使用することは規約違反になるため注意が必要
企業へ
死亡を連絡した後
連絡を受けた企業はアカウントを凍結(停止)する。以後は本人・家族ともに利用不可になる。この段階でポイントの行方が確定する
アカウント
退会処理後
退会・解約手続き完了により、残ポイントが消滅・失効する。規約に「移行不可・払戻不可」と記載されている場合がほとんど
気づかれずに
放置した場合
年会費引き落とし・会員情報の停滞等で企業が死亡を把握するまでは有効なままのことも。ただし一定期間の不活性により自動的に失効するサービスもある
「死亡を報告する前に家族がポイントを使う」ことはリスクがあります。
亡くなった方のIDでログインしてポイントを使用する行為は、不正アクセス(不正アクセス禁止法)や詐欺的行為と判断されるリスクがあります。残高が多くても、独断でポイントを使用することは避けてください。不安な場合は専門家に相談を。

失効を防ぐ「使い切り戦略」:亡くなる前にできること

ポイント・マイルの失効を防ぐ最善策は、判断能力があるうちに本人自身が使い切ることです。

使い切り方法の選択肢

  • 商品・ギフト券に交換する:本人名義で使用できる商品や家族へのプレゼントとして交換。Amazonギフト券・図書カード等への交換が可能なサービスも多い
  • 家族への贈り物・外食・旅行に使う:本人が使う形で家族と楽しむのが最も自然な活用方法
  • 現金・電子マネーに交換できるポイントは換金する:楽天ポイント・Tポイント・dポイント等は一部現金化・電子マネー化が可能
  • マイルは旅行・アップグレードに使い切る:ANAマイル・JALマイルは有効期限(3年間)があるため早めに使う
  • 家族カードでポイントを共有しておく:家族カードのあるクレジットカードは、ポイントを家族会員のカードに移行できる場合がある(サービス要確認)
💡 「ポイントは資産」という意識で早めに活用を:
高齢になり外出が減ると、ポイントの使い道が減って蓄積されやすくなります。「もったいないから使わない」という意識が、最終的に全て失効させる結果になりがちです。判断能力があるうちに計画的に使うことが最善の相続対策です。

主要サービス別:相続・移行の対応まとめ

代表的なポイント・マイルサービスの相続・死亡後の対応を整理します。各サービスの規約は変更されることがあるため、必ず最新の規約・公式情報を確認してください。

航空マイル

サービス 死亡後の扱い(一般的な規約内容)
ANAマイル
(ANA Mileage Club)
会員の死亡により会員資格が消滅し、マイルは失効するのが原則。ただし家族会員制度(家族マイル合算)を利用していた場合は別途確認が必要。死亡前に購入済みの特典航空券の払戻しについては個別に対応
JALマイル
(JALマイレージバンク)
会員の死亡により会員資格が消滅し、マイルは消滅するのが原則。遺族への移行は認められていない。生前購入の特典航空券等の取扱いは個別対応

クレジットカードポイント

サービス 死亡後の扱い(一般的な規約内容)
楽天ポイント 楽天カードの退会・解約時にポイントは失効。楽天ポイントは楽天IDに紐づくため本人の死亡・退会で失効。ただし楽天キャッシュへのチャージ分は財産として扱われる可能性がある(規約要確認)
Tポイント
(Vポイント)
会員の死亡により会員資格が消滅し、ポイントも失効するのが原則
dポイント 会員の死亡により会員資格が終了し、未使用ポイントは消滅する(規約上の原則)
Pontaポイント 会員の死亡により会員資格が消滅し、ポイントも失効するのが原則

電子マネー・キャッシュレス残高

サービス 死亡後の扱い
Suica・PASMO
等の交通系ICカード
「電子マネー残高」は財産的性質があり、払戻し請求が可能なケースが多い。カード会社・鉄道会社に相続人として申し出て手続きする。ただしポイント(グリーン券等のポイント)は別途規約を確認
PayPay残高
(チャージ残高)
PayPay残高は電子マネーとしての性質を持ち、相続財産として扱われる可能性がある。PayPayの相続手続きについてはPayPay公式に直接問い合わせが必要
楽天キャッシュ・
WAONポイント等
サービスによって電子マネー残高と純粋なポイントで扱いが異なる。残高が大きい場合は各社規約の確認と専門家相談を推奨
⚠️ 「電子マネー残高」はポイントと異なり、財産として扱えるケースがあります。
ポイント(サービス上の特典)と電子マネー残高(現金同等物)は法的な性質が異なります。Suicaのチャージ残高・PayPay残高等の電子マネーは相続財産として扱える可能性があるため、まとまった金額がある場合は専門家への相談をおすすめします。

相続税上の扱い:申告が必要か

ポイント・マイルの相続税上の扱いについても整理しておきます。

📋 ポイント・マイルと相続税の関係
一般的なポイント
(相続不可のもの)
規約上「死亡により消滅」するポイントは、相続財産として申告する必要はないのが一般的な考え方。死亡と同時に消滅するため相続財産に含めない
電子マネー残高
(チャージ残高)
現金同等物として財産性が認められるため、相続財産として申告が必要になる可能性がある。Suicaのチャージ・PayPay残高等が該当しうる
ギフト券・
商品券に交換済み
交換済みのAmazonギフト券・図書カード・商品券等は有価証券・動産として相続財産として申告が必要
高額の場合 数十万円以上の価値を持つポイント・電子マネー残高がある場合は、税理士に個別に相談することを推奨

ポイント・マイルの棚卸し:生前に把握しておくべきこと

「どのサービスにどれくらいポイントがあるか」を生前に把握し、家族に伝えておくことが重要です。

棚卸しチェックリスト

  • 航空マイル(ANA・JAL・スカイマーク等):残高・有効期限を確認してエンディングノートに記録
  • クレジットカードのポイント(楽天・三井住友・JCB・AMEX等):各カードの明細やWebサイトで残高確認
  • 共通ポイント(楽天・Tポイント・dポイント・Ponta等):アプリ・Webで残高確認
  • 電子マネー残高(Suica・PayPay・楽天Pay・iD等):アプリまたはカード残高照会で確認
  • 通販・百貨店・スーパーのポイント(Amazonポイント・ヨドバシポイント等):各サービスのマイページで確認
  • 各サービスのID・パスワードを安全な場所(封筒を金庫に入れる等)に保管して家族に場所を伝える
  • 有効期限が近いものから優先的に使うよう家族に伝える
エンディングノートに「ポイントの一覧」を書いておくだけで遺族の手間が大幅に減ります:
どのサービスにポイントがあるかさえわかれば、遺族が対応を判断できます。サービス名・残高の目安・ログインIDの保管場所の3つを書いておくだけで十分です。パスワードは別の封筒に保管して場所だけ伝える方法が安全です。

遺族が直面するケース別対応

ケース①:大量のポイントが残っていることを死亡後に知った

まず各サービスに連絡して残高を確認し、相続・移行が可能かどうかを問い合わせます。多くは「規約上相続不可」と回答されますが、家族への特別対応(商品への交換等)を個別に認めてくれるケースもゼロではありません。問い合わせる際は戸籍謄本等の相続人であることを示す書類を準備しておくとスムーズです。

ケース②:クレジットカードに残ったポイントの扱い

クレジットカードの相続手続き(解約)をする前に、ポイントの使い切り・交換が可能かどうかをカード会社に確認してください。解約後はポイントが失効するサービスがほとんどです。一部のカード会社は、相続人による手続き完了前に「ポイントをギフト券等に交換する」ことを認めている場合もあります。

ケース③:電子マネー残高(Suica・PayPay等)を回収したい

Suicaのチャージ残高は払戻し請求が可能なケースがあります(JR東日本に相続人として問い合わせ)。PayPay等のスマホ決済残高については、各社の相続窓口に死亡診断書・戸籍謄本等を提出して個別に申請する形になります。スマホが開けない場合はデータ復旧業者の活用も検討します。

ケース④:ポイントが大量にあり相続税申告が必要かもしれない

数十万円相当以上のポイント・電子マネー残高がある場合は、税理士に相談して相続財産として計上すべきかどうかを確認してください。特に電子マネー残高・交換済みギフト券・商品券は申告対象になり得ます。

よくある疑問(Q&A)

Q. 親が亡くなりました。親のANAマイルを子どもが引き継ぐことはできますか?
原則としてできません。ANAマイレージクラブの規約では「会員の死亡により会員資格が消滅し、マイルも失効する」とされています。ただし生前に家族マイル合算制度を利用していた場合は合算分については別途確認してください。また、死亡前に発券済みの特典航空券については個別に対応してもらえる場合があります。ANAカスタマーセンターに問い合わせてください。
Q. 亡くなった後、遺族がポイントを使用するのは問題ありませんか?
規約上は問題になる可能性があります。「故人になりすましてアカウントにログインしてポイントを使用する行為」は不正アクセスや詐欺的行為と判断されるリスクがあります。ポイントを使いたい場合は、各サービスに対して正直に「故人のポイントを相続人として使用できるか」を問い合わせる方法が適切です。
Q. Suicaのチャージ残高は相続できますか?
電子マネーとしての性質があるため、ポイントとは異なり払戻し請求が可能なケースがあります。JR東日本に対して相続人であることを証明する書類(戸籍謄本等)を提出して払戻しを申請する手続きがあります。カードが手元にある場合と紛失している場合で手続きが異なるため、JR東日本のサポートセンターに問い合わせてください。
Q. ポイントを相続税申告の際に財産として申告する必要がありますか?
規約上「死亡により消滅」するポイントは相続財産として申告する必要はないのが一般的な考え方です。ただし電子マネー残高・交換済みギフト券・商品券は財産として申告が必要になる可能性があります。高額な残高がある場合や判断に迷う場合は税理士に相談してください。
Q. 親が高齢で判断能力が低下しています。ポイントを今のうちに使い切る方法はありますか?
判断能力がある間は本人に了解を得て本人名義で使う(または本人が使う)ことが最も適切です。判断能力が低下している場合は、成年後見人が財産管理の一環として一部対応できることもありますが、ポイントを「財産」として扱えるかどうかは状況によります。任意後見・成年後見の活用についての相談は専門家(行政書士・司法書士等)にご相談ください。

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