相続で「名義変更が必要なもの」一覧|家・車・保険・会員権・ポイントまで

相続の「名義変更」全体像:何がどこで必要か

相続が発生すると、被相続人(亡くなった方)名義のさまざまな財産・契約を相続人名義に切り替える手続きが必要になります。これを一般に「名義変更」と呼びますが、財産の種類によって手続き先・必要書類・期限が異なります。

「銀行だけ終わればいい」と思って手続きを進めていると、車の名義が亡くなった人のままで車検が通らなかった・ゴルフ会員権を売ろうとしたら名義変更の手続きが必要だとわかったという「後から気づく」ケースが頻発します。

この記事では、相続で名義変更が必要なものを財産の種類別に網羅し、手続き先・期限・ポイントをまとめて解説します。

💡 この記事でわかること:
不動産・預貯金・有価証券・生命保険・自動車・ゴルフ会員権・公共料金・ポイント・農地・負債まで、名義変更が必要なもの全種類の手続き先・期限・必要書類・注意点を一覧で把握できます。

不動産(土地・建物・マンション)

不動産の名義変更は「相続登記」と呼ばれ、令和6年4月から義務化されました。最も重要かつ期限が設けられている手続きです。

🏠 不動産の相続登記 3年以内・義務化
手続き先 不動産の所在地を管轄する法務局
期限 相続を知った日から3年以内。過ぎると最大10万円の過料
主な必要書類 登記申請書・被相続人の連続した戸籍謄本・遺産分割協議書(全相続人の実印押印)または遺言書・固定資産評価証明書・住民票の除票等
費用 登録免許税(固定資産評価額×0.4%)+司法書士報酬(依頼の場合)
急いでいる場合 「相続人申告登記」(無料)で期限を暫定的に満たし、正式な登記は後から行う
⚠️ マンションの場合は「敷地権」の登記も忘れずに:
分譲マンションには建物と土地(敷地権)があります。敷地権が登記されているマンションでは一括して登記変更されますが、古いマンションでは別々に手続きが必要なケースもあります。司法書士に確認してください。

預貯金・銀行口座

被相続人の口座は死亡の事実が銀行に知られた時点で凍結され、払戻・解約・名義変更の手続きが必要になります。

手続きの種類 内容・手続き先
払戻・解約 口座を解約して残高を相続人の指定口座に振込。各金融機関の窓口(またはWebフォーム・郵送)で手続き
名義変更 定期預金の利率が高い場合等、解約せずに相続人名義に変更する方法。各金融機関に確認
主な必要書類 銀行所定の相続手続依頼書・被相続人の連続した戸籍謄本・相続人全員の印鑑証明書・遺産分割協議書または遺言書・通帳・キャッシュカード等
特例:仮払い制度 遺産分割前でも「口座残高×1/3×自分の法定相続分」を上限150万円まで単独で引き出せる制度がある
複数の金融機関がある場合は並行して手続きを進める:
各銀行に順番に手続きするより、遺産分割協議書が完成したら全銀行に同時並行で書類を提出することで大幅に時間を短縮できます。

有価証券(株式・投資信託・国債)

被相続人が株式・投資信託・国債等を保有していた場合は、証券会社・信託銀行等で名義変更または換金の手続きが必要です。

📈 有価証券の相続手続き
手続き先 被相続人が口座を持っていた証券会社・信託銀行等
手続きの選択肢 ① 相続人名義に移管(引き続き保有する場合)
② 売却して現金で受け取る
主な必要書類 各社所定の相続手続書類・戸籍謄本・遺産分割協議書または遺言書・相続人の証券口座情報
注意点 株式の移管を受ける相続人が同じ証券会社に口座を持っていない場合、口座開設が必要。移管時に税金はかからないが、売却時には譲渡益に課税される
取引先が不明な場合 証券保管振替機構(ほふり)に「登録済加入者情報の開示請求」をすることで、被相続人の口座がある証券会社を確認できる

生命保険・損害保険

保険に関する相続の手続きは「死亡保険金の請求」と「契約自体の承継」の2種類があり、対応が異なります。

死亡保険金の請求

被相続人を被保険者とする死亡保険では、指定された受取人が保険会社に「死亡保険金請求」の手続きをします。死亡保険金は受取人固有の財産であり、原則として遺産分割の対象外(相続財産ではない)です。

主な必要書類:保険証券・死亡診断書(または除籍謄本)・受取人の本人確認書類・保険金請求書(保険会社所定書式)
時効:被保険者の死亡から3年以内(保険会社・約款によって異なる場合あり)

契約の承継(契約者が被相続人の場合)

被相続人が「契約者」で別の方が被保険者の保険(例:子どもの保険の契約者が親)の場合、契約者の地位を相続人が引き継ぐ「名義変更」が必要です。

手続きをしないと保険料引き落とし口座が凍結されて保険が失効するリスクがあるため、早急に保険会社に連絡してください。
⚠️ 被相続人が加入していた保険の把握漏れに注意:
生命保険協会の「生命保険契約照会制度」(死亡後に相続人が利用可能)を活用すると、被相続人が加入していた生命保険契約を照会できます。保険証券が見つからない場合に特に有効です。

自動車・バイク

被相続人が自動車・バイクを所有していた場合、車検証上の所有者名義を変更する手続きが必要です。

種類 手続き先 主な必要書類
普通自動車
(3ナンバー・5ナンバー)
管轄の運輸支局(陸運局) 遺産分割協議書(相続人全員の実印・印鑑証明書)または遺言書・新名義人の住民票・車検証・自賠責保険証明書・車庫証明書(新住所によっては必要)
軽自動車 管轄の軽自動車検査協会 相続関係を証明する書類・新名義人の住所を証明する書類・車検証等(普通車より書類が少ない場合が多い)
原付バイク
(125cc以下)
市区町村の役所 廃車申告書・ナンバープレートの返納・新規登録申請書等
⚠️ 名義変更をしないまま乗り続けると問題が生じます:
自動車損害賠償保険(自賠責)・任意保険の名義変更も忘れずに行ってください。事故が起きた際に保険が適用されないリスクがあります。また車検時に名義変更が必要になる場合があります。

ゴルフ会員権・リゾート会員権

ゴルフ会員権・リゾートクラブ会員権は相続の対象となる財産ですが、全ての会員権が相続・名義変更できるわけではありません。規約を必ず確認してください。

⛳ ゴルフ会員権の相続手続き
手続き先 各ゴルフ場・クラブの事務局に直接連絡
相続できるか 相続人に移転できる会員権と、死亡により失効するものがある。規約を確認するのが最優先
名義変更の費用 名義書換料が別途必要なことが多い(数万〜数十万円の場合あり)
主な必要書類 被相続人の会員証・戸籍謄本・遺産分割協議書または遺言書・各クラブ所定の名義書換申請書・新会員(相続人)の身分証明書等
売却の場合 会員権業者を通じて売却する方法もある。相続後の名義変更後に売却するか、名義変更前に売却の手配をするかはケースによる

公共料金・各種サービスの名義変更

生活に直結する公共料金・サービスは、死亡後に同居家族が引き続き使用する場合に名義変更が必要です。

サービス 手続き先・方法
電気・ガス・水道 各電力会社・ガス会社・水道局に電話またはWebで名義変更を依頼。引き落とし口座の変更も同時に行う
固定電話(NTT等) 各通信会社の相続手続き窓口(電話・Web)で名義変更。戸籍謄本の提出が必要な場合がある
携帯電話・スマートフォン 解約するか・家族が引き継ぐかを選択。解約の場合は各キャリアの店舗で手続き。名義変更(引き継ぎ)も可能な場合あり
インターネット回線 各プロバイダ・回線会社に連絡。継続使用か解約かを選択
NHK受信料 NHKに電話またはWebで連絡。名義変更または解約の手続き
新聞・定期購読 各新聞社・出版社に連絡。継続か解約かを選択
クレジットカード 原則として解約。相続人が引き継ぐことはできない。残高・引き落とし予定額を確認したうえで解約手続きをする
💡 引き落とし口座が凍結される前に変更を:
被相続人の銀行口座が凍結されると、その口座を引き落とし先にしているサービスが全て引き落とし不能になります。口座凍結前に各サービスの引き落とし口座を変更しておくか、銀行への死亡通知と同時並行でサービス側にも連絡することを強くおすすめします。

ポイント・マイル・デジタル資産

近年問題になっているのが「デジタル遺品」の扱いです。航空会社のマイル・電子マネー・ネットショッピングのポイント・仮想通貨等は、相続できるものとできないものに分かれます。

相続・移転できるもの(手続きが必要)

種類 手続き・注意点
仮想通貨
(暗号資産)
相続財産として認められる。取引所への相続手続きが必要。ウォレットのパスワード・シードフレーズが不明な場合は取得が困難。相続税評価の対象
電子マネー
(残高がある場合)
種類によって対応が異なる。楽天Edy・Suica等は登録型の場合に相続・払い戻しができる場合がある。各社に問い合わせを
ネット証券・
FX口座の資産
有価証券・現金として相続対象。各社の相続手続きが必要(Section 3参照)

原則として相続・移転できないもの

種類 理由・対応
航空会社のマイル
(ANAマイル・JALマイル等)
原則として譲渡・相続不可。死亡とともに失効する規約になっていることが多い。一部のマイルは遺族への移転特例がある場合があるため各社に確認
楽天ポイント・
Tポイント等
利用規約で「譲渡不可」とされているものが多く、死亡とともに失効することが多い
各種サブスクリプション
(Netflix・Spotify等)
個人利用を前提とした契約のため、名義変更・相続はできない。解約手続きが必要
SNS・メール等の
アカウント
個人の人格に紐づくもので通常は相続対象外。各サービスへの死亡通知・アカウント削除依頼が必要
⚠️ デジタル遺品の把握は「エンディングノート・パスワード管理」が鍵です:
生前に利用しているサービス・アカウント一覧とパスワードをエンディングノートや管理ツールに記録しておかないと、遺族が把握できないまま失効・凍結されてしまいます。生前対策として特に重要な課題です。

農地・山林・未登記建物

農地の相続

農地の相続は通常の不動産と異なり、農業委員会への届出が必要です(農地法3条の3)。届出は相続を知った日から10ヶ月以内に行う義務があります(怠ると10万円以下の過料)。相続登記も法務局に申請が必要です。

山林・原野の相続

山林・原野も相続登記の義務化対象です。価値が低くても3年以内の登記申請義務があります。「引き取り手がない」「負の財産になる」という場合は、相続土地国庫帰属制度(一定の条件を満たす土地を国に引き取ってもらう制度)の活用を検討してください。

未登記建物の相続

登記がされていない建物(特に古い家屋・納屋等)は、表題登記(法務局に建物の存在を登録する手続き)から始める必要があります。土地家屋調査士への依頼が一般的です。

負債・ローンの承継

相続は「プラスの財産」だけでなく「負債(マイナスの財産)」も引き継ぐのが原則です。

負債の種類 対応・手続き先
住宅ローン 死亡により団体信用生命保険(団信)が適用されるか確認する。団信に加入していれば保険金でローンが完済される。加入していない場合は相続人が引き継ぐ
自動車ローン 相続人がローンを引き継ぐか・残債を一括返済して売却するかを選択。信販会社・ローン会社に連絡
カードローン・
消費者金融
相続人が引き継ぐ負債。返済義務あり。残債の確認が必要(信用情報機関への照会も有効)
連帯保証債務 被相続人が保証人だった場合、相続人が保証債務を引き継ぐ。知らずに相続するリスクが高いため、信用情報機関での調査が重要
負債が多い場合は「相続放棄」を3ヶ月以内に検討してください。
プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合は、家庭裁判所への「相続放棄の申述」(3ヶ月以内)で負債を引き継がないことができます。期限を過ぎると負債も全て引き継ぐ単純承認とみなされます。

「名義変更の要否・期限・窓口」まとめ一覧表

財産の種類 名義変更の要否 期限 主な手続き先
不動産
(土地・建物)
必要(義務) 3年以内 法務局
農地 必要(届出義務) 10ヶ月以内 農業委員会+法務局
預貯金・銀行口座 必要(解約または名義変更) なし(早めに) 各金融機関
有価証券・株式 必要 なし(早めに) 証券会社・信託銀行
死亡保険金 請求が必要 3年以内(約款による) 保険会社
保険契約の承継 必要 早急に 保険会社
普通自動車 必要 なし(早めに) 運輸支局(陸運局)
軽自動車 必要 なし(早めに) 軽自動車検査協会
ゴルフ会員権 規約次第 各クラブ規定による 各ゴルフ場事務局
電気・ガス・水道 必要(継続使用の場合) 早急に 各事業者
固定電話 必要(継続使用の場合) 早急に 各通信会社
携帯電話 解約または名義変更 早急に 各キャリア
クレジットカード 解約(承継不可) 早急に 各カード会社
仮想通貨 必要 なし(早めに) 各取引所
ポイント・マイル 多くは承継不可・失効 規約による 各社規約を確認
住宅ローン 団信確認または承継 早急に 金融機関・保険会社
相続放棄 放棄する場合のみ 3ヶ月以内 家庭裁判所

よくある疑問(Q&A)

Q. 名義変更の手続きをする順番はありますか?
法律上の決まった順番はありませんが、実務的には「遺産分割協議書の作成」を先に完成させてから各機関に同時並行で提出するのが最も効率的です。また相続放棄の期限(3ヶ月)・相続税の期限(10ヶ月)・不動産登記の期限(3年)を把握したうえで、期限のあるものを優先してください。
Q. 全部の名義変更を専門家に頼めますか?
手続きの種類によって担当できる専門家が異なります。行政書士は銀行手続き・遺産分割協議書作成・各種届出の代行、司法書士は不動産登記・法定相続情報一覧図の作成、税理士は相続税申告、弁護士は争いがある場合の代理交渉を担当します。ハートリンクグループでは行政書士を中心に各専門家と連携して全体を対応しています。
Q. 遺産分割協議がまとまらない場合、名義変更はどうなりますか?
遺産分割協議が必要な財産(不動産等)は協議が整うまで名義変更できません。ただし相続人申告登記(不動産)や仮払い制度(預金)等の暫定措置を活用することで、協議が整うまでの対応ができます。不動産は遺産分割協議が整った後に正式な相続登記を行います。
Q. 被相続人が使っていたサブスクや有料アプリはどうすればいいですか?
利用規約上、名義変更・相続はできないものがほとんどです。引き落としが止まると自動解約されるサービスが多いですが、継続して課金されているものは各サービスの問い合わせ窓口に死亡の旨を伝えて解約手続きを行ってください。被相続人のスマートフォン・PCにアクセスできる場合は、設定画面から各サービスのアカウント状況を確認することをおすすめします。

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