【専門家が解説】これは特定遺贈?包括遺贈?債務は引き継ぐ?遺言執行者はどこまで判断できる?完全ガイド
【目次】
そもそも「特定遺贈」「包括遺贈」の違い
判別が難しいケースが多い理由
債務は遺贈に含まれる?“負債”の扱い
遺言執行者はどこまで判断できるのか
トラブルになりやすい典型例
判別に迷ったときの実務的な解決方法
特定遺贈・包括遺贈の考え方(まとめ)
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1|そもそも「特定遺贈」「包括遺贈」の違い
まず大前提です。
● 特定遺贈
特定の財産(不動産・預金・株式など)を指定して渡す遺贈
例)
「〇〇銀行の預金300万円をAに遺贈する」
● 包括遺贈
財産全体のうち一定割合を渡す遺贈
例)
「全財産の3分の1をBに遺贈する」
2|判別が難しいケースが多い理由
実務では、遺言書の内容が曖昧で次のようなケースが頻出します。
● 財産を“特定しているように見えて特定していない”
例:
「事業に関する財産一切を長男に遺贈する」
→ 事業用預金?事業設備?営業権?範囲が曖昧。
● 財産名は出ているが、複数をまとめた概念になっている
例:
「私の動産を全てAに遺贈」
→ 動産全て=包括遺贈に近い扱い。
● 書いた本人も意識せず「包括的」記述になっている
例:
「財産管理に必要なものは全て妻へ」
→ 範囲が漠然としている。
結果として、
条文上は特定遺贈でも、内容が包括的になっているケースも多いため、判断が難しくなるのです。
3|債務は遺贈に含まれる?“負債”の扱い
ここが最も誤解されているポイントです。
● 特定遺贈は「債務を承継しない」
→ 指定された財産だけを受け取る。
→ 借金や滞納税などを負担する必要はない。
● 包括遺贈は「債務も承継する」
→ 相続人に準じる扱い
→ 財産と同じ割合の負債も引き継ぐ。
したがって、
遺贈が包括遺贈と判断されるかどうかは極めて重要です。
遺言書の一文で相続人と同等の責任が生じ得るからです。
4|遺言執行者はどこまで判断できるのか?
結論
● 遺言執行者が「特定遺贈 or 包括遺贈」を勝手に判断してはいけない
遺言の性質は、
文言の解釈
財産の性質
背景事情
遺言者の意思推認
などを総合的に判断し、
最終的には 裁判所の判断 に委ねられます。
遺言執行者の役割はあくまで
**「遺言に書かれた内容を実現すること」**であり、
遺言の“性質そのもの”を変える権限はありません。
● ただし、遺言の内容が曖昧な場合
遺言執行者が遺言者の意思を推測し、
合理的解釈の範囲で実務を行うことはあります。
5|トラブルになりやすい典型例
【例1】
「自宅およびその生活に関わる財産を妻に遺贈する」
→ 生活に関わる財産=包括的で特定できない
→ 債務(住宅ローン)の扱いが争いに
【例2】
「事業に関するものを長男へ」
→ 何が事業関連か曖昧
→ 設備・預金・売掛金・借入の扱いで紛争に
【例3】
「私の財産のほとんどをAに遺贈」
→ "ほとんど" の解釈が困難
6|判別に迷ったときの実務的な解決方法
①【財産の範囲を特定できるか?】
→ 明確なら特定遺贈
→ 曖昧なら包括遺贈の可能性もある
②【数量・種類が限定されているか?】
→ 「預金300万円」=特定
→ 「預金のすべて」=包括遺贈の可能性もある
③【遺言者の意図を補強する資料の確認】
メモ
介護状況
家族関係
財産の利用実態
④【債務承継の意識があったか?】
包含的な文言なら包括遺贈と判断されやすい。
債務を控除して遺贈する内容なのかどうか。
⑤【不明確な場合】
→ まずは専門家に相談を。
→ 必要に応じて家庭裁判所 調停・審判へ
7|特定遺贈・包括遺贈の考え方(まとめ)
項目特定遺贈包括遺贈渡す財産特定のもの財産全体(または割合)債務承継しない承継するトラブル財産不存在で無効負債承継の危険遺言執行者の権限実行のみ実行のみ(性質判断は不可)
遺言書はわずかな表現の違いで、
受遺者の負担・権利が大きく変わります。
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障害を持つ子どもの親亡き後を支える会
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