【知らないと損】親が元気なうちに必ずやるべきお金の準備3選

この記事の結論

親が元気なうちにやっておくべきお金の準備は①遺言書の作成、②生前贈与の計画的な実施、③家族信託・任意後見の設定の3つです。この3つは「親に判断能力がある」という条件が崩れた瞬間にすべてできなくなります。認知症の診断が下りてから「やっておけばよかった」と後悔しても手遅れです。特に遺言書だけは今日すぐに着手できる最優先事項です。費用は3つ合わせても数十万円程度で、何も準備しなかった場合の相続トラブルのコストとは比べものになりません。

「元気なうちにしかできない」理由:2つのタイムリミット

この記事で紹介する3つの準備には、「親に判断能力がある」「親が生きている」という2つのタイムリミットがあります。

⏰ 2つのタイムリミット
タイムリミット①
認知症の発症
遺言書・家族信託・任意後見はいずれも「本人に十分な判断能力がある」ことが前提です。認知症の診断後は新たな契約・遺言書の作成ができなくなります。「物忘れが増えてきた」と感じた時点では、すでに法的な有効性が疑われる状態になっていることがあります
タイムリミット②
親の死亡
親が亡くなった後は遺言書・生前贈与・家族信託の全てが締結・変更できません。「亡くなってから準備しよう」は不可能です。残された子どもたちが遺産分割協議で揉める原因のほとんどは「準備がなかった」ことです
日本人の認知症発症率:65歳以上の約6人に1人が認知症です(2025年時点の推計)。
「うちの親はまだ大丈夫」と思っているご家庭の多くが、突然の認知症診断で全ての準備ができなくなっています。「元気なうちに」という言葉が意味するのは「まだ若い・健康なうち」ではなく「判断能力がある今日この瞬間」です。
💡 この記事でわかること:
親が元気なうちにやっておくべき3つの準備(遺言書・生前贈与・家族信託・任意後見)の内容・メリット・費用の目安・進め方、親への切り出し方のコツ、よくある疑問まで解説しています。

1
公正証書遺言の作成
「誰に何を渡すか」を法的に確定させる

なぜ遺言書が「最優先」なのか

遺言書がない場合、親が亡くなった後に相続人全員が集まって「誰が何を受け取るか」を話し合う遺産分割協議が必要になります。この話し合いが相続トラブルの最大の発生源です。一方、全財産の行き先を指定した遺言書があれば、原則として遺産分割協議が不要になります。

なぜ「公正証書遺言」でないといけないのか

遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があります。公正証書遺言を選ぶ理由:

無効リスクがない:自筆証書遺言は書き方のミスで無効になる場合があるが、公証人が作成する公正証書遺言は書式ミスによる無効がない
偽造・紛失リスクがない:原本は公証役場が保管するため紛失・改ざん・隠蔽ができない
家庭裁判所の検認が不要:相続発生後すぐに使える
遺言検索システムで発見できる:相続発生後に子どもが全国どこの公証役場でも検索・取得できる

遺言書に書くべき主な内容

  • 誰にどの財産を渡すか:不動産・預金・株式等の全財産の行き先を具体的に指定する
  • 遺言執行者の指定:死後の手続きを行う担当者(行政書士・司法書士等の専門家が理想)を指定する
  • 付言事項(想いのメッセージ):法的効力はないが家族への感謝・希望を残すことで子どもたちの気持ちが和らぐ
  • 補欠条項:特定の人が先に亡くなった場合の次の受取人を指定する
費用の目安:5〜15万円程度(行政書士への依頼)+公証人手数料(数万円)
公正証書遺言の作成費用は遺産総額や内容の複雑さによって異なりますが、専門家報酬+公証人手数料で合計10〜20万円程度が目安です。相続トラブルで弁護士を使った場合の費用(数十〜数百万円)と比べれば圧倒的に安い投資です。

2
生前贈与の計画的な実施
税負担を減らしながら少しずつ財産を渡す

生前贈与とは何か

生前贈与とは親が生きているうちに子どもや孫に財産を渡すことです。計画的に行うことで相続財産を減らして相続税の負担を軽くしながら、子どもが早い時期から財産を受け取ることができます。

暦年贈与(年間110万円の非課税枠)

贈与税には年間110万円の基礎控除があります。年間110万円以内の贈与は贈与税がかかりません。

例:親が子ども2人に毎年110万円ずつ贈与した場合
110万円 × 2人 × 10年 = 2,200万円を非課税で移転できる

※ 2024年以降、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算される(段階的に拡大中)。長期的に続けることで効果が最大化する

贈与税がかからない特例制度

📋 主な贈与の非課税特例(2026年度時点)
住宅取得等
資金の贈与
子ども・孫が住宅を取得する際の資金贈与に非課税枠が設けられている(年度によって金額が変わるため最新情報を確認)。子が住宅を購入するタイミングで活用すると効果的
教育資金の
一括贈与
祖父母から孫への教育資金の一括贈与(30歳未満の孫への1,500万円まで非課税)。金融機関の専用口座を使う
結婚・子育て
資金の贈与
結婚・子育て資金の一括贈与(18〜50歳の子・孫への1,000万円まで非課税。金融機関の専用口座を使う)
相続時精算
課税
累計2,500万円まで贈与税なし。2024年改正で年間110万円の基礎控除が追加。大きな財産を早く渡したい場合に有効だが一度選択すると撤回不可のため慎重に

生前贈与で絶対やってはいけないこと

「贈与の証拠」を残さない贈与は贈与と認められないリスクがあります。
口頭での贈与・現金の手渡し・親の口座から子の口座への「通帳まとめ」は、税務調査で「名義預金」として親の相続財産に戻されるリスクがあります。必ず「贈与契約書」を作成し、銀行振込で記録を残し、贈与税の申告(110万円超の場合)を行ってください。
費用の目安:贈与契約書の作成は行政書士に依頼すると1〜3万円程度
毎年の贈与ごとに贈与契約書を作成することが「贈与の証拠」として最も重要です。行政書士への依頼で適切な書式・内容の契約書を作成してもらうことをおすすめします。

3
家族信託・任意後見の設定
認知症になっても財産管理を止めない仕組みを作る

なぜ「認知症後の財産管理」の準備が必要か

親が認知症になると、銀行口座が事実上凍結状態になります。介護施設の入所費用を出そうとしても、自宅の売却が必要でも、医療費の支払いを早急にしたくても——親名義の口座からお金を動かすことができなくなります。この問題を解決するのが家族信託と任意後見です。

家族信託:生前から死後まで継続する財産管理

家族信託の仕組み(簡単に言うと):

親が元気なうちに「信頼できる子(受託者)に財産の管理を任せる」という契約を公正証書で結ぶ。認知症になった後も・亡くなった後も、受託者が親のために財産を管理・使用し続ける。

口座凍結を防ぐ:信託口口座に資金を移しておくことで認知症後も受託者が出金できる
不動産の管理・売却ができる:成年後見より柔軟に不動産を売却・賃貸に出せる
死後も継続:遺言書と違い、親の死後も受託者が財産管理を継続できる

任意後見:「信頼できる後見人」を自分で選べる

任意後見の仕組み(簡単に言うと):

親が判断能力があるうちに「認知症になったら〇〇(子ども等)を後見人にする」という契約を公正証書で締結する。法定後見と違い、後見人を自分で選べるのが最大のメリット。

後見人を自分で指定できる:信頼できる子ども・専門家を後見人に指定できる(法定後見は裁判所が選任)
後見の内容を事前に決めておける:「どんな財産管理をしてほしいか」を契約書に記載できる
認知症が進んだ後に発動:実際に判断能力が低下した時点で家庭裁判所に申立てて効力が発生する

家族信託 vs 任意後見:どちらを選ぶか

📋 家族信託 vs 任意後見の比較
家族信託 任意後見
効力の発生 契約締結後すぐ(生前から有効) 判断能力が低下した後に家庭裁判所の手続きで発動
死後の継続 継続できる 後見人の権限は本人の死亡で終了
不動産の
柔軟な活用
売却・賃貸等が柔軟にできる 家庭裁判所の許可が必要な場合がある
費用(初期) 30〜80万円程度(契約書作成等) 10〜20万円程度(契約書作成)
継続コスト 受託者への報酬(任意) 後見監督人への報酬(月1〜3万円)
向いている
場合
不動産管理・事業承継・障害のある子がいる場合 財産がシンプル・信頼できる後見人を選びたい場合
「家族信託+遺言書」の組み合わせが最もカバー範囲が広い:
家族信託で「生前の財産管理・死後の継続管理」を担い、遺言書で「信託財産以外の財産の分配」を決める組み合わせが、現在最も包括的な生前対策です。

3つの準備の優先順位と進め方

3つの準備を全て同時に始めるのが理想ですが、まず着手すべき順番があります。

優先順位 準備 理由・進め方
最優先 ①公正証書遺言 最もシンプル・最も費用が安い・最も早く完成できる。行政書士に相談して1〜2か月で完成する。まずここから着手する
2番目 ②生前贈与(暦年贈与の開始) 今年の分の贈与から始める。まず行政書士に贈与契約書の作成を依頼して、銀行振込で記録を残す。来年・再来年と継続する
3番目 ③家族信託・任意後見 設計に時間がかかるため専門家(行政書士・司法書士)に早めに相談を開始する。準備が整い次第、遺言書・贈与と並行して進める
「今月中にできる一歩」は行政書士への無料相談の予約だけで十分です:
3つ全ての準備を一度に進めようとすると動けなくなります。「今月中に行政書士に相談の予約を入れる」という一点だけ決めて動き始めてください。相談後に専門家と一緒に優先順位・スケジュールを決めれば、自然と全ての準備が動き始めます。

「親に切り出しにくい」と感じる方へ

「お金や相続の話を親に切り出すのは失礼ではないか」「親が嫌がるのではないか」という心配をする方が多くいます。切り出し方のコツを紹介します。

💬 親への切り出し方のパターン
友人・知人の
事例を使う
「友人の家で相続で大変なことになったと聞いて、うちも早めに考えたいと思って」
他人の話を入口にすることで「うちの親に死んでほしい」という誤解を避けられる
自分のことと
して話す
「もし何かあった時に私たちが困らないように、一緒に準備したい」
「親のため」でなく「子どもたちのため」という切り口で話すと親が受け入れやすい
行政書士・
専門家の
無料相談を活用
「無料で相談できるところがあるから、一緒に話を聞きに行かない?」
専門家を間に入れることで感情的にならずに話を進められる
兄弟姉妹と
一緒に話す
「兄弟みんなで集まって、将来のことを一緒に話し合いたい」
→子ども全員で話し合うことで特定の子だけが「財産目当て」に見えるリスクを減らせる
💡 「縁起でもない」という親の反応への対処:
「縁起でもない」「まだ元気だから必要ない」という反応は非常に多くあります。「縁起の話ではなく、あなたの意思をちゃんと伝えるための準備です」「今準備しておくことで、将来の選択肢が増えます」という言葉が有効です。一度の会話で決める必要はありません。繰り返し話題にすることで親が受け入れやすくなります。

費用はいくらかかるか:3つ合わせた目安

3つの準備に必要な費用の目安を整理します。

準備の種類 費用の目安 主な内訳
①公正証書遺言 10〜20万円程度 行政書士への依頼料(5〜15万円)+公証人手数料(遺産額による。数万〜十数万円)
②生前贈与
(契約書作成)
年間1〜3万円程度 毎年の贈与契約書の作成費用(行政書士)。贈与自体は年間110万円以内であれば税金なし
③家族信託 30〜80万円程度 行政書士・司法書士への依頼料(30〜60万円)+公正証書作成費用(数万円)+不動産信託登記費用(5〜15万円)
③任意後見
(家族信託の代わり)
10〜20万円程度 行政書士・司法書士への依頼料(5〜15万円)+公正証書作成費用(数万円)
合計目安 40〜100万円程度 遺言書+生前贈与開始+家族信託(または任意後見)の合計。財産の規模・複雑さによって変わる
「費用がかかる」と感じた方へ:

相続トラブルが発生した場合のコスト(弁護士費用・調停・訴訟)は数十〜数百万円に及ぶことがあります。また認知症後に法定後見を使った場合の後見人報酬は月2〜6万円が継続的に発生し、10年で720万円になることもあります。元気なうちの準備コスト40〜100万円は、何も準備しなかった場合の数倍〜数十倍の損失を防ぐための投資です。

よくある疑問(Q&A)

Q. 親がまだ60代で元気です。早すぎませんか?
早すぎることは全くありません。むしろ60代での着手が最も理想的です。遺言書は作成後も内容を変更できるため、早めに作成しておいて状況の変化に応じて更新すればよいのです。家族信託・任意後見も若いうちに設定しておくことで設計の選択肢が広がります。生前贈与は開始が早いほど多くの財産を非課税で移転できます。「早すぎる」というデメリットは何もありません。
Q. 兄弟の一人が「そんなことをするのはおかしい」と反対しています。どうすればいいですか?
遺言書・家族信託・任意後見は親本人の意思で行うものであり、子ども全員の同意は不要です。ただし兄弟姉妹の反対が強い場合、後から「無効だ」「無効を主張する」という紛争になるリスクがあります。専門家(行政書士・司法書士)を関与させ、適切な手続きを踏むことで「正当なプロセスで行われた」という証拠を残すことが重要です。家族全員への事前の説明・情報共有も紛争予防に有効です。
Q. 3つ全部必要ですか?一番重要なものだけやればいいですか?
最低限「遺言書だけ」でも格段に状況が改善します。遺言書がなければ遺産分割協議が必要になり、協議がまとまらなければ調停・訴訟になります。遺言書一本で最悪の事態を防げます。ただし認知症リスク(口座凍結・財産管理の停止)に備えるには家族信託または任意後見も必要です。財産の規模・家族の状況に応じて優先順位を決めてください。まず行政書士に相談して「何から始めるべきか」を一緒に考えてもらうことをおすすめします。
Q. 親自身が「全部子どもに任せる」と言っています。それでも準備は必要ですか?
「任せる」という意思こそ、遺言書に残すべき内容です。「全部長男に任せる」という親の意思も、遺言書がなければ法的な拘束力がなく、他の相続人が法定相続分を主張できます。「全部長男に相続させる」という一文の遺言書があるだけで、他の相続人(遺留分請求は別として)が異議を唱えにくくなります。「任せる」という意思を法的な形に残すことが重要です。

📞 ご相談はこちら

ハートリンクグループでは、
行政書士を中心に税理士などの専門家が連携し、
相続手続き、遺言書作成、成年後見、死後事務などについて
一人ひとりの状況に合わせた相談対応を行っています。

相続専門 ハートリンクグループ

【東京オフィス】 東京・人形町で相続相談先をお探しの方へ。相続手続き、遺言書作成、生前対策などに対応。人形町駅徒歩すぐ。中央区・日本橋エリアのご相談も承ります。
【横浜オフィス】 横浜・関内で相続相談先をお探しの方へ。相続、遺言、家族信託、任意後見などに対応。関内駅徒歩約3分。横浜市中区を中心にご相談を承ります。
【千葉オフィス】 千葉市・市川・船橋で相続相談先をお探しの方へ。相続手続き、遺言書作成、家族信託などに対応。千葉ニュータウン駅徒歩約5分。印西市・白井市・成田市・佐倉市など千葉県北部エリアのご相談も承ります。

☎ 0120-905-336

まずはお気軽にご連絡ください。

前へ
前へ

【特集】相続・贈与で必ず出てくる「事業承継税制」とは?

次へ
次へ

【未成年の相続】未成年の遺産相続はどう進める?親が亡くなったときに必要な手続きと注意点を徹底解説