【専門家がわかりやすく解説】準確定申告とは?必要な手続き・期限・給与所得者だけの場合の注意点まで完全ガイド
目次
準確定申告とは何か:通常の確定申告との違い
準確定申告とは、年の途中で亡くなった方(被相続人)の所得税について、相続人が被相続人に代わって行う確定申告のことです(所得税法第124条・第125条)。
通常の確定申告は「1月1日〜12月31日の1年間の所得」を翌年3月15日ごろまでに申告します。しかし年の途中で亡くなった方は、自分では申告できません。そこで相続人が「1月1日から死亡日まで」の所得をまとめて申告する、これが準確定申告です。
| 比較項目 | 通常の確定申告 | 準確定申告 |
|---|---|---|
| 申告する人 | 納税者本人 | 相続人(または包括受遺者) |
| 対象期間 | 1月1日〜12月31日(1年間) | 1月1日〜死亡日(死亡年分) |
| 申告期限 | 翌年2月16日〜3月15日ごろ | 相続を知った日の翌日から4か月以内 |
| 申告書の様式 | 通常の確定申告書 | 確定申告書と同じ様式に「準」を追記する |
| 署名者 | 本人 | 相続人全員(または代表者) |
| 振替納税 | 利用可能 | 利用不可(期限内に現金納付) |
申告が必要な人と不要な人の判定方法、給与所得者だけの場合の注意点、4か月という期限の正確な計算方法、1〜3月に亡くなったケースの特殊な扱い、手続きの流れ・必要書類、還付金の受取方法、ペナルティ、相続放棄との関係まで網羅しています。
準確定申告が必要な人・不要な人の判定
準確定申告が必要かどうかは、亡くなった方(被相続人)が通常の確定申告の対象者だったかどうかで判断します。
準確定申告が必要なケース
- 個人事業主・フリーランスだった(事業所得がある)
- 不動産賃貸収入があった(アパート経営・土地の貸付等)
- 給与収入が2,000万円を超えていた
- 2か所以上から給与を受け取っていた
- 給与・年金以外の所得が年間20万円を超えていた(副業・株式売却益等)
- 公的年金等の収入が年間400万円を超えていた
- 土地・建物・株式等の譲渡所得があった
準確定申告が不要なケース
- 給与所得のみで年末調整が済んでいた(かつ他に所得がない)
- 公的年金等の収入が年間400万円以下で、かつ年金以外の所得が年間20万円以下(確定申告不要制度の対象)
申告義務がない場合でも、生命保険料控除・医療費控除・源泉徴収された税額の精算等により税金が戻ってくる(還付)可能性があります。源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄に金額がある場合は、任意で申告することを検討してください。
給与所得者だけの場合:申告が必要かどうかの判断
「亡くなった父は会社員で年末調整もしていた。準確定申告は必要?」——この質問は実務でよく出てきます。基本的には申告義務なしですが、次の点を確認してください。
| 状況 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 給与のみ・年末調整済み・他に所得なし | 申告不要 | 年末調整で所得税の精算が完了している |
| 給与のみだが年の途中で退職・死亡 | 任意申告を推奨 | 年末調整がされていないため源泉徴収された税額が還付される可能性が高い |
| 給与収入が2,000万円超 | 申告必要 | 年末調整の対象外のため |
| 給与+副業所得(20万円超) | 申告必要 | 給与以外の所得が20万円を超えると申告義務がある |
| 給与+医療費控除・ふるさと納税 | 任意申告を推奨 | 年末調整ではできない控除を申告することで還付が受けられる |
給与所得者が年の途中で亡くなった場合、その年の年末調整が行われていません。つまり1月から死亡日まで毎月天引きされた源泉徴収税額が、正しい税額より多い状態になっていることがほとんどです。申告義務はなくても、準確定申告(還付申告)を行うことで税金が戻ってきます。
期限:「相続を知った日から4か月以内」の正確な意味
準確定申告の最大の特徴は期限が短いことです。通常の確定申告が「翌年3月15日まで」という固定の期限なのに対し、準確定申告は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」と定められています。
・2026年5月15日(木)に死亡を知った → 期限:2026年9月15日(月)
・2026年5月20日(火)に死亡を知った → 期限:2026年9月20日(土)→ 繰り越して2026年9月22日(月)
(期限が土日祝日の場合は翌開庁日が期限)
※「相続の開始があったことを知った日」は一般的には被相続人の死亡日と同じ日になります。ただし遠方在住・疎遠・先順位者の相続放棄によって後から相続人になった等のケースでは、死亡日と起算日がずれることがあります。
相続放棄の判断をする前に準確定申告の手続きが始まる場合があります。特に負債の多い相続では、順番を間違えると相続放棄の権利を失うリスクがあります(Section 10参照)。
1月〜3月に亡くなった場合の特殊なケース
被相続人が1月1日〜3月15日(通常の確定申告の期限)までの間に亡くなった場合、前年分の確定申告がまだ提出されていないことがあります。この場合は準確定申告が2本必要になります。
| 例:2026年3月10日に死亡し前年分未申告の場合 |
① 前年分(2025年1月1日〜12月31日)の準確定申告 ② 当年分(2026年1月1日〜3月10日)の準確定申告 どちらも期限は「相続の開始を知った日の翌日から4か月以内」。 前年分に通常の3月15日の期限は適用されない点に注意。 |
|---|---|
| 申告不要の例外 | 前年分をすでに生前に申告していた場合は当年分のみ(通常のケース) |
準確定申告の手続きの流れ(STEP別解説)
相続人が複数いる場合、全員連署した1通を提出する方法と、各相続人がそれぞれ申告する方法があります。連署の場合は全員に連絡・協力が必要ですが、1本の申告書でまとまるため実務的には多く使われます。連絡が取れない相続人がいる場合は個別申告も可能です。
必要書類の一覧
全員共通の書類
| 書類 | 内容・取得先 |
|---|---|
| 準確定申告書 | 通常の確定申告書と同じ様式を使用。「確定申告書」の文字の上に「準」と手書きで加筆する |
| 確定申告書付表 | 相続人全員の氏名・住所・続柄・相続分・納付税額等を記載する。相続人が複数の場合は必須 |
| 被相続人の源泉徴収票 | 会社員・年金受給者の場合。勤務先または日本年金機構等から取得 |
| 各種控除の証明書類 | 生命保険料控除証明書・地震保険料控除証明書・医療費の領収書等 |
所得の種類によって追加が必要な書類
| 所得の種類 | 追加書類 |
|---|---|
| 事業所得・ 不動産所得 |
収支内訳書(白色申告の場合)または青色申告決算書(青色の場合) |
| 株式・投資信託の 譲渡所得 |
証券会社からの取引報告書・年間取引報告書 |
| 不動産の譲渡 | 売買契約書・取得費を証明する書類等 |
| 還付金を代表者が 一括受取する場合 |
「還付される税金の受領委任状」または委任状を確定申告書付表に添付 |
申告書の提出先と提出方法
提出方法:
① 税務署の窓口に持参(受付は平日8:30〜17:00)
② 郵送(消印が提出日扱いになる)
③ e-Tax(電子申告)での提出も可能
注意:振替納税は準確定申告では利用できません。税額が生じる場合は、期限内に現金で納付する必要があります(金融機関・コンビニ・ダイレクト納付等で対応)。
還付が発生する場合の受取方法
準確定申告で還付が発生する場合、原則として各相続人がそれぞれの口座で受け取ります。代表者がまとめて受け取る場合は、確定申告書付表に記載のうえ委任状の提出が必要です。
| 各相続人が 個別に受け取る |
最も一般的な方法。各自の法定相続分に応じた還付金がそれぞれの口座に振り込まれる |
|---|---|
| 代表者が 一括で受け取る |
確定申告書付表への記載+委任状の提出が必要。代表者が全員分を受領して各自に分配する |
| 振込時期 | 申告書提出後おおむね1〜2か月で指定口座に振り込まれる |
| 還付申告の期限 | 還付のみの場合は対象年の翌年から5年以内に申告可能(4か月の期限は延滞税等のペナルティが生じる「納付税額がある場合」に特に重要) |
期限を過ぎた場合のペナルティ
納付すべき税額がある場合に期限を過ぎると、以下のペナルティが発生します。
| ペナルティの種類 | 内容 |
|---|---|
| 無申告加算税 | 原則として本来の税額の15%〜30%が加算される(自主的に申告した場合は5%に軽減) |
| 延滞税 | 期限の翌日から日割りで発生。最高税率は年14.6% |
税金が戻ってくるだけで納付税額がない場合は、対象年の翌年から5年以内に申告すれば還付を受けられます。ただし時効を過ぎると請求できなくなるため、できる限り早めに申告することをおすすめします。
相続放棄を検討している方への重要な注意点
相続放棄を検討している方は、準確定申告への関与について特別な注意が必要です。
還付金は相続財産の一部です。これを受け取って消費することは「相続財産の処分」とみなされ、単純承認(相続を承認した)とみなされて相続放棄が一切できなくなるリスクが極めて高くなります。
相続放棄を検討中の方は、申告書への署名・納税・還付金の受領を進める前に、必ず弁護士・司法書士・税理士にご相談ください。
相続放棄の申述期限(3か月)は準確定申告の期限(4か月)より先に来ます。負債が多い可能性がある場合は、まず相続放棄の判断を先に行い、その後に準確定申告への対応を検討するのが安全な順番です。
税理士に依頼すべきケース
準確定申告は複雑なケースになるほど、税理士への依頼が強く推奨されます。
- 被相続人が個人事業主・フリーランスだった(青色申告の決算書作成等が必要)
- 不動産所得・譲渡所得など複数の所得がある
- 株式・投資信託の年間取引が多い
- 相続放棄を検討中または放棄した相続人がいる
- 相続税申告も同時に発生し、準確定申告の結果が相続税に影響する場合
- 前年分と当年分の2本の準確定申告が必要なケース
- 相続人が多数・遠方・連絡が取りにくい状況
準確定申告は税理士の業務領域ですが、行政書士が担当する遺産分割・相続手続きと密接に関連します。ハートリンクグループでは行政書士を中心に税理士と連携し、相続手続き全体を一体的にサポートしています。
よくある疑問(Q&A)
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