相続手続きの来店予約が取れない問題|予約前にやるべき準備リスト

「予約が取れない」は相続あるある問題

「銀行に電話したら『来店は予約制で、最短で3週間後』と言われた」「役所の相続相談は月に2回しか枠がない」——相続手続きを始めようとして、最初の来店予約すら取れないという経験をされる方は少なくありません。

特に近年は、金融機関の相続手続き窓口の専任化・予約制への完全移行が進んでおり、来店予約までに2〜4週間待ちというケースも珍しくなくなっています。しかも「予約が取れた」としても、書類が不備だと再予約が必要になり、さらに数週間待つことになります。

この記事では、来店予約が取れない問題の背景を整理したうえで、「予約が取れるまでの間に何を準備しておくべきか」の具体的なリストを提供します。待ち時間を有効活用することが、相続手続き全体の期間短縮につながります。

💡 この記事でわかること:
予約が取れない理由の構造的背景、予約前にやるべき5つの準備項目(チェックリスト付き)、予約を効率よく取るコツ、複数機関を並行して進める段取り、専門家への依頼で予約問題を丸ごと回避する方法まで網羅しています。

なぜ相続の来店予約は取りにくいのか

相続手続きの窓口予約が取りにくい理由には、構造的な背景があります。

📊 理由① 相続件数の増加
日本の死亡者数は年間約160万人以上(2024年)と高水準が続いており、相続手続きの件数は年々増加。窓口の処理能力が追いついていない。
🏦 理由② 予約制・専任化への移行
金融機関が相続窓口を「専任担当者のみ対応」「完全予約制」に移行。一人の担当者が対応できる件数に上限があり、枠がすぐ埋まる。
📋 理由③ 手続きの複雑化
AML(マネーロンダリング対策)強化・相続登記義務化対応等により、一件あたりの手続き時間が増加。窓口の回転が遅くなり予約枠が圧迫される。
⏰ 理由④ 繁忙期の集中
年明け(1〜3月)・ゴールデンウィーク後・年末は相続手続きが集中しやすく、予約がさらに取りにくくなる。閑散期を狙うのが有効。
⚠️ 予約待ちの間にも相続税・登記の期限は進んでいます。
相続税の申告期限(相続を知った日から10ヶ月以内)・相続登記の義務期限(3年以内)は、「予約が取れなかった」という事情に関係なく進みます。予約待ちの時間を無駄にせず、並行して書類準備を進めることが重要です。

予約前にやるべき準備の全体像

来店予約が取れるまでの期間は、書類準備・情報整理に充てる絶好のタイミングです。「何も準備せず来店すると、また書類が足りないと言われて出直しになる」という二度手間を防ぐためにも、以下の5つの準備を予約待ち期間中に進めましょう。

準備①
相続人の確定と連絡先リストの作成
誰が相続人なのかを戸籍で確認し、全員の連絡先・住所を把握する
準備②
口座・資産の棚卸し
どの金融機関に何の口座があるかを通帳・郵便物・明細から調査し、一覧化する
準備③
遺言書の有無の確認
自筆・公正証書・法務局保管のいずれの形式でも遺言書があるかを確認する
準備④
戸籍謄本収集の段取り
被相続人の出生〜死亡まで連続した戸籍謄本の収集に着手する(最もに時間がかかる)
準備⑤
各機関への問い合わせ内容の整理
来店予約の電話をする前に「何を聞くか」「何を持参するか」を整理しておく

【準備①】相続人の確定と連絡先リストの作成

相続手続きの全てにおいて、「誰が相続人か」の確定が出発点です。思い込みで進めると後から相続人の追加発覚というトラブルになることがあります。

✅ 相続人確定のチェックリスト
  • 被相続人の出生〜死亡まで連続した戸籍謄本を取得して、結婚・離婚・認知・養子縁組の有無を確認した
  • 先順位の相続人(子)がいない場合、第2順位(親・祖父母)・第3順位(兄弟姉妹)まで確認した
  • 相続人の一人が被相続人より先に死亡している場合、代襲相続(孫・甥・姪等が相続人になる)が発生していないか確認した
  • 被相続人の婚外子(認知した子)がいないか確認した(戸籍で把握できる)
  • 全ての相続人の現住所・電話番号・メールアドレスを把握した
  • 相続人の中に未成年者・認知症の方・行方不明の方がいないか確認した(いる場合は別途対応が必要)
  • 相続人全員に相続が開始したことを連絡し、協力を得られることを確認した
相続人連絡先リストの例(一覧表として作成):

氏名 / 続柄 / 生年月日 / 現住所 / 電話番号 / 実印登録の有無 / 印鑑証明書の取得可否 / 備考(遠方・海外・体調不安等)

この一覧表を事前に作成しておくと、銀行窓口での相談・遺産分割協議書作成・書類の郵送手配がすべてスムーズになります。

【準備②】口座・資産の棚卸し

「どの金融機関に・どんな口座が・いくらあるか」を把握しないまま来店予約をしても、また書類が足りないと言われる原因になります。まず資産の全体像を把握しましょう。

✅ 資産の棚卸しチェックリスト
  • 被相続人の通帳・預金通帳・キャッシュカードを全て確認し、取引金融機関の一覧を作成した
  • 自宅・郵便受けに届いている金融機関・証券会社からの郵便物(取引明細・報告書等)を全て確認した
  • 被相続人が使用していたスマートフォン・パソコンのネット銀行・ネット証券・保険会社のログイン履歴・ブックマークを確認した
  • 不動産(自宅・土地・収益物件等)の登記簿謄本・固定資産税の通知書を確認し、名義人を確認した
  • 生命保険・損害保険・共済の保険証券を全て探し出し、受取人・保険会社・証券番号を確認した
  • 株式・投資信託・国債・外貨預金等の有価証券の保有状況を確認した
  • 車・貴金属・美術品など現金以外の財産をリストアップした
  • 被相続人に借金・ローン・連帯保証がないか確認した(信用情報機関への照会も検討)
💡 通帳がない・口座不明の場合:
通帳が見当たらない場合でも、被相続人が住んでいたエリアの金融機関に「口座の有無照会」を依頼することができます。相続人であることを示す戸籍謄本と本人確認書類を持参して問い合わせましょう。固定資産税・公共料金の引き落とし先となっている口座から逆算する方法も有効です。

【準備③】遺言書の有無の確認

遺言書の有無によって、相続手続きに必要な書類と手順が大きく変わります。来店前に必ず確認してください。

✅ 遺言書確認チェックリスト
  • 被相続人の自宅・貸金庫・金庫・仏壇の引き出し等で自筆証書遺言を探した
  • 法務局(遺言書保管所)に「遺言書保管事実証明書」の交付申請を行い、法務局保管の遺言書がないか確認した
  • 公証役場の「遺言検索システム」(全国の公証役場に問い合わせ)で公正証書遺言の有無を確認した
  • 自筆証書遺言を発見した場合、封を切らずに家庭裁判所の検認手続きを申請した(法務局保管の場合は不要)
⚠️ 自筆証書遺言は絶対に封を切らないでください。
家庭裁判所の検認前に封を開けると、5万円以下の過料の対象になる可能性があります。発見したらそのままの状態で家庭裁判所に持参してください。
遺言書の種類 来店時の手続きへの影響
遺言書なし 相続人全員の合意による遺産分割協議書が必要。全員の実印・印鑑証明書・戸籍謄本の束が必要になる
公正証書遺言あり 遺言書の指定通りに手続きを進める。相続人全員の合意は不要。必要書類が大幅に少なくなる
自筆証書遺言(検認済み) 検認済み遺言書の謄本が必要。内容次第で相続人全員の書類が必要なケースもある

【準備④】戸籍謄本収集の段取り

相続手続きで最も時間がかかる作業が、被相続人の出生〜死亡までの連続した戸籍謄本の収集です。金融機関の来店予約が取れた日に書類を揃えられるよう、今すぐ着手することが重要です。

✅ 戸籍謄本収集チェックリスト
  • 被相続人の死亡時の本籍地(最後の戸籍が保管されている市区町村)を確認した
  • 死亡時の戸籍謄本(除籍謄本)を取得し、「転籍前の本籍地」を確認して次の役所を把握した
  • 転籍・戸籍制度改正(昭和・平成の改製)により、複数の市区町村から戸籍を取り寄せる必要があることを認識した
  • 郵送での取り寄せが必要な役所について、申請書・定額小為替・返信用封筒を準備して郵送申請した
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本(抄本)を各自の本籍地から取得するよう手配した
  • 「法定相続情報一覧図」の作成・申出を検討し、複数機関へ同時提出する場合は法務局申出を先行して行うことを検討した
「法定相続情報一覧図」の活用で複数機関への同時提出が可能:
法務局で作成できる「法定相続情報一覧図の写し」(無料)を使えば、銀行・証券会社・法務局・年金機構などに同時並行で書類を提出できます。戸籍謄本の返却待ちがなくなるため、全体の手続き期間を大幅に短縮できます。

【準備⑤】各機関への問い合わせ内容の整理

予約の電話をかける前に、「何を聞くか」「何を伝えるか」を事前に整理しておくと、電話が短時間でスムーズに終わります。また、電話の際に必要書類を正確に確認できれば、来店当日の差戻しを防ぐことができます。

✅ 予約電話の前に準備することリスト
  • 被相続人の氏名・生年月日・死亡日・口座番号(あれば)をメモに書き出した
  • 電話で確認する内容を事前にリストアップした:①必要書類の一覧、②来店時に必要な持ち物、③手続きに要する目安時間、④郵送対応の可否
  • 法定相続情報一覧図の写しで戸籍謄本の代替ができるか」を各機関に確認する予定を立てた
  • 担当者の名前・直通番号・メールアドレスを控える準備をした
  • 可能であれば「最短でいつ予約が取れるか」「キャンセル待ちの登録はできるか」も確認する予定にした
電話問い合わせのスクリプト例:

「○○銀行の相続手続きについてお伺いしたいのですが、担当の窓口を教えていただけますか。先日父(被相続人)が亡くなりまして、口座の解約手続きを進めたいと思っています。来店予約をお願いしたいのですが、最短でいつ頃ご案内いただけますか。また、来店の際に必要な書類の一覧をお教えいただくことはできますか」

事前に把握しておいた被相続人情報(氏名・死亡日・口座番号等)をメモしておくと、担当者との会話がスムーズになります。

予約を効率的に取るコツ

来店予約が取りにくい状況でも、タイミングや連絡方法を工夫することで早く予約を確保できる場合があります。

工夫のポイント 内容・理由
閑散期を狙う 1〜3月(確定申告シーズン)・ゴールデンウィーク後・年末は混雑。4〜6月・10〜11月は比較的予約が取りやすい傾向がある
開店直後・閉店前を狙う 銀行の電話受付は朝一(開店直後)・昼前後に混雑する。14〜16時台は比較的電話がつながりやすい
キャンセル待ちを登録する 多くの金融機関では「キャンセルが出たら連絡する」という案内をしている。依頼しておくと前倒しで来店できる場合がある
複数の支店に連絡する 被相続人が口座を持つ支店以外でも相談対応している金融機関がある。近隣の支店に問い合わせてみると早い日程で予約できることがある
Webの来店予約フォームを使う 電話が混んでいる場合でも、銀行HPの来店予約フォームからキャンセル枠を拾えることがある。早朝・夜中の申し込みでも翌朝確認される
専門家(行政書士等)が代理予約する 専門家が「代理人として来店」する場合、通常の顧客とは別ルートで予約が取れるケースがある
💡 仮払い制度で当面の資金を確保しておく:
来店予約が先になる場合でも、銀行の窓口に電話して「遺産分割前の預金の仮払い制度」について相談することができます。一金融機関あたり150万円を上限に、相続人が単独で引き出せる制度があるため、葬儀費用・当面の生活費が必要な場合に活用してください。

複数機関を並行して進める段取りの立て方

被相続人が複数の金融機関に口座を持っていた場合、それぞれに来店予約・書類提出が必要になります。全てを順番に進めると膨大な時間がかかるため、並行して進める段取りが重要です。

並行手続きの基本戦略:

① まず「法定相続情報一覧図」を法務局で取得(戸籍謄本の代替として複数機関に同時提出できる)
② 全機関の「必要書類リスト」を電話で事前入手し、共通書類(戸籍・印鑑証明書等)を必要部数まとめて準備する
③ 各機関の予約を一斉に入れ、同じ週の異なる日に来店するよう日程を調整する
④ 遺産分割協議書は、全機関の提出前に一度完成させ、必要部数コピーしておく
手続きの優先順位 理由
①法定相続情報一覧図の取得
(法務局)
これがあれば戸籍謄本束の使い回しが不要になる。最初に進めると後の全手続きがスムーズになる
②残高証明書の取得
(各金融機関)
相続税申告や遺産分割の話し合いに必要。相続発生日時点の残高を証明する書類
③遺産分割協議書の作成 全相続人の合意形成と書類整備が必要。早めに着手する
④各機関への来店・書類提出
(並行して実施)
法定相続情報一覧図+遺産分割協議書が揃ったら全機関に同時提出
⑤不動産の相続登記
(法務局)
3年以内の義務。司法書士への依頼と並行して進める
⑥相続税の申告
(税務署)
10ヶ月以内。税理士への相談は早めに開始する

専門家に依頼すると「予約問題」を丸ごと回避できる

行政書士・司法書士などの専門家に相続手続きを依頼すると、「予約が取れない」「書類が足りない」「また書き直し」という問題を根本的に回避できます。

専門家に依頼した場合のメリット:
専門家が代理人として金融機関・法務局等と直接やり取りすることで、
① 代理人ルートでより早く予約が取れることがある
② 書類の不備チェックが済んだ状態で提出するため差戻しリスクが激減
③ 複数機関を並行して対応し、手続き全体の期間を短縮できる
④ 相続人が忙しい場合でも、書類の収集・作成・提出まで代行してもらえる
「予約待ちの間にすべき準備」も専門家が段取りしてくれるため、自分で考える手間が省ける
💡 専門家への依頼費用の目安:
行政書士への相続手続き代行費用は、相続財産の規模・金融機関の数によって異なりますが、一般的に10〜30万円程度が目安です。複数の金融機関が絡む場合・遠方の相続人がいる場合・不動産がある場合は、専門家への依頼が時間・コスト両面で効果的です。

よくある疑問(Q&A)

Q. 来店予約を取ったのに書類が揃っていません。予約をキャンセルすべきですか?
キャンセルせず、まず来店することをおすすめします。書類が揃っていなくても、来店時に担当者から「必要書類の正確なリスト」を受け取ることができます。次の来店予約も早めに押さえておきましょう。キャンセルすると次の予約がさらに遠くなるため、来店して現状を確認するほうが効率的です。
Q. 被相続人がどの銀行に口座を持っていたか全くわかりません。
まず被相続人の自宅に残っている通帳・キャッシュカード・郵便物を全て確認してください。次に、公共料金・固定資産税等の引き落とし先の通帳を確認する方法も有効です。取引金融機関が全く不明な場合は、全国銀行協会の「預金の照会サービス」の利用も検討してください。
Q. 予約が2ヶ月先になってしまいました。そのまま待つしかありませんか?
待ちながらできることは多くあります。戸籍謄本の収集・法定相続情報一覧図の作成・遺産分割協議書の草案作成・印鑑証明書の取得準備を進めておきましょう。また、他の支店・他の金融機関に別途問い合わせることで早く対応できる場合もあります。行政書士に代行依頼することで、代理人ルートでより早く動いてもらえる可能性もあります。
Q. 複数の銀行に同時に予約を入れてもいいですか?
問題ありません。積極的に並行して予約を入れてください。各金融機関は別々に対応します。遺産分割協議書・法定相続情報一覧図が揃ってから同じ週に来店できるよう日程を調整することで、手続き全体の期間を大幅に短縮できます。
Q. 郵送で手続きできる金融機関はありますか?
近年、郵送対応を受け付ける金融機関が増えています。ゆうちょ銀行・一部のネット銀行・大手都市銀行の一部では、書類を郵送することで来店不要で手続きを完了できるサービスがあります。各金融機関の公式ホームページを確認するか、電話で「郵送での相続手続きは可能ですか?」と確認してみましょう。

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