【やさしく解説】遺族年金の受給要件を徹底解説― もしものとき、家族の生活を守るために知っておくべき制度
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、亡くなった方が加入していた年金制度によってどちらを受け取れるかが決まります。受給できるかどうかは①保険料の納付状況②受け取る家族の年収・年齢③子どもの有無の3点で変わります。特に注意が必要なのは子どもがいない妻が遺族基礎年金を受け取れない点と、2026年の制度改正で夫が死亡した場合の妻の受給に年齢要件が新たに設けられる予定である点です。まず年金事務所に確認することをおすすめします。
目次
遺族年金とは:2種類の制度の全体像
遺族年金とは、国民年金または厚生年金の被保険者が亡くなった場合に、一定の要件を満たす遺族が受け取れる公的年金です。残された家族の生活を支えるためのセーフティネットとして機能しています。
| 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 | |
|---|---|---|
| 対象となる 亡くなった方 |
国民年金の被保険者・被保険者だった方 | 厚生年金の被保険者・被保険者だった方(会社員・公務員等) |
| 受け取れる 主な遺族 |
「子のある配偶者」または「子」 ※子のない配偶者は原則受給不可 |
配偶者・子・父母・孫・祖父母(優先順位あり) ※子がいない配偶者も受給可能 |
| 年金額 | 定額(81万円程度/年+子の加算) | 報酬比例(亡くなった方の厚生年金額の4分の3) |
| 請求先 | 市区町村の国民年金担当窓口 | 年金事務所 |
遺族基礎年金・遺族厚生年金の受給要件、保険料納付要件、受給額の計算方法、2026年の制度改正ポイント、受給停止・失権になるケース、請求手続き、相続・生前対策との関係まで解説しています。
遺族基礎年金:受給できる人・できない人
遺族基礎年金は「子のある配偶者」または「子」が受け取れる年金です。ここでいう「子」には年齢要件があります。
遺族基礎年金の「子」の定義
・18歳になった年度の3月31日まで(高校卒業年齢まで)の子
・または20歳未満で障害等級1・2級の障害がある子
※ 婚姻していない子に限る
| 状況 | 受給の可否 |
|---|---|
| 子(18歳年度末まで) がいる妻・夫 |
受給できる(子が年齢要件を満たす間) |
| 子がいない妻・夫 | 受給できない(遺族厚生年金は別途確認) |
| 子のみ (配偶者なし) |
子が直接受給できる |
| 子が18歳年度末を 超えた後の妻・夫 |
遺族基礎年金は停止・失権となる(遺族厚生年金は継続する場合がある) |
| 障害等級1・2級の 子がいる配偶者 |
受給できる(子が20歳になるまで) |
子どものいない共働き夫婦・DINKs・子どもが独立した後の夫婦では、夫が国民年金のみ加入(自営業等)で亡くなった場合、妻は遺族年金を受給できない可能性があります。生命保険・個人年金等での別途の備えが重要です。
遺族厚生年金:受給できる人・できない人
遺族厚生年金は厚生年金に加入していた方(会社員・公務員等)が亡くなった場合に受け取れる年金です。遺族基礎年金より対象が広く、子のいない配偶者も受給できます。
受給できる遺族の優先順位
第1順位:配偶者・子
第2順位:父母
第3順位:孫
第4順位:祖父母
※ 配偶者と子は同順位で、配偶者が受給する場合は子への支給は停止される
配偶者が受給する場合の年齢・条件
| 妻が受給 する場合 |
夫死亡時に年収850万円未満(または所得655.5万円未満)であること。年齢要件は原則なし(ただし2026年改正で変更予定。Section 5参照) |
|---|---|
| 夫が受給 する場合 |
妻死亡時に55歳以上であること(支給開始は60歳から。子がいる場合は年齢不問)。年収850万円未満であること |
| 中高齢寡婦 加算 |
子のない妻・または末子が18歳年度末を超えた妻が40歳以上65歳未満の間、遺族厚生年金に加算される(約61万円/年程度)。65歳以降は老齢基礎年金に移行 |
| 経過的寡婦 加算 |
1956年(昭和31年)4月1日以前生まれの妻が65歳以降に受け取れる加算。対象者は年々減少している |
年収850万円の壁
受給権が発生した時点での前年の収入を基準とします。850万円は給与収入の場合の目安で、所得ベースでは655.5万円が基準です。パート・アルバイト・自営業の収入も含みます。850万円以上の場合は受給できませんが、5年以内に収入が850万円未満になることが見込まれる場合は「申立書」を提出して受給できる場合があります。
保険料納付要件:これを満たさないと受給できない
遺族年金を受給するためには、亡くなった方が一定の保険料を納付していたことが必要です。この「保険料納付要件」を満たさない場合は、遺族が受給資格を持っていても年金は支給されません。
| 原則の要件 | 死亡日の前々月までの公的年金加入期間全体の3分の2以上が「納付済み期間+免除期間」であること |
|---|---|
| 特例の要件 (当面の措置) |
死亡日が2026年4月1日前の場合:死亡日の前々月までの直近1年間に未納がないこと(65歳未満の死亡の場合に限る) |
| 免除期間の 扱い |
学生納付特例・保険料免除(全額・半額等)の期間は「未納」ではなく「免除期間」として扱われる。申請していれば納付要件に算入される |
| 老齢年金受給者 が死亡した場合 |
保険料納付要件は問われない。25年以上の受給資格期間があれば遺族厚生年金の受給権が発生する |
特に自営業・フリーランス・無職の方で国民年金保険料を長期間未納にしている場合、亡くなった後に残された家族が遺族基礎年金を受け取れない可能性があります。支払いが困難な場合は未納のままにせず、免除申請・猶予申請を必ず行ってください。
受給額の目安:基礎年金・厚生年金それぞれの計算方法
遺族年金の受給額は年金の種類・子の人数・亡くなった方の加入期間・報酬によって異なります。
遺族基礎年金の受給額
基本額:約81万6,000円/年(月額約6万8,000円)
子の加算(第1子・第2子):各約23万5,000円/年
子の加算(第3子以降):各約7万8,000円/年
例:配偶者と子2人の場合
81万6,000円+23万5,000円×2=約128万6,000円/年(月額約10万7,000円)
※ 金額は毎年改定されます。実際の金額は年金事務所・ねんきんネットで確認してください。
遺族厚生年金の受給額
亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3
ただし厚生年金の加入期間が300か月(25年)未満の場合は300か月として計算する(短期加入者への最低保障)。
例:亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)が年200万円の場合
200万円 × 3/4 = 年150万円
※ 遺族基礎年金と遺族厚生年金は同時に受給できます(厚生年金加入者の場合)。
毎年届く「ねんきん定期便」または「ねんきんネット」で、亡くなった場合に遺族が受け取れる遺族年金の概算額を確認することができます。生前対策(生命保険・貯蓄)と組み合わせた家計のシミュレーションに活用してください。
【2026年度注目】遺族年金の制度改正ポイント
遺族年金制度は2024〜2026年にかけて段階的な見直しが進んでいます。特に「妻への遺族厚生年金の受給条件」に大きな変更が予定されています。
| ①妻の遺族厚生 年金に 年齢要件新設 |
これまで夫が死亡した場合、妻は年齢に関係なく遺族厚生年金を受給できましたが、改正後は一定の年齢要件が設けられる方向で検討されています。特に若い世代(子のない妻)への影響が大きい可能性があります。詳細は厚生労働省・年金事務所で最新情報を確認してください |
|---|---|
| ②男女差の 解消 |
現行制度では夫が遺族厚生年金を受給する場合は「55歳以上」という年齢要件がありますが、妻にはない(不均衡)という問題があります。男女で異なる要件を揃える方向での改正が議論されています |
| ③有期給付 (5年間)の 導入検討 |
子のない30〜50代の配偶者への遺族厚生年金について、終身ではなく5年間の有期給付にする案が検討されています。若い世代の自立・就労促進の観点からの改正案です |
本記事執筆時点(2026年8月)での情報をもとに解説していますが、遺族年金制度は改正議論が続いています。年金事務所・日本年金機構のウェブサイト・厚生労働省の発表で最新情報を確認することを強くおすすめします。
受給停止・失権になるケース
遺族年金は一定の事由が生じると支給が停止・または受給権が消滅(失権)します。
| 事由 | 停止か失権か | 内容 |
|---|---|---|
| 再婚 | 失権 | 配偶者・父母・祖父母が再婚(事実婚を含む)した場合は遺族厚生年金・遺族基礎年金ともに失権する |
| 子が18歳 年度末を超える |
停止→失権 | 子が18歳年度末を超えると子への遺族基礎年金は失権する。配偶者の遺族基礎年金も子がいなくなれば失権 |
| 受給者本人の 死亡 |
失権 | 受給者が亡くなった場合は失権(次順位の遺族が受給できる場合がある) |
| 直系血族・ 直系姻族以外と 養子縁組 |
失権 | 配偶者・子・孫が直系血族・直系姻族以外の者と養子縁組した場合に失権する |
| 年収が850万円 以上になった |
停止 | 受給中に年収が850万円以上になった場合は停止になることがある(申告義務あり) |
法律上の婚姻届を出していない「事実婚・内縁関係」を開始した場合も、遺族年金の失権事由に該当します。再婚を考えている場合は年金事務所に必ず事前確認をしてください。
請求の手続き:どこに・何を提出するか
遺族年金は自動的に支給されるものではなく、遺族が請求(申請)する必要があります。
| 請求先 |
・遺族基礎年金のみ:市区町村の国民年金担当窓口 ・遺族厚生年金(または両方):年金事務所(亡くなった方の住所地を管轄する年金事務所) |
|---|---|
| 請求期限 | 法律上の時効は5年(亡くなった日から5年以内に請求しないと時効消滅する場合がある)。ただし早めに請求することで受給開始が早まる |
| 主な必要書類 |
・年金請求書(年金事務所または市区町村窓口で入手) ・亡くなった方の年金手帳(または基礎年金番号がわかるもの) ・亡くなった方の戸籍謄本(死亡の記載があるもの) ・請求者の戸籍謄本・住民票 ・請求者の収入を確認できる書類(源泉徴収票・確定申告書等) ・子の在学証明書(該当する場合) ・亡くなった方の住民票除票 |
| 受給開始時期 | 請求した月の翌月から支給される(さかのぼっての支給は原則なし。ただし時効内であれば過去分を一括受給できる場合がある) |
遺族年金は請求した月の翌月から支給されます。5年の時効があるとはいえ、遅れると過去分が受け取れなくなる場合があります。亡くなった後の葬儀等で忙しい中でも、2〜3か月以内には年金事務所に連絡することをおすすめします。
遺族年金と相続・生前対策との関係
遺族年金は相続財産ではありませんが、相続・生前対策を考える上で遺族年金の受給見込額を把握しておくことは非常に重要です。
| 遺族年金は 相続財産では ない |
遺族年金は遺族固有の権利であり、遺産分割の対象にはなりません。受け取っても他の相続人に分ける必要はありません |
|---|---|
| 相続税の 対象外 |
遺族年金は相続税の課税対象になりません(所得税も非課税)。受け取っても税金はかかりません |
| 未支給年金は 相続財産に なりえる |
亡くなった方がまだ受け取っていなかった年金(未支給年金)は遺族が請求できます。これは相続財産ではなく遺族の固有の権利として請求できます(所得税の対象) |
| 生命保険との 組み合わせ設計 |
遺族年金の受給見込額を確認した上で、遺族年金で賄えない部分を生命保険で補うという設計が生前対策の基本です。「遺族年金+生命保険=残された家族の生活費」という逆算が有効 |
| 遺言書との 関係 |
遺族年金は遺言書に関係なく遺族の権利として発生します。ただし遺言書で生命保険の受取人・財産の配分を決めることで遺族年金+相続財産の総合的な生活保障設計が可能です |
よくある疑問(Q&A)
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