遺言が見つかったら最初にやること:検認が必要なケース/不要なケース
目次
遺言書を発見したら:まず止まって状況を確認する
家族が亡くなった後、自宅の引き出し・金庫・仏壇の中から封書を発見した——そういう場面で「開けてはいけないのか」「すぐ開けていいのか」と迷う方は少なくありません。
結論から言えば、遺言書の種類によって「すぐ開封してよいもの」と「開封前に家庭裁判所の手続きが必要なもの」に分かれます。この判断を誤ると、法律上のペナルティや手続きのやり直しにつながります。
この記事では、遺言書を発見した直後にすべき確認事項・検認が必要なケースと不要なケース・検認手続きの流れ・遺言書の使い方まで、時系列で整理して解説します。
封がされた封書型の遺言書を家庭裁判所の検認前に開封することは、5万円以下の過料の対象になる場合があります(民法1004条)。「開けてみて、中身を確認してから判断」はNGです。まず種類を見極めてから行動しましょう。
遺言書の種類を見分ける方法
遺言書には主に3種類があり、どの種類かによって検認の要否・次のアクションが変わります。まず見た目・状況から種類を判断してください。
見分け方:手書きの文書・手書きの署名・日付・押印がある
検認:原則必要(ただし法務局保管の場合は不要)
見分け方:「公正証書」「遺言公正証書」と表紙に印刷されている。公証役場の公印がある
検認:不要
見分け方:封筒に公証人・証人の署名押印がある
検認:必要
令和2年(2020年)7月から始まった「自筆証書遺言書保管制度」を利用した場合、法務局に原本が保管されています。この場合は検認が不要です。「遺言書保管事実証明書」の交付申請で確認できます(詳細はSection 5参照)。
検認が「必要」なケースと「不要」なケース
検認(けんにん)とは、家庭裁判所が遺言書の存在・形式・状態を確認する手続きです。遺言の有効・無効を判断するものではありませんが、偽造・変造を防ぐために重要な手続きです。
| 遺言書の種類 | 検認の要否 | 理由・備考 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言 (自宅等で保管) |
必要 | 発見した相続人が家庭裁判所に申立て。封印がある場合は裁判所で開封 |
| 自筆証書遺言 (法務局保管) |
不要 | 法務局が保管・管理しているため検認不要。「遺言書情報証明書」を取得して使用する |
| 公正証書遺言 | 不要 | 公証人が関与して作成されているため検認不要。正本・謄本をそのまま使用できる |
| 秘密証書遺言 | 必要 | 封印されているため家庭裁判所での開封・検認が必要 |
見つかった遺言書が…
①「公正証書遺言」または「法務局保管の遺言書」→ 検認不要。そのまま手続きへ
②それ以外の手書き遺言・秘密証書遺言 → 開封せず家庭裁判所へ
【検認が必要】自筆証書遺言の手続きの流れ
自宅・金庫・貸金庫等で自筆証書遺言を発見した場合の手順を解説します。封が開いていても・開いていなくても、まず家庭裁判所への申立てが必要です。
検認を受けても、遺言書の内容が有効とは限りません。検認はあくまで「この遺言書がこの状態で存在した」という事実を公的に証明する手続きです。遺言の有効・無効は、内容や作成方式の問題として別途判断されます。
【検認が不要】公正証書遺言の場合の進め方
公正証書遺言は検認不要で、すぐに相続手続きに使用できます。ただし、正本(または謄本)が手元にない場合の対処法を知っておく必要があります。
| STEP1 | 手元の公正証書遺言(正本または謄本)の内容を確認する。「遺言公正証書」の表紙・公証役場の公印・証人の署名等を確認する |
|---|---|
| STEP2 | 遺言書の内容に従って遺産を承継する相続人・受遺者が確定したら、各種相続手続きを開始する(銀行・法務局等への提出) |
| 正本がない場合 | 作成した公証役場(または最寄りの公証役場)に「遺言書の謄本交付申請」を行う。被相続人の死亡が確認できる書類・相続人の本人確認書類が必要 |
| 公証役場が不明な場合 | 全国の公証役場で検索できる「公正証書遺言検索システム」を利用する。最寄りの公証役場に「遺言検索の申請」をすれば、全国のデータベースから照会してもらえる |
手元の正本を紛失しても、公証役場には原本が保管されているため、再度謄本を取得することができます。保管期間は作成から20年以上(公証人法施行規則により順次延長)です。
【検認が不要】法務局保管の自筆証書遺言の場合
令和2年(2020年)7月から始まった「自筆証書遺言書保管制度」を利用した場合、法務局に原本が保管されており、検認が不要になります。
| 保管の有無を確認 | 相続人・受遺者等が最寄りの法務局(遺言書保管所)で「遺言書保管事実証明書」の交付を申請する。保管されている場合は事実証明書が交付される |
|---|---|
| 遺言書情報証明書の取得 | 遺言書が保管されていた場合、「遺言書情報証明書」を取得する。この証明書が公正証書遺言の謄本と同等の効力を持ち、各種手続きで使用できる |
| 通知制度 | 被相続人が死亡した場合、法務局からあらかじめ指定した相続人へ遺言書保管の事実が通知される制度がある(通知先を事前登録している場合のみ) |
自筆証書遺言の手間(検認)を省きたい場合、生前に法務局保管制度を利用していれば死後の手続きが格段に楽になります。遺言書作成後に法務局への保管申請を検討することをおすすめします。
検認申立てに必要な書類と費用
自筆証書遺言の検認申立てには、以下の書類と費用が必要です。
申立てに必要な書類
- 検認申立書(家庭裁判所の所定書式)
- 被相続人の出生〜死亡まで連続した戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本(現在のもの)
- 遺言書の原本(封印がある場合は開封せずそのまま提出)
費用の目安
| 費用の種類 | 金額 |
|---|---|
| 申立手数料(収入印紙) | 800円(遺言書1通につき) |
| 連絡用郵便切手 | 裁判所が指定する額(数百〜数千円程度) |
| 検認済証明書の申請(収入印紙) | 150円(遺言書1通につき) |
| 戸籍謄本の取得費用 | 1通450〜750円(通数は家族構成による) |
| 専門家(行政書士等)への依頼費用 | 3〜10万円程度(書類収集・申立書作成の代行) |
検認の申立て先は被相続人が最後に住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所です。申立人の住所地や遺言書を発見した場所ではありませんので注意してください。
検認後の遺言書の使い方
検認が完了した(または検認不要の)遺言書は、各種相続手続きの根拠書類として提出します。遺言書がある場合、相続人全員の合意による遺産分割協議書は原則不要になります。
| 提出先・手続き | 必要な書類の形式 |
|---|---|
| 銀行・金融機関 (預金解約・名義変更) |
検認済みの自筆証書遺言+検認済証明書(または公正証書遺言の正本・謄本)。銀行所定の相続手続依頼書も別途必要な場合あり |
| 法務局 (不動産の相続登記) |
遺言書の原本(または謄本)+検認済証明書(自筆の場合)。登記申請書に添付して提出 |
| 税務署 (相続税申告) |
遺言書のコピー(または謄本)を申告書に添付 |
| 証券会社 (有価証券の名義変更) |
各社の手続きに従う。遺言書の謄本・検認済証明書の提出を求められることが多い |
検認後の自筆証書遺言の原本は申立人に返還されます。原本は一つしかなく、複製・コピーでは原則として手続きできません。提出を求められた場合はコピーでよいか事前に確認し、原本は常に手元で管理してください。
遺言の内容に不満がある場合:遺留分の話
遺言書の内容が「全財産を特定の一人に」「自分(相続人)への配分がゼロ」という場合でも、法律上は「遺留分」という最低限の取得割合が保障されています。
法定相続人(配偶者・子・父母等)が相続財産に対して最低限持つことができる権利。遺言書の内容がどうであっても、遺留分を侵害されたと感じる相続人は「遺留分侵害額請求」を行使できます。
遺留分の割合(例):
・配偶者のみが相続人の場合:遺産の1/2
・配偶者+子がいる場合:配偶者1/4・子全体で1/4
・子のみの場合:遺産の1/2を子全員で均等に
請求期限:遺留分を侵害する遺贈があったことを知ってから1年以内(または相続開始から10年以内)に請求しなければ権利が消滅します。
遺留分の計算・請求は法的な専門知識が必要な手続きです。期限もあるため、遺言書の内容に遺留分の侵害があると感じた場合は早めに弁護士または行政書士に相談してください。
遺言書が「無効」になるケースとは
検認を経た遺言書でも、作成上の要件を満たしていなければ法的に無効になります。代表的な無効ケースを把握しておきましょう。
| 無効になる主な理由 | 内容 |
|---|---|
| 全文が自書されていない | 自筆証書遺言はパソコン・ワープロで作成した部分が含まれると無効(財産目録を除く) |
| 日付の記載がない・不明確 | 「〇年〇月吉日」等、特定できない日付の記載は無効とされる場合がある |
| 署名・押印がない | 遺言者本人の署名または押印が欠けている場合は無効 |
| 遺言時の意思能力がなかった | 遺言作成時に認知症等で判断能力がなかったと認められる場合、無効となる可能性がある |
| 脅迫・詐欺による遺言 | 強制・詐欺によって書かされた遺言は取り消しが可能 |
| 公正証書遺言の方式違反 | 証人が欠格者(相続人・受遺者・未成年等)であった場合は無効 |
遺言書が無効かどうかは法律の専門的な判断が必要です。「これは無効だ」と自己判断して遺言書を無視した場合、後日問題になる可能性があります。疑問がある場合は行政書士・弁護士に相談してから行動してください。
よくある疑問(Q&A)
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