【徹底解説】遺言信託とは?しくみ・費用・注意点をわかりやすく解説|遺言書との違いも徹底比較

この記事の結論

「遺言信託」とは信託銀行・信託会社が遺言書の作成・保管・執行を一括してサポートするサービスのことで、家族信託とは全くの別物です。費用は契約時100万円前後+執行報酬(遺産の1〜1.5%程度)と高額になる傾向があります。最大の注意点は「遺言信託=財産管理が続く」という誤解で、実際には遺言書の執行が完了した時点でサービスが終了します。じっくり検討したい方・費用を抑えたい方には、行政書士・司法書士による公正証書遺言の作成も有力な選択肢です。

「遺言信託」とは何か:名称の紛らわしさから整理する

「遺言信託」という言葉は2つの全く異なる意味で使われており、混同が非常に多いため、まず整理することが重要です。

📋 「遺言信託」という言葉の2つの意味
①信託銀行等の
「遺言信託サービス」
(本記事のテーマ)
信託銀行・信託会社が提供する「遺言書の作成支援・保管・執行を一括して行う商品(サービス名)」のこと。「信託」という言葉が含まれているが、法律上の「信託」(財産の委託)ではなく、あくまで遺言書に関するサービスパッケージ
②法律上の
「遺言による信託」
(信託法3条)
遺言書の中で信託を設定する行為。「遺言者の死後に財産を信託として運用する」という法律上の制度。実務ではほとんど使われない(家族信託は生前契約が主流)
⚠️ 「遺言信託」は「家族信託」とは全く別のサービスです。
「遺言信託を契約すれば親の認知症後も財産管理が続く」という誤解が非常に多いです。遺言信託は遺言書の作成・保管・執行のサービスであり、財産の継続的な管理機能はありません。認知症対策・生前の財産管理が必要な場合は「家族信託」または「任意後見」を検討してください。

遺言信託の3つのサービス内容

信託銀行等が提供する「遺言信託サービス」は、大きく①遺言書の作成支援、②遺言書の保管、③遺言の執行の3つで構成されています。

📋 遺言信託の3つのサービス内容
①遺言書の
作成支援
担当者が相談に乗りながら遺言書の内容を決め、公証役場との連携で公正証書遺言を作成する。遺言書の文言の確認・法的な有効性のチェックが含まれる。ただし遺言書の作成自体は公証人が行う(信託銀行は法律上遺言書を作成できない)
②遺言書の
保管
作成した遺言書(または正本・謄本)を信託銀行の金庫で保管する。紛失・改ざんのリスクを防ぐことができる。定期的に内容確認の連絡が来る場合もある。公正証書遺言の原本は公証役場に保管されるため、信託銀行が保管するのは謄本等
③遺言の
執行
遺言者が亡くなった後、信託銀行が「遺言執行者」として遺言書の内容を実現する手続きを行う。相続人・受遺者への通知、財産の調査・目録作成、預金の払戻し、不動産の名義変更の手配、相続税申告のサポート(税理士への橋渡し)等
💡 公正証書遺言の原本は公証役場が保管します:
遺言信託を利用した場合でも、公正証書遺言の原本は公証役場が保管します。信託銀行が保管するのは謄本・正本等です。公正証書遺言は公証役場のデータベース(遺言検索システム)に登録されるため、遺言信託を利用しなくても相続人が死後に検索・取得できます。

遺言信託の費用:契約時・保管・執行報酬の全体像

遺言信託の費用は契約時の手数料・保管料・執行報酬の3段階で発生します。金融機関によって料金体系が異なります。

費用の種類 目安の金額 内容
契約時手数料
(作成・コンサル)
30〜100万円程度 遺言書作成支援のコンサルティング費用。金融機関・財産の複雑さによって大きく変わる。別途公正証書作成の公証人手数料(数万円程度)が必要
保管料 年間5,000〜1万円程度 遺言書(謄本等)の保管費用。毎年継続的に発生する。保管期間が長くなるほど累積コストが増える
執行報酬 遺産総額の1〜1.5%程度
(最低報酬額あり)
死亡後に信託銀行が遺言執行者として手続きを行う報酬。遺産が多いほど金額が大きくなる。最低報酬額(100万円程度)が設定されている場合が多い
変更・解除手数料 数万〜数十万円 遺言書の内容を変更する場合や契約を解除する場合に発生する手数料
費用の総額イメージ:

遺産総額1億円・保管期間20年の場合の目安:
・契約時手数料:約50万円
・保管料:約1万円×20年=20万円
・執行報酬:1億円×1%=約100万円
・公証人手数料:約10万円
合計:約180万円程度

※ 金融機関・財産の内容・手続きの複雑さによって大きく異なります。必ず事前に見積もりを取ってください。

遺言信託 vs 公正証書遺言(専門家作成)の比較

信託銀行の「遺言信託サービス」と、行政書士・司法書士・弁護士が作成支援する「公正証書遺言」を比較します。

比較項目 遺言信託
(信託銀行)
公正証書遺言
(行政書士等+公証役場)
作成費用 30〜100万円程度(コンサル含む) 10〜30万円程度(専門家報酬+公証人手数料)
遺言書の保管 信託銀行が保管(謄本等) 公証役場が原本を保管。専門家・本人が謄本を保管
執行報酬 遺産の1〜1.5%(高額になりやすい) 指定した行政書士・司法書士等が執行。比較的安価
内容変更の
柔軟性
変更に手数料が発生・手続きが煩雑な場合がある 比較的柔軟に対応可能
担当者との
継続的な関係
担当者が変わりやすい(異動・退職) 専任の専門家と長期的な関係を築ける
財産の
多様な相談
金融資産に強い・不動産等は提携先へ 不動産・事業承継・家族信託等まで幅広く対応
ブランドの
安心感
大手金融機関の信頼感がある 事務所・個人によって差がある
費用を抑えたい・内容を柔軟に決めたい方には専門家作成がおすすめ:
行政書士・司法書士・弁護士が遺言書の作成を支援し、専門家自身を遺言執行者に指定することで、信託銀行の遺言信託と同等の安心感をより低コストで実現できます。遺産額が大きくなるほど執行報酬の差が顕著になります。

遺言信託 vs 家族信託:混同しやすい2つの違い

「遺言信託」と「家族信託」は名前が似ているため混同されやすいですが、目的・機能・タイミングが全く異なります。

📋 遺言信託 vs 家族信託の根本的な違い
遺言信託
(信託銀行のサービス)
家族信託
主な目的 遺言書の作成・保管・死後の執行 生前からの財産管理・認知症対策・柔軟な資産承継
効力の発生 死亡後(遺言の効力は死後) 契約締結後すぐに効力発生(生前から有効)
認知症後の
財産管理
できない(遺言信託は生前の管理機能なし) できる(受託者が継続して管理)
死後の
財産管理継続
執行完了で終了 受益者が死亡するまで継続管理が可能
費用 契約時手数料+執行報酬(遺産の1〜1.5%) 契約書作成費用(30〜80万円程度)。継続的な管理コストは受託者報酬のみ
向いている人 遺言書の執行を確実にしたい・信託銀行に任せたい方 認知症対策が必要・障害のある子がいる・複雑な財産承継を設計したい方
「遺言信託を契約したから認知症になっても大丈夫」は完全な誤解です。
遺言信託は「死後の遺言執行」のサービスです。認知症になった後の財産管理・口座凍結対策には、家族信託または任意後見契約が必要です。両者は補完関係にあるため、目的に応じて組み合わせることを検討してください。

遺言信託のメリット:どんな人に向いているか

遺言信託が特に有効なのは以下のような状況・ニーズがある場合です。

  • 遺言書の紛失・改ざん・隠蔽を防ぎたい:信託銀行の金庫で保管されるため、相続人による隠蔽・改ざんのリスクを大幅に低減できる
  • 死後の手続きを全て任せたい:遺言執行者として信託銀行が全ての手続きを代行するため、相続人・受遺者の負担が最小化される
  • 相続人が遠方・高齢・多忙で手続きを担えない:プロが執行するため相続人が書類の収集・金融機関への対応を行わなくて済む
  • 大手金融機関の信頼性・継続性を重視する:個人の専門家と異なり、金融機関は事業継続性が高い(担当者が変わっても組織として対応する)
  • 金融資産(預金・投資信託・株式等)が中心で不動産が少ない場合
  • 専門家への依頼に抵抗がある・銀行窓口での相談が安心という方

遺言信託の注意点・デメリット

遺言信託には費用・柔軟性・機能面での注意点があります。契約前に必ず把握してください。

⚠️ 遺言信託の主な注意点
費用が高額 契約時手数料+執行報酬を合計すると100〜200万円以上になることが多い。専門家(行政書士・司法書士)への依頼と比べて高くなりやすい
執行報酬が
遺産連動型
遺産が多いほど執行報酬も増える。遺産総額3億円なら執行報酬だけで300〜450万円になる場合がある
内容変更に
コストがかかる
遺言書の内容を変更するたびに変更手数料が発生する。長期にわたって状況の変化に対応するコストが累積する
担当者が変わる 銀行員は数年で異動するため、最初の担当者が執行時にいないことが多い。引継ぎの質にばらつきが生じることがある
生前の財産管理
機能はない
繰り返しになりますが、遺言信託は死後の執行に特化したサービスであり、認知症対策・生前の財産管理には対応していない
不動産対応が
限定的
不動産の名義変更登記は司法書士が行うため、信託銀行が直接対応できない部分が多い。提携する司法書士への依頼が別途必要になることがある

遺言信託の流れ:契約から執行完了まで

📋 遺言信託のステップ
STEP1
相談・財産の整理
信託銀行の窓口またはオンラインで相談。現在の財産状況・家族構成・遺言の希望内容を整理する
STEP2
遺言書の内容確認・
作成支援
担当者と遺言書の内容を詰める。公証役場と連携して公正証書遺言を作成する。法律上の問題がないか確認
STEP3
契約・保管開始
遺言信託契約を締結。遺言書(謄本等)を信託銀行が保管する。以降は年間保管料が発生
STEP4
(生前)定期確認
数年に一度、担当者から内容確認の連絡が来る場合がある。家族構成・財産状況に変化があれば遺言書の変更を検討する
STEP5
死亡の連絡・
執行開始
遺言者が亡くなったら相続人から信託銀行に連絡する。信託銀行が遺言執行者として手続きを開始する
STEP6
財産調査・
目録作成
相続財産の調査・目録作成。相続人・受遺者への遺言内容の通知
STEP7
執行手続き
預金の払戻し・解約、不動産の名義変更(司法書士への依頼)、株式の名義変更等。相続税申告が必要な場合は提携税理士を紹介
STEP8
執行完了・
サービス終了
全ての執行手続きが完了した時点で遺言信託サービスが終了する。執行報酬が清算される

遺言書の内容を変更したい場合の手続き

遺言信託の契約後に「遺言書の内容を変更したい」という場合の手続きを確認しておきましょう。

変更の主な手段:

「撤回遺言」の作成:新しい遺言書を作成することで以前の遺言書の全部または一部を撤回できる(民法1022条)。遺言信託の担当者に「変更したい」と相談すると手続きを案内してもらえる

「一部変更の遺言書」の追加:変更したい部分だけを新たな遺言書に書く方法。ただし内容が錯綜して解釈の混乱が生じるリスクがある

遺言信託契約の解除:信託銀行との契約を解除して、別の専門家(行政書士等)と一から作り直す方法

⚠️ 変更のたびに手数料が発生します。変更頻度が多い場合は累積コストに注意してください。また変更後の新遺言書が古い遺言書を確実に撤回するよう、文言を明確にしておくことが重要です。

よくある疑問(Q&A)

Q. 遺言信託を契約しましたが、その後認知症になりました。財産管理はどうなりますか?
遺言信託には生前の財産管理機能がないため、認知症後の財産管理は別途対応が必要です。口座が事実上凍結状態になる前に、家族信託または任意後見契約を締結することが最善策ですが、認知症が進行した後は新たな契約締結が難しくなります。現時点での判断能力の状況を確認した上で、早急に行政書士・司法書士に相談してください。
Q. 遺言信託と公正証書遺言は別物ですか?どちらが優れていますか?
遺言信託は「公正証書遺言の作成支援+保管+執行のサービスパッケージ」であり、遺言書の種類ではありません。遺言信託で作成される遺言書も「公正証書遺言」です。優劣ではなく「誰に作成・執行を依頼するか」の選択です。信託銀行に依頼するのが遺言信託サービス、行政書士・司法書士・弁護士に依頼するのが専門家作成の公正証書遺言です。費用・柔軟性・専門性を比較して選んでください。
Q. 遺言信託の執行が始まった後、相続人が内容に反対しています。どうなりますか?
有効な公正証書遺言がある場合、遺言執行者(信託銀行)はその内容を執行する権限と義務があります。相続人が妨害行為をした場合は民法1013条違反として法的に対抗できます。ただし遺言の内容に無効原因(遺言能力の欠如・偽造等)があると主張する相続人が訴訟を提起した場合は、裁判の結果次第では執行が止まることもあります。紛争が生じた場合は信託銀行が提携する弁護士と連携して対応することになります。
Q. 遺言信託の費用と専門家への依頼費用、どちらが安いですか?
遺産の規模・内容によって異なりますが、専門家(行政書士・司法書士等)への依頼の方が総コストが安くなることが多いです。特に遺産総額が大きい場合は執行報酬の差(遺産の1〜1.5% vs 固定額)が顕著になります。ただし信託銀行の遺言信託にはブランド・継続性・担当窓口の一本化というメリットがあります。複数の選択肢から見積もりを取り比較することをおすすめします。

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