【専門家が解説】遺産分割協議書はやり直せる?条件・手続き・注意点をわかりやすく解説

【目次】

  1. 遺産分割協議書はやり直しできるのか

  2. やり直しが認められる代表的なケース

  3. やり直しができないケース

  4. やり直しのために必要な手続き

  5. すでに名義変更した財産はどうなる?

  6. 税金への影響(相続税・贈与税)

  7. トラブルを防ぐためのポイント

  8. まとめ

  9. お問い合わせ


1|遺産分割協議書はやり直しできるのか

結論として、
遺産分割協議書は原則として“やり直し可能”です。

相続人全員が合意すれば、
すでに作成済みの遺産分割協議書を“撤回”し、新たに協議書を作り直すことができます。

ただし、

  • すでに財産の名義変更が終わっている

  • 取得した本人が第三者に売却してしまった

  • 税金の時効が迫っている

など、状況によってはやり直しに制限が生じるため、慎重な判断が求められます。


2|やり直しが認められる代表的なケース

(1)重要な財産が漏れていた

相続財産の中に、
・古い通帳
・タンス預金
・忘れていた不動産
などの“未発見の財産”があると、協議書のやり直しが必要です。

(2)内容に誤りがあった

  • 財産額の記載ミス

  • 名義の誤り

  • 表現の不備
    などが見つかった場合は、修正目的で再作成します。

(3)相続人の合意内容を変更したい

「実は不動産より預金を多く欲しい」
「介護していた人への分配割合を増やしたい」
など、家族間の状況の変化により見直すケースも多く見られます。

(4)相続人の負担を調整したい

税金、介護負担、借金の返済など、
状況に応じて配分を変更することがあります。


3|やり直しができないケース

以下のような場合は注意が必要です。

● 協議書に基づき取得した財産が第三者に売却された

→ すでに利益を得た後で巻き戻すことは事実上困難。

● 相続人の一部が反対している

→ 全員の同意がなければやり直しは不可。

● 遺産の範囲や相続人が争っている

→ 別途“調停・審判”で解決が必要。

● 税金の申告期限が過ぎてしまった

→ やり直しはできても税務上の修正に制限がある。


4|やり直しのために必要な手続き

① すべての相続人で協議

→ 新しい案をまとめる

② 新しい遺産分割協議書を作成

→ 全員の署名・押印が必要(実印が望ましい)

③ 名義変更の訂正

  • 不動産:法務局で再登記

  • 預金:金融機関で再手続き

  • 株式:証券会社で変更届

④ 税務署への修正申告

相続税額が変わる場合は“修正申告”が必要。


5|すでに名義変更した財産はどうなる?

結論:
名義を戻して再変更することは可能。ただし手続きは複雑。

● 不動産

→ 法務局で再度登記申請
→ 登記費用が発生

● 預金

→ 新協議書を持って金融機関で名義変更
→ 金融機関によっては審査が必要

● 株式

→ 証券会社で再手続き

いずれも「なぜやり直すのか」を合理的に説明する資料が求められることがあります。


6|税金への影響(相続税・贈与税)

遺産分割のやり直しで最も重要なのが“税務”です。

● 相続税の修正申告が必要な場合

初回申告と内容が異なれば、修正申告や更正の請求が必要です。

● 贈与税が発生する可能性あり

協議書やり直しによって、
「相続ではなく贈与」と扱われるリスクがあります。

例:
最初の協議書でAが不動産を取得 →
やり直し後にBが取得する

これは贈与と判断され、
贈与税が課税される可能性があるため要注意。

税務判断は非常に複雑であり、
専門家のサポートが不可欠です。


7|トラブルを防ぐためのポイント

  • 相続人全員の合意を文書で残す

  • やり直しの理由を明確にしておく

  • 名義変更前・申告前であれば早めに対応

  • 税務リスク(贈与税)を必ず確認

  • 家庭裁判所の調停を視野に入れる

  • 第三者(専門家)を入れて冷静に進める


8|まとめ

遺産分割協議書は「作ったら終わり」ではありません。

家族の状況や財産の内容は変わるため、
全員が合意すればいつでもやり直し可能です。

ただし、

  • 名義変更済みの財産

  • 税務上の扱い

  • 贈与と判断されるリスク

  • 相続人の対立

といった問題もあるため、
慎重な検討と専門家のサポートが欠かせません。

「やり直したい」と思ったら、
まずは相続全体を整理し、法務と税務の両面から判断することが重要です。


【お問い合わせ】

障害を持つ子どもの親亡き後を支える会
〒103-0013
東京都中央区日本橋人形町3-3-5 6階605

〒231-0032
神奈川県横浜市中区不老町1-6-9 第一HBビル8階A
TEL:0120-905-336

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