【徹底解説】就労支援とは?親に何かあったときでも障害のある子が生活できる仕組みをわかりやすく解説

この記事の結論

障害のある子の「親なき後」を支える柱の一つが「就労支援」です。働くことで得た収入・福祉的就労での工賃・障害年金・生活保護等を組み合わせることで、親がいなくなった後も本人が生活を続けられる経済的な基盤を作ることができます。ただし就労支援には種類があり、就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型・就労定着支援でそれぞれ対象・収入・目的が全く異なります。本人の障害の状態と「どんな生活を送りたいか」に合ったサービスを選ぶことが最も重要です。

「就労支援」とは何か:親なき後との関係で考える

就労支援とは障害のある方が「働く」ことを通じて社会参加・経済的自立を実現するための制度・サービスの総称です。障害者総合支援法に基づく「訓練等給付」の中に位置付けられており、通所受給者証を取得することで利用できます。

「親なき後」という観点から就労支援を考えると、「本人の収入をどう確保するか」という問いに直結します。親の収入・親の援助がなくなった後も、本人が生活を続けていくための収入源として就労支援は重要な役割を担います。

📋 「親なき後」の生活を支える収入源の柱
①就労による収入 一般就労(企業等)または福祉的就労(就労継続支援A型・B型等)による賃金・工賃。就労支援サービスを利用することで安定的に働き続けやすくなる
②障害年金 障害基礎年金(国民年金から)または障害厚生年金(厚生年金から)。障害等級によって受給できる金額が変わる。就労しながら受給できる場合がある(就労の状況による)
③生活保護 他の収入・資産が最低生活費を下回る場合に活用できる最後のセーフティネット。就労収入・障害年金を受給した上でも不足分を補填できる
④親からの
財産(相続・信託)
遺産相続・家族信託を通じて親の財産を活用する。①〜③だけでは不足する部分を親の生前対策で補うことが「親なき後対策」の核心
💡 この記事でわかること:
就労支援の4種類のサービスの違い、A型・B型の収入への影響、一般就労への移行の流れ、収入の全体像(就労+年金+生活保護の組み合わせ)、住まいとの組み合わせ、親が元気なうちにやっておくべき準備、相続・生前対策との連携まで解説しています。

障害のある方が働くための4つの就労支援サービス

障害者総合支援法に基づく就労系の障害福祉サービスは4種類あります。それぞれ対象・目的・収入が大きく異なります。

🏢 就労移行支援一般就労を目指す
対象:65歳未満で一般就労を希望する障害者
期間:原則2年間(最大3年まで延長可能)
収入:利用中は賃金なし(訓練のため)
目的:就職活動・職場実習・ビジネスマナー等の訓練を行い一般就労を目指す
💼 就労継続支援A型雇用契約あり
対象:一般就労が難しいが雇用契約を結べる障害者
期間:制限なし
収入:最低賃金以上の給与(雇用契約による)
目的:雇用関係の中で働く機会を提供する
🌱 就労継続支援B型雇用契約なし
対象:A型での就労や一般就労が困難な障害者
期間:制限なし
収入:工賃(最低賃金以下の場合もある)
目的:自分のペースで働く場を提供。社会参加・生活リズムの維持が主目的
🤝 就労定着支援就職後のフォロー
対象:一般就労した障害者(就職後6か月経過後から)
期間:最大3年間
収入:一般就労の給与(支援は就職後の定着のため)
目的:職場環境への適応・職場と本人の間の調整を支援する
⚠️ サービスを使うには「サービス等利用計画」と「受給者証」の取得が必要です。
就労支援サービスの利用には市区町村への申請・相談支援専門員による計画作成・受給者証の交付が必要です。申請から利用開始まで1〜2か月かかる場合があるため、早めに市区町村の障害福祉窓口または基幹相談支援センターに相談してください。

就労継続支援A型とB型:収入・生活への影響の違い

「親なき後」の生活収入という観点で最も重要なのが、就労継続支援A型とB型の収入の違いです。

📋 A型 vs B型:収入・雇用・生活への影響の比較
比較項目 A型(雇用契約あり) B型(雇用契約なし)
収入の種類 給与(雇用保険・社会保険が適用される場合がある) 工賃(雇用ではなく作業の報酬)
収入の水準
(全国平均・2024年度目安)
月額8〜10万円程度(最低賃金×稼働時間が下限) 月額1〜2万円程度(平均約1.5万円。事業所によって大きく異なる)
障害年金との
併給
A型の給与+障害年金の両方を受け取れる。ただし収入額によって生活保護の適否が変わる B型の工賃+障害年金の両方を受け取れる。工賃が少ないため障害年金・生活保護との組み合わせが現実的
働く時間・
ペース
所定の勤務時間がある(例:週20〜30時間程度)。欠勤・遅刻は給与に影響する 自分のペースで参加できる。体調が悪い日は休んでよい。最も負担が少ない
向いている人 ある程度体調が安定している・毎日通える・雇用契約の責任感を持てる方 体調の波がある・毎日通うのが難しい・まず「社会とつながる場」が必要な方

収入イメージ:障害年金と就労収入の組み合わせ(月額概算)

A型給与+障害基礎年金(2級)約18〜20万円
A型給与10万+年金6.8万〜=18万円〜
B型工賃+障害基礎年金(2級)約8〜10万円
B型工賃1.5万+年金6.8万〜=8万円〜
B型工賃+障害基礎年金+生活保護(不足分)最低生活費相当
生活保護で最低生活費(都市部で約13〜14万円程度)まで補填

※ 金額はあくまで概算です。障害年金額・地域・生活保護の最低生活費は異なります。実際は市区町村・相談支援員にご確認ください。


一般就労を目指す:就労移行支援・就労定着支援

障害のある方が一般企業(民間企業・公的機関等)に就職することを「一般就労」と呼びます。一般就労では最低賃金以上の給与が得られるため、収入の観点では最も安定しやすい形態です。

📋 就労移行支援から一般就労までの流れ
STEP1
就労移行支援
の利用開始
受給者証を取得して就労移行支援事業所に通所。ビジネスマナー・パソコンスキル・職場でのコミュニケーション・体力づくり等を訓練する。原則2年間(最大3年)
STEP2
職場実習
実際の企業で職場実習(インターン)を行い、自分に合った仕事・職場環境を確認する。事業所のスタッフがサポートしてくれる
STEP3
就職活動・採用
ハローワークの障害者専門窓口・求人サイト・事業所の紹介等を通じて就職活動。障害者雇用枠または一般枠での応募ができる。障害者手帳保有者は障害者雇用枠が利用可能
STEP4
就労定着支援
(就職後6か月〜)
就職後に職場定着の課題が生じた場合に就労定着支援員が本人・職場の間を調整する。最大3年間利用可能。「うまくいかなくなったら相談できる人がいる」という安心感が継続就労を支える
一般就労後も「障害年金」は受給できる場合があります:
一般就労して給与を得ていても、障害の状態が継続していれば障害年金を受給できる場合があります。特に精神障害・発達障害の場合は就労状況が等級判定に影響することがあるため、年金事務所または社会保険労務士に確認してください。

「収入」の全体像:就労+障害年金+生活保護の組み合わせ方

「親なき後」の生活を支える収入は複数の制度を組み合わせることで初めて生活できる水準になる場合がほとんどです。

収入源 金額の目安 注意点
障害基礎年金
(1級)
月額約8.5万円(2026年度) 初診日に国民年金加入中の場合。保険料納付要件を満たしていることが条件
障害基礎年金
(2級)
月額約6.8万円(2026年度) 最も多くの方が該当する等級。就労しながら受給できる場合が多い
就労継続支援
A型の給与
月額8〜10万円程度 最低賃金×労働時間が下限。事業所・地域によって異なる
就労継続支援
B型の工賃
月額1〜2万円程度 全国平均は約1.5万円。障害年金・生活保護との併用が前提
生活保護 最低生活費(都市部で月13〜15万円程度)から収入を差し引いた不足分 資産・他の収入で最低生活費を下回る場合に申請できる。障害年金・就労収入と併用可能
💡 「生活保護を受けたくない」という気持ちはわかりますが、権利として活用することが大切:
生活保護は働けない人のためだけの制度ではありません。就労収入や障害年金があっても最低生活費に満たない場合は不足分の支給を受けられる権利があります。「親がいなくなった後に本人が困窮しないよう」生活保護を組み込んだ生活設計を事前に相談支援員・福祉担当者と検討しておくことをおすすめします。

住まいの確保:グループホーム・障害者支援施設との組み合わせ

就労による収入を確保しても、「どこに住むか」が解決しないと「親なき後」の生活は成り立ちません。就労支援と住まいの選択肢を一体的に考えることが重要です。

📋 障害のある方の主な住まいの選択肢
グループホーム
(共同生活援助)
数人の障害のある方が共同生活する住居。世話人・生活支援員が食事・入浴・洗濯等の生活支援を提供する。就労との組み合わせが最も現実的な選択肢の一つ。費用は家賃+食費等で月5〜10万円程度が目安(地域・施設による)
障害者支援施設 重度の障害がある方を対象とした入所施設。24時間支援が受けられる。費用は収入・所得に応じた利用者負担がある
一人暮らし
(ヘルパー活用)
訪問系の障害福祉サービス(居宅介護・重度訪問介護等)を使いながら一人暮らしをする。自立生活援助サービスを組み合わせると定期的な巡回・相談が受けられる
公営住宅への
優先入居
障害者手帳保有者は公営住宅の優先入居制度を使える自治体が多い。家賃が安く設定されているため生活費の圧縮になる
「就労継続支援B型+グループホーム+障害年金+生活保護」が最も現実的な組み合わせの一つ:
重度の知的障害・精神障害のある方の「親なき後」の生活モデルとして、B型の工賃+障害年金でグループホームの費用を賄い、不足分は生活保護で補う形が実務上よく見られます。この組み合わせが成立するかどうかを相談支援専門員と一緒に試算しておくことが親なき後対策の第一歩です。

親が元気なうちにやっておくべき就労準備

就労支援サービスへの移行は親が元気なうちに始めておくことが理想的です。親がいる間に生活基盤を固めておくことで、親なき後のリスクを大幅に減らせます。

  • 現在通っている支援機関(放課後等デイ・就労移行等)の担当者と「将来の就労の方向性」を話し合う:どのサービスが本人に合っているかを早めに見極める
  • 就労継続支援B型・A型の体験利用:本人が「どんな作業が好きか・どのくらい通えるか」を実際に体験して確認する
  • 障害年金の申請準備:初診日・診断書・年金保険料の納付状況を整理する。20歳になった時点で障害基礎年金の申請ができる(20歳前障害の場合)
  • グループホームの見学・入居申込:グループホームは空き待ちになることが多い。早めに見学・申込みを行う
  • 相談支援専門員(ケアマネジャーに相当)との関係構築:サービス等利用計画の作成・更新・将来の見通しについて継続的に相談できる専門家を確保する
  • 「本人が自分でできること」を増やす生活訓練(自立訓練)の活用も検討する
「学校を卒業したら考える」では遅いことがあります。
就労移行支援は年齢上限(65歳未満)がありますが、グループホームの空き待ちは数年かかる地域もあります。特に重度の障害がある場合は早めの準備が必要です。「まだ先の話」ではなく、今すぐ相談支援センターに相談することをおすすめします。

就労支援と相続・生前対策の連携

「就労支援で収入を確保する」と「相続・生前対策で財産を残す」は車の両輪として組み合わせることで初めて「親なき後」の生活が安定します。

📋 就労支援と相続・生前対策の役割分担
就労支援が
担う部分
・毎月の生活費(収入)の確保
社会とのつながり・生活リズムの維持
・障害年金・生活保護との組み合わせによる経済的安定
生前対策
(遺言書・信託等)
が担う部分
・就労収入・障害年金では賄えない部分を親の財産で補う
・グループホームの一時金・緊急費用の確保
家族信託で継続的な財産管理を担保する(Section 7参照)
成年後見が
担う部分
・就労支援サービスの契約(本人に判断能力がない場合)
・グループホームの入居契約
金融機関での手続き・財産管理の法的代理
「親なき後」の収入シミュレーション例(知的障害・療育手帳A・B型利用の場合):

月々の収入:
 ・就労継続支援B型 工賃:約1.5万円
 ・障害基礎年金2級:約6.8万円
 ・合計収入:約8.3万円

月々の支出(グループホーム居住):
 ・グループホーム費用(家賃・食費等):約7〜9万円
 ・日用品・医療費等:約1〜2万円
 ・合計支出:約8〜11万円

不足分の対応:
 ・生活保護で不足分を補填(最低生活費まで)
 ・または家族信託から定期的に生活費を支出(親の財産を活用)

よくある疑問(Q&A)

Q. 就労継続支援B型の工賃が少なすぎて生活できないのでは?
B型の工賃だけで生活することは多くの場合難しいですが、障害年金・生活保護との組み合わせで生活できる水準にすることが想定されています。B型の目的は「収入を最大化すること」ではなく「障害のある方が社会とつながりながら生活リズムを保つこと」にあります。収入の不足分は障害年金・生活保護でカバーする設計が標準的です。相談支援専門員と一緒に「月々いくら必要か・どこから確保するか」を試算することをおすすめします。
Q. 就労継続支援を利用しながら障害年金を受給できますか?
原則として就労継続支援を利用しながら障害年金を受給できます。ただし精神障害の場合は就労状況が等級の審査に影響することがあります(「働けているなら状態は改善した」と判断される場合)。知的障害・身体障害の場合は就労の有無が等級に影響しにくいです。更新時期に年金事務所へ診断書を提出する際に就労状況を正確に伝えることが重要です。詳細は社会保険労務士または年金事務所に確認してください。
Q. 親が亡くなった後、就労支援サービスの契約手続きを誰がやってくれますか?
判断能力が不十分な障害のある方については成年後見人が代わりに契約を行います。親が元気なうちに法定後見または任意後見の準備をしておかないと、親が亡くなった後に施設入所・サービス継続の契約ができなくなる事態が生じます。また相談支援専門員が手続きのサポートをしてくれる場合もありますが、法的な契約代理には後見人が必要です。親が元気なうちに「誰が後見人になるか」を決めて準備することをおすすめします。
Q. 就労継続支援事業所を選ぶ際のポイントを教えてください。
以下の点を複数事業所で比較することをおすすめします。①工賃の水準(B型の場合)・給与の水準(A型の場合)、②作業の種類・内容(本人が好きな仕事か)、③スタッフの対応・雰囲気、④通いやすい場所か、⑤医療機関との連携体制、⑥緊急時の対応方法。体験利用(見学・体験日)ができる事業所が多いため、本人と一緒に複数事業所を見学してから決めることをおすすめします。相談支援専門員に事業所のリストを紹介してもらうことから始めてください。

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