相続で必要な「遺産目録」の作り方|テンプレ・書き方・実務で便利な粒度
結論:遺産目録は、「相続財産を一覧化して、相続人全員が同じ地図を持つための表」です。
実務で便利な粒度は、“手続き先が特定できる情報(口座番号・証券会社名・地番等)”まで書くこと。逆に、細かすぎる内訳(家財を全部)までやると挫折しやすいので、目的に合わせて粒度を調整します。
この記事では、相続で必要になる遺産目録を、テンプレ(そのまま使える表)、書き方、失敗しない粒度で分かりやすく解説します。
※遺産目録は法定の統一書式があるわけではありません。提出先(銀行・証券・調停等)がある場合は、求められる形式に合わせてください。
目次
遺産目録は何のため?作ると相続が早くなる3つの理由
遺産目録は「相続人のため」でもあり、「手続きのため」でもあります。作るメリットは大きく3つです。
- 漏れ防止:通帳・証券・保険・不動産を“見える化”して取りこぼしを防ぐ
- 合意形成:遺産分割協議が「感情」ではなく「数字と事実」で進みやすくなる
- 手続き効率:銀行・証券・登記などの宛先が一発で分かり、手続きが速くなる
実務で便利な粒度:どこまで書けば「使える目録」になる?
目録は「細かくしすぎる」と挫折し、「粗すぎる」と役に立ちません。実務で便利な粒度は次の考え方です。
“使える目録”の最低ライン
- 提出先(銀行名・支店・証券会社・保険会社)が特定できる
- 識別番号(口座番号の下4桁、証券口座番号、証券番号、地番など)が書いてある
- 評価額は「目安」でもよいが、基準日(いつ時点か)を入れる
- 負債(ローン・カード・未払費用)があるなら必ず載せる
実務のコツ:口座番号や地番などは全桁を書く必要がない場面もありますが、“同じ銀行に複数口座がある”と混乱するので、識別できる粒度(少なくとも下4桁など)で書くのがおすすめです。
テンプレ:遺産目録(預貯金・証券・不動産・保険・負債)
以下はそのままコピペして使えるテンプレです。最初は「分かるところだけ」埋めて、後から更新して完成させます。
① 預貯金(銀行・ゆうちょ・ネット銀行)
| 区分 | 金融機関 | 支店 | 種別 | 口座識別 | 残高(基準日) | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 預貯金 | ○○銀行 | ○○支店 | 普通/定期 | 口座下4桁:1234 | ○○円(20XX/XX/XX) | 通帳あり/ネット口座 |
② 証券(株・投信・NISA等)
| 区分 | 証券会社 | 口座種別 | 口座識別 | 内容 | 評価額(基準日) | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 証券 | ○○証券 | 特定/一般/NISA | 口座番号:XXXX | 株・投信・外貨建て等 | ○○円(20XX/XX/XX) | 残高報告書あり |
③ 不動産(土地・建物・マンション)
| 区分 | 所在地 | 種類 | 地番/家屋番号 | 持分 | 評価(基準) | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 不動産 | 東京都○○区○○ | 土地/建物 | 地番:○○/家屋番号:○○ | 全部/持分○/○ | 固定資産税評価:○○円(年度) | 登記簿あり/抵当権あり |
④ 保険(生命保険・損害保険)
| 区分 | 会社 | 契約種別 | 証券番号 | 受取人 | 見込額 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 保険 | ○○生命 | 終身/定期/医療 | 番号:XXXX | ○○ | ○○円 | 証券あり/控除証明あり |
⑤ 負債(ローン・カード・未払)
| 区分 | 債権者 | 内容 | 残高(基準日) | 支払状況 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 負債 | ○○銀行 | 住宅ローン | ○○円(20XX/XX/XX) | 引落停止/継続 | 団信の有無確認 |
書き方:カテゴリ別の記入ポイント(例つき)
預貯金
- 銀行名・支店名・口座種別(普通/定期)
- 口座識別(下4桁だけでもよいが、複数口座があるならもう少し)
- 残高は「基準日」をセットで(残高証明の発行日が最も強い)
証券
- 口座種別(特定/一般/NISA)を明記
- 株・投信・外貨建てなど“中身の種類”をざっくり入れる
- 評価額は残高報告書の時点でOK(あとで更新)
不動産
- 住所(住居表示)ではなく、地番・家屋番号が重要
- 持分(共有なら○/○)を必ず入れる
- 固定資産税評価額(年度)を入れておくと便利
保険
- 受取人が誰か(相続財産と別枠になることがある)
- 証券番号が分かると手続きが速い
- 見込額が不明でも「契約あり」を載せる価値が高い
負債
- 借入は“必ず載せる”。負債が漏れると判断が狂う
- 住宅ローンは団信(保険)で残高が消える可能性があるので別メモ
- 未払い(医療・介護・税金等)も「未払」として載せる
評価(いくらで書く?):相続税がある/ないで分けて考える
目録の評価は「目的」で変わります。最初から完璧な評価を狙うより、段階を分けると早いです。
おすすめの段階設計
- 第1段階(整理用):残高や評価は“概算”でもOK。まず漏れを潰す
- 第2段階(協議用):主要財産は証明書(残高証明・評価証明)で固める
- 第3段階(申告用):相続税があるなら税理士等と評価基準で確定
よくある差戻し・揉めポイント:目録が“火種”になる原因
火種になりやすい原因
- 負債を載せていない(後から出てくると不信感が増える)
- 評価の基準日が書いていない(数字が合わない)
- 口座が特定できない(銀行名だけ、支店なし)
- 相続人の誰かが把握していた財産が載っていない
- 家財を細かく書きすぎて更新が止まる(挫折)
実務のコツ:目録は「完璧さ」より「更新できること」が大切です。最初から100点を狙わず、更新前提で作ると継続できます。
作成の手順:遺品整理→照会→確定の流れ
遺産目録は、最初に“遺品から拾う”→“照会して確定する”の順で作ると速いです。
| STEP | やること | アウトプット |
|---|---|---|
| 1 | 重要書類を回収(通帳・保険証券・権利証・郵便物) | 目録の「たたき台」 |
| 2 | 銀行・証券・保険へ照会(残高証明・取引履歴等) | 数字が固まる |
| 3 | 不動産は登記簿・評価証明で確定 | 物件が確定 |
| 4 | 負債(ローン・未払)を洗い出す | 判断材料が揃う |
| 5 | 相続人に共有→不足があれば追記 | 合意形成が進む |
チェックリスト:この項目が埋まれば相続が止まらない
- 預貯金:銀行名・支店・種別・口座識別がある
- 預貯金:残高(基準日)がある(概算でも可)
- 証券:証券会社・口座種別・口座識別がある
- 不動産:所在地+地番/家屋番号+持分がある
- 保険:会社名+証券番号(分かれば)+受取人がある
- 負債:債権者・内容・残高(概算)がある
- 未払:医療・介護・葬儀など、請求予定があるものを「未払」として載せた
- 評価の基準日が書いてある
- 更新履歴(いつ更新したか)が分かる
- 相続人が見られる形で共有できる
Q&A:家財は書く?ネット銀行や暗号資産は?
Q1. 家財道具(家具・家電)まで書く必要がありますか?
多くのケースでは、日常的な家財を全部目録化する必要はありません。
ただし、高額品(貴金属・骨董・高額時計など)がある場合は、「高額品あり」として別枠でまとめると揉めにくくなります。
Q2. ネット銀行はどう書けばいい?
銀行名(サービス名)、口座識別(メール・アプリの手がかり)、引落履歴など、特定できる情報を載せます。ログイン情報そのものは目録に書かず、別管理が安全です。
Q3. 暗号資産(仮想通貨)がありそうです。
取引所名・口座の手がかり(メール・アプリ)をまず特定し、「暗号資産:取引所○○」として目録に載せます。評価や相続税の論点が絡みやすいので、早めの特定が重要です。
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