遺族年金の手続きはいつ・どこで?|必要書類・もらえる人・よくある不支給原因

遺族年金とは何か:2種類の基本を押さえる

遺族年金とは、国民年金または厚生年金に加入していた方が亡くなった場合に、残された家族が受け取れる公的年金です。「遺族年金」という一つの制度があるわけではなく、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、それぞれ受給できる人・金額・要件が異なります。

遺族基礎年金 国民年金に連動する給付
対象者 子のある配偶者、または子
財源 国民年金(全員が加入)
支給期間 子が18歳になる年度末まで
請求先 市区町村または年金事務所
遺族厚生年金 厚生年金に上乗せされる給付
対象者 配偶者・子・父母・孫・祖父母(優先順位あり)
財源 厚生年金(会社員・公務員等)
支給期間 妻は原則一生涯(条件による)
請求先 年金事務所または共済組合
⚠️ 「もらえると思っていなかった」は最大の損失です。
遺族年金は自分から請求しなければ1円も受け取れません。時効は5年です。請求が遅れるほど受け取れる金額が減るため、死亡後できるだけ早く手続きを開始することが重要です。

遺族基礎年金:もらえる人・金額・要件

受給できる人(受給権者)

遺族基礎年金を受け取れるのは、亡くなった方に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」に限られます。

「子」の定義(遺族年金における):
・18歳になった年度の3月31日までにある子
20歳未満で障害等級1級・2級に該当する子(障害がある場合は20歳まで対象)
・婚姻していないこと
⚠️ 「子のない配偶者」は遺族基礎年金を受け取れません。
子どもがいない夫婦の場合、配偶者が亡くなっても遺族基礎年金は支給されません。ただし、遺族厚生年金や寡婦年金が受けられる場合があります(後述)。

受給のための加入要件(保険料納付要件)

亡くなった方について、以下のいずれかを満たす必要があります。

要件 内容
原則要件 保険料の納付済期間+免除期間が、加入期間全体の3分の2以上あること
特例要件 死亡日の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと(2026年3月末まで)
老齢年金の受給資格期間を満たしている場合 保険料の納付済期間等が25年以上ある場合も対象

年金額の目安(2025年度)

子のある配偶者が受け取る場合:
基本額(満額):約816,000円/年(月額約68,000円)
+子の加算:第1子・第2子 各約234,800円、第3子以降 各約78,300円

例:配偶者+子2人の場合
816,000円+234,800円+234,800円=約1,285,600円/年(月額約107,000円)

※金額は毎年度改定されます。最新額は日本年金機構のホームページで確認してください。

遺族厚生年金:もらえる人・金額・要件

受給できる人(優先順位あり)

遺族厚生年金は、優先順位の高い遺族が一人でも存在する場合、下位の遺族は受給できません。

順位 遺族の範囲 主な条件
第1順位 配偶者・子 配偶者(妻)は年齢要件なし。夫は55歳以上(支給開始は60歳から)。子は18歳年度末まで(障害は20歳未満)
第2順位 父母 55歳以上(支給開始は60歳から)
第3順位 18歳年度末まで(障害は20歳未満)
第4順位 祖父母 55歳以上(支給開始は60歳から)
💡 「生計を維持されていた」の判定基準:
前年の年収が850万円未満(または所得が655万5,000円未満)であれば、「生計維持関係あり」と認定されます。専業主婦・パート勤務の配偶者はほぼ該当します。

年金額の目安

遺族厚生年金の額=亡くなった方が受け取るはずだった老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3

・在職中に亡くなった場合は、最低300ヶ月(25年)加入したものとして計算
・正確な金額は年金事務所で「ねんきん定期便」等をもとに試算してもらうことを推奨します

中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算

子のない妻、または末子が18歳を超えて遺族基礎年金が失権した妻が、40〜65歳の間に受け取れる上乗せ給付です。年間約596,000円(2025年度目安)が加算されます。対象になるかどうかは年金事務所に確認しましょう。


寡婦年金・死亡一時金:意外と見落とされる給付

国民年金第1号被保険者(自営業者・フリーランス等)が亡くなった場合、遺族基礎年金を受け取れない遺族に対して用意されている給付が2つあります。どちらか一方しか選べない「選択制」である点に注意が必要です。

給付 対象・内容 金額目安
寡婦年金 10年以上婚姻関係にあった妻(60〜65歳)が対象。亡くなった夫が国民年金に10年以上加入し、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けていないこと 夫が受け取るはずだった老齢基礎年金の4分の3(60〜65歳の間)
死亡一時金 国民年金保険料を36ヶ月以上納付した方が亡くなり、遺族が遺族基礎年金を受けられない場合。生計同一の遺族(配偶者→子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹の順) 納付月数に応じて120,000円〜320,000円
⚠️ 寡婦年金と死亡一時金はどちらか一方しか選べません。
一般的には受給総額が多い方を選ぶのが合理的ですが、60歳時点の健康状態・生活状況によっても判断が変わります。どちらを選ぶかは年金事務所や専門家に相談しましょう。

手続きはいつ・どこで?必要書類の完全リスト

請求の期限と窓口

📋 遺族年金の請求手続き 時効:5年(早めの請求が原則)
遺族基礎年金 住所地の市区町村窓口または年金事務所
遺族厚生年金 住所地を管轄する年金事務所(公務員は共済組合)
両方受給する場合 年金事務所に一括して請求できる(窓口で確認)
開庁時間 平日8:30〜17:15(一部の事務所は月曜日のみ延長)。郵送請求も可能
💡 時効に注意:遺族年金の請求権の時効は5年です。ただし、消滅時効が成立した部分は受け取れなくなるため、死亡後なるべく早く請求することが原則です。

必要書類の完全リスト

提出書類は状況によって異なります。以下は主なものです。事前に年金事務所に確認して漏れなく準備しましょう。

区分 書類名・内容
全員共通 ・年金請求書(窓口で入手または日本年金機構HPからダウンロード)
・亡くなった方の年金手帳(または基礎年金番号通知書)
・亡くなった方と請求者の戸籍謄本(除籍謄本を含む)
・亡くなった方の住民票の除票
・請求者の住民票
・請求者の収入を証明する書類(源泉徴収票・課税証明書等)
・受取先の金融機関の通帳(請求者名義)
・請求者のマイナンバーカードまたは番号確認書類+本人確認書類
子がいる場合 ・子の戸籍謄本(在学証明書または学生証のコピー)
・子が障害を持つ場合:障害の状態に関する医師の診断書
死亡原因が
第三者の場合
・第三者行為事故状況届(交通事故・労災等)
亡くなった方が
会社員だった場合
・雇用保険被保険者証(厚生年金加入期間の確認用)
・在職中の場合は事業主の証明書
スムーズに手続きを進めるコツ:
戸籍謄本は複数枚まとめて取得しておきましょう。年金・銀行・保険・相続登記など、複数の手続きで同時に必要になります。また、「法定相続情報一覧図」を法務局で作成すると、複数窓口での提出が簡略化できます。

よくある不支給・減額の原因

遺族年金は要件を満たさないと支給されない、または途中で停止・失権することがあります。よくある原因を把握し、事前に対策しておきましょう。

不支給になる主な原因

❌ 不支給原因① 保険料の未納期間が多い
死亡した方の保険料納付済期間が加入期間の3分の2未満で、かつ直近1年間にも未納がある場合は支給対象外となります。年金保険料の未納は「自分の老後だけの問題」ではありません。
❌ 不支給原因② 受給権者が再婚した
遺族年金を受け取っている配偶者が再婚すると、受給権は直ちに失権します。事実婚(内縁関係)も再婚と同様に扱われます。再婚後は速やかに届出が必要です。
❌ 不支給原因③ 子が18歳年度末を超えた(障害なし)
遺族基礎年金は末子が18歳になった年度の3月31日をもって失権します。遺族厚生年金は継続する場合がありますが、中高齢寡婦加算の受給可否を確認する必要があります。
❌ 不支給原因④ 受給権者の年収が850万円以上
「生計を維持されていた」と認定されるには、前年の年収が850万円未満であることが要件です。収入が多い配偶者は受給できない場合があります。
❌ 不支給原因⑤ 婚姻関係が事実上消滅していた
長期別居など、生計を同一にしていなかったと認定された場合は、戸籍上の配偶者でも不支給になることがあります。同居実態・生活費の援助状況が確認されます。
❌ 不支給原因⑥ 故意に死亡させた場合
受給権者が故意に被保険者を死亡させた場合、または被保険者が自身の死亡について故意に引き起こした場合は支給されません(法律上の欠格事由)。

受給中に失権・停止となる主な原因

事由 内容
再婚 配偶者が再婚(事実婚を含む)した場合、即日失権
直系血族・
直系姻族以外との
養子縁組
新たな養子縁組が成立した場合(条件あり)
子の年齢到達 子が18歳年度末(障害なし)または20歳(障害あり)に達した場合
子の婚姻 遺族年金を受ける「子」が婚姻した場合
受給権者の死亡 受給権者自身が亡くなった場合

受給中の注意点:届出漏れで返還を求められるケース

遺族年金を受給中は、状況が変わるたびに年金事務所への届出が義務づけられています。届出を怠ると過払いとなり、後日返還を求められます。

  • 再婚したとき:届出が遅れると過払い分の返還義務が発生する
  • 受給権者が死亡したとき:「受給権者死亡届」を速やかに提出する
  • 子の婚姻・年齢到達:「加算額・加給年金額対象者不該当届」を提出する
  • 収入が増えたとき:「生計維持関係の確認」が求められる場合がある
  • 住所が変わったとき:マイナンバーと紐づいていれば届出不要の場合もあるが、念のため確認する
  • 海外に転出するとき:在外公館または年金事務所への届出が必要
⚠️ 年に一度届く「現況届(生存確認)」への対応を忘れずに。
マイナンバーと連携済みの方は原則不要ですが、海外在住の方・連携が取れていない方は現況届の提出が必要です。提出を忘れると支給が一時差し止められます。

よくある疑問(Q&A)

Q. 夫が自営業者でした。遺族年金はもらえますか?
自営業者は国民年金のみ加入のため、遺族基礎年金のみが支給されます(遺族厚生年金はなし)。子のない妻の場合は受給できないため、寡婦年金・死亡一時金の対象となるかを確認しましょう。
Q. 内縁(事実婚)の妻でも請求できますか?
内縁関係(事実婚)でも受給できます。ただし、生計維持関係と内縁関係を証明する書類(住民票・申立書・第三者の証明等)が必要です。年金事務所に相談してください。
Q. 離婚した元配偶者はもらえますか?
原則として離婚した元配偶者には受給権はありません。ただし、離婚後も「事実上の婚姻関係が継続していた」と認定される特殊なケースは除きます。
Q. 自分も老齢年金をもらっています。遺族年金も受け取れますか?
65歳以降は、自分の老齢基礎年金は全額受給しつつ、遺族厚生年金と老齢厚生年金のうち有利な方を選択して受け取る仕組みになります(2007年4月以降の制度改正により選択肢が拡大)。年金事務所での試算を強くおすすめします。
Q. 手続きが遅れたら、さかのぼってもらえますか?
請求が遅れた場合、時効(5年)の範囲内でさかのぼって受給できます。ただし、時効を超えた分は受け取れません。気づいた時点で速やかに請求することが重要です。
Q. 遺族年金に税金はかかりますか?
遺族年金は非課税です。所得税・住民税はかかりません。ただし、健康保険料の算定基礎には含まれる場合があります(自治体によって取り扱いが異なります)。

まとめ:「請求しないと1円ももらえない」

遺族年金は、要件を満たしていても自分から請求しなければ絶対に支給されません。「もらえないだろう」と思い込んで請求しないケースが非常に多く見られます。

今すぐ確認すべき3つのこと:

📌 亡くなった方が国民年金・厚生年金のどちらに加入していたかを確認する
📌 年金手帳・ねんきん定期便・雇用保険被保険者証を手元に集める
📌 住所地の市区町村または年金事務所に早めに連絡して予約を入れる

手続きが複雑で不安な方、他の相続手続きと並行して進めなければならない方は、行政書士・社会保険労務士・FPなどの専門家に相談することで、漏れなく・効率的に手続きを進めることができます。


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