【保存版】障害を持つ子がいる家庭の生前対策|親が元気なうちに必ずやっておきたいこと徹底解説

この記事の結論

障害を持つ子がいる家庭の生前対策は「福祉的な備え」と「法的な備え」の両輪で進めることが必須です。親が元気なうちにやっておくべき優先順位は、①住まいの確保(グループホームの待機申込み)、②遺言書の作成、③家族信託の設定、④成年後見の準備の順です。認知症・急死・入院という「3つのリスク」が訪れる前に動き始めることが、障害のある子の生涯を守る唯一の方法です。

なぜ「今すぐ」動く必要があるのか:3つのリスク

「まだ元気だから大丈夫」——障害のある子を持つ親御さんから最もよく聞く言葉です。しかし以下の3つのリスクは予告なく訪れます。

⚠️ 親が直面する3つのリスク
リスク①
認知症
認知症になると遺言書・家族信託・任意後見契約の全てが締結できなくなります。銀行口座も事実上凍結状態になり、子のために財産を動かすことができなくなります。「もの忘れが増えてきた」と感じた時点で、多くの場合すでに手遅れです
リスク②
急死・突然の
入院
事故・急な病気で突然亡くなった・または長期入院になった場合、準備ができていなければ障害のある子の生活支援が一時的に完全に途絶えます。緊急時の受け入れ先・支援者の情報が整理されていないと関係機関が対応できません
リスク③
体力・判断力の
低下
高齢になるほど外出・書類の作成・専門家との折衝が困難になります。「元気なうちしかできない手続き」が山積していることを認識してください
グループホームの待機は「数年待ち」が当たり前です。申込みは今すぐ。
親が亡くなってからグループホームを探しても、空きがなければ子どもの住まいが確保できません。人気のエリアでは3〜5年待ちも珍しくありません。申込みだけは今すぐ行い、待機期間中に法的な準備を進めることが鉄則です。

【優先①】住まいの確保:グループホームの待機申込み

どんなに完璧な遺言書・家族信託を準備しても、障害のある子の「住む場所」が確保できていなければ意味がありません。住まいの確保が全ての生前対策の前提です。

グループホームとは

グループホーム(共同生活援助)は障害のある方が地域の住居で少人数の共同生活を送りながら日常生活の支援を受けられる施設です。「住む場所」と「サービス」が一体になっているため、親亡き後の住まいとして最も現実的な選択肢です。

・定員:概ね4〜10名程度の小規模施設
・支援内容:食事・家事・金銭管理・医療機関との連絡等
・費用:家賃・食費・光熱費等(障害福祉サービスの自己負担1割+実費)
・申込先:市区町村の障害福祉担当課または直接事業者へ

今すぐやること

  • 障害者生活支援センターまたは基幹相談支援センターに相談する:地域のグループホームの情報・空き状況・申込み方法を教えてもらえる
  • 見学・体験入居を複数か所で行う:子どもの特性に合った施設を見極めるため、元気なうちに一緒に見学しておく
  • 複数のグループホームに待機申込みをする:1か所だけでなく複数に申込んでおくことで空き待ちの期間を短縮できる
  • 施設の生活環境・スタッフの対応・医療機関との連携体制を確認する
  • グループホームが難しい場合の代替選択肢(入所施設・サービス付き高齢者向け住宅等)も検討する
「申し込んでいる」だけで安心感が全く変わります:
待機申込みをしていれば「緊急時には受け入れてもらえる可能性がある」という安心感が生まれます。申込みに費用はかかりません。今日の夕方に電話一本入れることから始めてください。

【優先②】遺言書の作成:財産の行き先を確定させる

遺言書は障害のある子への財産の確実な移転と、遺産分割協議の回避という2つの目的で最も重要な法的手段です。

障害のある子がいる家庭の遺言書で特に重要な記載事項

  • 障害のある子への具体的な配分を明記:「〇〇(障害のある子)に現金〇〇万円と〇〇の預金を相続させる」等、具体的に財産を指定する
  • 遺産分割協議を不要にする:全財産の行き先を遺言書で指定することで、障害のある子が遺産分割協議に参加(成年後見人が必要)する手間を省ける
  • 遺言執行者を専門家(行政書士・司法書士等)に指定:死後の手続きをスムーズに進めるため必ず専門家を指定する
  • 兄弟姉妹への「後見的な役割」のお願いを付言事項に記載:法的効力はないが、弟妹への配慮をお願いする気持ちを伝える
  • 遺留分を意識した配分設計(他の相続人の遺留分を侵害しない)
⚠️ 「子に全財産を相続させる」だけでは不十分な場合があります。
障害のある子に全財産を残しても、判断能力が不十分な場合は財産を適切に管理・使用できません。遺言書と合わせて「家族信託」または「成年後見」の準備が必ず必要です。
💡 公正証書遺言が必須です:
自筆証書遺言は書式ミスで無効になるリスクがあります。障害のある子がいる家庭では必ず公正証書遺言を選んでください。費用は数万〜十数万円程度です。

【優先③】家族信託の設定:財産管理を信頼できる人に委ねる

家族信託は親が元気なうちに財産を信頼できる家族(受託者)に託し、障害のある子(受益者)のために管理・使用してもらう仕組みです。遺言書では実現できない「親の死後も継続する財産管理」を実現できます。

📋 障害のある子のための家族信託の設計例
委託者 親(財産の現在の所有者)
受託者 信頼できる兄弟姉妹(または専門家)。財産を実際に管理・使用する人。法的に財産の名義が移る。報酬を設定できる(親の死後の継続的な負担への対価として)
受益者 障害のある子(財産から生じる利益を受け取る人)。グループホームの費用・生活費・医療費等に充当してもらう
信託財産 現金・預金・不動産等。信託財産は受託者が管理するため、親の認知症後も・死後も途切れなく管理が継続される
終了条件 障害のある子が亡くなった時点で信託を終了する(残余財産の帰属先を指定しておく)

家族信託が遺言書より優れている点

  • 親が認知症になった後も継続:遺言書は死後にしか効力が発生しないが、家族信託は設定後すぐに効力があり認知症後も継続する
  • 死後も途切れなく管理が継続:遺言書は死後の財産分配を決めるが、その後の管理は決められない。家族信託は子の死亡まで管理が続く
  • 二段階・三段階の承継設計ができる:「親死亡→子が受益者→子死亡後は孫へ」という多段階の財産承継が設計できる(遺言書は一段階のみ)
  • 不動産・株式等の積極的な財産活用が成年後見より柔軟にできる
家族信託の設定費用の目安:

・信託契約書の作成(行政書士・司法書士・弁護士):30〜80万円程度
・公正証書化:数万円程度
・不動産を信託財産に含む場合:信託登記費用(5〜15万円程度)
・信託口口座の開設:対応する金融機関に要確認

設定時にまとまった費用がかかりますが、長期的には成年後見の継続コスト(月額2〜6万円)より安くなるケースが多いです。

【優先④】成年後見の準備:遺産分割協議と財産管理の壁を越える

障害のある子の判断能力が不十分な場合、遺産分割協議・金融機関の手続き・各種契約に成年後見人が必要になります。

成年後見が必要になる主な場面

  • 遺産分割協議:判断能力が不十分な相続人は協議に参加できないため、後見人が代理する必要がある
  • 家族信託の受益者変更・解約:信託の内容変更に受益者(障害のある子)の同意が必要な場合
  • 施設入所の契約:グループホームや入所施設の契約を障害のある子自身ができない場合
  • 金融機関での大きな金額の手続き

任意後見 vs 法定後見の選択

📋 任意後見と法定後見の比較
任意後見 法定後見
誰が使うか 障害のある子本人が軽度の判断能力がある場合に、将来の後見人を今のうちに指定しておく 障害のある子の判断能力がすでに不十分な場合に家庭裁判所が後見人を選任する
後見人の選択 本人(親が後見人候補を決める) 裁判所が選任(希望は出せる)
手続き 公正証書で任意後見契約を締結 家庭裁判所への申立て
コスト 契約時費用+監督人報酬(月1〜3万円) 専門家後見人の場合:月2〜6万円が継続
💡 知的障害が重い場合は「法定後見の申立て」を生前に準備する:
重度の知的障害がある場合は任意後見が難しいため、親が元気なうちに後見人候補者(信頼できる兄弟姉妹・専門家)を決めておき、必要になったタイミングで速やかに申立てができるよう書類を事前に準備しておくことをおすすめします。

生命保険の活用:残す財産の確保と非課税枠の活用

生命保険は遺産分割協議を経ずに受取人に直接渡せる・相続税の非課税枠が使えるという2つのメリットから、障害のある子のいる家庭の生前対策として特に有効です。

📋 生命保険の主な活用方法
非課税枠の活用 死亡保険金の非課税枠:500万円 × 法定相続人の数。法定相続人が3人なら1,500万円まで非課税で受け取れる。相続税の節税と合わせて設計する
受取人の指定 障害のある子を受取人に指定することで遺産分割協議なしに直接渡せる。ただし判断能力に問題がある場合は後見人が受け取る形になる。受取人は「兄弟姉妹(後見的な立場の人)」にして、障害のある子のために使ってもらう方法も有効
グループホーム
費用への充当
グループホームの費用(月額5〜15万円程度)を長期にわたって確保するために必要な金額を逆算して保険金額を設定する
信託型生命保険 生命保険会社によっては「信託型の死亡保険金受取サービス」を提供している。保険金を一括で受け取らず、子の生活費として毎月分割払いしてもらえる仕組みもある

兄弟姉妹への「お願い」を法的に残す方法

障害のある子に兄弟姉妹がいる場合、親の死後に兄弟姉妹が弟妹を支援し続けてくれることへの「期待」と「法的な仕組み」を両方準備することが重要です。

「期待」を法的な仕組みに変える方法

  • 家族信託の受託者に指定する:兄弟姉妹を受託者にすることで「管理する法的権限と義務」が生まれる。口約束より確実
  • 任意後見人の候補者に指定する:障害のある子の将来の後見人として兄弟姉妹を指定しておく(任意後見契約または法定後見の申立て時の候補者として)
  • 遺言書の付言事項に想いを記す:法的効力はないが「弟(妹)のことをよろしく」という親の言葉を遺言書に残すことで、兄弟姉妹への精神的な訴えになる
  • 家族会議で親の意向・子の生活状況・将来の見通しを全員で共有しておく
⚠️ 兄弟姉妹に「全部任せる」のは限界があります。
兄弟姉妹にも自分の家族・仕事・生活があります。「全部お願い」ではなく、家族信託・成年後見・グループホーム等の公的な仕組みで可能な限り制度に任せ、兄弟姉妹には「見守り・意思決定のサポート」に絞った役割を依頼することが長続きするコツです。

「親なき後ノート」の作成:支援者への引継ぎ情報

法的な準備と同じくらい重要なのが、「障害のある子の生活に関する全ての情報を一冊にまとめた引継ぎノート(親なき後ノート)」の作成です。

親なき後ノートに書くべき内容

  • 本人のプロフィール:氏名・生年月日・血液型・障害の種類・診断名・手帳番号・障害支援区分
  • 医療情報:かかりつけ医・服薬情報(薬の名前・量・時間)・アレルギー・過去の入院歴・緊急時の対応方法
  • 日常生活のこだわり・好み・苦手なこと:食の好み・嫌いな音・落ち着く場所・コミュニケーションの取り方等
  • 現在利用中のサービス:グループホーム・放課後等デイサービス・就労支援事業所等の名前・連絡先・担当者名
  • 支援者・関係者の連絡先:相談支援専門員・担当のケアマネジャー・学校・職場・友人等
  • 財産の情報:銀行口座・保険・受給している手当の種類と金額(詳細は家族信託の受託者・後見人に引継ぐ)
  • 親の「子への想い・将来の希望」のメッセージ
ノートは「定期的に更新」することが重要です:
子どもの状況・服薬・担当者は変わります。年に1〜2回は内容を見直して最新の情報に更新してください。完成度より「今すぐ書き始めること」が重要です。

福祉と法律の専門家をつなぐチームを作る

障害のある子のいる家庭の生前対策は一人の専門家では完結しません。福祉・法律・税務の専門家がチームとして連携することが理想です。

専門家 担当する役割
相談支援専門員
(福祉)
グループホームの情報・障害福祉サービスの計画作成・日常生活支援の継続的な調整
行政書士 遺言書(公正証書)の作成・家族信託の契約書作成・親なき後ノートの整理支援・死後事務委任契約の作成
司法書士 家族信託の不動産登記・成年後見申立て書類の作成・相続登記
税理士 相続税のシミュレーション・障害者控除の適用・生前贈与の計画・家族信託の税務処理
弁護士 法的紛争の解決・成年後見の申立て・遺言書に関する訴訟対応
「相続専門の行政書士法人」への相談が最初のステップとして最適:
ハートリンクグループのような相続専門事務所では、行政書士・税理士が連携しており、遺言書作成から家族信託・相続税対策まで一括して相談できます。まず現状の整理と優先順位の確認から始めてください。

よくある疑問(Q&A)

Q. 家族信託と遺言書、どちらを先に準備すればいいですか?
遺言書を先に、または並行して準備することをおすすめします。家族信託は設定に時間・費用がかかりますが、遺言書は比較的早く作成できます。また遺言書なしで家族信託だけを設定した場合、信託財産に含まれない財産(信託設定後に取得した財産等)の行き先が不明確になります。遺言書と家族信託は補完関係にあるため、両方を準備することが最善策です。
Q. 障害のある子に財産を残すと、障害年金や生活保護に影響しますか?
状況によって影響が異なります。障害年金は財産の多寡に関係なく受給できます。一方、生活保護を受給している場合は財産(相続・遺贈)が収入認定されて保護費が減額・停止になる場合があります。家族信託を活用して「名義上の財産所有者は受託者(兄弟姉妹等)」にしつつ実質的な利益を障害のある子に届ける設計にすることで、影響を最小化できる場合があります。必ず税理士・行政書士に相談してください。
Q. 兄弟姉妹がいません。頼める親族もいません。どうすればいいですか?
専門家(行政書士・司法書士・弁護士・社会福祉士等)を受託者・後見人候補者にする方法があります。「市民後見人バンク」や「社会福祉法人が後見を受ける仕組み」を利用する地域もあります。また信託会社・信託銀行を受託者にする「商事信託」という選択肢もあります。費用は発生しますが、身寄りのない方でも適切な支援体制を構築できます。地域の基幹相談支援センターまたは行政書士に相談してください。
Q. 障害のある子への相続税の負担を軽くする方法はありますか?
「障害者控除」が最も直接的な節税策です。特別障害者(身体障害者手帳1・2級等)なら20万円×(85歳−年齢)、一般障害者なら10万円×(85歳−年齢)が相続税額から控除されます。例えば35歳の特別障害者なら最大1,000万円の控除です。加えて生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人数)の活用・生前贈与(暦年贈与・相続時精算課税)の計画的な活用・小規模宅地等の特例の適用等を税理士と組み合わせることで相続税負担を大幅に軽減できます。

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