自筆証書遺言の書き方:無効になりやすいNG例と最低限のルール

自筆証書遺言は、費用をかけずに自分で作れる一方で、「形式ミスで無効」になりやすい遺言でもあります。
結論から言うと、最低限おさえるべきポイントは次の3つです。

  • 形式 本文は全文を自分で手書きし、日付・氏名も書いて押印する
  • 特例 財産目録はパソコン等でも作れるが、各ページに署名押印が必要
  • 訂正 書き間違いの直し方にもルールがあり、修正テープはNG

安心ポイント
「難しそう…」と感じる方ほど、先にNG例を知っておくと失敗が減ります。
このページでは、やってしまいがちなミスを中心に、上から順に読めば一通り理解できる構成にしています。


目次


1. まず結論:自筆証書遺言の「最低限のルール」4つ

自筆証書遺言は、次の4つがそろっていないと、無効と判断されるリスクが高くなります。

最低限のルール ポイント ありがちな落とし穴
① 本文(遺言の内容)は全文を自書 ワープロ本文・代筆はNG 「清書だけPC」「手が震えるから家族に書いてもらう」
② 日付を自書 作成日が特定できる書き方 「令和○年○月吉日」など曖昧
③ 氏名を自書 本人の特定 苗字だけ・通称だけで不安が残る
④ 押印 印鑑登録の実印でなくてもよい場面は多いが、押印自体が必要 署名だけで終えてしまう

ワンポイント
形式が整っていても、財産や相手の書き方が曖昧だと、結局「手続きが進まない」「揉める」原因になります。
なので、次章のNG例を見たあとに、「特定の書き方」も一緒に押さえましょう。


2. 無効になりやすいNG例:ここを外すと危ない

実務で多い“やりがちミス”を、危険度が高い順にまとめました。

NG例1:本文をパソコンで作成(印刷)している
本文(遺言の内容)は「全文自書」が原則です。本文をPCにすると、形式不備とされるリスクが高くなります。
NG例2:日付があいまい(「○月吉日」「春頃」「2026年」だけ等)
作成日が特定できないと、無効と判断されることがあります。日付は「年月日」まで書くのが安全です。
NG例3:押印がない/押印が本文と離れすぎている
押印が抜けるミスは意外に多いです。署名の近くに押しておくと安心です。
NG例4:修正テープ・塗りつぶしで訂正している
訂正のルールを外すと、その訂正部分が無効になったり、遺言全体の信用性に疑いが出たりします(後述)。
NG例5:「自宅は長男へ」など、特定が弱い
不動産は住所だけでは足りないことがあります。最低でも登記簿の情報(所在・地番等)で特定できる形に寄せるのが安心です。
NG例6:「預金は全部妻へ」など、金融機関の特定が弱い
口座が複数あると揉めやすいです。銀行名・支店・口座種別など、分かる範囲で書きます。
NG例7:複数ページなのに、ページ管理が弱い
ページの欠落・差し替えと疑われない工夫(ページ番号、割印や綴じ方の工夫など)をしておくと安心です。

3. 書き方の基本:誰に・何を・どう渡すかを整理する

自筆証書遺言でつまずくのは、「文章がきれいに書けない」より、内容の整理ができていないことの方が多いです。
まずは次の順でメモを作ると、遺言の本文が書きやすくなります。

Step1:相続人(配偶者・子・兄弟姉妹など)を洗い出す
Step2:渡したい相手(受け取る人)を確定する
Step3:財産を分類(不動産/預貯金/保険/株式/動産/借金)
Step4:「誰に」「何を」を対応づける
Step5:迷う部分は“理由”もメモ(揉め予防になる)
(1)「全部まとめて」より、財産ごとに書く方が伝わりやすい
  • 不動産 物件ごとに(所在等で特定)
  • 預貯金 金融機関ごとに(口座が分かる範囲で)
  • その他 生命保険金は受取人指定が別にある場合も。遺言とズレると混乱しやすい
(2)「遺言執行者」を置くと手続きが止まりにくいことがある

相続人が多い、連絡が取りづらい、手続きが多い場合は、遺言の内容を実行する人(遺言執行者)を決めると進みやすいことがあります。
ただし、誰を指定するかで実務の動きが変わるため、状況に合わせて検討します。


4. 財産目録はPCでもOK:ただし“各頁署名押印”が要注意

相続法改正により、自筆証書遺言でも財産目録はパソコン作成や通帳コピー・登記事項証明書の添付などが認められる形になりました。
ただし、ここが落とし穴です。

要注意
自書でない財産目録は、各ページ(両面に記載がある場合は両面)に署名押印が必要です。
この署名押印が抜けると、目録部分が使えなくなり、遺言の実行が止まりやすくなります。

(1)財産目録にしやすい資料
  • 不動産 登記事項証明書の写しを添付(必要に応じて評価資料も)
  • 預貯金 通帳の表紙・見開き・残高ページの写し
  • 証券 証券口座の取引報告書・残高報告書など
(2)本文と目録の関係を切らさないコツ

本文には「別紙財産目録記載のとおり」などとつなげ、目録のページには「財産目録 第○頁」のように番号を振っておくと、後から見ても分かりやすくなります。


5. 訂正(直し方)のルール:修正テープが危険な理由

自筆証書遺言は、書き間違いを「普通の書類の感覚」で直すと危険です。
修正テープや塗りつぶしは、元の記載が読めなくなり、訂正の有効性が崩れたり、争いの火種になりやすいです。

(1)訂正の基本イメージ(最小限)
① 間違えた部分に二重線(読める状態で)
② 正しい文字を近くに記入
③ 「本行〇字削除、〇字加入」など変更の旨を付記して署名
④ 変更箇所に押印(訂正印)

迷ったら
訂正は一見カンタンそうで、実はミスが出やすい部分です。
少しでも不安があるなら、潔く書き直しの方が安全なことも多いです。


6. 保管で損しない:封印・検認・法務局保管の考え方

自筆証書遺言は「作った後」がとても大切です。
見つからない、勝手に開封される、改ざん疑いが出る――こうしたトラブルを減らすために、保管方法までセットで考えます。

(1)自宅保管の注意点(ありがちなトラブル)
  • 発見されない どこにあるか分からず、結局「遺言なし」として進む
  • 開封 封がある遺言を家庭裁判所外で開けてしまい、混乱する
  • 改ざん疑い 誰がいつ触れたか不明で、不信感が出る
(2)法務局の保管制度という選択肢

自筆証書遺言は、法務局で保管してもらう制度があります。
この制度を利用して保管されている遺言は、家庭裁判所での検認が不要となり、相続開始後の手続きが止まりにくくなる傾向があります。

保管の考え方
「遺言を書く」だけでなく、「見つかる・信頼される形で残す」までがワンセットです。
相続人が多い、揉めそう、遠方で集まりにくい場合ほど、保管方法で差が出やすいです。


7. そのまま使えるチェックリスト(作成前・作成後)

(1)作成前チェック
  • 相続人 誰が相続人になりそうか、メモに書き出した
  • 財産 不動産・預金など、財産の一覧を作った
  • 方針 「誰に何を」渡す方針が固まった
  • 争点 不公平感が出そうな点を把握した(理由メモの準備)
(2)作成後チェック
  • 形式 本文が全文自書/日付/氏名/押印がそろっている
  • 特定 不動産・預金などが特定できる書き方になっている
  • 目録 目録をPC作成した場合、各頁署名押印をした
  • 訂正 訂正がある場合、ルールどおりにできている(不安なら書き直し)
  • 保管 どこに保管し、誰が見つけるかの導線がある(法務局保管も検討)

8. よくある質問:家族に内緒?毎年書き直す?写真は?

Q1:家族に内緒で作ってもいい?

作ること自体は可能ですが、「見つからない」リスクが上がります。
少なくとも、保管場所を伝える相手を1人だけ決める、または法務局保管を検討するなど、発見導線を作るのがおすすめです。

Q2:毎年書き直した方がいい?

財産や家族状況が大きく変わったとき(不動産を売買した、相続人が増えた、再婚した等)は見直しが有効です。
頻繁な訂正はミスの原因になりやすいので、「訂正」より「書き直し」の方が安全な場面もあります。

Q3:スマホで撮った写真(画像)を遺言として残せる?

自筆証書遺言は「方式」が重要です。画像やデータだけでは要件を満たしにくく、後の手続きで困ることが多いです。
「言った・残した」ではなく、「手続きで使える形」に整えることが大切です。


9. まとめ:迷ったら「形式→特定→保管」の順で整える

  • 形式 本文は全文自書+日付+氏名+押印(ここが崩れると致命的)
  • 特定 誰に・何を渡すか、第三者が見ても分かる書き方にする
  • 目録 目録をPC等にするなら、各頁署名押印を忘れない
  • 保管 見つかる・信頼される形で残す(法務局保管も検討)

自筆証書遺言は、「自分でできる」からこそ、最初の一歩に選ばれやすい方法です。
その一方で、形式ミスは取り返しがつきにくいので、まずはNG例を避けるところから始めてみてください。


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