不動産相続の落とし穴:共有・空き家・未登記家屋・境界不明をどうする?
不動産の相続は、預貯金よりも「後から困る」落とし穴が多い分野です。
結論としては、①共有を避ける(または出口を決める)、②空き家は“管理とお金”を先に決める、③未登記家屋は名義を整えてから動く、④境界が怪しい土地は測量・確認を前提にする——この4点を押さえるだけで、相続のつまずきが大きく減ります。
この記事では、初心者の方でも上から読めば理解できるように、共有・空き家・未登記家屋・境界不明それぞれの「何が問題で、どう進めるか」をやさしく整理します。
目次
1. 不動産相続が難しいのはなぜ?「4つの落とし穴」
不動産は「価値がある資産」に見える一方で、相続では次の理由で詰まりやすいです。
- 分けにくい 現物が1つ。相続人が複数だと配分が難しい
- 動かしにくい 売る・貸す・修繕するにも同意や費用が必要
- 見えにくい 未登記・境界・古い名義など、表に出ない問題がある
- 時間が経つほど悪化 次の相続で相続人が増え、調整が複雑になる
だからこそ、不動産は「名義の整理」だけで終わらせず、使い方(出口)までセットで決めるのが大切です。
2. 落とし穴① 共有:動かない・売れない・揉めるの三重苦
不動産を相続人で「共有」にすると、一見公平に見えます。ところが現場では、共有が原因で手続きが止まることが本当に多いです。
共有で起きやすい困りごと
・売却したい人/残したい人で意見が割れる
・修繕費や固定資産税の負担で揉める
・1人でも連絡不能・非協力だと動けない
・次の相続で共有者が増え、意思決定がさらに難しくなる
特に「空き家の共有」は、管理責任と費用だけが積み上がりやすく、先送りがリスクになりがちです。
3. 共有を避ける・共有でも詰まらせない具体策
共有を完全に避けるのが理想ですが、現実には難しいこともあります。状況に応じて、次の「出口の作り方」を選びます。
(A)できれば避けたい:単独取得+バランス調整
- 代償分割 不動産を1人が取得し、他の相続人に代償金(現金)を払う
- 換価分割 いったん売却して、売却代金を分ける
「誰が住むか」「売るか」が決まっているなら、単独取得を軸にした方が後がラクです。
(B)共有にするなら“ルール”を先に決める
共有を選ぶ場合は、少なくとも次を決めて書面化しておくと揉めにくくなります(協議書や別紙の合意など)。
- 固定資産税・火災保険・修繕費の負担割合(いつ、誰が、どう払う)
- 管理の担当者(窓口を一本化)
- 将来の売却・賃貸の方針(何年後に見直すか等)
- 共有者が亡くなったときの取り扱い(次の相続で増えない工夫)
(C)共有を“ほどく”選択肢もある
- 共有物分割(話し合いで単独化・売却へ)
- 持分の譲渡・買い取り(家族内で整理)
「共有にしたけど詰まった」という場合でも、早めに整理に入るほど選択肢が残りやすいです。
4. 落とし穴② 空き家:管理・固定資産税・近隣トラブル
空き家は「住んでいないのに、やることだけ増える」タイプの相続財産です。放置すると、次のような問題が起きやすくなります。
- 費用 固定資産税、火災保険、光熱費、草木の手入れ
- 安全 雨漏り・倒壊・害虫・不審者侵入など
- 近隣 苦情・通報・行政対応が必要になることがある
- 売却の難化 傷みが進むほど、価格も買い手も厳しくなる
空き家は「名義が誰か」だけでなく、管理の担当と、管理費の出どころが決まっていないと、ほぼ確実に揉めます。
5. 空き家のベストな出口は?売却・賃貸・解体・保有の比較
空き家の出口は大きく4つです。どれが正解というより、家の状態・立地・家族の事情で決めます。
(A)売却:もっともシンプルだが、準備が要る
- 名義(相続登記)が整っていないと売りにくい
- 境界や越境があると、買主側の不安が増える
- 残置物の処分、簡易修繕、ハウスクリーニングで印象が変わることも
(B)賃貸:安定するが、管理と修繕の覚悟が必要
- 設備の老朽化があると、初期修繕費がかかりやすい
- 管理会社選定・契約・入退去対応など、継続的な運用が必要
(C)解体:土地として活用しやすくなるが費用が出る
- 解体費用の負担をどうするか(共有だと特に揉めやすい)
- 解体後の活用(売る・貸す・駐車場等)まで見通すと安心
(D)保有:目的があるならOK、目的がないなら危険
- 「いつか使うかも」で保有すると、管理と費用だけが残りやすい
- 保有するなら、管理担当・予算・点検頻度を決める
迷ったらここだけ
・住む予定がない → まず売却を軸に検討
・状態が悪い/境界不安 → 調査・片付け・整理を優先
・共有なら → “出口(いつ売るか)”を先に決める
6. 落とし穴③ 未登記家屋:名義がない家は手続きが止まりやすい
「家があるのに登記がない(または登記情報と実態が違う)」——これが未登記家屋の典型です。
このタイプは、相続人の感覚では「うちの家」でも、手続き上は名義が曖昧になりやすく、次の場面で止まりがちです。
- 売却したいのに、買主が不安で進まない
- ローン・担保を付けたいのに難しい
- 相続財産としての整理がしにくい(評価や分け方が曖昧)
また、未登記家屋は自治体の固定資産税の課税台帳に載っていても、登記とは別管理のため、「税金は払っているのに登記がない」ということが起こります。
7. 未登記家屋の進め方(最短ルートの考え方)
未登記家屋はケースが分かれます。大切なのは、先に「何が未登記なのか」を切り分けることです。
(A)まず確認すること(ここで9割が決まります)
- 土地は登記されているか(名義は誰か)
- 建物は登記があるか(登記があるなら、名義・住所・構造・床面積は実態と合うか)
- 固定資産税の課税明細に、建物の記載があるか(家屋番号や所在地の手がかり)
(B)進め方のイメージ
- 登記がない 表題登記(建物の登記を作る)→ その後に所有権の登記(相続)へ
- 登記はあるが古い 表示の変更・更正(必要な範囲で)→ 相続手続きへ
未登記が絡むと、必要書類や専門家の関与(調査・図面等)が増えることがあります。
「売却が決まってから慌てる」より、先に名義と実態を整えておく方が、結果的に早く進みます。
8. 落とし穴④ 境界不明:売却で一気に表面化する問題
境界が不明な土地は、普段は困らなくても、売却・建替え・分筆のタイミングで一気に問題が出ます。
(A)境界が曖昧だと起きやすいこと
- 買主が不安になり、価格交渉や契約条件が厳しくなる
- 隣地との越境(塀・樹木・配管など)が発覚して揉める
- 面積が確定せず、分筆や有効活用が進まない
(B)対処の基本は「測る・確認する・合意を残す」
- 境界標の有無を現地で確認(ある/ないで難易度が変わります)
- 測量・境界確認(必要に応じて専門家へ)
- 越境がある場合は、撤去・移設・覚書など、現実的な落としどころを作る
境界の問題は感情的になりやすい分、第三者を入れて淡々と進めた方が、結果的に早く落ち着くことが多いです。
9. まず何から?不動産相続を“事故なく進める”チェックリスト
最後に、最短で整理するためのチェックリストです。「できたところから」埋めていけばOKです。
- 書類 固定資産税の納税通知書(毎年のもの)を用意した
- 登記 土地・建物それぞれの登記事項証明書で名義を確認した
- 共有 共有にするなら、管理担当・費用負担・出口(売却等)を決めた
- 空き家 管理担当・管理費の出どころ・点検頻度を決めた
- 未登記 建物の登記があるか/実態と合うかを確認した
- 境界 境界標の有無、越境の可能性をざっくり確認した
- 方針 売る・貸す・住む・残すのどれを目指すか決めた
不動産相続は、「名義変更」だけで終わりません。
共有をどうするか/空き家をどうするか/未登記や境界の不安をどう潰すかまでセットで決めると、相続後の負担が一気に軽くなります。
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