相続税の申告が必要か判定:財産評価のざっくり手順と注意点
相続税の申告が必要かどうかは、ざっくり言うと「正味の遺産額が、基礎控除を超えるか」で決まります。
だから最初の一歩は、難しい計算を完璧にやることではなく、「超えそう/超えなさそう」を早めに仕分けることです。
- Step1 法定相続人の人数を数える(基礎控除が決まる)
- Step2 財産を“大づかみ”で評価する(預貯金・不動産が中心)
- Step3 借金・葬式費用などを差し引いて「正味」を出す
- Step4 特例(小規模宅地等)や非課税枠(生命保険)を当てる
先に知っておくと安心なこと
・相続税の申告期限は原則10か月です。期限があるので、早めに「要・不要」を見立てるほどラクになります。
・「特例を使えば税金が0円になりそう」でも、申告をしないと特例が使えないケースがあります(小規模宅地等の特例など)。
目次
1. まず結論:申告が必要かの判定は「基礎控除」を超えるか
相続税は、正味の遺産額(プラスの財産-マイナスの財産など)が、基礎控除額を超えるときに、申告・納税が必要になります。
基礎控除は次の式です。
基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
ここで言う「法定相続人の数」は、相続放棄があっても“放棄がなかったもの”として数えるなど、独特の数え方があります。
まずは大枠の人数を押さえ、超えそうなら精密化、超えなさそうなら裏取り、という進め方が失敗しにくいです。
2. 3分でできる早見:基礎控除の計算と目安ライン
よくある家族構成で、基礎控除の目安を作ると次の通りです(あくまで入口の早見です)。
| 法定相続人の数 | 基礎控除の目安 | よくある例 |
|---|---|---|
| 2人 | 4,200万円 | 配偶者+子1人 など |
| 3人 | 4,800万円 | 配偶者+子2人 など |
| 4人 | 5,400万円 | 配偶者+子3人 など |
この時点での判断
・預貯金+不動産(評価)だけで、基礎控除をすでに超えそう → 申告が必要な可能性が高い
・基礎控除の少し下〜同じくらい → 特例・非課税枠・債務控除で“要/不要が割れやすいゾーン”
・かなり下 → 申告不要の可能性が高いが、特例前提・名義・生前贈与などの確認はしておく
3. ざっくり評価の全体手順(財産→控除→特例の順)
相続税の判定でつまずく最大の原因は、「いきなり土地評価や申告書」に入ってしまうことです。
おすすめの順番は次の通りです。
【ざっくり判定の手順】 (1) 財産を“種類別”に集計 預貯金 / 不動産 / 株式・投信 / 保険 / その他 (2) 差し引けるものを集計 借入金・未払金などの債務 / 葬式費用 (3) 非課税枠・特例を検討 生命保険の非課税枠 / 小規模宅地等の特例 など (4) 正味の遺産額 - 基礎控除 を見て「要/不要」を仮判定 (5) “割れやすいゾーン”だけ精密化 不動産評価・株価・特例要件・生前贈与 など
この順番にすると、「本当に精密化が必要な部分」だけに集中できます。
最初のゴールは、税額を正確に出すことではなく、申告が必要かどうかの確度を上げることです。
4. 財産別:預貯金・有価証券・保険の“ざっくり”評価
(1)預貯金:通帳の残高でまずOK
- 見るもの 死亡日時点の残高(まずは直近残高でも“仮”で可)
- 集め方 通帳・郵便物・スマホの銀行アプリから金融機関を特定
- 注意 定期預金、ネット銀行、名義預金(親名義だが実質は別人…など)は“漏れやすい”
(2)上場株式・投信:死亡日の価格をベースに見立て
上場株式は、原則として死亡日の最終価格を基本に評価し、条件により月平均の最も低い価額を使える仕組みがあります。
ざっくり判定では、証券会社の残高画面や残高報告書で「時価総額」を拾うだけでも方向性が出ます。
(3)生命保険:非課税枠を忘れない
死亡保険金は相続税の課税対象になり得ますが、受取人が相続人の場合、500万円×法定相続人の数の非課税限度額があります。
「保険がある=税金が増える」ではなく、「保険は非課税枠で圧縮できることがある」という視点を持つと、見立てがブレにくいです。
5. 不動産評価の入口:固定資産税評価額→路線価/倍率で見立て
相続税の判定で最も差が出るのは不動産です。
ただ、最初から難しい補正(奥行・形状・間口…)までやる必要はありません。まずは入口を押さえましょう。
(1)まず「持っている不動産」を確定する
- 手がかり 固定資産税の納税通知書(課税明細)
- 次 登記簿(名義・持分・所在地の確認)
- 注意 私道持分、共有、別荘地、農地、未登記家屋などが混ざると評価が跳ねやすい
(2)土地:路線価地域か、倍率地域か
土地の評価は、国税庁の財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)で確認できます。
路線価がない地域(倍率地域)は、固定資産税評価額に倍率を掛けて評価する方式が基本です。
(3)建物:固定資産税評価額が入口になりやすい
建物は、まず固定資産税評価額で大づかみし、貸しているか(賃貸)・共有かなど“評価が動く条件”があるところだけ深掘りします。
不動産があると「要/不要が割れやすい」理由
・土地の評価は条件で上下しやすい(形・接道・利用状況など)
・小規模宅地等の特例など、強力な特例がある(ただし申告が前提になりやすい)
この2点があるため、ざっくり判定→精密化の流れがとても相性良いです。
6. 差し引けるもの:債務控除・葬式費用で「正味」を作る
相続税の見立てでは「プラスの財産」ばかり注目しがちですが、差し引けるものを入れると結論が変わることがあります。
(1)債務控除(借入金・未払金など)
死亡時に現に存在し、確実と認められる債務(借入金や未払金など)は、遺産総額から差し引けます。
ローンの残高証明、未払いの請求書、医療費の領収、施設費の請求などを集めて「証拠とセット」で整理します。
(2)葬式費用
一定の相続人等が負担した葬式費用は、相続税計算上、遺産総額から差し引けます。
ここは領収書の管理が勝負なので、葬儀社・火葬・お布施・会食など、項目ごとに封筒を分けて保管すると後がラクです。
7. 申告が必要になりやすい落とし穴(特例・名義・生前贈与)
(1)小規模宅地等の特例:税額が0円でも申告が必要になりやすい
自宅の土地などで大きく評価を下げられる特例があり、うまく当たると相続税が大きく下がることがあります。
ただし、この特例は申告書への記載や添付書類が必要で、原則として申告期限までの分割など要件も絡みます。
「税金が出ないから申告しなくていい」と早合点しないよう注意が必要です。
(2)名義預金・共有名義:財産が“見えにくい”
- 親の通帳にあるが、実質は子のお金(またはその逆)
- 家族の共有名義で、持分が複雑
このあたりは、数字だけ追うと見落としやすいので、「誰が出したお金か」「誰が管理していたか」を一緒に確認します。
(3)生前贈与・相続時精算課税がある
生前贈与の取り扱いは年々話題になりやすく、相続の計算に影響するケースがあります。
「贈与の記録がある」「まとまった援助を受けた覚えがある」ときは、ざっくり判定の段階で“旗を立てて”おくのがおすすめです。
8. 迷ったらここ:国税庁ツールの使い方と、相談の目安
(1)国税庁「申告要否判定コーナー」を使う
「だいたいの入力で、要・不要の見立てを作りたい」段階では、国税庁の申告要否判定コーナーが役立ちます。
不動産(路線価・倍率)、建物などの入力も想定されているため、ざっくり評価→確認の流れを作りやすいです。
(2)相談の目安(ここに当てはまるほど“精密化”の価値が高い)
- 不動産 自宅以外にも土地建物がある/共有や私道がある/未登記家屋がある
- 特例 小規模宅地等の特例を使えそう(税額が大きく動く)
- 資産 株・投信・非上場株式、事業用資産がある
- 期限 相続開始から数か月経っていて、10か月期限が気になってきた
- 家族 相続人が多い/疎遠/遺産分割がまとまりにくい
相続税の「申告が必要か判定」は、最初から完璧を目指すほど苦しくなりがちです。
まずはこのページの手順で、基礎控除ラインに対して“超えそうか”を掴み、割れやすいところだけを丁寧に詰めていきましょう。
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