遺産分割でもめる原因:不動産・介護・生前贈与・使途不明金の整理法
遺産分割でもめる理由は、実はパターンが決まっています。
結論から言うと、もめ事の中心は次の4つに集約されます。
- 不動産 分けにくい・評価が割れる・共有が残る
- 介護 「私だけが面倒を見た」— 寄与分や特別寄与料の主張
- 生前贈与 「兄だけ援助を受けた」— 特別受益(持戻し)で公平をどう作るか
- 使途不明金 「通帳からお金が消えた」— 証拠と手順がないと感情で爆発しやすい
この記事では、専門用語をできるだけかみ砕きつつ、家族が納得しやすい“整理の順番”をセットでお伝えします。
大切なのは、誰が正しいかを先に決めることではなく、事実→評価→分け方→書面の順で「議題を分ける」ことです。
この記事のゴール
・「何で揉めているのか」を4分類で整理できる
・不動産/介護/生前贈与/使途不明金を“同じ土俵”で話せるようになる
・家族会議が前に進む「具体的な段取り」と「落としどころ」が見える
目次
1. まずここが大事:もめる家族ほど「議題の混線」が起きている
遺産分割がこじれるとき、多くは「議題が混ざっている」状態です。たとえば、
- 不動産の分け方の話をしているのに、介護の不満が噴き出す
- 生前贈与の話の途中で、「通帳から消えたお金」の話に飛ぶ
- 結局、誰がどれだけもらうか(結論)だけを先に決めようとして揉める
そこでおすすめなのが、「議題を4つに分けて、順番に処理する」やり方です。
同時に解決しようとすると、感情が増幅して前に進みにくくなります。
2. 先に土台を作る:話し合いを壊さない“整理の順番”
本題に入る前に、土台を整えるだけでトラブルが半分になります。
ポイントは、結論を急がないための準備です。
(1)相続人と財産を「確定」する
- 相続人 戸籍で法定相続人を確定(後から相続人が増えるとやり直しになりがち)
- 財産 預貯金・不動産・株・保険・借金を一覧化(財産目録)
(2)会議のルールを決める(地味だけど効く)
おすすめのルール
・今日は「事実確認」だけ(結論は出さない)
・言い分は“メモ”に残す(後で検証できる形に)
・疑いがある話題(使途不明金など)は、証拠の確認手順を先に決める
(3)「争点一覧」を作る
次のように、争点を見える化します。
| 争点 | 確認する事実 | 必要な資料 | 落としどころ例 |
|---|---|---|---|
| 不動産 | 物件・評価・名義・ローン | 登記簿・評価証明・査定 | 換価/代償/共有回避 |
| 介護 | 期間・内容・費用負担 | 介護記録・領収書 | 寄与分/特別寄与料/精算 |
| 生前贈与 | いつ・いくら・目的 | 振込履歴・契約書 | 特別受益で調整 |
| 使途不明金 | 出金の時期・金額 | 取引履歴・伝票 | 説明→合意→必要なら別手続き |
3. 不動産でもめる原因と整理法(評価・分け方・共有を残さない)
不動産で揉める理由はシンプルです。
①分けにくい+②評価が割れる+③共有が残ると将来また揉める、この3点です。
(1)まず“評価の土俵”を揃える
評価がバラバラだと、会議が永遠に終わりません。次のように役割を分けて並べます。
- 税金用 固定資産税評価額(登録免許税・相続税の入口)
- 売却用 不動産会社の査定(複数社)/近隣の成約事例
- 公平感用 「売るならいくら?」を共有して、納得の基準を作る
コツ
「税金の評価」と「売れる価格」は一致しないことがあります。
だからこそ、用途別に並べて、話すテーマを分けると揉めにくくなります。
(2)分け方は4パターン(メリデメを先に共有)
| 分け方 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 現物分割 (不動産を誰かが取得) |
住み続けたい人がいる | 他の相続人への公平感(代償の要否)が争点になりやすい |
| 代償分割 (取得者が他へお金で調整) |
売りたくない・住みたい | 代償金の原資(誰が・いつ払うか)を具体化しないと揉めます |
| 換価分割 (売却して現金で分ける) |
公平に分けたい | 売却までの管理費・固定費の負担ルールが必要 |
| 共有 (持分で共同所有) |
今すぐ結論が出ない | 将来、売る/貸す/修繕でまた揉めやすい(できれば回避) |
(3)不動産整理の「おすすめ手順」
- Step1 物件一覧(登記簿・所在地・名義・ローン)を作る
- Step2 評価を3本立てで並べる(税金/売却/公平感)
- Step3 分け方4パターンのうち、候補を2つまで絞る
- Step4 共有を回避する条件(期限・管理・売却方針)を決める
- Step5 合意内容を文書化(遺産分割協議書)
4. 介護でもめる原因と整理法(寄与分/特別寄与料の考え方)
介護の争いは、金額というより気持ちの精算がテーマになりやすいです。
ただし、話し合いを前に進めるには、「制度として整理できる部分」を切り出すのが効果的です。
(1)よくある揉め方
- 介護した側:「私が全部やった。多めにもらうべき」
- 介護していない側:「それは家族として当然。証拠がない」
- 双方共通:「“どれくらい”が妥当か分からない」
(2)整理の軸:まずは「誰が主張できるか」を分ける
- 寄与分 原則として相続人が主張する枠(介護などの“特別な貢献”が争点)
- 特別寄与料 相続人ではない親族(例:長男の妻など)が、一定の貢献について金銭を請求できる枠
ポイント
介護の評価は「やった・やってない」の二択ではなく、
期間・内容・無償性・財産の維持への影響など、具体化できる材料があるほど合意しやすくなります。
(3)介護の主張を“揉めにくい形”に変換する
おすすめは、次の3点をセットで出すことです。
- ① 事実 いつからいつまで、誰が、どんな介護(通院付添・見守り・施設対応など)
- ② 証拠 介護記録、通院履歴、領収書、施設とのやり取りメモ
- ③ 金額の根拠 介護サービス相当額、実費立替、仕事を休んだ日数など(完全な一致を目指さない)
介護が争点になる「寄与分」はハードルが高いと言われることもあり、実務でも争点になりやすいテーマです。
だからこそ、いきなり制度の結論に飛ばず、まず事実と根拠を丁寧に揃えることが大切です。
5. 生前贈与でもめる原因と整理法(特別受益と持戻し免除)
生前贈与の揉めポイントは、「援助を受けたかどうか」よりも、遺産分割でどこまで調整するかです。
ここでよく出てくるのが特別受益(一部の相続人が受けた特別な利益)という考え方です。
(1)揉めやすい典型例
- 住宅資金 「頭金を出してもらった」
- 学費 「私立・留学の費用を出してもらった」
- 開業資金 「事業の立ち上げを支援してもらった」
- 同居援助 「家のリフォーム代を出してもらった」
(2)整理のやり方:まず“事実の棚卸し”
- いつ 何年何月ごろの援助か
- いくら 金額(概算でも良いが、根拠があると強い)
- どうやって 振込/現金/不動産名義/ローン肩代わり
- 目的 生活費の範囲か、資金援助(生計の資本)か
(3)資料の集め方(揉めにくい)
- 振込明細(銀行の履歴)
- 贈与契約書・覚書(あれば強い)
- 不動産購入の契約書・ローン資料(資金の流れの確認)
- メール・メモ(当時の合意が残っているもの)
注意点
「持戻し免除(持戻ししないという意思)」が問題になることがあります。
ただ、遺留分など別の論点とも絡むため、揉めが深いときは早めに専門家へ整理を依頼するほうが安全です。
6. 使途不明金でもめる原因と整理法(通帳・取引履歴・初動)
使途不明金は、家族の信頼を一気に壊すテーマです。
だからこそ、最初の一手を間違えると「疑い」から「断定」と「攻撃」に変わり、話し合いが止まってしまいます。
(1)最初にやるべきこと:責める前に“資料を揃える”
使途不明金の調査は、まず通帳・取引履歴(入出金明細)を揃えるところから始まります。
相続人が金融機関で取引履歴を取得する対応が入口になることは、実務解説でも繰り返し説明されています。
よくある流れ(安全)
① 通帳の写し・履歴を集める → ② 不自然な出金を“時期・金額・回数”でマーキング → ③ 使い道の説明を求める → ④ 合意できない部分は別枠で整理
(2)不自然な出金の“見方”
- 時期 入院中・認知症が進んだ後など、本人が動きにくい時期の出金
- 金額 生活実態に合わない高額・頻回の引出し
- 相手先 特定の相続人名義への送金、使途が想像しづらい振込
(3)落としどころ:遺産分割と“切り分ける”
使途不明金は、遺産分割と同時に解決できないこともあります。
その場合は、
- 合意できる部分 は先に遺産分割を進める
- 争いが残る部分 は、調査・説明・必要なら別手続きで整理する
というように「会議を止めない設計」にすると、全体が前に進みやすくなります。
7. まとめ:家族会議を前に進める「合意の型」とチェックリスト
最後に、もめやすい4テーマをまとめて処理するための「合意の型」を置きます。
ポイントは、同じ順番で繰り返すことです。
【合意の型(テンプレ)】 (1) 事実:何が起きた?(資料で確認) (2) 評価:どう見る?(税金用/売却用/公平感用など用途別) (3) 選択肢:分け方は何がある?(メリデメを並べる) (4) 合意:誰が何をする?期限は?(行動に落とす) (5) 書面:協議書・覚書に残す(後で揉めない)
すぐ使えるチェックリスト
- 不動産 評価の土俵を揃えた(税金/売却/公平感)
- 介護 期間・内容・証拠・金額根拠をセットで出せる
- 生前贈与 いつ・いくら・目的・資料(振込等)の棚卸しができた
- 使途不明金 取引履歴を揃え、疑いの箇所を“時期・金額”で整理した
- 全体 合意できる部分と、争いが残る部分を切り分けた
相談の目安
・不動産が多い/共有が避けられない
・介護の主張が強く、金額の根拠が出ない
・生前贈与が大きく、遺留分の話が出ている
・使途不明金が疑われ、通帳や履歴が出てこない
このあたりが重なると、家族だけで整理する負担が大きくなりやすいです。
遺産分割は、家族の歴史が一気に表に出る場面です。
だからこそ、感情を否定せず、でも手続きは淡々と進めるために、議題を分けて、順番に整理することがとても大切です。
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