相続登記はいつまで?義務化の期限・過料の考え方・間に合わない時の対処をやさしく解説(2026年対応)

結論から言うと、相続登記(不動産の名義変更)は「相続で取得したことを知った日から3年以内」が基本です。
さらに、相続人同士の話し合い(遺産分割)で「誰が不動産を取るか」が決まった場合は、分割が成立した日から3年以内に、その内容で登記する必要があります。

ただし現実には、「相続人が多い」「連絡が取れない」「遺言の有効性で揉めている」などで、3年以内に相続登記が難しいこともあります。
そのため、2026年時点では“間に合わない時の対処”として、比較的簡易に義務へ対応できる相続人申告登記という制度も用意されています。


目次


1. そもそも相続登記って何?義務化で何が変わった?

相続登記とは、亡くなった方名義の不動産(土地・建物)を、相続人など新しい所有者の名義に変える手続きです。法務局で行います。

2024年4月1日から相続登記が義務化され、「期限内に申請する義務」「正当な理由なく放置した場合の過料(かりょう)」が制度として明確になりました。
放置が長いほど、次の相続で相続人が増えたり、売却・活用が止まったりして、手続きが“雪だるま式”に難しくなりやすいのが相続登記の特徴です。


2. 相続登記はいつまで?「3年以内」の起点をやさしく整理

基本:3年以内 相続登記の期限は、基本的に「不動産を相続で取得したことを知った日」から3年以内です。

「知った日」っていつ?(よくあるイメージ)
  • 相続が起きた(亡くなった)ことを知った
  • 自分が相続人だと分かった
  • 相続財産に不動産があると分かった

このあたりが揃って「取得したことを知った」と整理されるイメージです。
難しく感じるときは、「亡くなった日から3年」ではなく、「相続で不動産を引き継ぐ立場だと分かった日から3年」と覚えると混乱が減ります。

遺産分割が成立したら、もう一つ“3年”が出てきます

相続人が複数いると、遺産分割協議で「誰がこの不動産を取るか」を決めることが多いです。
その場合、分割が成立した日から3年以内に、分割内容に沿った相続登記が必要になります。


3. 【2026年注意】過去の相続(昔の未登記)も対象?経過措置の期限

昔の相続も対象 義務化は「これからの相続」だけではなく、過去の相続で名義が変わっていない不動産も対象になります。

代表的な整理としては、義務化の施行日(2024年4月1日)より前の相続で未登記のものについて、経過措置として2027年3月31日までに対応が必要になる、という目安がよく案内されています。
「祖父名義のまま」「何十年も前の相続が未登記」というケースほど、いまのうちに動いた方が結果的にラクになりやすいです。


4. しないとどうなる?過料(10万円以下)の考え方と“正当な理由”

過料:10万円以下 相続登記の義務を、正当な理由なく期限までに行わない場合、10万円以下の過料の対象となり得ます。

「過料」って罰金と違うの?
  • 過料は、行政上の秩序罰として扱われるもので、一般に刑事罰(罰金)とは性質が異なります
  • ただし「払わなくていい」という意味ではなく、放置を続けるのはおすすめできません
“正当な理由”があるときはどう考える?

期限内にできない事情がある場合でも、すぐに「過料」と決めつけるのではなく、個別事情を踏まえて判断されることがあります。
一般に例として挙げられやすいのは、次のようなケースです。

  • 相続人が多数で、戸籍収集や相続人の把握に時間がかかる
  • 遺言の有効性や遺産の範囲について争いがある
  • 申請義務者が重い病気などで対応が困難
  • DV等で住所を明かせないなど、安全面の配慮が必要
  • 経済的に困窮し、登記費用の負担が難しい

ポイントは、「何もしない」より「できない理由を整理し、手を打っておく」ことです。次の章の「相続人申告登記」などを使うと、期限への対応がしやすくなります。


5. 間に合わない時の対処①:相続人申告登記(まず期限を守る)

おすすめ:まず“義務対応” 遺産分割がまとまらない、相続人の一部と連絡が取れない…などで相続登記が進めにくい場合に、比較的簡易に義務へ対応できるのが相続人申告登記です。

相続人申告登記でできること/できないこと
  • できること:「自分が相続人である」ことを登記に反映して、公示する(期限対応の“つなぎ”)
  • できないこと:「誰が所有者になるか(持分や取得者)」を確定して登記すること(売却・担保などの実務は止まりやすい)

つまり、相続人申告登記は“いつか本格的な登記をするための時間を確保する制度”として理解すると、使いどころを間違えにくいです。
遺産分割がまとまったら、改めて相続登記(名義変更)を進めます。


6. 間に合わない時の対処②:とりあえずの登記(法定相続分)→あとで更正

もう一つの考え方として、遺産分割が未了でも、いったん法定相続分で相続登記をしておき、後日分割がまとまったら更正(変更)登記をする方法があります。

この方法が向いていること
  • 期限対応を急ぎつつ、手続きを前に進めたい
  • 相続人が協力的で、共有登記でも大きな支障が少ない
注意点
  • 共有になると、売却や活用で「全員の同意」が必要になり、動きが重くなることがあります
  • 後日、分割がまとまったら“もう一回”登記が必要になり、費用・手間が増えることがあります

「相続人申告登記」と「法定相続分での登記」は、状況により向き不向きが変わるので、迷ったら早めに専門家に整理してもらうと安全です。


7. よくあるつまずき:戸籍が多い/相続人が多い/不動産が昔の名義

つまずき①:戸籍が多すぎて終わらない

相続登記では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍が必要になることが多く、転籍や改製で枚数が増えがちです。
コツは、「届いた戸籍から不足を逆算して次を請求」です。最初から完璧に集めようとすると疲れやすいので、段階的に揃える方が続きます。

つまずき②:相続人が多い(兄弟姉妹相続・代襲が重なる)

相続人が多いほど、署名・押印・印鑑証明などの調整が増えます。
この場合は、相続人申告登記で期限対応を先に済ませ、分割協議は別枠で進めると現実的なことがあります。

つまずき③:名義が祖父母のまま(世代がずれている)

世代がずれていると、相続が複数回発生している可能性があり、必要な戸籍と相続人が一気に増えます。
このタイプは、自己判断で進めるほど遠回りになりやすいので、早い段階で全体像を作るのがおすすめです。


8. 今日からできるチェックリスト:期限に間に合わせる段取り

STEP1:期限の起点をメモする(5分)
  • 亡くなった日(相続開始日)
  • 不動産を相続する立場だと分かった日(目安でOK)
  • 遺産分割が成立した日(成立している場合)
STEP2:不動産の特定(30分)
  • 固定資産税の納税通知書を探す(所在地・地番の手がかり)
  • 登記事項証明書を取得して、登記名義人を確認する
STEP3:相続人の確定(できる範囲で)
  • 家族関係図をラフで作る(再婚・養子・認知がある場合は特に大事)
  • 戸籍収集を「届いた分から」進める
STEP4:間に合わないサインが出たら“つなぎ”を検討
  • 連絡不能の相続人がいる/分割が難航している
  • 名義が祖父母で、相続が複数回の可能性がある
  • 書類が揃うまでに時間がかかりそう

この場合は、相続人申告登記や、状況に応じた進め方を検討し、「期限だけは守る」設計にしておくと安心です。


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