戸籍収集が一発で終わる手順:広域交付の使い方と不足しやすい戸籍

相続の戸籍収集は、やり方さえ決まれば「何往復もしない」形にできます。結論としては、①広域交付で取れる戸籍を“まとめて”取り、②不足しやすい戸籍(附票・兄弟姉妹関係・非電算戸籍など)を先回りして拾うのが最短です。

この記事では、2026年時点の実務感覚で、戸籍収集が一発で終わりやすい段取りを「窓口での言い方」まで含めて整理します。


目次


1. そもそも相続の戸籍収集は「何を揃える」のがゴール?

相続手続きで必要になる戸籍は、基本的に次の2セットです。

  • 被相続人 出生から死亡までの連続した戸籍(戸籍・除籍・改製原戸籍)
  • 相続人 相続人全員の現在戸籍(「今、生存している」ことの確認)

※遺言書がある場合など、提出先によって「どこまで必要か」が軽くなることもありますが、最初から上記の“フルセット”で揃えると手戻りが減ります。


2. 広域交付でできること・できないこと(まずここが分かれ目)

2024年3月1日から、本籍地以外の市区町村窓口でも戸籍証明書等を請求できる「戸籍の広域交付」が始まりました。遠方の本籍地へ郵送請求を何度もする負担が減り、相続の戸籍収集がかなりラクになっています。

(A)広域交付で「取れる」もの
  • 戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
  • 除籍全部事項証明書(除籍謄本)
  • 改製原戸籍謄本(※自治体や戸籍の状態によっては発行できない場合あり)
(B)広域交付で「取れない」もの(不足の原因になりやすい)
  • 戸籍の附票(住所の履歴)
  • 戸籍抄本(個人事項証明書)・一部事項証明書
  • 身分証明書、独身証明書などの戸籍諸証明
  • 電算化されていない古い戸籍など(本籍地対応が必要になりやすい)
(C)広域交付を「使える人」に制限がある

相続人なら誰でも使えるわけではなく、広域交付で請求できるのは一般に本人・配偶者・直系親族(父母・祖父母・子・孫など)に限られます。
また、代理人(委任状)や郵送では利用できず、窓口での本人確認(顔写真付き身分証)が必須になります。


3. 戸籍収集が一発で終わる手順(この順でOK)

ここからが本題です。ポイントは「まず広域交付で一気に取り、受け取ったその場で“連続性”をチェックして不足を潰す」です。

STEP1:手元の“手がかり”を3つだけ準備
  • 被相続人の氏名・生年月日・死亡日
  • 最後の住所(住民票の除票や死亡届の情報など)
  • 本籍地が分かればメモ(不明でもスタートは可能)
STEP2:広域交付の窓口へ(最寄りの市区町村でOK)
  • 顔写真付きの本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
  • 手数料(自治体で多少案内が異なることがあります)
STEP3:最初に頼むのは“被相続人のフルセット”
  • 「被相続人の出生から死亡までの戸籍(戸籍・除籍・改製原戸籍)を連続して一式」
  • 可能なら「転籍・改製の前後が切れないように」と一言添える
STEP4:次に“相続人側”をまとめて取る
  • 相続人全員の現在戸籍
  • (金融機関や登記で求められることが多い)
STEP5:受け取ったら、その場で「連続しているか」を確認

戸籍は、古いもの→新しいものへつながって初めて意味を持ちます。受領直後に次を見ます。

  • 「改製」「転籍」「婚姻」「除籍」などの記載で、前の本籍(前戸籍)が示されていないか
  • 出生の記載がある最初の戸籍まで遡れているか
  • 死亡の記載がある戸籍(除籍)まで到達しているか

ここで違和感があれば、窓口で「この前の戸籍(または改製原戸籍)が必要では?」と確認できます。これが“一発で終わる”最大のコツです。


4. 窓口での伝え方テンプレ(このまま読めば通じます)

広域交付窓口で、次のように伝えるとスムーズです。

  • 「相続手続きで使います。被相続人の出生から死亡まで、戸籍・除籍・改製原戸籍を連続して一式ください。」
  • 「本籍が途中で変わっている場合も、前後が切れないようにお願いします。」
  • 「あわせて、相続人全員の現在戸籍もお願いします。」
  • 「もし広域交付で出ないものがあれば、どこ(どの本籍地)に何を請求すればいいか教えてください。」

5. 不足しやすい戸籍トップ7(相続でつまずく“あるある”)

「一発で終わらなかった…」の多くは、次の不足が原因です。先回りしておくと、やり直しが激減します。

不足①:改製原戸籍(“昔の形式の戸籍”)

平成改製などで戸籍が作り替えられた場合、改製前の戸籍(改製原戸籍)が必要になります。広域交付で扱える場合もありますが、戸籍の状態や自治体の運用によっては本籍地請求が必要になることがあります。

不足②:除籍(死亡や転籍で戸籍から外れた後の記録)

死亡の記載がある最終戸籍が「除籍」になっていることは多く、ここが抜けると「死亡の確認」が弱くなります。

不足③:戸籍の附票(住所の履歴)

登記や金融機関で「住所のつながり」が必要なときに出番が多いのが附票です。
ただし附票は広域交付の対象外になりやすく、本籍地での請求が必要になることがあります。

不足④:兄弟姉妹相続で必要になる“親の戸籍”

子がいない相続などで兄弟姉妹が相続人になるケースでは、親の死亡確認などが必要になり、集める戸籍が一気に増えます。
しかも広域交付は「直系」に限定されるため、状況によっては広域交付だけで完結しにくい点に注意です。

不足⑤:前婚の子・認知・養子縁組などの見落とし

相続人漏れがあると、遺産分割協議がやり直しになりやすいです。戸籍は“知らない事実”が出てくることがあるので、出生から死亡までを揃える意味があります。

不足⑥:最新の届出が反映されていない戸籍

直近で婚姻・転籍・離婚・養子縁組などがあると、反映タイミングの都合で「窓口で出せない」と言われることがあります。その場合は、反映後に再取得、または本籍地での取得が必要になることがあります。

不足⑦:非電算の古い戸籍(システム連携で出ない)

電算化されていない古い戸籍は、広域交付で取得できないことがあります。ここに当たると、本籍地への請求(郵送等)を追加で組み立てる必要があります。


6. 広域交付が使えない・止まるケースと対処法

ケース①:請求者の範囲に入っていない(兄弟姉妹相続など)
  • 対処:本籍地への請求(郵送等)を前提に、必要範囲を整理して進めます
  • 対処:直系の立場の人(配偶者・子など)が取得できる場面は、役割分担で効率化
ケース②:代理人・郵送でやろうとして止まる
  • 対処:広域交付は原則、請求できる本人が窓口で請求します(本人確認が厳格)
ケース③:附票や抄本など「対象外」を取りに行ってしまった
  • 対処:附票・身分証明などは本籍地請求のルートへ切り替える
  • 対処:「戸籍“全部事項”をください」と明確に言う
ケース④:自治体運用で一部の証明が当面休止・予約制
  • 対処:受付時間や取り扱い(当面休止・事前予約等)は自治体ページで確認する
  • 対処:止まったら、その場で「本籍地での請求が必要なもの」を紙でメモして帰る

7. 最終チェック:この3点が揃えば「戸籍は完成」

  • 連続性 被相続人の戸籍が、出生から死亡まで“切れ目なく”つながっている
  • 相続人 相続人全員が特定でき、生存確認(現在戸籍)が揃っている
  • 提出先 登記・銀行で追加が出やすい附票など、対象外書類の有無を確認済み

ここまで揃えば、相続登記・預貯金の解約・相続税の検討など、次の手続きが一気に進みやすくなります。
「兄弟姉妹相続で範囲が広がりそう」「古い戸籍が出そう」「相続人が多い」などのサインがある場合は、早めに全体像を作っておくと安心です。


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