相続人の調べ方:戸籍で「法定相続人」を確定する手順(図解イメージ)

相続手続きで最初にやるべきことの一つが、「法定相続人を確定する」ことです。
ここが曖昧なまま進めると、後から相続人が増えてやり直しになったり、遺産分割協議が無効になってしまうことがあります。

結論から言うと、相続人の確定は難しい話ではなく、戸籍を“順番どおり”に集めて読み解くだけです。この記事では、初心者の方でも迷わないように、 「何を取るか」「どこまで遡るか」「どの順で確認するか」を図解イメージ付きで整理します。

この記事のゴール
・戸籍で法定相続人を確定する“最短ルート”が分かる
・配偶者・子・親・兄弟姉妹…誰が相続人になるのかが整理できる
・相続人漏れ(前婚の子、代襲、養子など)を防ぐチェックポイントが分かる


目次


1. 「法定相続人」とは?まず結論だけ把握しよう

法定相続人とは、法律で「相続する権利がある」と定められている人です。
相続手続き(銀行・不動産名義変更・相続税など)は、基本的に法定相続人が誰か確定していないと進みません

押さえる結論はシンプルです。

  • 配偶者 配偶者は原則として常に相続人(ただし離婚済みは除く)
  • 血族相続人 「子→親(直系尊属)→兄弟姉妹」の順で優先
  • 代襲 子や兄弟姉妹が先に亡くなっていると、その子(孫・甥姪)が代わりに相続人になることがある

この「誰が相続人か」を、戸籍で証明できる形にするのが今回のテーマです。


2. 図解イメージ:相続人はこの順で決まる

相続人の決まり方は、次の“分岐”で理解すると迷いません。

【相続人の決まり方(超ざっくり図)】

  被相続人(亡くなった方)
          │
          ├─ 配偶者(いる?)→ いるなら原則いつも相続人
          │
          └─ 血族相続人(優先順位)
                ① 子(いる?)→ いるなら「子+配偶者」
                   └ 子が先に死亡 → 孫が代襲(さらに孫が先に死亡ならひ孫…)
                ② 子がいない → 親(直系尊属)がいる? → いるなら「親+配偶者」
                ③ 親もいない → 兄弟姉妹がいる? → いるなら「兄弟姉妹+配偶者」
                   └ 兄弟姉妹が先に死亡 → 甥・姪が代襲(※ここで代襲は止まる)

つまり、戸籍でやることは「この分岐を、事実として確定する」ことです。
そのために必要なのが、出生から死亡までの戸籍の連続です。


3. 戸籍で確定する全体手順(最短ルート)

戸籍収集は、次の順番にすると手戻りが減ります。

  1. 被相続人の「死亡の記載がある戸籍」を起点にする
  2. そこから出生まで、戸籍をさかのぼって“つなげる”
  3. 戸籍から読み取れる相続人候補をリスト化する
  4. 相続人候補それぞれの戸籍を取って“生存確認・続柄確認”
  5. 最終的に「法定相続人一覧(確定版)」に落とす

コツ
最初から「相続人はこの人たちだろう」と決め打ちすると、漏れの原因になります。
戸籍は“仮説を当てる”ためではなく、“事実を確定する”ために使います。


4. まず集める書類:戸籍はどれを取る?

戸籍と一口に言っても、必要なものが複数あります。相続手続きで基本になるのは次のセットです。

書類 用途 ポイント
被相続人の戸籍一式
(現在戸籍・除籍・改製原戸籍)
出生から死亡までをつなげて、相続人候補を確定する 「死亡の記載がある戸籍」→その前の戸籍…と遡ります
相続人の戸籍 相続人であることの証明、続柄・氏名の確認 結婚・離婚・養子縁組などで氏が変わることがあります
住民票除票(被相続人)等 最後の住所確認(登記や金融機関で必要になることが多い) 戸籍の附票が必要になるケースもあります

役所に請求するときは、「相続手続きのため、被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍をすべて」と伝えると話が早いです。
本籍が転々としていると、複数の市区町村に請求が必要になることがあります。


5. 戸籍の読み方:チェックすべきポイント

戸籍を手に入れても、「どこを見ればいいの?」となりやすいので、見る場所を固定しましょう。

(1)まず見る:配偶者の有無(婚姻関係)
  • 配偶者は原則相続人なので、婚姻の事実・離婚の有無を確認します
  • 「内縁」は相続人にはなりません(別の対策が必要になります)
(2)次に見る:子の有無(全員)
  • 子がいる場合、親や兄弟姉妹よりも優先されます
  • 見落としやすいのが、前婚の子や、認知した子です
(3)子がいないとき:親(直系尊属)の生存確認
  • 子がいない場合、親が相続人になる可能性があります
  • 親が亡くなっているなら、祖父母など直系尊属へ広がることもあります
(4)親もいないとき:兄弟姉妹・代襲(甥姪)
  • 兄弟姉妹が相続人になるケースは、「子も親もいない」場合です
  • 兄弟姉妹が先に亡くなっているときは甥姪が代襲することがあります

読解のコツ
戸籍は「家族の履歴書」です。
“いま誰がいるか”ではなく、過去に誰がいたか(=子として記載があるか)を丁寧に追うと、相続人漏れが減ります。


6. 相続人が増えやすい落とし穴(前婚の子・代襲・養子など)

揉めやすい相続ほど、だいたい「相続人の想定がズレていた」ことが火種になります。よくある落とし穴を先に知っておくと安心です。

落とし穴①:前婚の子(別居していても相続人)

被相続人に前婚がある場合、前婚の子は相続人になります。連絡を取っていない場合でも、戸籍上は相続人です。
「知らなかった」では済まず、遺産分割協議は相続人全員の参加が前提なので、ここが抜けると手続きが止まります。

落とし穴②:代襲相続(子が先に亡くなっていると孫)

子が相続人になるはずなのに、子がすでに亡くなっている場合、その子(被相続人から見て孫)が代わりに相続人になります。
「孫は関係ない」と思い込むと漏れやすいポイントです。

落とし穴③:兄弟姉妹の代襲(甥姪)

兄弟姉妹が相続人になるケースでは、兄弟姉妹が先に亡くなっていると甥姪が代襲することがあります。
ただし、ここは甥姪までで、それ以上(甥姪の子)には広がらないのが原則です。

落とし穴④:養子縁組・認知

養子は実子と同じように相続人になる場合があります。認知した子も相続人になります。
家族が把握していないこともあるため、戸籍での確認が重要です。

落とし穴⑤:戸籍の取り方が途中で止まっている

「死亡が載っている戸籍だけ」「直近の戸籍だけ」だと、前婚の子などが見えないことがあります。
相続人確定は、必ず出生までさかのぼって“連続”で集めるのが基本です。


7. 法定相続情報一覧図を作ると手続きが楽になる

相続人が確定したら、次におすすめなのが法定相続情報一覧図の作成です。
これは「相続関係をまとめた公的な一覧図」で、銀行や不動産手続きなどで、戸籍の束の代わりに提示できる場面があり、実務がかなり軽くなります。

  • メリット 複数の金融機関・役所で同じ戸籍を何度も出さずに済みやすい
  • メリット 相続人を“見える化”でき、家族内の誤解が減りやすい
  • 注意 作る前提として、相続人の確定(戸籍の連続)が必要

相続人が多い、金融機関が複数ある、不動産もある——このタイプほど効果を感じやすいです。


8. すぐ使えるチェックリスト(役所→確定→共有)

  • 起点 被相続人の「死亡の記載がある戸籍」を用意した
  • 連続 出生までさかのぼるため、除籍・改製原戸籍も含めて請求した
  • 配偶者 婚姻・離婚の有無を戸籍で確認した
  • 子の記載(前婚の子・認知・養子を含む)を確認した
  • 代襲 子や兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、孫・甥姪の有無を確認した
  • 生存 相続人候補それぞれの戸籍を取り、続柄と現在の情報を整えた
  • 確定 法定相続人の一覧(確定版)を作った
  • 共有 家族に「確定した相続人」を共有し、次の段取り(遺言・分割)へ進める状態にした

最後にひとこと
相続人の確定は、相続手続きの土台です。ここが固まると、銀行・不動産・税金など、次の手続きが一気に進めやすくなります。
「戸籍の取り方が分からない」「前婚や代襲がありそうで不安」など、迷うポイントがある場合は、早めに専門家へ相談して“最短ルート”を作るのがおすすめです。


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