【初心者向け】相続した不動産の売却、何から始める?手続き・税金・失敗しない段取りをやさしく解説

相続した不動産を売るときに一番大事なのは、「名義(相続登記)と分け方(遺産分割)」を先に整えてから売却へ進むことです。
この順番を押さえるだけで、途中で止まる・揉める・税金で損をする…といったリスクがぐっと減ります。


目次


1. 「相続した不動産、売っていいの?」最初に確認する3つ

気持ちの整理がつかない中でも、まずここだけ確認すると迷いが減ります。

  • 相続人は誰か(戸籍で確定)
  • 遺言書はあるか(内容で分け方が変わる)
  • 不動産の名義は誰か(被相続人名義のままなら、原則として売却は進めにくい)

特に名義については、売る・売らないに関わらず、早めに段取りをつけておくと後がラクになります。


2. 売却までの全体の流れ:やることを“順番”で整理

「不動産会社に相談すれば全部進む?」と思いがちですが、相続不動産は先に整える工程があります。

  1. 遺言書の確認
  2. 相続人・相続財産の確認(不動産以外も)
  3. 遺産分割の方針を決める(誰が取得するか/売って分けるか)
  4. 相続登記(名義変更)
  5. 不動産会社に査定依頼 → 売却方法を決定(仲介 or 買取)
  6. 売買契約 → 引渡し(決済)
  7. 売却益が出たら確定申告(特例の検討もここで重要)

実務上は、相続登記が完了してから売却相談に入ると、話がスムーズになりやすいです。


3. 兄弟がいるときの分け方:換価分割で失敗しないコツ

相続不動産で多いのが、「家を売って現金で分けたい」ケースです。これを換価分割(かんかぶんかつ)といいます。

換価分割のやり方は大きく2つ
  • 共同登記型:相続人全員で共有名義にして売る
  • 単独登記型:代表者1人の名義にして売り、あとで売却代金を分配する

単独登記型は進めやすい一方で、書面が不十分だと「贈与では?」と誤解が生まれやすい場面があります。
対策として、遺産分割協議書に「換価分割のために代表者が取得する」など、目的と分配の前提を明確にしておくと安心です。


4. 売却前にやっておく準備:査定・片付け・境界・ローン

売却活動を始める前に、次の準備をしておくと「価格」と「売れるスピード」が変わります。

  • 査定は複数社(相場観がズレにくい)
  • 残置物(家財)の整理(内覧の印象が大きく変わる)
  • 境界確認(土地は特に重要。曖昧だと揉めやすい)
  • ローン・抵当権の確認(完済・抹消の段取り)
  • 相続人の意思統一(条件変更が起きると長引きやすい)

「あとで困る」典型は、境界抵当権です。早めにチェックしておくと安心です。


5. 売却方法はどれが合う?仲介と買取の違い

仲介(一般の買主に売る)
  • 価格は高くなりやすい
  • ただし、売れるまで時間が読みにくい
  • 内覧対応・条件交渉が発生しやすい
買取(不動産会社が買う)
  • 早く売れやすい(期限がある方に向く)
  • 内覧回数が少なめで負担が軽い
  • ただし、価格は仲介より下がりやすい

「遠方で管理できない」「空き家の傷みが進んでいる」「早く現金化したい」などの場合は、買取も現実的な選択肢になります。


6. 税金はいつ・いくら?譲渡所得の基本と税率

売却で必ず税金がかかるわけではありません。基本は「利益(譲渡所得)が出たかどうか」です。

譲渡所得(売却益)の計算

売却価格 -(取得費+譲渡費用)= 譲渡所得

相続した不動産のポイントは、所有期間を親の購入日から引き継ぐことです。
税率の判定は「売った年の1月1日時点で5年超かどうか」で変わります(一般的に、5年超のほうが税率は低くなります)。

また、「取得費(親が買った金額)がわからない」場合は、資料の探し方で税額が変わることがあります。売買契約書が見つからないときは、ローン契約書や当時の資料を探せないか検討してみてください。


7. 使えるかもしれない特例:3,000万円控除と取得費加算

相続不動産の売却では、条件に合えば税負担を大きく減らせる特例があります。代表的なのが次の2つです。

① 空き家の3,000万円特別控除

一定の条件に当てはまると、譲渡所得から大きな控除を受けられる可能性があります。
ただし要件が多く、たとえば「相続後に貸してしまった」「誰かが住んだ」などで対象外になりやすい場面があります。

② 取得費加算の特例(相続税を払っている場合)

相続税がかかっている方が一定の期限内に売ると、支払った相続税の一部を取得費に上乗せして、譲渡所得を減らせる場合があります。

どの特例が使えるかは、住んでいたか、空き家か、相続人の人数、建物の条件、売却時期などで変わります。
判断が難しいときは、早めに専門家と一緒に整理するのがおすすめです。


8. 「売らない」選択もあり:放置リスクと持ち続けるコスト

「急いで売りたくない」という気持ちも自然です。ただ、空き家のまま放置すると、

  • 固定資産税・管理費がかかり続ける
  • 建物の傷みが進む(売却価格に影響)
  • 近隣トラブルの火種になる

といった負担が積み上がります。
売る・貸す・残すのどれが良いかは、「家族の予定」と「期限(税制・登記)」で変わります。


9. 今日からできるチェックリスト:迷わない進め方

今日やる(30分)
  • 相続人の候補を書き出す
  • 物件の所在地・登記名義・固定資産税通知の有無を確認
  • 遺言書の有無を家族で確認
今週やる
  • 遺産分割の方向性を話す(売るか、残すか)
  • 不動産会社に机上査定を依頼(複数)
  • ローン・抵当権の有無を確認
今月やる
  • 遺産分割協議書の作成(換価分割なら目的を明記)
  • 相続登記の段取り
  • 税の特例(空き家の控除/取得費加算など)に当てはまるか確認

「何から手をつければいいかわからない」ときほど、順番を決めることが最大の対策になります。


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