【初心者向け】相続した不動産の名義変更(相続登記)とは?期限・必要書類・費用・進め方をやさしく解説

相続登記とは?「名義変更」をわかりやすく説明

亡くなった方(被相続人)が不動産(土地・建物・マンション等)を持っていた場合、その不動産の「登記簿上の所有者名義」を相続人に変更する手続きが「相続登記」です。

「登記簿」とは、法務局が管理する不動産の公的な台帳のことです。誰がどの不動産を所有しているかが記録されており、登記簿上の名義が被相続人のままでは、相続人が不動産を売却したり・担保に入れたり・貸したりすることができません。

日常的な言葉では「不動産の名義変更」と表現されることが多く、令和6年4月から法律上の義務になりました。以前は「いつかやればいい」と後回しにされがちでしたが、現在は期限内に行わないと過料(罰則的な金銭負担)の対象になります。

💡 この記事でわかること:
相続登記の基本的な意味、なぜ義務化されたか、3年以内の期限の詳細、不動産の確認方法、遺産分割・遺言・法定相続の3ルート別の手順、必要書類の全体一覧、費用の内訳、自分でやるか専門家に頼むかの判断基準、急場しのぎの「相続人申告登記」まで、初心者向けにやさしく解説しています。

なぜ相続登記が必要なのか:義務化の背景

これまで日本では相続登記に期限がなく、長年にわたって放置されてきた不動産が問題になっていました。

📌 放置が続いた結果として起きた社会問題:

所有者不明土地の増加:登記簿を見ても現在の所有者がわからず、公共工事・災害復旧・まちづくりが進められない
数次相続の複雑化:親→子→孫と登記を放置すると、権利関係が複雑になり手続きに膨大な時間とコストがかかる
空き家問題:所有者不明のまま放置された家屋が防災・防犯上の問題になる

これらを解消するために令和6年(2024年)4月1日から相続登記が義務化されました。

期限:相続を知った日から「3年以内」

相続登記の期限は、「相続開始(被相続人の死亡)を知り、かつ不動産を相続したことを知った日から3年以内」です。

⏰ 期限の詳細
義務化の開始日 令和6年(2024年)4月1日
期限 相続(または遺贈)を知った日から3年以内
義務化前の
相続にも適用
義務化前(令和6年4月1日以前)に発生した相続も対象。ただし、この場合の期限は令和9年(2027年)3月31日まで(経過措置)
期限を過ぎると 正当な理由なく申請しないと最大10万円の過料の対象になる(法務局から通知→催告→過料の流れ)
正当な理由
(過料が免除される場合)
相続人が多数で戸籍収集に時間がかかる・相続人間で訴訟中・DV等で連絡できない相続人がいる 等
⚠️ 「3年以内に遺産分割を完了しなければいけない」わけではありません。
遺産分割協議がまとまらない場合でも、「相続人申告登記」(Section 11参照)という暫定措置を申請することで期限を守ることができます。遺産分割が決まったら改めて正式な相続登記を行います。

相続登記が必要な不動産の確認方法

被相続人がどの不動産を持っていたかを確認する方法を整理します。

  • 権利証(登記識別情報・古いものは登記済証)を探す:法務局から交付されており、物件の情報が記載されている。紛失しても登記の効力は失われないが、物件特定の手掛かりになる
  • 固定資産税の納税通知書を確認:毎年春に市区町村から届く。課税される不動産の一覧が記載されており、被相続人が所有していた不動産を特定しやすい
  • 名寄帳(固定資産課税台帳の写し)を取得:市区町村役所(東京23区は都税事務所)で申請すると、被相続人名義の全不動産の一覧を確認できる。相続人であることを証明する書類が必要
  • 登記事項証明書(登記簿謄本)を法務局で取得:物件の特定ができていれば登記事項証明書を取得して現在の登記情報を確認できる。オンライン取得(登記情報提供サービス)も可能
💡 田舎の土地・昔の家など、存在を忘れていた不動産に注意:
被相続人の実家・農地・山林・別荘等、家族が把握していなかった不動産が後から判明するケースがあります。名寄帳での確認を特におすすめします。後から発見された場合も義務化の対象になります。

相続登記の3つのルート:どれで進めるか

相続登記には「どのように不動産を引き継ぐか」によって3つのルートがあります。自分のケースに合うルートを確認してください。

ルート 内容 こんな場合に
① 遺産分割協議
による登記
相続人全員で話し合い(遺産分割協議)を行い、誰が不動産を取得するかを決めてから登記する 遺言書がない場合・遺言書があっても不動産の分割方法が指定されていない場合
② 遺言書
による登記
遺言書で不動産の相続先が指定されている場合に、その内容に従って登記する 遺言書に「○○に自宅を相続させる」等の記載がある場合
③ 法定相続分
による登記
遺産分割協議が整わない場合に、法律で決まった割合(法定相続分)で全員の共有名義として登記する 相続人間で合意が取れない・遺産分割協議が長引いている場合
最終的には「①遺産分割協議による登記」が最もスッキリします:
③の法定相続分での共有名義登記は「誰かが負担を押しつけた」形になりやすく、将来売却・活用する際に全員の合意が必要で複雑になります。できれば①で特定の一人に名義を集中させる形の合意を目指すことをおすすめします。

【ルート①】遺産分割協議による相続登記の手順

最も一般的なルートです。相続人全員で話し合い、誰が不動産を取得するかを決めてから申請します。

相続人全員を確定する(戸籍謄本の収集) 被相続人の出生〜死亡まで連続した戸籍と、相続人全員の現在の戸籍が必要
不動産の登記事項証明書を取得して現在の登記状況を確認する
固定資産評価証明書を取得する(登録免許税の計算に必要) 不動産の所在地の市区町村(東京23区は都税事務所)で取得
遺産分割協議書を作成し、全相続人が自署・実印押印する 相続人全員の印鑑登録証明書が必要
登記申請書を作成する 法務局のHPから書式・記載例が入手可能
不動産の所在地を管轄する法務局に書類を提出する 窓口持参・郵送・オンライン申請のいずれかで
登記が完了したら「登記識別情報通知」が交付される 完了まで通常1〜2週間程度

【ルート②】遺言書による相続登記の手順

遺言書で不動産の相続先が指定されている場合は、遺産分割協議書が不要で手続きが比較的シンプルです。

📋 遺言書による相続登記の必要書類
遺言書の原本 公正証書遺言:公証役場の正本または謄本
自筆証書遺言:検認済みのもの(法務局保管なら遺言書情報証明書)
被相続人の
戸籍謄本
死亡の事実が確認できるもの(全連続は不要な場合が多い)
相続人・受遺者の
戸籍謄本
不動産を取得する人のもの
住民票の写し 取得する相続人の住所証明として
固定資産評価証明書 登録免許税の計算に使用
遺言書があると相続人全員の署名・実印・印鑑証明書が不要になります:
遺言書で指定された相続人(受遺者)が単独で登記申請できるため、他の相続人が非協力的でも手続きを進めることができます。

【ルート③】法定相続分による相続登記の手順

遺産分割協議が整わない場合でも、法律で定められた相続割合(法定相続分)で共有名義として登記することが可能です。各相続人が「自分の法定相続分」について単独で申請できます。

特徴と注意点:

・遺産分割協議書・相続人全員の署名押印は不要
・相続人の一人が単独で申請可能
・ただし不動産が相続人全員の「共有名義」になる
・将来売却・活用するには共有者全員の同意が必要になるため、将来のトラブルの種になりやすい
・遺産分割が確定した後に「更正登記」または「持分移転登記」で名義を整理する必要がある
⚠️ 共有名義は「暫定的な対応」として位置づけてください。
法定相続分での共有名義登記は将来の売却・相続で大きな手間とコストが発生します。できる限り遺産分割協議を進めて、一人の相続人名義に整理することをおすすめします。

必要書類の全体一覧

書類 取得先・補足 ルート① ルート② ルート③
登記申請書 法務局HPから書式入手・自作
被相続人の戸籍謄本
(出生〜死亡まで連続)
各本籍地の市区町村
(死亡確認分のみでよい場合も)
被相続人の住民票の除票 最後の住所地の市区町村
相続人全員の現在の戸籍謄本 各本籍地の市区町村
(取得者のみ)
遺産分割協議書+
全相続人の印鑑証明書
相続人全員が作成・各市区町村
遺言書(原本または謄本) 公証役場・法務局・自宅で発見したもの
不動産取得者の住民票の写し 現住所地の市区町村
固定資産評価証明書 市区町村(東京23区は都税事務所)
登記事項証明書(参考用) 法務局(申請には不要だが事前確認に) 参考参考参考
💡 法定相続情報一覧図があると戸籍謄本の束が不要になります:
法務局で取得できる「法定相続情報一覧図の写し」を添付すれば、戸籍謄本の束の代わりに使用できます。複数の金融機関・法務局に同時に手続きを進める場合に特に便利で、複数枚交付してもらえます。

費用の内訳:登録免許税・取得書類・司法書士報酬

🏛️ 登録免許税 最も大きな費用
固定資産評価額 × 0.4%

例:評価額2,000万円の場合
2,000万円 × 0.4% = 8万円

収入印紙で納付。登記申請時に申請書に貼付する
📄 書類取得費用 実費
戸籍謄本:1通450〜750円
住民票の除票:200〜300円
固定資産評価証明書:200〜400円
登記事項証明書:600円

通数によって変動。全体で5,000〜3万円程度
👨‍💼 司法書士報酬 依頼する場合
不動産1件:5〜15万円程度
複数件・複雑なケース:10〜30万円程度

事務所・地域・複雑さによって異なる。書類収集から申請まで代行してもらえる
費用の目安(具体例):

📍 東京都内の自宅マンション(固定資産評価額2,000万円)を1人が相続する場合
登録免許税:8万円+書類取得費用:1〜2万円+司法書士報酬:8〜15万円
→ 合計目安:17〜25万円程度

📍 地方の土地(固定資産評価額200万円)を相続する場合
登録免許税:8,000円+書類取得費用:1万円程度+司法書士報酬:5〜10万円
→ 合計目安:6〜12万円程度
令和6年4月から「低価値な土地の相続登記」には登録免許税が非課税になる特例もあります:
固定資産評価額が100万円以下の土地(市街化区域外の農地・山林等)は、相続登記の登録免許税が非課税になる特例が設けられています。詳細は法務局または司法書士にご確認ください。

自分でできる?専門家に頼むべき?判断基準

状況 推奨 理由
相続人が1人
相続人関係が単純
自分で挑戦も可能 法務局のHPに記載例あり。書類収集と申請書作成で1〜2ヶ月かかるが、実費のみで完結できる
相続人が複数
遺産分割協議が必要
専門家推奨 協議書の法的な有効性・書類の正確性が重要。不備があると全てやり直し
不動産が複数件・
複数都道府県
専門家必須に近い 管轄法務局が異なる。書類の組み合わせが複雑になる
遺言書がある 専門家推奨 遺言書の種類によって手続きが異なる。検認の要否・執行者の有無等の確認が必要
住所変遷・旧字体等
の複雑な問題がある
専門家必須 同一性の証明等、法務局との調整が必要。専門家でないと対処が難しい
相続人間で争いがある 司法書士または
弁護士に依頼
共有名義での暫定登記・更正登記等の対応が必要。弁護士が先に入る場合もある
💡 法務局の「相続登記の相談窓口」も活用できます:
法務局では無料の登記相談を行っています。書類の確認・記載方法の質問をすることができますが、申請書の作成代行は行っていません。自分でやってみる場合の最初の相談先として活用してください。

「相続人申告登記」:急場しのぎの暫定措置

遺産分割協議がまとまっていない・書類収集が間に合わない、でも3年の期限が迫っている——そんな場合に活用できる暫定措置が「相続人申告登記」です。

📋 相続人申告登記の概要 令和6年4月から新設
内容 「自分が相続人であること」を法務局に申出するだけの簡易な手続き。所有権移転登記ではなく、相続人の情報を登記簿に付記するもの
効果 登記申請義務を果たしたとみなされる。3年の期限内に申出すれば過料の対象にならない
必要書類 申出書(法務局の書式)+戸籍謄本(相続人であることが証明できるもの)+本人確認書類
費用 登録免許税なし(無料)
その後の対応 遺産分割が確定したら改めて正式な相続登記(所有権移転登記)が必要。相続人申告登記は正式な名義変更ではない
「とりあえず期限を守る」ための最も手軽な方法:
遺産分割の話し合いに時間がかかっている場合でも、まず相続人申告登記で期限を守り、その後ゆっくり正式な手続きを進めることができます。無料で手軽に申請できるため、急いでいる場合は積極的に活用してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. 相続登記をしないと不動産を売れませんか?
原則として売れません。不動産を売却するには登記簿上の所有者(または全ての相続人)として手続きをする必要があります。名義が被相続人のままでは、買主への所有権移転登記ができないため、実務上は相続登記を行ってから売却するのが通常の流れです。
Q. 10年前に亡くなった親の家の名義変更をしていません。今からでもできますか?
できます。義務化前の相続分も含めて、経過措置として令和9年(2027年)3月31日までに申請すれば過料の対象になりません。なるべく早く手続きを進めてください。相続人の一人が亡くなっている「数次相続」になっている場合は特に複雑になるため、司法書士への相談をおすすめします。
Q. 相続登記は法務局にどうやって申請しますか?
申請方法は3つあります。①窓口持参(不動産の所在地を管轄する法務局)②郵送(管轄法務局宛に書留郵便)③オンライン申請(登記・供託オンライン申請システム「申請用総合ソフト」を使用)のいずれかです。初めての方には窓口持参または郵送が確認しやすくておすすめです。
Q. 相続人が海外在住の場合、相続登記はどうすればいいですか?
海外在住の相続人が遺産分割協議書に署名する場合、印鑑証明書の代わりに在外公館(大使館・領事館)発行のサイン証明書を使用します。住民票の代わりには在外公館発行の「在留証明書」を使用します。手続きに時間がかかるため、早めに準備を始めてください。
Q. 相続登記の費用は相続財産から出せますか?
相続人間の合意があれば相続財産から支出することも可能です。「手続きを担当した相続人が立て替えて後で精算する」方法と「遺産分割協議書に『登記費用は遺産から支出する』と記載する」方法があります。遺産分割前に担当者が立て替える場合は、領収書を全て保管して後で精算してください。

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