相続登記の費用はいくら?登録免許税・司法書士報酬・実費の内訳
相続登記(不動産の名義変更)にかかる費用は、大きく分けてこの3つです。
- ① 登録免許税 国に納める税金(固定資産税評価額がベース)
- ② 司法書士報酬 依頼した場合の手数料(事務所・難易度で変動)
- ③ 実費 戸籍・住民票・評価証明・登記簿などの取得費、郵送費など
結論から言うと、費用の“芯”になるのは登録免許税です。
まず登録免許税の目安を出し、その上に「司法書士報酬」「実費」を積み上げると、見積りがブレにくくなります。
この記事のゴール
・相続登記の費用の内訳(税金/報酬/実費)がスッキリ分かる
・登録免許税を自分で計算できるようになる(早見表つき)
・見積りで揉めやすいポイント(追加費用の発生条件)も先に押さえられる
目次
1. 相続登記の費用は「税金+報酬+実費」の3階建て
相続登記の費用で、よくある誤解は「司法書士報酬が全部」になってしまうことです。
実際には、税金(登録免許税)が大きく、ここが動くと合計も大きく動きます。
| 費用項目 | 支払先 | ざっくり感覚 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 国(登記の税金) | 固定資産税評価額 × 0.4% が基本 |
| 司法書士報酬 | 司法書士事務所 | 難易度・物件数・戸籍の量で変動 |
| 実費 | 役所・法務局・郵便など | 数千〜数万円(件数が多いと増える) |
2. 登録免許税はいくら?計算式と丸め方(ここが本体)
登録免許税は、法務局の資料でも基本式が示されていて、考え方はとてもシンプルです。
【登録免許税(相続登記)の基本式】 登録免許税 = 課税標準 × 税率 ・課税標準:原則「固定資産税評価額」(土地+建物などは合算) ・税率:相続による所有権移転は 0.4%(= 4/1000) ・丸め方(代表的な流れ): ① 評価額を合算 ② 1,000円未満切り捨て(課税標準) ③ 0.4%を掛ける ④ 100円未満切り捨て(税額)
評価額は「固定資産税課税明細書」や「固定資産評価証明書」に載っていることが多いので、まずそこを探すのが最短です。
具体例(戸建て:土地+建物)
たとえば、土地1,812万3456円+建物2,012万3456円なら、次のように計算します。
- 合算:3,824万6912円
- 課税標準(1,000円未満切捨て):3,824万6000円
- 税額:3,824万6000円 × 0.4% = 15万2984円
- 100円未満切捨て:15万2900円
ここだけ覚える
登録免許税は「固定資産税評価額×0.4%」が基本。
ただし、1,000円未満と100円未満の切り捨てが入るので、端数が出ます。
3. 登録免許税の早見表(評価額別の目安)
「まずざっくり知りたい」方向けに、評価額だけで見た目安です(丸めはざっくり)。
| 固定資産税評価額(合算) | 登録免許税(目安) | イメージ |
|---|---|---|
| 1,000万円 | 約4万円 | 1,000万 × 0.4% = 4万 |
| 2,000万円 | 約8万円 | 2,000万 × 0.4% = 8万 |
| 3,000万円 | 約12万円 | 3,000万 × 0.4% = 12万 |
| 5,000万円 | 約20万円 | 5,000万 × 0.4% = 20万 |
注意点として、評価額は「時価」ではなく固定資産税評価額です。
売買価格のイメージとズレることがあるので、必ず評価証明などで確認すると安心です。
4. 免税・軽減になるケース(知らないと損しやすい)
相続登記の登録免許税は、一定の条件で免税措置が用意されています。該当する場合は負担が大きく変わるので、早めにチェックする価値があります。
(1)「相続した人が登記する前に亡くなった」ケース
相続で土地を取得した人が、名義変更(相続登記)をしないまま亡くなった場合、一定期間内の登記について登録免許税がかからない特例があります。
(2)土地の価額が100万円以下のケース(一定期間の特例)
土地について、保存登記や相続による移転登記で、課税標準となる価額が100万円以下のときに登録免許税が非課税になる特例があります。
「山林や小さな土地が多数ある」「評価が低い土地が混ざっている」場合に効くことがあります。
ポイント
免税措置は期限があり、適用要件も細かいので、
「うち該当しそう?」と思ったら、登記前に条件確認するのが安全です。
5. 司法書士報酬の相場と“上下する条件”
司法書士報酬は自由化されているため事務所ごとに差がありますが、相場観としては5万〜15万円程度、もう少し絞ると7万〜10万円前後が目安として紹介されることが多いです。
報酬が上がりやすい条件
- 不動産の数が多い 土地が複数筆、建物が複数、マンション+駐車場など
- 相続人が多い 連絡調整や戸籍範囲が広くなりやすい
- 遺産分割が複雑 代償分割・換価分割・共有解消など
- 戸籍が多い 転籍が多い、改製原戸籍の量が多い
- 追加業務を頼む 戸籍収集代行、法定相続情報一覧図、協議書作成支援など
見積りで確認したい“ひとこと”
この見積りには、戸籍収集と法定相続情報一覧図と遺産分割協議書の作成支援は含まれていますか?
含まれない場合、追加はいくらになりますか?
6. 実費の内訳(戸籍・評価証明・登記簿・郵送など)
実費は「1回は少額でも、積み上がる」タイプの費用です。代表例をまとめます。
| 実費 | 何のため? | 目安 |
|---|---|---|
| 戸籍謄本 | 相続関係の証明 | 通数が増えると積み上がる |
| 除籍・改製原戸籍 | 出生〜死亡までをつなげる | 転籍が多いと増えやすい |
| 住民票・住民票除票 | 住所の証明 | 登記名義人・被相続人で必要になることが多い |
| 固定資産評価証明書 | 登録免許税の計算 | 不動産ごとに必要なことがある |
| 登記事項証明書(登記簿) | 不動産情報の確認 | 物件数ぶん必要になりやすい |
| 郵送費・交通費 | 各所の請求・提出 | 遠方の役所があると増える |
「実費込み」の定額プランがある事務所もありますが、実務ではケース差があるため、どこまで含むかは見積りで確認すると安心です。
7. ケース別の合計イメージ(自分でやる/依頼する)
あくまで目安ですが、費用感が掴めるようにイメージを置きます。
ケースA:評価額3,000万円の不動産を1人が相続(シンプル)
- 登録免許税 約12万円
- 実費 数千〜2万円程度(戸籍通数などで変動)
- 司法書士報酬 依頼するなら目安7〜15万円程度
→ 合計の目安:自分で申請なら約13〜14万円前後/依頼なら約20〜30万円前後
ケースB:土地が複数筆・相続人が多い(複雑)
登録免許税に加えて、戸籍収集や連絡調整、不動産の数(筆数)が増えると、報酬・実費が上がりやすいです。
このタイプは「安くする」より「やり直しを減らす」視点が結果的に負担を減らすことがあります。
8. 失敗しない見積りの取り方チェックリスト
- 税金 固定資産税評価額(合算)を確認し、登録免許税の概算を出した
- 物件数 土地は「筆数」、建物、敷地権など、登記対象の数を把握した
- 分岐 遺言で進める/遺産分割協議で進める、どちらか方針がある
- 範囲 見積りに「戸籍収集」「法定相続情報一覧図」「協議書作成支援」が含まれるか確認した
- 追加条件 “追加費用が出る条件”(相続人増、物件追加、評価証明追加など)を確認した
- 免税 免税措置に当てはまりそうか(特に土地の100万円以下など)を確認した
相続登記の費用は、仕組みを知っていれば「見積りのズレ」が減ります。
まず登録免許税を自分で概算し、見積りでは「どこまで含むか」「追加条件は何か」を押さえる。これだけで、納得感がかなり上がります。
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