相続人が行方不明のとき:不在者財産管理人の申立てをやさしく解説
相続手続きで一番困る場面のひとつが、相続人の中に「行方不明・連絡が取れない人」がいるケースです。
結論から言うと、遺産分割協議(だれが何を相続するかの話し合い)は、原則として相続人全員の参加が必要なので、行方不明者がいると手続きが止まりやすくなります。
ただ、止まったまま…にしないための現実的な方法があります。この記事では、まず「探す」→それでも無理なら「家庭裁判所の手続きへ」という順番で、不在者財産管理人を中心にやさしく整理します。
目次
まず確認:「行方不明」の種類で、やることが変わります
「行方不明」にはグラデーションがあります。
この違いで、選ぶ手続き(探し方/家庭裁判所の手続き)が変わります。焦って飛ばさず、まずは「どのタイプか」を家族で確認するのが近道です。
最初にやるべき「探し方」:戸籍・附票・住民票で追う
いきなり裁判所へ…の前に、まずは「手続き上、見つけられる範囲」をきちんと当たります。 特に相続では、戸籍の附票(住所の履歴)が手がかりになることが多いです。
探す順番(おすすめ)
- 戸籍で相続人を確定(漏れがあると後で全部やり直しになります)
- 相続人の戸籍の附票を取り、住所履歴を確認
- 最新の住所が分かったら、手紙(配達記録など)で連絡を試みる
- 戻ってきた郵便物は、後の「不在の事実」の資料になり得ます(捨てずに保管)
- それでも無理なら、次の章の「不在者財産管理人」を検討
※「探した経緯」が、家庭裁判所の手続きで重要になります。メモ(いつ・どこで・何を取得/送付したか)を残しておくと、後がスムーズです。
それでも見つからないとき:不在者財産管理人とは?
不在者財産管理人は、行方不明の相続人(不在者)がいるときに、 家庭裁判所が選任し、不在者の財産を守りながら必要な手続きを進めるための制度です。
ポイントは「目的が保全」であること
- 制度の中心は、不在者の財産を守る(管理・保存する)こと
- 相続の場面では、不在者の代わりに遺産分割協議へ関与できる道が開けます
- ただし、遺産分割協議への参加や財産処分などは、別途「権限外行為許可」が必要です(後述)
手続きの流れ:申立て〜選任〜相続手続き再開まで
全体の流れ(ざっくり7ステップ)
- 相続人の確定(戸籍)と、行方不明者の「不在状況」の整理
- 不在者の財産(例:遺産の中の持分、預金、不動産など)を洗い出す
- 家庭裁判所へ不在者財産管理人選任を申立て
- 裁判所の審理(追加資料の指示が出ることがあります)
- 管理人が選任される(親族や専門職が候補になることがあります)
- 遺産分割協議を進める場合は、管理人が「権限外行為許可」を申立て
- 許可後、遺産分割協議→相続登記や銀行手続きへ
必要書類:家庭裁判所に出す“定番セット”
申立てで求められる資料は裁判所が案内しています。代表的なものは次のとおりです。 (裁判所から追加提出を求められることもあります)
申立てに必要になりやすい書類
- 申立書
- 不在者の戸籍謄本、戸籍の附票
- 財産管理人候補者の住民票等
- 不在の事実を証する資料(例:行方不明者届の受理証明、返送郵便など)
- 不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、預貯金資料など)
- 相続人等としての利害関係を示す資料(戸籍など)
コツ:「不在の証拠」と「財産の資料」が薄いと、追加資料になりやすいです。先に揃えておくと手戻りが減ります。
費用と期間の目安:どれくらいかかる?
まず知っておきたいのは、この手続きは「一発で終わる」より「段階を踏む」ことです。 選任と、必要なら権限外行為許可がセットになりやすいからです。
費用のイメージ
- 申立ての実費(収入印紙・郵便切手など):裁判所の案内に沿って準備
- 予納金が必要になる場合があります(管理人の報酬等に備える趣旨)
- 実務上、財産(預貯金等)が十分でないと、申立人が立替えるケースが出ます
期間のイメージ
- 資料が揃っていれば比較的スムーズに進むこともありますが、追加資料や照会が入ると延びます
- 遺産分割まで進める場合は、選任後に「権限外行為許可」も必要になり、トータルで時間がかかりやすいです
注意点:管理人が入っても「すぐ終わらない」理由
よくある誤解(ここでつまずきやすいです)
- 誤解1:管理人が選ばれたら、すぐ遺産分割できる → 遺産分割協議には「権限外行為許可」が必要になりやすいです
- 誤解2:他の相続人に有利な分け方でも通る → 不在者の利益を害する案は許可されにくいため、分割案の作り方が重要です
- 誤解3:管理人が全部やってくれる → 管理人の役割は「不在者側の保全・代理」です。相続人側の整理(資料集め・合意形成)は別途必要です
実務で安全な進め方
- まず遺産の全体像(預金・不動産・株・負債)を固める
- 次に、不在者に割り当てる案(法定相続分を意識)を作る
- その上で、管理人が裁判所へ「権限外行為許可」を申立てる
失踪宣告との違い:どっちを選ぶ?
行方不明の手続きには、もう一つ「失踪宣告」があります。 ざっくり言うと、不在者財産管理人=生存前提で財産を守る、失踪宣告=死亡とみなして相続関係を進める、という違いです。
選び方の目安
- 生存している可能性が高い/行方不明期間が短い → 不在者財産管理人が現実的
- 長年消息不明で、生死不明に近い → 失踪宣告を検討(要件に当てはまるか確認が必要)
どちらが適切かは「状況」と「その後に必要な手続き」で変わります。迷う場合は、相続の全体設計(登記・銀行・税)と一緒に整理すると判断がぶれにくいです。
今日からできるチェックリスト(家族で共有)
- 相続人の戸籍は揃った?(漏れがあると最初からやり直し)
- 附票で住所履歴を追った?(最新住所が出れば連絡できる)
- 連絡の記録(送付日・宛先・返送の有無)を残した?
- 不在の証拠(受理証明、返送郵便等)を保管した?
- 不在者の財産資料(登記簿、預金資料)を集めた?
- 「選任」→必要なら「権限外行為許可」の二段階を想定できている?
ここまで整理できると、家庭裁判所の手続きも、専門家への相談も一気に進めやすくなります。
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