【保存版】相続手続きに必要な戸籍と書類の集め方|どこで・何を・どう集める?行政書士が分かりやすく解説

相続手続きに必要な書類:全体像と収集の考え方

相続手続きを進める中で最も時間がかかるのが「書類の収集」です。戸籍謄本だけで数通〜十数通が必要になることもあり、どこで・何を・どの順番で集めればよいか迷う方が多くいます。

書類収集の全体像を理解するためのポイントは2つです。第一に「手続きの種類によって必要書類が異なる」こと、第二に「法定相続情報一覧図を先に取得すると後の手続きが大幅に楽になる」ことです。

📋 相続手続きに必要な書類の全体マップ
書類の種類 どこで取るか 主な用途
戸籍謄本類
(除籍・改製原戸籍等)
本籍地の市区町村
または広域交付
相続人の確定・銀行・法務局・年金事務所等の全ての手続き
法定相続情報
一覧図の写し
法務局(無料) 戸籍謄本の代替として各種手続きで使用可能
印鑑証明書 住所地の市区町村 遺産分割協議書への押印・銀行手続き
住民票
(住民票の除票)
住所地の市区町村 相続登記・法定相続情報の申請
固定資産評価
証明書
不動産所在地の
都税事務所・市区町村
相続登記(登録免許税計算)・相続税申告
登記事項証明書
(登記簿謄本)
法務局
(オンライン可)
不動産の現況確認・相続登記申請
残高証明書
(銀行・証券)
各金融機関 相続税申告(財産の確認)
💡 この記事でわかること:
戸籍4種類の違い、「出生から死亡まで連続した戸籍」の意味、取得方法(窓口・郵送・広域交付)、転籍が多い場合の対処法、法定相続情報一覧図の活用法、手続き先別書類早見表、印鑑証明書・住民票等の取得方法、よくある書類の不備パターンまで解説しています。

戸籍謄本の種類と役割:4種類の違いをやさしく解説

相続手続きで「戸籍謄本を集めてください」と言われますが、戸籍には4種類あり、それぞれ取得できる情報が異なります。

種類 内容 いつ使うか
戸籍謄本
(現在の戸籍)
現在も有効な戸籍の記載事項を全部写したもの。生存している相続人の現状確認に使う 相続人の確認・銀行手続き・相続登記等(相続人全員分)
除籍謄本
(全員除かれた戸籍)
戸籍に記載された全員が死亡・転籍等で除かれた場合に「除籍」となった戸籍。被相続人の死亡が記載されている 被相続人の死亡の確認・相続開始の証明
改製原戸籍
(かいせいはらこせき)
法改正等で戸籍の様式が変わった際に作り直す前の古い戸籍。「はらこせき」と読む。以前の記載内容を確認するために必要 被相続人の出生からの全記録をたどる際に必要(特に昭和・大正時代の記録)
戸籍の附票 その戸籍に在籍中の住所の変遷が記録されている書類。戸籍謄本とは別に取得 相続登記で相続人の住所履歴を証明する際(被相続人の住所変更が多い場合)
手数料の目安:
・戸籍謄本:450円/通
・除籍謄本・改製原戸籍:750円/通
・戸籍の附票:300円(市区町村によって異なる)
・住民票の除票:300〜450円(市区町村によって異なる)

「出生から死亡まで連続した戸籍」とは何か

銀行や法務局から「被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍をご用意ください」と言われて戸惑う方が多いですが、なぜ「出生から」が必要なのかを理解すると、何を集めるべきかが明確になります。

「出生から死亡まで」が必要な理由:

相続人を確定するためには、被相続人に「過去に認知した子」や「前婚での子」がいないことを証明する必要があります。現在の戸籍だけでは、過去に別の家族があったかどうかがわかりません。そのため出生時から現在(死亡時)まで、全ての戸籍を「つなぎ合わせて」完全な相続関係を確認します。
📋 連続した戸籍をたどる仕組み
現在の戸籍
(死亡が記載されたもの)
最新の除籍謄本(または戸籍謄本)から取得開始。
ここに「転籍前の本籍地・筆頭者名」が記載されているので、その情報をもとに前の戸籍を取り寄せる
前の戸籍
(転籍前)
前の本籍地の市区町村に請求して取り寄せる。
取り寄せた戸籍にさらに「前の本籍地」が記載されていれば、そこからまた取り寄せる
出生が記載された
最も古い戸籍
被相続人の「出生」が記載されている最も古い戸籍まで遡れれば、連続した戸籍の収集が完了。
昔の戸籍は「家」単位(戸主制度)で記載されており、祖父母等と同じ戸籍に記載されていることがある
⚠️ 「転籍」の回数が多いほど戸籍の種類が増えます。
引っ越しのたびに本籍地を変えていた方(転籍が多い方)は、戸籍謄本が5〜10通以上必要になることもあります。「全部揃えたつもりだったが1か所分が足りなかった」という差し戻しが最も多いミスのひとつです。

戸籍の集め方①:窓口・郵送・広域交付の比較

取得方法 特徴・手順 こんな場合に向く
窓口での取得
(本籍地の市区町村)
本籍地の市区町村役場の窓口に直接行く。本人確認書類・手数料が必要。即日交付が可能
「次はどこに請求すればよいか」を窓口で確認できるのが最大のメリット
本籍地が近い場合・次の請求先を確認しながら進めたい場合
郵送での取得 本籍地の市区町村に郵送で請求。
①戸籍謄本等交付申請書(各市区町村の様式または独自の書式)
②本人確認書類のコピー
③定額小為替(手数料分・郵便局で購入)
④返信用封筒(切手貼付)を同封して送る。
到着まで1〜2週間程度かかることが多い
本籍地が遠方の場合・複数の市区町村に同時並行で請求する場合
広域交付制度
(令和6年3月〜)
住所地または最寄りの市区町村窓口で、他の市区町村の戸籍を取得できる制度。申請者本人が窓口に来ることが条件(代理人・郵送は不可)。
ただし改製原戸籍は対象外の場合あり。午後4時頃までの受付が多い
複数の本籍地の戸籍を一か所でまとめて取りたい場合・本籍地が遠い場合
コンビニ交付 マイナンバーカードを使ってコンビニで取得可能(6:30〜23:00)。
ただし現在の戸籍謄本・住民票等に限られ、除籍謄本・改製原戸籍はコンビニ交付非対応のことが多い
現在の戸籍謄本が必要な場合のみ。相続手続き全体の収集には不十分
「広域交付」と「郵送」の組み合わせが最も効率的:
現在の戸籍・除籍は広域交付で最寄りの窓口からまとめて取得し、改製原戸籍(古い戸籍)は本籍地の役所に郵送で並行請求する組み合わせが、時間と手間の両方を節約できる実務上の最善策です。

戸籍の集め方②:転籍が多い場合の効率的な進め方

転籍(本籍地の変更)が多い方の戸籍を集める場合、効率的に進めるコツがあります。

STEP1:最新の戸籍(除籍謄本)から取得を始める

死亡が記載された最新の除籍謄本を取得することから始めます。この除籍謄本には「転籍前の本籍地」が記載されているため、次に請求する市区町村がわかります。

記載例:「〔転籍〕○年○月○日 △△市□□町□□番地より転籍」→ この「△△市□□町」が前の本籍地

STEP2:複数の市区町村に「並行して」郵送請求する

戸籍は1通取得するたびに次の請求先がわかる構造のため、順番に1通ずつ請求していると非常に時間がかかります。ある程度の本籍地の見当がつく場合は複数の市区町村に並行して郵送請求することで大幅に時間を短縮できます。

ポイント:パスポートの申請書等で過去の本籍地の記録が手元にある場合は、その情報を活用する。ご家族に「以前どこに住んでいたか・本籍地がどこだったか」を聞いておくことも有効

STEP3:行政書士への委任も有効な手段

転籍が多い・本籍地が全国に散らばっている・時間がない等の場合は、行政書士に戸籍収集を委任することができます。行政書士は相続関係の書類収集の専門家として各市区町村への請求を代行できます。費用の目安は戸籍収集のみで3〜8万円程度(戸籍の通数・複雑さによって変動)。

法定相続情報一覧図:一度取得すれば複数手続きで書類省略

相続手続きで最も活用すべき制度が「法定相続情報証明制度」(法定相続情報一覧図)です。

📋 法定相続情報一覧図のポイント
何ができるか 相続関係を一覧にした図を法務局に申請することで、法務局の認証印が押された「法定相続情報一覧図の写し」を無料で複数枚取得できる。この写しがあると各種手続きで戸籍謄本の束を省略できる
費用 無料(戸籍謄本の収集費用は別途かかる)
交付できる枚数 複数枚(必要な枚数を申請できる)→ 複数の銀行・法務局等に同時提出が可能
申請先 全国どこの法務局(登記所)でも申請可能
申請に必要な書類 ①被相続人の戸籍謄本(出生〜死亡の連続したもの)
②相続人全員の現在の戸籍謄本
③被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
④申請者(相続人の一人)の住民票
⑤法定相続情報一覧図の下書き(法務局のウェブサイトに様式あり)
交付までの期間 申請から概ね1〜2週間程度(法務局の混雑状況による)
有効期限 発行後の有効期限は特にないが、金融機関によっては発行から一定期間内のものを求める場合がある
複数の金融機関・法務局に手続きを同時進行するなら必須の書類です:
法定相続情報一覧図を10枚取得しておけば、銀行A・銀行B・銀行C・法務局に全て同時申請できます。「1行から戸籍謄本を返してもらってから次の行へ」という非効率な作業が不要になります。

手続き先別・必要書類の早見表

手続き先によって必要書類の組み合わせが異なります。全ての手続きで共通して必要になる「コアセット」と、手続き先ごとに追加が必要な書類を整理します。

全手続き共通のコアセット

① 被相続人の戸籍謄本(出生〜死亡の連続したもの)
② 相続人全員の戸籍謄本
③ 相続人全員の印鑑証明書(実印)
④ 遺産分割協議書(相続人全員の実印で署名・押印)または遺言書

※ 法定相続情報一覧図があれば①②を代替できる(手続き先によって異なる)
手続き先 コアセットに加えて必要なもの
銀行口座の
解約・払戻し
・銀行所定の相続手続依頼書
・通帳・証書・キャッシュカード
・払戻し先の口座情報
不動産の
相続登記(法務局)
・被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
・相続する人の住民票
・固定資産評価証明書(最新年度)
・登記申請書
相続税申告
(税務署)
・各財産の評価証明書(不動産・預貯金・株式等)
・残高証明書(死亡日時点)
・相続税申告書(税理士が作成することが多い)
証券口座の
名義変更・移管
・証券会社所定の相続手続依頼書
・相続する人の証券口座情報
・評価額証明書(死亡日時点)
生命保険の
死亡保険金請求
・保険会社所定の請求書
・死亡診断書のコピー(原本が必要な場合もある)
・受取人の本人確認書類・振込先口座情報
法定相続情報
一覧図の申請(法務局)
・被相続人の住民票の除票
・申請者の住民票
・法定相続情報一覧図の下書き

印鑑証明書:取得方法と有効期限の注意点

遺産分割協議書に押す実印の証明書として「印鑑証明書」が必要です。

📋 印鑑証明書の基本情報
取得先 ・本人の住所地の市区町村窓口
・コンビニ(マイナンバーカードがあれば6:30〜23:00)
・マイナポータル(一部自治体でオンライン申請可)
費用 300円程度(市区町村によって異なる)
有効期限 法律上は有効期限の定めはありませんが、銀行・法務局・その他の機関が「発行から3か月以内」等の条件を設けている場合が多いです。提出直前に取得するのが最も安全です
実印の登録 印鑑証明書を取得するには事前に「実印登録(印鑑登録)」が必要。登録していない相続人がいる場合は先に印鑑登録の手続きを行う
注意点 書類一式が揃ってから取得するのが理想。先に取得すると提出時に有効期限が切れている場合がある
⚠️ 「印鑑登録証明書」と「印鑑証明書」は同じものです。
呼び方が自治体によって異なることがありますが、内容は同じです。また「実印」は印鑑登録した印鑑のみを指します。認め印(未登録の印鑑)は書類に「実印」が必要な場面では使用できません。

住民票・固定資産評価証明書等の取得方法

住民票・住民票の除票

被相続人の「住民票の除票」:
亡くなった方の最後の住所を証明するために必要。死亡届が受理されると住民票が自動的に除票になる。法定相続情報一覧図の申請・相続登記で必要。取得先は被相続人の死亡時の住所地の市区町村。

相続人の住民票:
相続登記(不動産の名義変更)で相続人の現住所を証明するために必要。自分の住所地の市区町村またはコンビニで取得。

⚠️ コンビニでは「住民票の除票」は取得できない場合が多い(要確認)。

固定資産評価証明書

不動産の相続登記(登録免許税の計算)や相続税申告で必要な書類。不動産の所在地によって取得先が変わります:

・東京23区の不動産:都税事務所
・東京23区以外・全国の不動産:不動産所在地の市区町村役場

注意:相続登記の申請では申請年度の最新の評価証明書が必要。年度末(3月)前後の取得時は「申請時点でどの年度の証明書が有効か」を法務局に確認する。

固定資産税の納税通知書に評価額が記載されているが、証明書として提出が求められる場合は証明書の取得が必要。

登記事項証明書(登記簿謄本)

不動産の現況(所有者・面積・抵当権の有無等)を確認するための書類。

取得先:管轄の法務局(登記所)または法務局のオンラインサービス(登記ねっと)
費用:窓口600円/通・オンライン450〜480円/通(送付の場合は500円)

相続登記の申請前に最新の登記事項証明書を確認しておくことで、「所有者名義が想定と違う(すでに変更されている等)」という問題を事前に発見できます。

よく発生する「書類の不備」パターンと対策

書類収集・提出で最も多いトラブルは「差し戻し(再提出)」です。よくある不備パターンと対策を整理します。

よくある不備 原因 対策
戸籍が
「つながっていない」
転籍前後の戸籍が1冊分漏れていて、被相続人の出生まで遡れていない 取得した戸籍を時系列に並べて「連続しているか」を確認する。窓口で「これで全て揃いましたか?」と聞く
印鑑証明書の
有効期限切れ
事前に取得したが、書類の準備に時間がかかり提出時に3か月を超えていた 書類一式が揃った段階で取得する(先取りしない)
遺産分割協議書の
記載ミス
不動産の地番・家屋番号の記載誤り・押印漏れ等 遺産分割協議書は行政書士・司法書士に作成を依頼する。不動産は登記事項証明書の記載を正確に転記する
固定資産評価証明書の
年度ミス
古い年度の証明書を提出してしまった 申請時点で有効な年度(当年度か前年度か)を法務局に事前確認する
死亡診断書の
コピー不足
原本を1枚しかコピーせず、複数の手続き先で原本が必要になった 死亡届を提出する前に5〜10枚コピーしておく
相続人の本人確認書類の
有効期限切れ
運転免許証の有効期限が切れていた 提出前に有効期限を確認する。期限切れの場合はマイナンバーカード・パスポート等を準備する
「提出前チェックリスト」を作ることで差し戻しを大幅に防げます:
各手続き先の必要書類一覧を入手したら、提出前に全項目を確認するチェックリストを作成してください。書類を封筒に入れる前に1枚1枚確認することが、差し戻しを防ぐ最もシンプルかつ確実な方法です。

よくある疑問(Q&A)

Q. 本籍地が遠方で窓口に行けません。郵送で取れますか?
郵送で取得できます。ほぼ全ての市区町村が戸籍謄本の郵送請求に対応しています。各市区町村の公式ウェブサイトで「戸籍証明書郵送請求」を検索すると案内が見つかります。①申請書(市区町村の様式またはA4の書式に氏名・本籍地・請求する書類の種類・必要理由を記入)②本人確認書類のコピー③定額小為替(郵便局で購入)④返信用封筒を同封して送ります。到着まで1〜2週間程度見込んでください。
Q. 改製原戸籍と除籍謄本は何が違いますか?必ず両方必要ですか?
除籍謄本は「戸籍に記載された全員が除籍(死亡・転籍等)になった戸籍」、改製原戸籍は「法改正等で様式が変わった際に作り直す前の戸籍」です。どちらも必要かどうかは被相続人の戸籍の履歴によって変わります。転籍が多い・年配の方は改製原戸籍が必要になることが多いです。窓口で「被相続人の出生から死亡まで繋がる戸籍を全て」と伝えれば、必要な種類を教えてもらえます。
Q. 法定相続情報一覧図は自分で作れますか?難しいですか?
作ることはできますが、法務局のウェブサイトにある様式・記載例を参考にしながら慎重に作成する必要があります。一覧図には「相続関係が正確に記載されていること」が求められ、記載に誤りや不足があると申請が受理されません。時間と手間をかけたくない場合は行政書士・司法書士に依頼することができます。費用は1〜3万円程度が目安(事務所によって異なります)。
Q. 複数の銀行に手続きを進めていますが、戸籍謄本は1セットしかありません。どうすればいいですか?
3つの方法があります。①法定相続情報一覧図を複数枚取得して各銀行に同時提出する(最もおすすめ)、②1行ずつ手続きを終えて戸籍謄本を返却してもらってから次の行へ提出する、③各行に「戸籍謄本のコピーでの対応が可能か」を確認する(一部の銀行はコピーで対応)という方法です。①の法定相続情報一覧図が最も効率的で、複数行への同時申請が可能になります。

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