【相続税・準確定申告】亡くなった後の税金手続きで損をしないための全知識〜期限・流れ・節税のポイントを専門家がわかりやすく解説〜

亡くなった後の税金手続き:2つの申告を理解する

大切な方が亡くなった後の税金手続きには、「準確定申告(所得税)」と「相続税申告」の2種類があります。混同されやすいですが、全く別の申告です。

📋 2つの税金申告の比較
準確定申告 相続税申告
何の税金か 亡くなった方の所得税(生前に稼いだ収入への税金) 相続した財産に対する相続税(財産を受け取ることへの税金)
申告する人 相続人が代わりに申告 財産を取得した相続人が申告
期限 相続を知った日の翌日から4か月以内 相続を知った日の翌日から10か月以内
申告先 亡くなった方の住所地を管轄する税務署 亡くなった方の住所地を管轄する税務署
申告が
必要な場合
給与・年金・事業収入等があった場合(一定の条件あり) 遺産総額が基礎控除を超える場合(または特例を適用する場合)
💡 この記事でわかること:
準確定申告が必要なケースと流れ・還付金が発生するケース、相続税の基礎控除の計算・主要な節税特例・申告の流れ、両者の関係性で得をするポイントまで解説しています。

【準確定申告】4か月以内に必要な所得税の申告

通常、所得税の確定申告は本人が毎年2月〜3月に行います。しかし亡くなった場合は「本人が申告できない」ため、相続人が代わりに申告します。これが「準確定申告」です。

⏰ 準確定申告の基本情報
申告期限 相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内
例:6月1日死亡→10月1日が期限
申告対象期間 当年の1月1日〜死亡日まで
※ 前年分の申告が未済の場合は前年分も必要
申告先 亡くなった方の死亡時の住所地を管轄する税務署
誰が申告するか 相続人全員が共同申告するのが原則(ただし相続人の一人が代表して申告することも可能)
注意:
1〜3月に亡くなった場合
1〜3月に亡くなった場合は「前年分」と「当年1月〜死亡月分」の2本の申告が必要になるケースがある(前年分の確定申告期限3月15日より前に亡くなった場合)
⚠️ 準確定申告の期限は4か月と短く、見落としが多い手続きです。
通常の確定申告(翌年2〜3月)のイメージで先送りしてしまうと期限を大幅に過ぎることになります。「死亡月から数えて4か月後の月末日」を目安にカレンダーに登録してリマインダーを設定しておくことを強くおすすめします。

準確定申告:誰が申告する?対象者と申告が必要なケース

亡くなった方全員が準確定申告の対象になるわけではありません。申告が必要かどうかを確認してください。

準確定申告が必要な主なケース

  • 自営業・フリーランス・農業等の事業所得があった:事業の収支がある場合は申告必須
  • 給与収入が2,000万円超:高額給与所得者は年末調整後も申告義務あり
  • 給与を2か所以上から受け取っていた:副業・アルバイト等があった場合
  • 年金収入が400万円超:公的年金等の収入合計が400万円を超える場合
  • 不動産所得があった:賃貸収入があった場合
  • 株式・投資信託の売却益があった(一般口座・特定口座で確定申告を選択していた):譲渡所得の申告が必要な場合
  • 医療費控除・ふるさと納税(ワンストップ特例なし)等の申告をしていた:これらの控除を受けるための申告

準確定申告が不要な主なケース

・会社員で1か所からの給与収入のみ(年収2,000万円以下)かつ副収入なし
・年金収入のみで公的年金等の収入合計が400万円以下かつ他の所得が20万円以下
・死亡時に所得がなかった(専業主婦・無職等)

ただし、申告義務がなくても「還付金が発生する場合」は申告することで還付金を受け取れます(次のSection 4参照)。

準確定申告:必要書類と申告の流れ

準備する書類の例

  • 源泉徴収票(給与所得):亡くなった年の1月〜死亡月分の源泉徴収票(勤務先から取り寄せ)
  • 公的年金等の源泉徴収票(年金所得):日本年金機構等から年次で発行される
  • 医療費の領収書:医療費控除を適用する場合(年間10万円超分)
  • 生命保険料・地震保険料控除証明書:各保険会社から毎年10〜11月に郵送される書類
  • 不動産の賃料収支の記録:不動産所得がある場合
  • 株式・投資信託の取引報告書(特定口座年間取引報告書)
  • ふるさと納税の寄附金受領証明書

準確定申告書の作成・提出方法

① 「準確定申告書(所得税及び復興特別所得税の確定申告書)」に「付表」を添付して作成する
② 相続人全員が連署する(または各人が別々に申告する)形で作成
③ 亡くなった方の住所地を管轄する税務署に提出(郵送可)

税務署に持参して相談しながら作成することも可能。複雑なケース(事業所得・不動産所得等)は税理士への依頼が安心です。
e-Tax(電子申告)は相続人名義で申告できます:
準確定申告はe-Taxでも提出可能です。相続人のマイナンバーカードと利用者識別番号を使って申告できます(亡くなった方のe-Taxアカウントは使用できません)。

準確定申告で「還付金」が発生するケース

準確定申告は「税金を払うだけ」ではありません。還付金(払いすぎた税金の返戻)が発生するケースが少なくなく、申告することで相続財産を増やすことができます。

還付が発生しやすいケース 理由
年の途中で亡くなった
会社員・公務員
年末調整が完了していないため、払いすぎた源泉徴収税が還付される。特に1〜11月に亡くなった場合は高確率で還付が発生
医療費が高額だった 年間10万円超の医療費がある場合、医療費控除を申告することで還付が受けられる。入院・手術・在宅医療等が重なった場合に特に有効
ふるさと納税を
していた(ワンストップ
特例なし)
ふるさと納税の控除を申告することで還付が発生する場合がある
株式・投資信託で
損失があった
損益通算により税金が還付される場合がある(一般口座・確定申告選択の特定口座)
⚠️ 還付金は「相続放棄」を検討している場合は注意が必要です。
還付金を申告して受け取ることは「相続財産の取得」とみなされる可能性があります。相続放棄を検討している場合は、準確定申告の還付金を受け取る前に弁護士・司法書士に相談してください。

【相続税】基礎控除と申告が必要かどうかの判断

相続税の申告が必要かどうかは、まず「基礎控除額」と「遺産総額」を比較することで判断します。

💴 相続税の基礎控除額の計算
計算式 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
計算例 相続人が配偶者1人+子2人(計3人)の場合:
3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円

相続人が子1人のみ:
3,000万円 + 600万円 × 1 = 3,600万円
比較対象の
「遺産総額」とは
プラスの財産(不動産・預貯金・株式・保険のみなし財産等)
─ マイナスの財産(借金・未払い税金・葬儀費用等)
─ 非課税財産(墓地・仏具等)
= 課税遺産総額(これが基礎控除と比較する金額)
遺産総額が基礎控除以下 → 相続税ゼロ・申告不要(ただし特例適用の場合は除く)
小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減等は「申告することで初めて適用」されます。特例を使うことで税額がゼロになる場合でも申告は必要です。「基礎控除以下だから申告不要」と判断する前に必ず税理士に確認してください。

相続税の計算方法:ステップごとに整理

相続税の計算は複数のステップを踏みます。「各自が法定相続分で受け取ったと仮定して税額を計算し、実際の取得割合で按分する」という独自の計算方式を取ります。

📋 相続税の計算ステップ
STEP1
正味の遺産額の計算
全財産の相続税評価額を合計(不動産・預貯金・株式・みなし財産等)
─ 非課税財産(墓地・仏具・死亡保険金の非課税枠等)
─ 債務(借金・未払い医療費・固定資産税滞納等)
─ 葬儀費用(実際にかかった金額。香典・お布施は除く)
+ 相続開始前3〜7年以内の相続人への贈与財産(持ち戻し)
STEP2
基礎控除を差し引く
正味の遺産額 ─ 基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)
= 課税遺産総額
STEP3
法定相続分で仮配分
課税遺産総額を各相続人の法定相続分(配偶者1/2・子1/2等)で按分した金額を計算する
STEP4
相続税の税率を適用
各人の仮配分額に累進税率(10%〜55%)を適用して各人の税額を算出し、合計する(相続税の総額)
STEP5
実際の取得割合で按分
相続税の総額を、実際の遺産取得割合に応じて各相続人に按分する
STEP6
各種控除を適用
配偶者の税額軽減・未成年者控除・障害者控除・相次相続控除等を差し引いて各人の最終的な相続税額を確定する

相続税の税率表(速算表)

法定相続分に応じた取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

主要な節税特例:小規模宅地・配偶者控除・非課税枠

相続税には活用することで税額を大幅に減らせる特例・控除が複数あります。これらを見落とすと「払いすぎ」になります。

①小規模宅地等の特例(最大80%減額)

被相続人の自宅・事業用地等の土地の相続税評価額を大幅に減額できる特例です。

特定居住用宅地等(自宅の土地):
・330㎡まで 80%減額
・配偶者が取得:無条件で適用可
・同居の子が取得:取得後も居住継続が条件
・別居の子(家なき子特例):一定条件あり(過去3年以内に自分や配偶者所有の家に住んでいないこと等)

特定事業用宅地等(事業用地):400㎡まで80%減額
貸付事業用宅地等(賃貸地):200㎡まで50%減額

⚠️ この特例は申告時に遺産分割協議書の添付が必要です。申告期限までに分割が未確定の場合は適用できないため要注意。

②配偶者の税額軽減

配偶者が相続した財産については、「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」のいずれか大きい方まで相続税がゼロになる特例です。

ただし:
・申告書の提出が必要(申告しないと適用されない)
・配偶者が多くの財産を取得しすぎると二次相続(配偶者が亡くなった時の相続)での税負担が増えることがある
一次・二次相続の合計税額を最小化するには、遺産分割の段階で税理士に試算してもらうことが重要

③死亡保険金・退職手当金の非課税枠

相続人が受け取る死亡保険金・死亡退職金にはそれぞれ非課税枠があります:

死亡保険金の非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数
死亡退職金の非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数

例:法定相続人が3人の場合、死亡保険金1,500万円まで非課税。
非課税枠を活用した生命保険への加入は、生前対策として非常に有効な節税手段です。

④その他の控除・特例

未成年者控除 18歳未満の相続人は、18歳に達するまでの年数×10万円を税額控除
障害者控除 障がいのある相続人は、85歳に達するまでの年数×10万円(特別障害者は20万円)を税額控除
相次相続控除 過去10年以内に相続が発生していた場合、前回支払った相続税の一部を控除できる
贈与税額控除 相続財産に加算された生前贈与分について、すでに支払った贈与税額を相続税から控除できる

相続税の申告・納付:期限・手続き・注意点

⏰ 相続税申告・納付の基本情報
申告・納付期限 相続開始を知った日の翌日から10か月以内
例:6月1日死亡→翌年4月1日が期限
申告・納付先 亡くなった方の死亡時の住所地を管轄する税務署(大田区なら大森・雪谷・蒲田のいずれか等、地域によって異なる)
納付方法 ①現金一括払い(原則)
②延納(最長20年の分割払い。要申請・利子税あり)
③物納(不動産・株式等での納付。要申請・条件あり)
④クレジットカード・QRコード払い(一部対応)
期限を過ぎた場合の
ペナルティ
・無申告加算税:申告なし→税額の5〜20%
・過少申告加算税:申告額が少なかった→不足額の10〜15%
・延滞税:納付が遅れると年率最大14.6%の延滞税が加算
遺産分割が確定していないと一部の特例が使えません。
申告期限(10か月)までに遺産分割が決まっていない場合、「法定相続分で分割したと仮定した申告」を期限内に行い、3年以内に分割が決まった段階で修正申告・更正請求をするという対応が必要です。この場合、小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減は一時的に使えないため、多めの税額を払う必要が生じます。
相続税申告は税理士への依頼が最も確実です:
不動産の路線価計算・小規模宅地等の特例の適用・配偶者の税額軽減の活用・非上場株式の評価等は専門知識が必要です。申告漏れ・計算ミスは過払い・加算税の両方向でリスクがあります。相続税申告については税理士への相談を強くおすすめします。

相続税と準確定申告の「関係性」で得をするポイント

準確定申告と相続税申告は別々の手続きですが、両者には密接な関係があり、連携して考えることで節税につながります。

①準確定申告の「医療費控除」は相続税の「債務控除」と重複適用に注意

亡くなる前の医療費は、準確定申告で「医療費控除(所得税の節税)」として使うか、相続税申告で「債務控除(相続税の節税)」として使うかのどちらかです。原則として両方で同じ医療費を控除することはできません。どちらで控除した方が節税効果が大きいかを税理士に試算してもらうことが重要です。

②「取得費加算の特例」で相続後の売却税負担を軽減

相続税を申告・納付した場合、相続開始から3年10か月以内に相続した不動産・株式等を売却すれば、支払った相続税の一部を取得費に加算できます。これにより譲渡所得(売却益)が圧縮され、譲渡所得税を大幅に減らすことができます。

ポイント:「3年10か月」という期限を意識して売却タイミングを計画することが重要。相続税申告をしていないと特例が使えないため、たとえ相続税額がゼロでも申告しておくことで将来の売却時に有利になる場合があります(税理士に要確認)。

③準確定申告の還付金は相続財産に加算される

準確定申告で還付金が発生する場合、その還付金は相続財産(未収入金)として相続税の計算に含まれます。申告を後回しにしていても相続税の計算では計上する必要があるため、早めに準確定申告を行うことで還付金額を確定させておくことが望ましいです。

よくある疑問(Q&A)

Q. 準確定申告を忘れていました。期限(4か月)を過ぎていますが、今から申告できますか?
できます。期限を過ぎてからでも申告は可能ですが、「無申告加算税」や「延滞税」が加算されます。還付金がある場合は期限後でも申告によって受け取れます。気づいたら早めに管轄の税務署に連絡して申告を進めてください。税理士に依頼することで、ペナルティを最小限にする形で申告を進められます。
Q. 相続税はかからないと思いますが、本当に申告しなくていいですか?
基礎控除以下であれば申告不要です。ただし特例を使いたい場合は申告が必要です。「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」は申告書を提出することで初めて適用されます。これらの特例を使うことで税額がゼロになる場合でも申告は必須です。「申告が必要かどうか」は必ず税理士に確認してから判断してください。
Q. 遺産分割協議がまとまっていませんが、10か月の期限が近づいています。どうすればいいですか?
期限内に「未分割申告」を行ってください。遺産分割が決まっていない状態でも、法定相続分で分割したと仮定して相続税を計算・申告・納付することができます。その後3年以内に遺産分割が決まったら「修正申告(税額が増える場合)」または「更正の請求(税額が減る場合)」で精算します。この場合、小規模宅地等の特例等は一時的に使えないため多めの税額になりますが、分割確定後に特例を適用して還付を受けることができます(「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておく必要あり)。
Q. 相続税申告を自分でやることはできますか?
技術的には自分でも申告できますが、実務上は税理士への依頼を強くおすすめします。不動産の路線価評価・小規模宅地等の特例の適用・非上場株式の評価・二次相続を含めた最適な分割方法の試算等、専門的な判断が必要な場面が多くあります。また税務調査の対象になった場合、税理士が関与していない申告は修正申告を求められやすい傾向があります。相続税申告は「正確さ」と「特例の最大活用」の両面で税理士の価値が最も高い手続きの一つです。

📞 ご相談はこちら

ハートリンクグループでは、
行政書士を中心に税理士などの専門家が連携し、
相続手続き、遺言書作成、成年後見、死後事務などについて
一人ひとりの状況に合わせた相談対応を行っています。

相続専門 ハートリンクグループ

【東京オフィス】 東京・人形町で相続相談先をお探しの方へ。相続手続き、遺言書作成、生前対策などに対応。人形町駅徒歩すぐ。中央区・日本橋エリアのご相談も承ります。
【横浜オフィス】 横浜・関内で相続相談先をお探しの方へ。相続、遺言、家族信託、任意後見などに対応。関内駅徒歩約3分。横浜市中区を中心にご相談を承ります。
【千葉オフィス】 千葉市・市川・船橋で相続相談先をお探しの方へ。相続手続き、遺言書作成、家族信託などに対応。千葉ニュータウン駅徒歩約5分。印西市・白井市・成田市・佐倉市など千葉県北部エリアのご相談も承ります。

☎ 0120-905-336

まずはお気軽にご連絡ください。

前へ
前へ

【保存版】相続手続きに必要な戸籍と書類の集め方|どこで・何を・どう集める?行政書士が分かりやすく解説

次へ
次へ

不動産の相続手続き完全ガイド|名義変更の義務化・共有リスク・売却・空き家対策まで徹底解説