相続と介護施設の入居:身元引受・保証人・費用負担の注意点

結論:相続の場面で介護施設に入るときに止まりやすいのは、「誰が窓口(身元引受)になる?」「費用は誰が払う?」「本人が判断できない時、契約は誰がする?」の3点です。

ここを先に整理しておけば、施設探しも相続手続きも、家族の負担がぐっと軽くなります。

※この記事は一般的な実務整理です。個別の契約条件・家族関係・資産状況で最適解は変わります。


なぜ「相続×施設入居」でトラブルが増えるの?よくある詰まり

相続の手続きは、基本的に「亡くなった後」に進みます。一方、介護施設の入居は「生きている間」に進みます。

この2つが重なると、“お金・契約・連絡の窓口”が同時に必要になり、家族が混乱しがちです。

よくある詰まり(現場のあるある)

  • 施設から「身元引受人(連絡先・退去時対応)を求められたが、引き受ける人がいない
  • 保証人(支払い)」と言われ、どこまで責任があるのか分からない
  • 本人の判断能力が下がっていて、入居契約そのものが進まない
  • 家族が立替を始めたら、あとから「それは贈与?貸付?精算どうする?」でもめた
  • 相続開始後に、入院・施設費の精算が残り、遺産分割の争点になった

安心材料:介護保険施設について、法令上「身元保証人がいないことだけ」を理由に入所を拒むのは適切ではない、という趣旨の周知がされています。ただし現場の運用では署名や連絡先を求められることが多いため、事前の段取りが重要です。


身元引受・保証人・緊急連絡先:似ている言葉を整理しよう

ここを混同すると、必要以上の責任を負ったり、逆に必要な手当てが漏れたりします。

緊急連絡先 「何かあった時に連絡する先」。責任の範囲は原則として“連絡”ですが、施設の書式によっては別の役割が混ざることがあります。
身元引受人(身元保証) 入院・転院・退去・死亡時などの場面で、本人の“窓口”として動く役割が中心。遺体の引取り・居室明渡し等が含まれることもあります。
保証人(連帯保証人) 支払いの責任が中心。契約形態によっては“本人が払えない場合に肩代わり”となり得るため、署名前に範囲確認が必須です。

重要:身元保証人・身元引受人だからといって、医療行為の同意や治療方針の決定権が自動的に付くわけではありません。この誤解が、家族間トラブルの火種になりやすいです。


まず確認:施設側が求める“役割”は何?(チェック項目つき)

施設の種類(特養・老健・有料・サ高住等)や法人の方針によって、求められる内容が違います。入居検討の初期に、次を確認しておくと後がラクです。

施設へ聞くチェック項目(そのまま使えます)

  • 署名が必要なのは誰?(本人/家族/代理人)
  • 求めるのは「緊急連絡先」「身元引受人」「保証人」どれ?(複数なのか)
  • 保証の範囲:家賃・介護費・医療費・原状回復・残置物処分まで含む?
  • 入居一時金・預り金の有無、返金ルール、精算タイミング
  • 退去・死亡時の流れ(荷物、明渡し、葬儀社連絡の範囲)
  • 本人が判断できない場合、後見人等が必要か/手続き猶予はあるか

費用負担の基本:入居金・月額費・医療費・立替の注意点

揉めやすいのは「いま払う人」と「最終的に負担する人」がズレる場面です。基本の考え方を押さえましょう。

基本の考え方(原則)

本人が生存中の施設費用は、原則として本人の財産・収入(年金・預貯金等)から支払います。家族が払う場合は、“立替”として整理することが多いです。

立替をするなら、最低限ここだけは押さえる

  • いつ・いくら・何のために払ったか(領収書+メモ)
  • 本人の口座から戻す予定か、相続時に精算する予定かを家族で共有
  • 相続人が複数いるなら、“誰が何を立替えたか”を見える化

この記録がないと、相続開始後に「使途不明金」「不公平」の争点になりやすいです。

注意点:保証人(連帯保証)にサインすると、立替どころか法的に支払い義務が発生し得ます。署名の前に「何の保証か」を必ず確認しましょう。


本人が判断できないとき:成年後見・任意後見につなぐ考え方

本人の判断能力が低下していると、入居契約・各種同意・お金の管理が止まりがちです。ここは“気合い”では解決しません。

判断の目安:どこで「制度」を検討する?

  • 契約内容を理解できない/説明してもすぐ忘れる
  • お金の出し入れの意味が分からない
  • 重要書類・印鑑の管理ができない
  • 家族が代わりに進めたいが、権限がなく止まる

実務のコツ:「いったん施設に入れてから考える」だと詰まりやすいです。見守り→必要なら任意後見・後見へ接続の“導線”を先に作ると、入居も相続もスムーズになります。


身元保証サービスを使う前に:契約リスクと確認ポイント

家族がいない/遠方/頼みにくい場合、身元保証サービスや終身サポート事業者を検討することがあります。便利な反面、契約内容の確認がとても大切です。

契約前に確認したいポイント

  • 提供範囲:身元引受・保証・見守り・死後事務のどこまで
  • 医療同意や意思決定はどうするか(できる/できないの線引き)
  • 預託金・分別管理・返金条件・解約条件
  • 緊急時の連絡ルート(24時間対応か、追加料金か)
  • 担当者交代・事業継続(万一の廃業時の引継ぎ)
  • 支出の報告方法(明細・領収書・定期報告)

法律家としての注意:「本人の判断能力が著しく低下しているのに契約を結んでしまった」など、後から契約の有効性が問題になるケースもあります。“契約できる状態か”の見極めが重要です。


実務で一番効く段取り:家族会議の“決める順番”

家族が複数いる場合、先に「気持ち」を話すより、まずは役割とお金を決めた方が揉めにくいです。

ひとことメモ(家族に伝えるとき)

「誰かが損する」ではなく、“止めないための役割分担”として話すと、協力が得られやすいです。


そのまま使えるチェックリスト:入居前・入居後・相続開始後

入居前(申し込み〜契約)

  • 施設が求める役割を分解(連絡先/身元引受/保証)
  • 保証範囲を書面で確認(上限・対象費目)
  • 入居金・預り金・返金条件を確認
  • 費用の支払い方法(引落口座、立替時の記録)を決める
  • 本人の判断能力が不安なら、後見等の相談を開始

入居後(運用)

  • 月額費・医療費の支出を“見える化”
  • 緊急連絡ルートを定期更新(電話番号変更・関係者追加)
  • 重要書類の保管場所(通帳・印鑑・保険証)を共有

相続開始後(亡くなった後)

  • 施設費用の精算(未払い、返金、原状回復、残置物)
  • 立替金がある場合は、領収書・メモで整理して相続人へ説明
  • 遺産分割の前に、支出の事実を先に整える(感情の前に資料)


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