【専門家が解説】遺贈寄付とは?メリット・手続き・税金・注意点をわかりやすく解説|社会貢献できる新しい相続のかたち

【目次】

  1. 遺贈寄付とは?

  2. 遺贈寄付が注目される理由

  3. 遺贈寄付の種類

  4. 遺贈寄付のメリット

  5. どんな団体に寄付できる?

  6. 遺贈寄付の手続きの流れ

  7. 税金の取り扱い

  8. 遺贈寄付でよく起こるトラブル

  9. 障害のある子がいる家庭での「遺贈寄付」の考え方

  10. 遺言書で寄付を実現するポイント

  11. 遺贈寄付と併用したい制度(信託・後見)

  12. まとめ

  13. お問い合わせ


1|遺贈寄付とは?

遺贈寄付とは、
自分の財産の一部または全部を、遺言によって団体・法人へ寄付する方法です。

相続人以外の相手にも財産を残せる遺言制度を活かし、
社会貢献を目的とした寄付ができることから高齢者を中心に関心が高まっています。


2|遺贈寄付が注目される理由

近年、遺贈寄付が増えている背景には以下があります。

  • おひとりさまの増加

  • 子どもに迷惑をかけたくないという価値観の変化

  • 社会貢献意識の高まり

  • 受け取り手がいない財産を有効活用したいニーズ

  • 生前贈与よりもコントロールしやすい

また、死亡後に執行されるため、
本人の意思を最大限反映できる点も魅力です。


3|遺贈寄付の種類

遺贈寄付には主に2種類あります。

● 特定遺贈

「〇〇団体に○○万円を寄付する」
「△△財団に不動産Aを寄付する」
など、特定の財産を寄付する方法

● 包括遺贈

「全財産の20%を□□法人へ寄付」
など、財産全体の割合で指定する方法

団体側にとっても受け取りやすいのは“特定遺贈”ですが、
預金・有価証券などは包括遺贈として指定されることもあります。


4|遺贈寄付のメリット

◎ 社会貢献につながる

生涯で築いた財産を、社会のために活用できます。

◎ 相続人が少ない場合の有力な選択肢

おひとりさま・子がいない夫婦に特に利用されています。

◎ 遺言書で確実に意思を実現できる

遺言で寄付先と内容を指定すれば、確実に実行されます。

◎ 特定の活動を応援できる

福祉、教育、医療、環境、動物保護など、
自分の思いを確実に未来へつなげられます。


5|どんな団体に寄付できる?

以下のような組織へ寄付できます。

  • 社会福祉法人

  • 公益財団法人

  • NPO法人

  • 地方自治体

  • 国・大学・病院

  • 寄付を受け入れている一般法人

団体選びは慎重に行う必要があり、
「寄付の目的が明確か」「運営が透明か」が重要なポイントです。


6|遺贈寄付の手続きの流れ

  1. 寄付先を選ぶ

  2. 寄付内容(財産の種類・金額)を決める

  3. 寄付先に意思を伝える(任意)

  4. 遺言書を作成(公正証書が最も安全)

  5. 遺言執行者を指定する

  6. 死亡後に遺言執行者が実行する

遺言書は「公正証書遺言」が推奨されます。
自筆証書遺言では不備が発生しやすいためです。


7|税金の取り扱い

◎ 相続税は非課税

公益法人など一定の団体への寄付は相続税がかかりません。

◎ 所得税・法人税も非課税となる場合が多い

受け取る側の団体に課税されないケースもあります。

税務面でもメリットが大きいため、
税負担を抑えながら寄付したい方にも向いています。


8|遺贈寄付でよく起こるトラブル

  • 遺言書の書き方が不十分で無効になる

  • 寄付先が受け取り不可の財産が含まれている

  • 相続人の遺留分を侵害し争いに発展

  • 遺言執行者が適切に実行できない

  • 団体が寄付に対応していない

  • 相続人に寄付の意思が伝わっておらず揉める

“寄付する気持ちが純粋であっても、書き方ひとつで無効になる”ことが多いのが特徴です。


9|障害のある子がいる家庭での「遺贈寄付」の考え方

障害のある子がいる場合、
遺贈寄付は慎重に検討が必要です。

● 遺贈寄付の前に「障害のある子の将来の生活保障」が最優先

まず、

  • 生活費

  • 住まい

  • 介護・医療

  • 財産管理者(信託・後見)
    を確保したうえで寄付を検討する必要があります。

● 寄付するなら“残余財産”が一般的

親亡き後の生活設計を立ててから、
余剰分を寄付に充てるという形が現実的です。


10|遺言書で寄付を実現するポイント

  • 公正証書遺言で作成

  • 寄付先の正式名称(法人名・所在地)を正確に記載

  • 寄付する財産を明確化

  • 寄付先に事前に伝えておく(任意)

  • 遺言執行者を確実に指定

  • 相続人の遺留分を侵害しないよう配慮

寄付先の法人名を誤記すると受け取りできないケースもあるため注意が必要です。


11|遺贈寄付と併用したい制度(信託・後見)

特に障害のある子を持つご家庭では、以下の制度と併用すると安全です。

● 家族信託

障害のある子の生活資金を長期管理できる。

● 任意後見制度

生活・医療・福祉契約を代理できる。

● 死後事務委任契約

葬儀・行政手続き・施設解約などを任せられる。

遺贈寄付だけでは“親亡き後の生活のすべて”をカバーできないため、
複数制度を組み合わせて設計するのがベストです。


12|まとめ

遺贈寄付は、
人生の集大成として「自分の想いを社会へ遺す」ための非常に魅力的な制度です。

  • 社会貢献ができる

  • 財産を有効に活かせる

  • 税負担も軽くできる

しかし、遺言書の書き方や寄付先の選定を誤ると、
せっかくの想いが形にならず、遺族トラブルを招くこともあります。

特に障害のある子がいる場合は、
生活保障とのバランスを考えながら慎重に進める必要があります。

遺贋寄付は“正しく設計すれば大きな力を持つ制度”です。


【お問い合わせ】

障害を持つ子どもの親亡き後を支える会
〒103-0013
東京都中央区日本橋人形町3-3-5 6階605

〒231-0032
神奈川県横浜市中区不老町1-6-9 第一HBビル8階A
TEL:0120-905-336

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