【相続手続きの全体像】死亡後に何をすればいい?最初から最後までの流れ
目次
まず知っておきたい:相続手続きの全体像と3つの軸
大切な方が亡くなった後、悲しみの中でも多くの手続きが押し寄せます。「何から始めればいいか」という不安を解消するために、まず相続手続き全体の構造を理解することが大切です。
相続手続きは大きく「①行政・公的機関への届出」「②財産・負債の把握と遺産分割」「③名義変更と税務申告」の3つの軸で進みます。そしてこれらには「絶対に守る期限があるもの」と「早いほど良いもの」「順番が決まっているもの」が混在しています。
| 7日以内 | 死亡届の提出(これがないと火葬できない) |
|---|---|
| 14日以内 | 年金受給停止・健康保険資格喪失・世帯主変更 |
| 3か月以内 | 相続放棄・限定承認の申述(過ぎると原則不可) |
| 4か月以内 | 準確定申告・納付 |
| 2年以内 | 葬祭費・高額療養費・遺族年金の申請(時効) |
| 10か月以内 | 相続税申告・納付 |
| 3年以内 | 相続登記(義務・過料のリスク) |
カレンダーに各期限日を登録して、1か月前にリマインダーを設定しておくことを強くおすすめします。
フェーズ1:死亡直後〜1週間以内にやること
フェーズ1 死亡直後〜1週間以内 ⏰ 死亡届は7日以内が法定義務
①死亡届・火葬許可証の取得
医師から交付される「死亡診断書」(死亡届書の右半分)を受け取ったら、死亡の事実を知った日から7日以内(国内の場合)に市区町村の窓口に届出します。窓口は本庁舎または特別出張所・支所等。届出と同時に「火葬許可証」が交付されます。
②遺言書の有無を確認する
全ての手続きの前提として、遺言書の有無を必ず最初に確認してください。遺言書がある場合は、その内容に従って手続きを進めることが基本になります。
- 自宅(仏壇・金庫・引き出し等)を探す
- 公証役場で「遺言検索システム」を利用して公正証書遺言の有無を照会する(無料)
- 法務局で「遺言書情報証明書」の請求を行い、自筆証書遺言書保管制度の利用有無を確認する(800円)
③銀行への連絡前に引き落とし口座を変更する
銀行に死亡を連絡すると口座が凍結され、自動引き落とし(公共料金・保険料・定期購入等)が止まります。連絡前に引き落とし先の変更を済ませておくことが重要です。
フェーズ2:2週間以内にやること
フェーズ2 〜2週間以内 ⏰ 年金・健保は14日以内
①年金受給停止届(年金事務所)
年金受給者が亡くなった場合、14日以内に年金事務所に受給停止の届出が必要です。届出が遅れると過払い分の返還を求められます。同時に「未支給年金」(死亡月分まで)の請求も行います。
②健康保険・介護保険の資格喪失届(区役所)
国民健康保険・後期高齢者医療保険の資格喪失届を市区町村窓口に提出します。同時に「葬祭費」(国保・後期高齢:東京23区は7万円)の申請も行います(2年以内の時効があるが、早めに手続きを)。
③世帯主変更届・各種解約手続き
- 世帯主が変更になる場合:市区町村の窓口に届出(14日以内)
- 定期購入・サブスクリプション等の解約連絡を進める
- NHK受信料の解約(カスタマーセンターに連絡)
- 郵便物の転送届を日本郵便に提出する(最大1年間・無料)
フェーズ3:3か月以内の重要判断(相続放棄の期限)
フェーズ3 〜3か月以内 ⚠️ 相続放棄の期限・最重要
①財産・負債の全体を把握する
相続放棄を判断するために、まずプラスの財産(預貯金・不動産・保険・有価証券等)とマイナスの財産(借金・ローン・未払い費用等)の全体像を把握します。
・通帳・キャッシュカード・貸金庫(銀行に照会)
・不動産(固定資産税通知書・名寄帳)
・生命保険(生命保険協会の照会制度を活用)
・ローン・借金(信用情報機関への照会も検討)
・株式・投資信託(証券保管振替機構〈ほふり〉への照会)
②相続放棄・限定承認を検討する(家庭裁判所)
負債がプラスの財産を上回る可能性がある場合、「相続放棄」(全てを放棄)または「限定承認」(プラスの範囲内でマイナスを引き受ける)を家庭裁判所に申述することができます。期限は3か月以内。
相続放棄を検討している間は、相続財産への関与(遺品の売却・故人の口座から費用を払う等)を最小限にしてください。判断に迷う場合は早急に弁護士・司法書士に相談を。
③相続人の確定(戸籍収集)
遺産分割に向けて、法定相続人が誰かを確定するための戸籍謄本の収集を進めます。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。
- 本籍地の市区町村または「広域交付制度」を使って取得(令和6年3月〜)
- 法定相続情報一覧図を法務局で取得しておくと後続の全手続きで書類提出が省略できる
フェーズ4:4か月以内にやること(準確定申告)
フェーズ4 〜4か月以内 ⏰ 準確定申告の期限
準確定申告(税務署)
亡くなった方に給与・年金・事業所得等があった場合、相続人が代わりに「準確定申告」を行います。期限は相続を知った日の翌日から4か月以内。管轄は亡くなった方の死亡時の住所地を管轄する税務署です。
・会社員で年末調整が未済の場合(死亡した年の1月〜死亡月分)
・自営業・フリーランス・不動産収入がある場合
・年金受給額が400万円超の場合
・医療費・ふるさと納税等の控除を申告して還付金を受け取る場合(申告しなくても問題ないが、還付金があれば申告した方がよい)
※ 1月〜3月に亡くなった場合は前年分と死亡年分の2本の申告が必要になることがある
フェーズ5:遺産分割協議と各種名義変更手続き
フェーズ5 遺産分割〜名義変更 目安:相続開始から3〜8か月
①遺産分割協議
相続人全員で「誰がどの財産を受け取るか」を話し合います。全員の合意が必要で、合意内容は「遺産分割協議書」として書面化します(相続人全員の実印・印鑑証明書が必要)。
- 財産一覧表を全員で共有する(「何があるか」の共通認識を先に作る)
- 分割の方法を話し合う(現物・代償・換価・共有)
- 合意が取れたら遺産分割協議書を作成する(行政書士への依頼が確実)
- 相続人の1人でも合意しない場合は調停(家庭裁判所)または弁護士に相談
②各種名義変更・解約手続き
| 銀行口座の解約 ・払戻し |
各金融機関の相続センターに連絡して書類を取り寄せ、遺産分割協議書・戸籍謄本等を提出。払戻しは振込が原則 |
|---|---|
| 不動産の 相続登記 |
管轄法務局に申請(司法書士への依頼が一般的)。登録免許税(固定資産評価額×0.4%)が必要。3年以内の登記が義務(2024年4月〜) |
| 生命保険の 死亡保険金請求 |
保険会社所定の用紙に記入して申請。受取人指定がある場合は受取人固有の財産(相続財産に含まない) |
| 株式・投資信託の 名義変更 |
証券会社に相続手続の連絡。遺産分割協議書・戸籍謄本等を提出して移管または売却 |
| 自動車の 名義変更 |
陸運局(軽自動車は軽自動車検査協会)で名義変更申請。遺産分割協議書・印鑑証明書等が必要 |
| クレジットカードの 解約 |
各カード会社に連絡して解約手続き。残高・ポイントの扱いも同時に確認 |
フェーズ6:10か月以内(相続税申告・納付)
フェーズ6 〜10か月以内 ⏰ 相続税申告・納付の期限
相続税の申告・納付が必要かどうかの確認
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例:相続人が配偶者と子2人(計3人)の場合
3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
遺産総額(プラスの財産合計−負債・葬儀費用等)がこの金額を超える場合は申告・納付が必要
相続税申告の主なポイント
- 申告期限:相続を知った日の翌日から10か月以内(例:6月1日死亡→翌年4月1日が期限)
- 申告先:亡くなった方の死亡時の住所地を管轄する税務署
- 遺産分割が確定していないと特例が使えない:小規模宅地の特例・配偶者の税額軽減は申告時に遺産分割協議書の添付が必要。未確定の場合は一旦法定相続分で申告→3年以内に修正申告可能
- 相続税は現金一括納付が原則。不動産等で現金が不足する場合は「延納」または「物納」の検討が必要
- 税理士への依頼が強く推奨:不動産評価・特例の計算ミスは過払い・過少申告につながる
小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減は申告することで初めて適用されます。「基礎控除以下だから申告不要」と判断する前に税理士に確認することを強くおすすめします。
フェーズ7:中長期の課題(3年以内の相続登記等)
フェーズ7 中長期の課題 〜3年以内・継続的な対応
①相続登記の完了(3年以内・義務)
2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に不動産の名義変更申請を完了させなければ10万円以下の過料の対象になります。遺産分割がまとまらない場合は「相続人申告登記」という簡易手続きで当面の義務を果たすことができます。
②空き家の管理・処分方針の決定
実家が空き家になった場合、放置すると建物劣化・不法侵入・行政指導のリスクが生まれます。「売却・賃貸・活用・解体」のいずれかの方針を関係者で合意して、管理者を決めて進めることが重要です。
③固定資産税の継続確認・支払い
不動産の名義変更が完了するまでの間、固定資産税の納税通知書が旧名義人宛または相続人代表者宛に届きます。期限を過ぎると延滞税が発生するため、必ず確認・支払いを行ってください。
④取得費加算の特例を意識した売却時期の検討
相続税を申告した場合、相続開始から3年10か月以内に不動産を売却すると「取得費加算の特例」が使えます。この期限を過ぎると特例が失効し、譲渡所得税が大幅に増える可能性があります。売却を検討している場合は税理士に早めに相談してください。
よく混同される「相続の順番」のまとめ
相続手続きを進めるうえで、「順番を間違えると後戻りできない」手続きがあります。
| よくある間違い | 正しい順番 |
|---|---|
| 遺産分割の前に 相続登記をしようとする |
遺産分割協議→遺産分割協議書の作成→相続登記の順番が基本(ただし法定相続分で先に登記することも可能) |
| 銀行に連絡する前に 引き落とし変更を忘れる |
引き落とし口座の変更→銀行への死亡連絡(凍結後は変更できなくなる) |
| 相続放棄を検討しながら 遺品を売却・処分してしまう |
放棄の申述完了→遺品の処分(財産の処分は単純承認になるリスク) |
| 遺言書を発見して すぐに開封してしまう |
自筆証書遺言は開封せず→家庭裁判所での検認手続き後に開封(法務局保管のものは除く) |
| 相続税の申告後に 遺産分割をしようとする |
遺産分割協議の完了→相続税申告(特例適用のためには申告時に分割完了が必要) |
専門家に相談するタイミングはいつがベストか
理想的なタイミングは「財産・負債の全体像がある程度見えてきた段階(概ね死亡後1か月以内)」です。
相続手続きの問題の多くは「期限を過ぎてから気づく」「順番を間違えてから修正が必要になる」という形で生じます。早めに専門家に全体像を整理してもらうだけで、ミスなく・最短で手続きを進める道筋が見えます。初回相談は無料の事務所が多いため、まずは「現状の確認と今後のロードマップを教えてほしい」という目的で相談してみることをおすすめします。
| 手続きの内容 | 主な相談先 |
|---|---|
| 遺産分割協議書の作成・ 銀行手続き・全般コーディネート |
行政書士 |
| 相続登記 (不動産の名義変更) |
司法書士 |
| 相続税申告・ 準確定申告 |
税理士 |
| 相続人間の対立・ 調停・遺言無効争い |
弁護士 |
| 未登記建物の表示登記・ 測量 |
土地家屋調査士 |
| 全体をまとめて依頼したい | 複数士業が連携する 相続専門グループ |
よくある疑問(Q&A)
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