遺言書が見つかったのに手続きが止まる:検認が必要なケースを解決した事例

結論:遺言書が見つかったのに手続きが止まる原因の多くは、「検認(けんにん)が必要な遺言」なのに、 先に銀行・不動産・証券の手続きへ進もうとしていることです。 ①遺言の種類を見分ける → ②勝手に開封しない(特に封印あり) → ③家庭裁判所で検認→ ④検認済証明書で各所手続き の順に整えると、止まっていた相続が動き出します。

この記事では、「遺言書が出てきたのに銀行が動かない」「相続登記が進まない」という状況から、 検認が必要なケースを整理して完了まで進めたモデル事例をもとに、やさしく解説します。

※個人情報保護のため事例は再構成しています。遺言の方式・内容により必要な手続きは変わります。

遺言書があるのに、なぜ相続手続きが止まるの?

遺言書が見つかると「これでスムーズだ」と思いがちですが、実務では逆に止まることがあります。 理由はシンプルで、銀行や法務局(登記)などが“必要な証明”を求めるからです。

止まりやすい典型

  • 自筆の遺言(自宅保管)が見つかったが、検認前で銀行が受付できない
  • 封がしてある遺言を開けてしまい、手続きが余計に複雑になった
  • 遺言の書き方が曖昧で、名義変更に必要な情報が足りない
  • 相続人の一部が内容に納得せず、同意が取れない

まずは「検認が必要かどうか」を判断し、必要なら検認を先に済ませることが重要です。

検認って何?(やさしく)

検認は、家庭裁判所が遺言書の“形(状態)”を確認し、証拠として残す手続きです。 よく誤解されますが、検認は「遺言が有効だと認める手続き」ではありません。 あくまで、後で「内容がすり替わった」「破った」などの争いにならないように、現状を固定するイメージです。

検認の役割(ポイント)

  • 遺言書の状態を記録し、証拠化する
  • 相続人に遺言の存在を知らせる(手続き上)
  • 銀行や登記などの実務で「検認済」の証明を求められることが多い

検認が必要な遺言/不要な遺言(まず見分ける)

ここが最初の分岐です。ざっくり整理すると、次のイメージです。

遺言の種類 検認 よくある保管場所
自筆証書遺言(自宅保管) 原則必要 自宅の金庫、引き出し、仏壇 など
自筆証書遺言(法務局保管) 不要 法務局の保管制度
公正証書遺言 不要 公証役場(正本・謄本)
秘密証書遺言 必要になることが多い 自宅保管等

迷ったらここだけ確認

「公証役場で作った」なら検認不要の可能性が高いです。
「自宅で書いたものが出てきた」なら検認が必要な可能性が高いです(法務局保管かどうかを確認)。

解決事例:検認が必要な遺言で止まっていた手続きを完了した流れ

実務で多い構図を再構成したモデル事例です。

背景(モデル)

  • 亡くなった方:Aさん(70代)
  • 相続人:配偶者と子2人
  • 遺言:自宅の引き出しから封筒に入った遺言が見つかった(封印あり)
  • 困りごと:銀行に相談したら「検認が済むまで受付できない」と言われ、手続きが止まった
  • ゴール:預金解約と不動産名義変更を進めたい

このケースでは、遺言を勝手に開封せず、家庭裁判所で検認を申立てました。 検認後、検認済証明書を取得し、 遺言内容に沿って銀行の払戻しと相続登記(名義変更)を進め、完了まで到達しました。

再現できる7ステップ(検認→銀行/登記/証券まで)

STEP やること 狙い
1 遺言の種類を見分ける(検認要否) 遠回りを防ぐ
2 開封せず保全(特に封印あり) 余計な揉めを防ぐ
3 家庭裁判所へ検認申立て 手続きを動かす
4 検認期日→検認済証明書を取得 実務で通る証明に
5 遺言執行者の有無・権限を確認 窓口を一本化
6 銀行・証券・登記を遺言どおりに実行 完了まで走る
7 揉めの芽があれば早めに整理(遺留分など) 長期化を防ぐ

ステップ1:遺言を“開封前”に確認する(やってはいけない落とし穴)

自宅保管の遺言は「すぐ見たい」気持ちになりますが、封がされている場合は特に注意です。 勝手に開封すると、揉めの火種になることがあります。

まずやること(落ち着いて)

  • 封筒の外観・保管場所を写真に残す(後の説明に役立つ)
  • 遺言の方式(自筆っぽい、公正証書っぽい)を推測し、検認要否を確認
  • 法務局保管かどうかが分かるなら確認(分からなければ次のステップへ)

ステップ2:家庭裁判所への検認申立て(必要書類・管轄)

検認は、原則として被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てます。 必要書類は裁判所の案内に沿いますが、実務では次の準備が鍵になります。

準備で詰まりやすいポイント

  • 相続人を確定する戸籍の収集に時間がかかる
  • 相続人が多いと、裁判所からの通知の手間が増える
  • 申立書の書き方・添付の整え方で差戻しが起きる

事例では、戸籍の収集を先に片付け、申立ての差戻しリスクを減らしたことで、手続き全体の停滞を短縮できました。

ステップ3:検認当日の流れと「検認済証明書」

検認期日では、遺言書の状態確認が行われ、内容が記録されます。 そして実務で重要なのが、検認済証明書です。

検認後にやること

  • 検認済証明書の取得(金融機関・登記で求められることが多い)
  • 遺言執行者の記載があるか確認(いると手続きがスムーズになる場合あり)
  • 遺言の内容を、手続きの順番(銀行→証券→登記等)に落とし込む

ステップ4:銀行・証券・不動産で必要になるもの(実務の要点)

検認が終わると、ようやく各所の実務が動きます。 ただし、遺言がある場合でも、「遺言+検認済証明書」だけで全部終わるとは限りません。

手続き よく求められるもの 注意点
銀行 遺言書、検認済証明書、相続関係書類、本人確認など 銀行ごとに書式が違う。遺言執行者がいると窓口が一本化しやすい
証券 遺言書、検認済証明書、残高資料、相続人情報など 名義変更→売却/払戻しなど順番があることが多い
不動産(登記) 遺言書、検認済証明書、登記申請に必要な書類一式 遺言の不動産特定が曖昧だと補正リスク。登記簿と一致する記載が重要

ステップ5:遺言の内容が実務で通らないときの対処(曖昧・不足・矛盾)

遺言は「気持ち」を書けても、実務で必要な“特定”が不足していることがあります。 例としては、不動産の表示が曖昧、口座が特定されていない、受取人の表記が違う…などです。

よくある不足

  • 不動産が「自宅を妻へ」とだけ書かれている(登記簿との特定が必要)
  • 預金が「A銀行にある分」とだけ書かれている(支店・口座の確認が必要)
  • 受遺者の氏名表記が戸籍とズレる(同一人物の説明が必要)

こうした場合は、手続き先(銀行・法務局・証券)で求められる情報を逆算し、 追加資料(残高証明・登記簿・戸籍等)で補っていきます。

ステップ6:相続人が納得しないとき(遺留分・揉めを増やさない進め方)

遺言があっても、相続人全員が気持ちよく納得するとは限りません。 特に、分け方が偏っていると、遺留分(最低限の取り分)をめぐる話が出ることがあります。

揉めを増やさないコツ

  • 遺言の内容を「まず実務として実行」する部分と、「調整の余地がある」部分を分ける
  • 感情より先に、財産一覧・評価・分割の影響を整理する
  • 期限を決め、長期化しそうなら早めに専門家を交えて“交通整理”する

ステップ7:生前にできる予防策(検認で止まらない遺言の作り方)

「遺言があるのに止まる」状況は、生前の設計で減らせます。 特に、次の選択肢は検討価値があります。

止まりにくい遺言の選択肢

  • 公正証書遺言:検認不要。方式不備リスクが下がりやすい
  • 自筆証書遺言の法務局保管:検認不要。紛失・改ざんリスクを下げやすい
  • 遺言執行者の指定:手続き窓口を一本化し、相続人の負担を減らしやすい

「どれが良いか」はご家族の状況次第ですが、“死後の手続きが止まらない”視点で選ぶことが大切です。

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