借地権を相続したら地主の承諾は必要?|名義変更料・承諾料の違いをわかりやすく解説
借地権を相続するとき、地主に支払う費用として「名義変更料」「承諾料」「名義書換料」という言葉が使われますが、これらは全て「慣習的な呼び名」であり、相続の場合は法的な支払い義務がありません。相続は「譲渡」に当たらないため地主の承諾も不要であり、承諾料を支払う根拠もありません。ただし「売却(第三者への譲渡)」の場合は承諾料の支払いが実務上発生します。相場は借地権価格の10〜15%程度ですが交渉によって減額できる場合があります。この記事では「相続」と「売却」で何がどう違うのかを費用の観点から徹底的に整理します。
目次
「名義変更料」「承諾料」「名義書換料」:3つの用語の違い
地主から「名義変更料を払え」「承諾料が必要だ」「名義書換料をもらう」と言われることがあります。これらは法律上の正式な用語ではなく、慣習上使われている呼び名です。内容は実質的に同じものを指していることがほとんどです。
| 名義変更料 | 借地権の名義(借地人の名前)が変わる際に地主が請求する費用の呼び名。相続・売却どちらの場面でも使われることがあるため、「相続の名義変更料」なのか「売却時の名義変更料」なのかを確認することが重要 |
|---|---|
| 承諾料 (譲渡承諾料) |
主に売却(第三者への譲渡)に際して地主が承諾する対価として請求される費用。借地借家法19条に基づく地主の承諾に対する慣行的な対価。法的義務ではなく交渉可能 |
| 名義書換料 | 「名義書換」=借地契約書上の名義を書き換えることへの対価として地主が請求する費用の呼び名。売却時に使われることが多い。実態は承諾料と同じ |
相続と売却で異なる承諾料の法的根拠、承諾料の相場(借地権価格に対する割合)、交渉で減額できるケースとコツ、払ってしまった後の返金可能性、売却までの費用全体像、地主が承諾しない場合の対処法まで解説しています。
相続の場合:承諾料を払う法的義務はない
借地権の相続において地主への承諾料・名義変更料を支払う法的義務はありません。この点は法律上明確です。
| 「相続」は 「譲渡」では ない |
借地借家法19条は「借地権を第三者に譲渡・転貸するには地主の承諾が必要」と定めています。しかし「相続」は被相続人の権利義務を包括的に引き継ぐ「包括承継」であり、第三者への「譲渡」には当たらないと法的に解釈されています |
|---|---|
| 判例・通説の 立場 |
裁判所の判例・法律学の通説においても、相続による借地権の承継は地主の承諾なしに有効であるとされています。地主が承諾を拒否しても相続人の借地権は有効に存続します |
| 承諾料支払い義務の 根拠はない |
承諾が不要である以上、承諾に対する対価(承諾料)を支払う義務もありません。「相続のたびに承諾料を払う」という慣行は法的根拠がないものであり、強く請求された場合は弁護士に相談することをおすすめします |
地主が「相続のたびに名義書換料をもらう慣習がある」と主張することがあります。しかし借地契約書に「相続時にも名義書換料を支払う」と明記されている場合は、契約上の義務として支払いが求められる可能性があります。契約書の内容を必ず弁護士・行政書士に確認してもらってから対応を決めてください。
法的義務はなくても、長年お世話になった地主との関係・今後の更新交渉・売却交渉を円滑にするために任意で「挨拶料」程度を包む相続人もいます。これは強制ではなく、今後の関係性を総合的に判断して決める事項です。
売却(譲渡)の場合:承諾料が発生する仕組み
相続後に借地権付き建物を第三者に売却する場合は話が全く変わります。売却は「譲渡」に当たるため地主の承諾が必要であり、その対価として承諾料が発生します。
| 承諾料の 支払いタイミング |
売買契約が成立した後・または売買代金決済と同じタイミングで地主に支払うことが一般的です。承諾書と引き換えに支払う形が多い |
|---|---|
| 承諾料の 負担者 |
売買契約上の取り決めによりますが、一般的には売主(相続人)が負担します。買主と折半する場合もあります。契約交渉で決めることができます |
| 承諾書の 受け取り |
地主から「借地権譲渡承諾書」を受け取ることで地主の承諾を証明できます。売買後のトラブル防止のために書面での受け取りが必須です |
| 承諾料の 税務上の扱い |
売主(相続人)が支払った承諾料は譲渡費用として譲渡所得の計算上控除できます(所得税の計算で有利になります) |
承諾料の相場:借地権価格の何%が目安か
承諾料の金額は法律で定められておらず完全に交渉事ですが、実務上の相場感を把握しておくことが交渉の出発点になります。
※ 法的な根拠はなく交渉によって変わります
| 計算例 (参考) |
借地権価格が2,000万円の場合: ・10%の場合:200万円 ・15%の場合:300万円 ※ 「借地権価格」は路線価×土地面積×借地権割合で概算できます |
|---|---|
| 都市部と 地方の差 |
都市部(東京・大阪等)では借地権割合が高く(60〜90%)借地権価格が高いため、承諾料の絶対額も大きくなりやすい。地方では借地権割合が低い(30〜50%)ため承諾料の絶対額は小さくなる傾向 |
| 旧法借地権と 新法の差 |
旧法借地権(1992年以前)は借地人の権利が強く地主にとって扱いにくいため、承諾料の交渉余地が大きい場合があります。地主も「この機会に売ってほしい」と考えるため低い承諾料で合意できることも |
| 底地買取りと の関係 |
地主から底地(土地所有権)を買い取れる場合は承諾料問題が解消されます。「承諾料を払うより底地を買い取った方が総合的に有利」なケースもあるため比較検討することをおすすめします |
承諾料の計算基準は「売却代金」ではなく「借地権の評価額(路線価×土地面積×借地権割合)」が多くの場合の基準になります。混同して計算すると過大・過少になることがあるため確認が必要です。
承諾料の交渉術:減額・免除できるケースと交渉のコツ
承諾料は法的な定めがないため交渉次第で大きく変わります。減額・免除につながる要素と交渉のコツを整理します。
売却を決める前に「想定売却価格-承諾料(10〜15%)-仲介手数料(3%+6万円等)-建物取壊し費用(必要な場合)」を計算して手残り額を試算してください。承諾料が高すぎると売却しても手元に残る金額が少なくなります。交渉の目標額を決めてから臨むことが重要です。
「払ってしまった」場合:返金を求めることはできるか
「相続なのに承諾料を払ってしまった」という場合、返金を求めることは法的に可能な場合がありますが・実務上は難しい面もあります。
| 法的な 根拠 |
相続に際して法的義務なく支払った承諾料は「不当利得」(民法703条)として返還を請求できる余地があります。ただし「任意で支払った」「合意書に署名した」等の事情があると請求が難しくなります |
|---|---|
| 返金が難しい ケース |
・「名義書換料」として契約書に記載があり合意していた場合 ・支払いに際して書面(領収書・合意書等)に署名・押印していた場合 ・支払いから時間が経過している場合(時効の問題) ・「任意で支払った」と解釈される状況の場合 |
| まず弁護士に 相談 |
支払った経緯・金額・書面の内容によって対応が変わります。「返せ」と直接地主に言う前に弁護士に相談して、返金請求の可能性と方法を確認することをおすすめします |
借地契約書に「相続の場合も名義書換料〇〇万円を支払う」と明記されている場合は、契約上の義務として支払い義務が発生する可能性があります。ただしその条項が有効かどうかは法的判断が必要です。契約書の内容を弁護士に確認してもらってください。
相続後に売却するまでの流れ:費用の全体像
借地権付き建物を相続してから売却するまでにかかる費用の全体像を把握しておくことが重要です。
| 費用の種類 | 概算金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 承諾料 (地主へ) |
借地権価格の 10〜15%程度 |
交渉次第で変動。相続の場合は不要(売却の場合のみ発生) |
| 不動産仲介 手数料 |
売却価格の 3%+6万円(税別)が上限 |
借地権付き建物の売却に慣れた不動産会社を選ぶことが重要 |
| 建物取壊し費用 (必要な場合) |
数十〜数百万円 | 更地(または借地権のみ)で売却する場合に発生。木造住宅で延床面積100㎡程度なら50〜150万円程度が目安 |
| 相続登記費用 (司法書士) |
5〜15万円程度 | 建物の相続登記(義務化・3年以内)に必要。売却前に登記変更が必要 |
| 譲渡所得税 |
売却益×20.315% (長期譲渡所得の場合) |
取得費(相続時の評価額)・譲渡費用(承諾料・取壊し費用等)を差し引いた利益に課税。空き家特例(3,000万円控除)の適用も検討する |
| 弁護士・ 行政書士費用 |
案件によって異なる | 地主との交渉・借地非訟等が必要な場合に発生 |
売却時に支払った承諾料は「譲渡費用」として認められ、譲渡所得(売却益)の計算上差し引くことができます。つまり実質的な税負担を軽減する効果があります。確定申告の際に税理士に承諾料の領収書を提出して控除を確実に受けてください。
地主が「承諾しない」と言った場合の対処法
交渉しても地主が承諾しない場合、法的手段として「借地非訟(裁判所への許可申立て)」があります。
| 制度の概要 | 地主が正当な理由なく譲渡の承諾を拒否する場合、借地人は裁判所(地方裁判所)に「借地権譲渡の許可申立て」を行えます(借地借家法19条)。裁判所が地主の代わりに許可を与える制度です |
|---|---|
| 申立ての 要件 |
・地主が承諾を拒否していること(または承諾料等の条件が折り合わないこと) ・買主(譲受人)が定まっていること ・「地主が承諾しても不利益を受けない」と裁判所が認める状況であること |
| 裁判所が定める 条件 |
裁判所は許可と同時に地主への「財産上の給付(承諾料に相当する金額)」を命じることができます。裁判所が相当と認める承諾料を支払えば譲渡が認められます |
| 申立てに かかる時間 |
申立てから結審まで数か月〜1年程度かかることがあります。空き家特例(売却期限3年以内)を使う場合は期限との関係を早めに確認してください |
実際に申立てると時間・費用がかかりますが、「法的手段がある」ことを地主に伝えると承諾料の交渉が一気に現実的になることがあります。弁護士に相談して「借地非訟になった場合の裁判所が定める承諾料の目安」を教えてもらった上で交渉に臨むことが有効です。
よくある疑問(Q&A)
📞 ご相談はこちら
ハートリンクグループでは、
行政書士を中心に税理士などの専門家が連携し、
相続手続き、遺言書作成、成年後見、死後事務などについて
一人ひとりの状況に合わせた相談対応を行っています。
相続専門 ハートリンクグループ
☎ 0120-905-336
まずはお気軽にご連絡ください。