相続財産に知的財産権がないか確認しよう|特許・商標・著作権・印税・ロイヤリティの探し方

この記事の結論

相続財産の中に「知的財産権があるかどうか」の確認は、多くの場合見落とされています。特許権・商標権はJ-PlatPatで無料検索できますが、著作権は登録不要で自動発生するため書面の確認が必要です。また「印税・ロイヤリティ収入」があれば著作権・特許権が存在するサインです。確認すべき情報源は「書類・パソコン・銀行明細・確定申告書・弁理士・出版社・管理団体」の7つです。見落としは相続税の申告漏れ・権利消滅のリスクに直結するため、被相続人の職業・趣味・事業から「知的財産権がありそうか」を最初に推測して確認作業を進めることが効率的です。

なぜ知的財産権を見落としやすいのか

相続財産の中で知的財産権が最も見落とされやすい理由を整理します。

📋 知的財産権が見落とされやすい4つの理由
①「形がない」
ため気づきにくい
不動産には登記・預金には通帳という「形」がありますが、著作権は物理的な形がなく創作と同時に自動発生するため存在に気づきにくい。特許証・商標登録証があっても書類棚に埋もれていることが多い
②本人が教えて
いなかった
特許出願・商標登録・著作物の収益化を家族に伝えていないケースが多い。「父がそんなことをしていたとは知らなかった」という相続人の証言は実務上よく聞かれます
③「大した価値は
ない」という
先入観
趣味の小説・個人の発明・小さな事業のブランドは「たいした財産ではない」と思われがちです。しかし継続的な収入があれば相続税の課税対象になります
④確認方法が
わからない
不動産なら法務局・預金なら銀行という確認ルートが明確ですが、知的財産権は確認先・確認方法が複数あり専門知識がないとわかりにくい
❗ 見落としのリスクは「相続税の申告漏れ」と「権利消滅」の2つです。
特許権・商標権を見落としたまま放置すると特許料未納・更新漏れで権利が消滅します。著作権を見落としたまま印税が支払われ続けても相続人への振込先変更が遅れます。また申告から漏れた知的財産権は税務調査で指摘される可能性があります。
💡 この記事でわかること:
職業・趣味からの権利の推測方法、J-PlatPatでの特許・商標の検索方法、著作権の書面確認方法、印税・ロイヤリティ収入の探し方、弁理士・出版社・管理団体への確認方法、デジタル著作権の確認、確認結果のリスト化まで解説しています。

被相続人の職業・趣味から「ありそうな権利」を推測する

確認作業を効率的に進めるために、まず被相続人の職業・趣味・事業から「どんな知的財産権がありそうか」を推測することが出発点です。

🔬 技術者・発明家・メーカー経営者
ありそうな権利:特許権・実用新案権・意匠権
確認先:J-PlatPat・弁理士・特許証・決算書
注意:会社名義か個人名義かを必ず確認
🏪 小売業・飲食業・サービス業経営者
ありそうな権利:商標権(屋号・ブランド名)
確認先:J-PlatPat・弁理士・事業書類
注意:社名・屋号・ロゴで検索する
✍️ 作家・小説家・ライター・詩人
ありそうな権利:著作権(言語の著作物)
確認先:出版社・文学団体・確定申告書
注意:登録不要・自動発生のため書面確認が必要
🎵 音楽家・作曲家・歌手
ありそうな権利:著作権(音楽)・著作隣接権
確認先:JASRAC・NexTone・レコード会社
注意:演奏・歌唱は著作隣接権として別管理
🎨 画家・イラストレーター・デザイナー
ありそうな権利:著作権(美術)・意匠権
確認先:ギャラリー・デザイン事務所・確定申告書
注意:作品の使用許諾契約書を確認する
💻 プログラマー・アプリ開発者
ありそうな権利:著作権(プログラム)・特許権
確認先:App Store・Google Play・GitHubアカウント
注意:職務著作(会社の財産)かどうかを確認
📸 写真家・映像作家
ありそうな権利:著作権(写真・映像)
確認先:写真エージェンシー・SNS・ウェブサイト
注意:ストックフォトサービスへの登録を確認
👨‍🏫 研究者・大学教員・学者
ありそうな権利:特許権・著作権(論文・教科書)
確認先:所属機関・学術出版社・J-PlatPat
注意:職務発明として大学が権利者の場合がある
✅ 「趣味でやっていた」ことにも著作権は発生します:
趣味で書いていたブログ・同人誌・自費出版の小説・SNSに投稿していたイラスト・YouTubeに投稿していた動画にも著作権が発生します。収益がなくても著作権自体は相続財産に含まれます(ただし収益がない場合は評価額がゼロに近くなることが多い)。

特許権・実用新案権・意匠権・商標権の探し方:J-PlatPat

特許庁に登録された全ての知的財産権はJ-PlatPat(特許情報プラットフォーム)で無料検索できます。

J-PlatPatの基本情報:

・URL:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
・利用料金:無料・会員登録不要
・検索対象:特許権・実用新案権・意匠権・商標権(国内)
・特徴:権利者(出願人)の氏名・会社名で検索できる
📋 J-PlatPatでの検索:効率的な確認方法
検索の
基本パターン
①被相続人の氏名(フルネーム)で検索
②旧姓・旧漢字(濱→浜等)でも検索
③会社名・屋号でも検索(個人事業主・法人経営者の場合)
④「特許・実用新案」「意匠」「商標」の各タブで別々に検索する
権利状態の
確認
検索結果で「権利状態」が「登録」「存続中」→相続手続きが必要。「消滅」「放棄」→手続き不要だが評価確認は行う
特許料・更新
期限の確認
各件の詳細ページ→「経過情報」タブで次回の特許料納付期限・商標更新期限を確認。期限が迫っている場合は最優先で対応する
見つからない
場合の対処
スペースの有無・旧漢字・読み仮名等を変えて再検索する。「全件見つかった」と判断する前に複数パターンで検索することが重要

著作権の探し方:登録不要だから書面確認が必須

著作権は創作した瞬間に自動発生し、登録不要・公開不要です。そのためJ-PlatPatのような一元的な検索システムが存在しません。書面から地道に確認する必要があります。

📚
出版物・作品の存在確認 書棚・段ボール・デジタルデータに被相続人名義の著作物(小説・詩集・楽曲・絵画等)がないか確認する。Amazonや図書館のデータベースで著者名を検索することで出版物の有無を確認できる
💳
銀行明細・振込記録の確認 通帳・ネットバンキングの明細を確認し、「印税」「著作権使用料」「ロイヤリティ」「実施料」等の振込がないかを確認する。出版社・JASRACからの振込があれば著作権の存在を示す
📊
確定申告書・源泉徴収票の確認 確定申告書の「雑所得」「事業所得」欄に「著作権使用料」「印税」「原稿料」「講演料」等の記載があれば著作権・知的財産権からの収入を示す
📋
契約書の確認 出版社・レコード会社・デザイン会社等との「著作権使用許諾契約書」「印税契約書」「ライセンス契約書」が残っていないか確認する。見つかった場合は相手先に連絡して継続手続きを行う
🗂️
著作権登録制度の確認(任意登録) 著作権は任意の「著作権登録制度」(文化庁が管轄)があります。登録している場合は文化庁の著作権登録データベースで確認できます。ただし任意登録のため多くの著作権は登録されていません

印税・ロイヤリティ収入の探し方:銀行明細・確定申告書

「印税・ロイヤリティ・実施料等の収入があれば知的財産権が存在するサイン」です。収入の記録から逆引きで権利の存在を確認します。

📋 収入から知的財産権を逆引きで確認する方法
銀行通帳・
明細
直近3〜5年分の銀行明細を確認して以下のキーワードを探す:
「印税」「著作権」「実施料」「ロイヤリティ」「使用料」「ライセンス料」「JASRAC」「NexTone」「出版社名」等の振込人名称・摘要欄を確認する
確定申告書
(所得税)
過去3〜5年分の確定申告書の所得区分を確認する。雑所得・事業所得の内訳欄に「印税収入」「著作権使用料」「特許実施料」等の記載があれば知的財産権からの収入を示す
法人決算書
(個人事業主・
会社の場合)
貸借対照表に「特許権」「商標権」「のれん」等の無形固定資産として計上されている場合は知的財産権の存在を示す。損益計算書に「特許料収入」「ライセンス収入」があれば同様
源泉徴収票 原稿料・講演料・著作権使用料等は源泉徴収(10.21%)される場合があります。源泉徴収票に「原稿料」「著作権使用料」等の記載があれば著作権からの収入を示します
⚠️ 死亡後も入金が続いている場合があります:振込先変更を急いでください。
被相続人の銀行口座が凍結されても、出版社やJASRACからの印税・使用料の振込先が旧口座のままになっていると入金できなくなります。振込記録から収入先を特定したら、速やかに各社に死亡の連絡と新しい振込先(相続人の口座)への変更手続きを依頼してください。

弁理士・出版社・管理団体への確認

書類からの確認に加えて、専門家・関係機関への直接確認が最も確実な方法です。

⚖️
弁理士への確認 被相続人が弁理士に特許・商標の出願・管理を依頼していた場合、その弁理士に連絡することで保有権利の全リスト・現在の権利状態・次回期限を一括で把握できます。名刺・請求書・封筒等から弁理士事務所を特定してください
📖
出版社への確認 被相続人が著作者として契約していた出版社に相続人として連絡する。印税契約の有無・現在の印税残高・今後の支払い予定を確認する。振込先口座の変更手続きを同時に行う
🎵
JASRAC・NexTone等の音楽著作権管理団体への確認 音楽著作権を管理団体に委託していた場合は、死亡届・相続人確定の届出を行う。JASRACのウェブサイト(https://www.jasrac.or.jp/)またはNexToneで手続き方法を確認する
📸
写真・映像エージェンシーへの確認 ストックフォト(Getty Images・PIXTA等)に作品を登録していた場合はアカウントの継承・売上残高の確認が必要。プラットフォームの相続対応窓口に問い合わせる
🏫
所属機関・勤務先への確認(研究者・大学教員の場合) 研究者・大学教員の場合は所属機関の知的財産部門に確認する。職務発明として大学・研究機関が権利を持つ場合と個人が保有する場合があるため区別が必要

パソコン・スマートフォン・メールからの確認

現代の知的財産に関する情報はデジタルデータの中に多く存在します。パソコン・スマートフォン・メールの確認が重要です。

  • メールの検索:「印税」「著作権」「ロイヤリティ」「特許」「商標」「弁理士」「出版社」「JASRAC」等のキーワードで受信メールを検索する
  • ブラウザの閲覧履歴・ブックマーク:特許庁・JASRAC・出版社・ストックフォトサービスへのアクセス履歴があれば該当する可能性がある
  • アプリ・アカウントの確認:App Store・Google Play等に開発者として登録しているアカウントがないか確認する(アプリの収益が発生している場合がある)
  • クラウドストレージ(Dropbox・Google Drive等)の確認:「契約書」「特許」「著作権」等のフォルダ名でファイルを検索する
  • SNS・ウェブサイト:ブログ・YouTube・note等で収益化(アドセンス・投げ銭・サブスクリプション)している場合は著作権からの収入が存在する可能性がある
  • パスワードマネージャーやメモアプリに口座情報・契約情報が保存されている場合がある
💡 「デジタル遺品」の確認には相続人の判断と慎重さが必要:
被相続人のパソコン・スマートフォンへのアクセスは、プライバシー・利用規約・不正アクセス禁止法との関係で注意が必要です。相続人として確認する場合でも、専門家(弁護士)に相談しながら進めることをおすすめします。

見落としやすいデジタル著作権・プログラム著作権

近年の相続で特に見落とされやすいのがデジタルコンテンツ・プログラムに関する著作権です。

権利の種類 具体例 確認先
アプリ・
ゲームの
著作権
個人でスマートフォンアプリ・PCゲームを開発して配信していた場合。App Store・Google Play・Steam等で収益が発生している可能性がある 各プラットフォームのデベロッパーアカウント。メールアドレスと紐付いた登録情報を確認する
YouTubeの
著作権・
収益
YouTubeチャンネルでの動画収益(AdSense)がある場合。チャンネル登録者数・再生回数から収益の有無を推測できる Google アカウント・YouTubeチャンネル・Google AdSenseアカウント
ブログ・
ウェブサイトの
収益
アフィリエイト収入・広告収入がある場合。被相続人のブログ・サイトを検索エンジンで名前・ハンドルネームで検索して存在を確認する A8.net・バリューコマース等のアフィリエイトサービス。Google AdSense
電子書籍の
著作権
Kindle Direct Publishing(KDP)・楽天Kobo等で電子書籍を自己出版して印税収入がある場合 Amazon・楽天等の出版者アカウント(メールで確認)
音楽配信の
著作権
TuneCore・DistroKid等の音楽配信サービスでSpotify・Apple Music等に配信して収益がある場合 音楽配信サービスのアカウント(メールで確認)
✅ 「ハンドルネーム(PN・ペンネーム)」での活動も見落とさない:
ネット上での創作活動はペンネーム・ハンドルネームで行われることが多く、本名では検索しても見つかりません。被相続人が使っていたネット上の名前・アカウント名(SNSのユーザーネーム等)を家族から情報収集して検索することが重要です。

確認結果の整理:リスト化と次のアクション

確認作業の結果は一覧表にまとめてから次のアクションに移ることで漏れを防げます。

知的財産権確認リスト(作成例):

権利の種類 登録番号・作品名 権利状態 次回期限 収入の有無 次のアクション
特許権 特許第〇〇〇号 存続中 〇月〇日 年間〇万円 特許料納付・名義変更
商標権 登録第〇〇〇号 存続中 〇年〇月 なし 名義変更・更新検討
著作権 小説「〇〇」 保護期間中 死後70年 印税年間〇万円 出版社へ連絡・振込先変更

確認後の優先度別アクション

  • 【最優先】特許料・商標更新の期限が迫っている場合:名義変更の完了を待たずに相続人として期限前に納付・更新申請を行う
  • 【急ぎ】印税・ロイヤリティの振込先変更:出版社・管理団体に死亡の連絡と新振込先を通知する
  • 【必須】遺産分割協議書への記載:確認した全ての知的財産権を登録番号・作品名で特定して協議書に明記する
  • 【必須】相続税申告への反映:収入がある知的財産権の評価額を税理士に算定してもらい申告に含める
  • 弁理士に移転登録申請を依頼する(特許権・商標権等の登録が必要なもの)

よくある疑問(Q&A)

Q. 父が「特許を持っている」と言っていましたが、書類が見つかりません。確認できますか?
はい、J-PlatPatで被相続人の氏名を検索することで確認できます。J-PlatPat(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)の「特許・実用新案」タブから「詳細検索」→「権利者/出願人」欄に氏名を入力して検索してください。書類がなくても特許庁の登録情報から権利の存在・登録番号・権利状態を確認できます。また被相続人が弁理士に依頼していた場合は弁理士に連絡するのが最も確実です。
Q. 亡くなった母が書いたブログ記事に広告収入があったようです。これも相続財産ですか?
はい、ブログ記事の著作権と広告収入から得る権利は相続財産になります。ブログの著作権(記事の著作権)と広告収入を受け取る権利(Google AdSenseやアフィリエイト等)は相続人が引き継ぎます。まずGoogleアカウント・AdSenseアカウントの確認と相続手続き(Googleの相続フォームに申請)が必要です。ブログを継続するか・閉鎖するかの判断も相続人が行います。収益が継続的にある場合は相続税申告に含めることが必要なため税理士に確認してください。
Q. 全ての確認作業を一人でやる自信がありません。専門家に頼めますか?
はい、専門家への依頼が可能であり推奨されます。知的財産権の相続は複数の専門家の連携が必要です。行政書士は戸籍収集・遺産分割協議書の作成・手続き全体のコーディネートを担います。弁理士はJ-PlatPatの照会・権利状態の確認・特許庁への名義変更申請を担います。税理士は評価額の算定・相続税申告を担います。ハートリンクグループでは行政書士を中心に税理士と連携した対応が可能ですのでまずはご相談ください。
Q. 確認作業で「知的財産権はなかった」という結論になりました。それでも税理士に伝えた方がいいですか?
はい、「なかった」という確認結果も税理士に報告することをおすすめします。税理士が申告書を作成する際に「知的財産権の有無を確認した」という記録があることで、後の税務調査で「確認したが存在しなかった」と説明できます。被相続人が発明者・著作者・事業者だった場合は特に、確認作業の記録(何を・どこで・どう確認したか)を残しておくことが重要です。

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