相続の生前対策10選:遺言・贈与・保険・家族信託の使い分け(2026年版)

相続の準備でいちばん大切なのは、「元気なうちに、家族が迷わない設計図を作ること」です。
そして、生前対策は「何か1つやれば安心」ではなく、遺言・贈与・保険・不動産・認知症対策を組み合わせて、家庭の状況に合う形に整えるのがポイントです。


まず最初に:生前対策は“誰を守るため”にする?

生前対策は「節税」だけが目的になりがちですが、実務ではそれ以上に、“家族の手間と揉めごと”を減らす効果が大きいです。
まずは次の2つを、家族内で言語化してみてください。

  • 守りたい人は誰か(配偶者/子/障がいのある子/同居の家族 など)
  • 一番困る未来は何か(兄弟げんか/不動産が売れない/認知症で凍結 など)

ここが決まると、「遺言を厚くする」「保険を増やす」「信託を使う」などの優先順位がはっきりします。


生前対策①:家族会議(揉めない順番と決め方)

いきなり「財産の分け方」を話すと、感情が先に立ちやすいです。おすすめは、次の順番です。

  1. 事実の共有(家族構成、介護状況、住まい、連絡手段)
  2. 困りごとの共有(誰が何に困りそうか)
  3. 希望の共有(本人の意向、家族の希望)
  4. 手続きの役割分担(窓口役、資料集め、確認係)
  5. 最後に分け方(遺言・保険・信託で形にする)

ポイント
家族会議は「一発で決める場」ではなく、“合意形成のプロセス”を作る場です。議事メモ(日時・参加者・決めたこと)だけでも、のちの誤解が減ります。


生前対策②:財産の棚卸し(通帳・不動産・保険の見える化)

生前対策が進まない最大の理由は、「どこに何があるか分からない」ことです。まずは“一覧表”を作りましょう。

最低限そろえる3点セット

  • 預貯金:銀行名/支店/口座種別/口座番号下4桁/通帳保管場所
  • 不動産:所在地/地番/持分/固定資産税の納付先/権利証の場所
  • 保険:保険会社/証券番号/受取人/連絡先/証券の場所

※暗証番号やパスワードは、無理に一覧へ書かず「保管場所だけ」共有する方が安全なケースも多いです。


生前対策③:遺言書(いちばん効果が出やすい基本の一手)

相続対策の中心は、今も昔も「遺言」です。特に、不動産があるご家庭、相続人が複数いるご家庭では、遺言があるだけで手続きの難易度が大きく変わります。

遺言が強いのは、こんな家庭

  • 不動産が主な財産(分けにくい)
  • 子どもが複数/再婚/前婚の子がいる
  • 介護の負担に差がある(不公平感が出やすい)
  • 相続人の一部が遠方/連絡が薄い

注意点
自筆遺言は「形式のミス」で無効になることがあります。さらに、内容があいまいだと、遺言があっても揉めます。
“書き方”と“内容の整理”は別物なので、作成時はチェックリストで確認しましょう。


生前対策④:生命保険(“現金で渡す”最短ルート)

生命保険は、遺言や遺産分割協議を待たずに、受取人へ現金を渡しやすいのが強みです。
葬儀費用・当面の生活費・納税資金など、「すぐ必要なお金」に向いています。

保険が向くケース

  • 配偶者に生活費を残したい(預金が凍結しても動けるお金を用意)
  • 不動産が多く、現金が少ない(納税資金や立替資金の確保)
  • 特定の人に、確実に一定額を渡したい

ここが落とし穴
受取人の設定が古いまま(離婚・再婚・子の独立)だと、意図しない人に渡ることがあります。
「契約者・被保険者・受取人」の組合せも含め、定期的に見直しましょう。


生前対策⑤:生前贈与(やり方次第で“逆効果”も)

生前贈与は、上手く使うと相続時の負担を軽くできますが、やり方を誤ると「税金が増える」「揉める」原因にもなります。

まず押さえたい、よくある誤解

  • 「毎年少しずつ渡せば必ず得」→ 贈与の記録がないと否認されやすい
  • 「子どもの口座に入れたから贈与」→ 実際に管理している人次第で争いになりやすい
  • 「相続直前にまとめて渡す」→ 相続税側で加算対象になることがある

安全に進めるための“最低ライン”

  • 贈与契約書(簡単なものでOK)を作る
  • 振込は贈与者→受贈者が分かる形にする
  • 通帳・メモ・家族共有など、「説明できる材料」を残す

生前対策⑥:家族信託(認知症に備える“財産の運転手”)

家族信託(民事信託)は、ざっくり言うと、「将来に備えて、財産の管理・処分を任せるルール」です。
認知症などで判断能力が低下すると、預金の解約や不動産売却が止まりやすくなります。そこを“止まりにくくする”設計として検討されます。

信託が向くケース

  • 賃貸不動産があり、修繕・更新・売却判断が継続的に必要
  • 家族の中で、実務を担える人がいる(受託者になれる)
  • 「売る/貸す/建て替える」を、将来にわたり決めておきたい

重要な注意点
家族信託は万能ではありません。
たとえば、身上監護(介護・医療の契約や生活面の判断)は信託だけではカバーしづらい場面があります。
「財産の運転」と「生活の支援」は、別設計にした方が安心なことが多いです。


生前対策⑦:任意後見・見守り(お金以外の困りごと対策)

認知症対策は「お金」だけでなく、契約・医療・介護・日常の意思決定が課題になります。
家族信託を検討していても、生活面の支援として任意後見や見守り契約を組み合わせると、現場で詰まりにくくなります。

“組み合わせ”で考えると安心

  • 財産の管理:家族信託(または口座管理の仕組み)
  • 生活の支援:見守り/任意後見/(必要なら)成年後見
  • 亡くなった後:死後事務(葬儀・役所・解約など)の段取り

生前対策⑧:不動産の整理(共有・空き家・名義の落とし穴)

相続トラブルの中心にあるのが不動産です。理由はシンプルで、「分けにくい・管理が続く・売るには合意がいる」からです。

よくある“詰まりポイント”

  • 共有:誰かが反対すると売却できない/管理費の負担が不公平になりやすい
  • 空き家:固定資産税・草木・近隣トラブルなど、放置コストが増える
  • 名義が古い:そもそも手続きのスタート地点で止まる

実務のコツ
「誰が住むか」「売るか」「賃貸にするか」を、遺言・保険・信託で形にする前に、家族の合意(方向性)を作っておくと手戻りが減ります。


生前対策⑨:相続人が困る“書類の整備”(戸籍・一覧図・保管場所)

生前のうちに完璧な書類を作る必要はありません。
ただ、「何をどこに置いたか」が分かるだけで、相続人の負担は大きく減ります。

最低限、家族に共有したい保管場所

  • 遺言書(原本)/公正証書遺言の控え/保管制度の利用有無
  • 保険証券、年金関係、固定資産税の納付書
  • 不動産の権利証(登記識別情報)
  • 銀行・証券の取引先一覧

生前対策⑩:トラブル予防の“証拠づくり”(説明・記録・同意)

相続で揉めるとき、「結論」より先に揉めるのは、“納得感”です。
だからこそ、生前対策では「説明できる状態」を作るのが重要です。

残しておくと効く“3つの証拠”

  • 方針メモ:なぜこの分け方なのか(介護、居住、事業承継など)
  • 記録:家族会議のメモ、共有した日付
  • 書面:贈与契約書、合意書、信託契約、任意後見契約など

迷ったらここ:あなたの家庭に合う「使い分け早見」

① まず「遺言」を優先したい家庭

  • 不動産がある/相続人が複数/再婚・前婚の子がいる
  • 介護の負担差がある(不公平感が出やすい)

② 「保険」を厚くしたい家庭

  • 葬儀費用・当面の生活費・納税資金など“すぐ必要なお金”を確保したい
  • 現金が少なく不動産が多い

③ 「贈与」を検討しやすい家庭

  • 長期でコツコツ準備できる/記録を残す運用ができる
  • 教育・住宅など目的が明確で、家族の理解が取りやすい

④ 「家族信託」が向きやすい家庭

  • 賃貸不動産や管理が続く資産がある
  • 将来の売却や運用方針を、元気なうちに決めたい
  • 受託者になれる人がいる(信頼・実務・継続性)

※どれか1つだけで完結しないことが多いので、「遺言+保険」「信託+見守り(任意後見)」のように組み合わせて設計するのが現実的です。


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まとめ:10個を“全部やる”より、“順番どおりに1つずつ”

生前対策は、やることが多く見えますが、実際は「順番」がすべてです。
まずは、①家族会議 → ②財産の見える化 → ③遺言の骨子づくり、の3ステップだけでも進めると、次に必要な対策(保険・贈与・信託)が見えてきます。

「うちは何から着手すべき?」「遺言と信託、どっちが先?」など、状況により最適解は変わります。
不安があるときは、“今の家族に合う設計”を一緒に整理していきましょう。


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