相続手続きで詐欺に注意:典型手口と家族でできる防止策
相続は、ただでさえ「やることが多い」「期限がある」「家族の気持ちが揺れる」手続きです。そこに詐欺が混ざると、混乱は一気に大きくなります。
先に結論だけお伝えすると、相続の詐欺対策は 「急がせる連絡は止めて、本人確認を二重にする」 これが基本です。
この記事では、よくある手口と、家族だけでできる具体策を、上から読めばそのまま動ける形でまとめます。
相続の詐欺が増える「3つの理由」
- 理由1:家族が疲れていて判断が鈍りやすい(葬儀後・役所回り・手続きラッシュ)
- 理由2:「誰が窓口か」が決まっていない(連絡が分散し、情報が漏れやすい)
- 理由3:お金・不動産・個人情報が一気に動く(口座、印鑑証明、身分証、登記情報)
詐欺側は、相続人の不安を見抜いて「急がせる」「言い切る」「専門用語で煙に巻く」などの形で、確認の手順を飛ばさせます。
だからこそ、相続の詐欺対策は“心構え”ではなく、手順(ルール)で守るのが一番強いです。
まずはこれだけ:被害を防ぐ「5つの鉄則」
この5つだけは、家族で最初に共有してください。
- 「今日中」「至急」「今だけ」と言われたら、まず止まる(その場で決めない)
- 連絡は折り返しが基本(相手が出した番号に掛けない)
- お金を動かす前に家族内の窓口(代表者)に必ず共有
- 本人確認書類(免許証・マイナンバー等)は、画像で送らない/LINEで送らない
- 相続に関する書類は「1つの場所」に集約(分散が一番危険)
※実務上、相続手続きでは戸籍や印鑑証明など「強い個人情報」を扱います。だからこそ、“確認の手順を飛ばす”こと自体が最大のリスクになります。
典型手口①:専門家・公的機関を名乗る「なりすまし」
よくあるパターン
- 「公証役場です」「法務局です」「家庭裁判所です」などを名乗り、書類提出や費用を急がせる
- 「相続税の未納がある」「期限を過ぎると大変」など、不安ワードで焦らせる
- 「このURLから入力」「この番号にSMS返信」など、個人情報を抜く導線を作る
家族でできる防止策
- 折り返し先は公式サイトで確認(相手が言った電話番号・URLは使わない)
- 「担当者名」「部署名」「受付番号」を必ず聞き、メモに残す
- 支払いが絡む話は、その場で決めない(振込先が個人口座なら即中断)
行政書士法人として、特に注意してほしい点
相続には「やるべき期限」が確かにあります。ただ、期限がある=今この電話で決めなければならない、にはなりません。
本当に必要な連絡であれば、正規の窓口で必ず確認が取れます。焦るほど、相手の思うつぼになりやすいので、いったん深呼吸して“確認の手順”に戻りましょう。
典型手口②:銀行・カード・ネットバンクの「口座乗っ取り」
相続で狙われやすい理由
- 亡くなった直後は、郵便物・スマホ・暗証番号などが家の中に集まりやすい
- 「口座が凍結する前に…」という焦りが生まれやすい
- 相続人が多いと、情報共有が甘くなりやすい
よくある危険サイン
- 「本人確認のため、暗証番号・ワンタイムパスワードを教えてください」
- 「口座凍結解除のため、このリンクからログインしてください」
- 「SMSの番号を読み上げてください(認証コード)」
対策:やるならこの順番
- 家族内の“預貯金担当”を1人決める(勝手に誰かが動かない)
- 通帳・カード・郵便物・スマホの「手がかり」を集めて一覧化する
- 銀行への連絡は、公式番号に折り返し(相続窓口の案内を受ける)
- ログイン情報が不明なら、無理にログインしない(復旧導線で情報を抜かれることがあります)
「口座が止まるのが怖い…」という不安は自然です。だからこそ、銀行相続の全体像を先に押さえておくと落ち着いて動けます。
関連:銀行口座の相続手続き:凍結のタイミング/必要書類/払戻しの実務
典型手口③:不動産売却・片付けを狙う「相続ビジネス詐欺」
よくあるパターン
- 「この地域は今が売り時」「今すぐ査定だけでも」→契約を急がせる
- 片付け業者を装い、「貴重品を預かる」「処分の同意を取る」などで揉める
- 相場より不利な条件で囲い込み、家族の合意が揃わないまま話を進める
対策:売却・片付けは「名義・共有・合意」が先
- 不動産は、相続人全員の合意が前提になる場面が多い(共有状態は特に注意)
- 見積りは1社で決めない(比較して“急がせない”)
- 貴重品探索は、家族立会い・写真記録・箱の管理をルール化
不動産が絡むと、詐欺だけでなく「家族間の行き違い」でトラブルが増えます。先に落とし穴を知っておくと、ムダな摩擦が減ります。
関連:不動産相続の落とし穴:共有・空き家・未登記家屋・境界不明をどうする?
典型手口④:相続人・親族を装う「協力しない・急かす」攻撃
こんな言い方に注意
- 「自分は忙しいから、あなたが全部やって」
- 「とにかく先に振り込んで。あとで精算する」
- 「書類はよく分からないから、白紙に印鑑だけ押して」
- 「今すぐサインしないと損する」
ポイント:お金・書類は“単独判断”しない
相続では、善意で動いたことがあとで「使途不明金」「勝手に動かした」と疑われ、家族関係が壊れてしまうことがあります。
詐欺対策は、家族トラブル予防にも直結します。
関連:使途不明金(預金の引き出し)問題:疑われた時の説明と証拠の残し方
家族でできる防止策:情報の置き場と連絡ルールを決める
① 代表者(窓口)を決めるだけで、被害が減ります
相続で詐欺が入り込みやすいのは、連絡先がバラバラで「誰が判断するか」が曖昧なときです。
代表者=全部やる人ではなく、情報を集めて、家族に共有する窓口だと考えると決めやすいです。
関連:相続手続きは誰がやる?代表者を決めるコツと家族の役割分担
② 「相続フォルダ」を1つ作る(紙でもクラウドでもOK)
フォルダに入れるもの(最低限)
- 戸籍・住民票など身分関係書類(コピーも含む)
- 銀行・証券・保険など“財産の手がかり”
- 不動産関係(固定資産税通知・登記情報)
- 「いつ・誰から・何を言われたか」のメモ(電話・SMS・メール)
財産の把握が進むほど、詐欺に強くなります。まずは「探し方の順番」を押さえておくと安心です。
関連:相続財産の調べ方:預貯金・不動産・株式・保険・借金の見つけ方
③ 期限を家族のカレンダーに入れる(焦りを減らす)
「期限がある」こと自体が、詐欺の武器になります。期限を正しく把握しておくと、“急かし”に動揺しなくなります。
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「もう動いてしまった…」ときのリカバリー手順
焦らず、順番に進めれば大丈夫です。
- 連絡・振込・共有を止める(これ以上の被害拡大を防ぐ)
- 相手の情報を保存(電話番号・メール・SMS・振込先・URL・会話メモ)
- 金融機関に連絡(口座・カード・ネットバンクの一時停止や確認)
- 家族の代表者に共有し、今後の窓口を一本化
- 状況により、警察・消費生活センター・専門家へ相談
※紛争(誰かが強く争っている/詐欺取消などの争点が中心)になっている場合は、手続きの整理に「別の法的手段」が必要になることがあります。状況に応じて、弁護士等の連携が有効です。
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