相続登記に必要な評価証明書・名寄帳:取得先・年度・よくあるミス
相続登記(不動産の名義変更)でつまずきやすいのが、「評価証明書の年度が違う」、「名寄帳を取らずに漏れが出る」、「地番・家屋番号の書き間違い」の3つです。
結論としては、①名寄帳(または課税明細)で“不動産の棚卸し” → ②評価証明書で“登記用の評価額”を確認 → ③登記簿の地番・家屋番号と突合という順番にすると、手戻りが激減します。
目次
1. そもそも「評価証明書」「名寄帳」って何?(登記での役割)
まずは用語をシンプルに整理します。
評価証明書(固定資産評価証明書)
- ざっくり言うと、「この土地・建物の評価額はこれです」という証明書。
- 相続登記では、登録免許税(登記の税金)を計算するために使われることが多いです。
名寄帳(なよせちょう)
- ざっくり言うと、「この人(被相続人)が、その市区町村内で持っている不動産の一覧」です。
- 固定資産税の通知書に載っていない不動産(共有持分・私道・山林・課税なし等)が混ざることがあるので、“漏れ防止”の切り札になります。
名寄帳=棚卸し(漏れ防止)
評価証明書=登記用の評価額(税計算)
役割が違うので、どちらか片方だけだと詰まりやすいです。
2. どこで取る?取得先は“不動産の所在地”で決まる
ここが一番の落とし穴です。住んでいる場所ではなく、不動産がある場所で請求先が決まります。
(1)基本:市区町村(資産税課など)
- 多くの自治体では、市区町村役所の資産税担当で取得します。
- 郵送請求できる自治体も多いです(手数料・返信用封筒などは自治体ごとに違います)。
(2)東京23区:都税事務所(都税)
- 23区内の土地・家屋は、区役所ではなく都税側の窓口になるケースがあります。
- 郵送申請の場合は、都税の郵送窓口に送付する案内が出ています。
(3)政令市など:市税事務所/区役所など、自治体ルールに従う
- 例えば横浜市は「固定資産の所在する区の区役所」で扱う案内です(行政サービスコーナー不可など注意点あり)。
結論: 不動産が複数の市区町村にあるなら、市区町村ごとに名寄帳・評価証明書を取る必要が出ます。
3. 年度はどれ?「最新年度」が基本になる理由
評価証明書や名寄帳は、“年度”が付いています。ここを間違えると、登記側で「取り直し」を求められやすくなります。
(1)基本は「最新年度(現年度)」で請求
- 登記で使うのは、その時点で公的に証明できる評価額が前提になるため、まずは最新年度で揃えるのが安全です。
(2)ただし「過年度」が必要になる場面もある
- 相続税申告の資料整理、過去の課税関係の確認、評価の比較などで、過年度の証明が必要になることがあります。
(3)近傍宅地価格の扱いが変わっている自治体がある
- 自治体システムの標準化に伴い、証明書に近傍価格が載らない(または原則載らない)扱いになっている自治体もあります。
- 登記で近傍地価格が必要な場面は、法務局側で調整する旨を案内している自治体もあります。
①最新年度の評価証明書(登記用)を取る
②「近傍宅地価格が必要になりそう」なら、窓口で“記載可否・代替”を確認
③案件によっては法務局側の指示(依頼書等)を優先
これで大きく外しにくいです。
4. よくあるミスTOP7:差戻し・再取得を防ぐ
- 年度違い:現年度が必要なのに過年度で取ってしまう
- 請求先違い:不動産所在地ではなく住所地で請求してしまう
- 地番と住居表示の混同:住所(〇丁目)を書いてしまい、地番(〇番〇)とズレる
- 家屋番号の未確認:建物は「家屋番号」が重要。固定資産税通知の記載だけで進めてしまう
- 共有持分の見落とし:名寄帳で「持分あり」を拾わず漏れる
- 課税なし不動産の見落とし:私道・山林等で通知書に載らない/課税されないものが抜ける
- 必要部数の見誤り:金融機関・法務局・税務で“原本提出”が必要な先が混在しているのに1通しか取らない
行政書士としての実務感覚でいうと、③と④(地番・家屋番号)のズレが一番「気づきにくいのに致命的」になりがちです。
不安な場合は、登記事項証明書(登記簿)と突合してから進めると安全です。
5. 名寄帳で漏れなく探すコツ:課税なしの土地・共有持分に注意
名寄帳は「その自治体内の一覧」なので、自治体をまたぐと名寄せは分かれます。
逆に言えば、自治体ごとに名寄帳を取れば“漏れの穴”が塞がるということです。
(1)固定資産税の通知書だけに頼らない
- 通知書に載らない不動産(課税されない・少額・共有持分など)があるため、名寄帳で補完します。
(2)「土地だけ」「建物だけ」になっていないか確認
- 土地と建物は別管理です。建物だけ相続登記が必要なケースもあります(未登記家屋なども含む)。
(3)登記の“優先順位”をつける
- 売却・賃貸・解体などの予定がある不動産は、先に名義を整えないと動けません。
- 空き家の管理リスクが高いものも優先順位が上がります。
結論: 名寄帳は「漏れ防止」、評価証明は「登記用」。両方揃えて、重要物件から順に進めるのが現実的です。
6. 実務の段取り:最短で集めるチェックリスト
ステップ1:対象自治体を洗い出す(10分)
- 固定資産税通知書/納税書の送付元(市区町村名)を確認
- 不動産が他県・他市にある可能性があればメモ
ステップ2:名寄帳で棚卸し(漏れ防止)
- 「被相続人名義で、その自治体内の不動産一覧」を出す
- 共有持分や課税なしが混ざっていないかチェック
ステップ3:評価証明書(登記用)を取得
- 原則は最新年度で取得
- 地番・家屋番号が不安なら、登記簿(登記事項証明書)で突合
ステップ4:登記・分割・期限を同時に管理する
- 遺産分割協議書の作成と相続登記は、同時並行で動く方が早いです
- 期限が迫るなら、つなぎの手段も検討(案件により)
「どの書類を何通必要?」で迷ったら、“提出先(法務局・銀行・税務)ごとに必要書類を列挙”すると混乱が減ります。
代表者を決めて進捗共有するだけでも、手続きの停滞がかなり減ります。
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