【やさしく解説】相続財産の評価はどうする?不動産・株式・車・動産の基本
目次
「相続財産の評価」とは何か:なぜ評価が必要か
相続が発生したとき、「財産がどのくらいの価値なのか」を数字で表すことを「相続財産の評価」と言います。
評価が必要な場面は主に2つあります。第一は「相続税の申告」で、遺産総額が基礎控除を超える場合に財産の評価額を税務署に申告・納税します。第二は「遺産分割協議」で、財産をどう分けるかを決める際に「誰が何をいくら相当で受け取るか」の共通の基準が必要です。
重要なのは、相続税法上の評価額と不動産市場での売却価格(時価)は別物だという点です。評価の基準を理解することで、「思っていた金額と全然違う」という混乱を防ぐことができます。
評価が必要な理由、評価の基準日、土地・建物・マンション・上場株式・非上場株式・自動車・動産・預貯金の各評価方法の基本、2024年マンション評価改正の概要、評価額と売値の関係まで、初心者向けにやさしく解説しています。
評価の基準日:「相続開始日(死亡日)」が基本
相続財産はすべて、「被相続人(亡くなった方)が亡くなった日(相続開始日)時点の価値」で評価するのが基本ルールです。
・被相続人が2025年8月20日に死亡 → 評価の基準日は2025年8月20日
・株式の場合は2025年8月20日の終値(または終値がない場合は直近の値)を使用
・土地の場合はその年(2025年分)の路線価(毎年7月1日公示)を使用
相続登記・銀行手続き等が完了するまでに数か月かかる場合でも、評価はあくまで死亡日時点の価値で計算します。その後に不動産価格が上がっても下がっても、相続税の評価額には影響しません。
不動産の評価:土地・建物の評価方法
不動産は相続財産の中で最も評価が複雑です。「土地」と「建物」は別々に評価します。
| 財産の種類 | 評価方法 | 使用する指標 |
|---|---|---|
| 土地 (市街地) |
路線価方式 | 国税庁が毎年公示する「路線価」を使用 |
| 土地 (郊外・農地等) |
倍率方式 | 固定資産税評価額×国税庁が定める倍率 |
| 建物(家屋) | 固定資産税評価額 | 市区町村(東京23区は都)が評価した金額をそのまま使用 |
| マンション | 2024年改正ルール | 区分建物(室内)の固定資産税評価額+敷地利用権(路線価方式等)で計算 |
土地の評価:路線価方式と倍率方式
路線価方式(市街地の土地に適用)
市街地の土地は「路線価」を使って評価します。路線価とは、国税庁が毎年7月1日に公示する、道路(路線)に面した土地1平方メートルあたりの評価額です。
路線価(円/㎡)× 地積(㎡)× 各種補正率 = 評価額
補正率の例:
・間口が狭い土地(間口狭小補正)→ 評価額が下がる
・奥行きが長すぎる土地(奥行長大補正)→ 評価額が下がる
・不整形な形状の土地(不整形地補正)→ 評価額が下がる
・角地(角地加算)→ 評価額が上がる場合がある
路線価は国税庁の財産評価基準書(路線価図)でインターネットから確認できます。
倍率方式(農地・山林・郊外の土地に適用)
倍率方式の基本式:
固定資産税評価額 × 倍率(国税庁が地域・地目ごとに定める) = 評価額
倍率は国税庁の「評価倍率表」で確認できます。
路線価は一般的に公示地価(実勢価格の参考値)の80%程度に設定されています。つまり相続税の評価額は、実際に売れる価格よりも低いことがほとんどです。「評価額=売値」ではありません。
被相続人が住んでいた自宅の土地・事業用地等は「小規模宅地等の特例」により、一定の要件を満たす場合に評価額を最大80%減額できる特例制度があります。相続税が発生しうる場合は必ず税理士に確認してください。
建物(家屋)の評価:固定資産税評価額をそのまま使う
建物(家屋)の相続税評価額は、市区町村(東京23区は都税事務所)が評価した「固定資産税評価額」をそのまま使用します。
・固定資産税評価額は毎年4月ごろに届く「固定資産税納税通知書」に記載されている
・または市区町村の窓口で「固定資産評価証明書」を取得して確認できる
・築年数が経過した建物ほど評価額が低くなる傾向がある
納税通知書には「評価額(価格)」と「課税標準額」の2種類が記載されています。相続税の計算で使うのは「評価額(価格)」の方です。課税標準額は特例適用後の税計算用の数字で、評価額より低い場合があります。
マンションの評価:2024年改正で変わった新ルール
2024年1月1日以降の相続・贈与から、分譲マンションの相続税評価方法が大きく変わりました。
| 改正前の問題 | タワーマンション等は市場価格(時価)と相続税評価額の乖離が大きく(評価額が時価の20〜30%程度になるケースも)、節税目的での活用が社会問題化していた |
|---|---|
| 改正後のルール | 評価額が時価の60%を下回る場合は、評価額を時価の60%まで引き上げる補正が入る「区分マンションの評価乖離率」の計算を導入 |
| 影響が大きい物件 | 高層階・都市部の高額マンション・築年数が浅いマンション等(評価が上がりやすい) |
| 影響が小さい物件 | 低層階・郊外・築年数が古いマンション等(評価の変化が少ない) |
2024年改正後の計算は複雑で、物件ごとに乖離率を計算する必要があります。タワマン等の高額マンションは評価額が大きく上がる可能性があるため、相続税申告が必要な場合は必ず税理士に依頼してください。
上場株式・投資信託の評価
証券取引所に上場している株式・ETF・投資信託等は、相続開始日の市場価格で評価します。
| 評価方法 | 次の4つの金額のうち最も低い価格を採用する ① 相続開始日の終値 ② 相続開始月の終値の平均額 ③ 相続開始月の前月の終値の平均額 ④ 相続開始月の前々月の終値の平均額 |
|---|---|
| 相続開始日が 取引所の休場日の場合 |
前後の開場日の終値のうち相続開始日に近い方の終値(複数ある場合は平均)を使用 |
| 必要な資料 | 各証券会社が発行する「残高証明書(死亡日時点)」を取得する。相続税申告に添付が必要 |
投資信託は相続開始日の「基準価額(1口あたりの時価)」で評価します。
評価額 = 基準価額 × 口数
ただし解約手数料・信託財産留保額等の控除分を差し引ける場合があります。各証券会社・銀行の残高証明書を取得して正確な評価額を確認してください。
非上場株式(同族会社・中小企業の株)の評価
上場していない株式(同族会社・中小企業の株等)は市場での取引価格がないため、国税庁の定める評価方式で計算します。相続税評価の中で最も専門性が高い分野です。
| 類似業種 比準方式 |
上場している同業種の株価・利益・配当・純資産と比較して評価する方式。比較的大きな会社に適用されることが多い |
|---|---|
| 純資産価額方式 | 会社の保有する全資産・負債を相続税評価額で計算した「純資産」で評価する方式。資産が多い会社・不動産を多く持つ会社に適用されやすい |
| 配当還元方式 | 少数株主(同族以外の小口株主)の評価に使われる。配当金額を基に評価するため、一般的に評価額が低くなる |
評価方式の選択・計算が極めて複雑で、会社の財務諸表・利益・資産内容を詳細に分析する必要があります。自分で計算すると誤りが生じやすく、過少申告加算税のリスクがあります。
自動車・バイクの評価
自動車・バイク等の車両は相続開始日時点の「時価(売却した場合に得られる価格)」で評価します。
① 中古車買取業者・オークション相場で確認する方法が最も実態に近い
カーセンサー・グーネット等のサイトの相場価格を参考にすることも多い
② 一般的な相場がない特殊車両・希少車の場合は、専門業者の査定書を取得して評価する
③ 製造後年数が経過して価値がほぼなくなっている場合(廃車検討レベル)は評価額ゼロとして扱える場合がある
注意:ローンの残高(負債)がある場合は、車の評価額と相殺して純資産を計算します。
税務上は「売買実例価額」「精通者意見価格」等を参考にするよう定められています。実務では中古車市場の相場価格や買取業者の査定額を証拠として使うことが多いです。査定書を入手しておくと申告がスムーズです。
動産(家財・美術品・貴金属)の評価
家具・家電・衣類等の一般的な家財道具は、通常は「家財一式〇〇万円」として一括評価します。美術品・貴金属・骨董品等は個別に時価評価が必要です。
| 動産の種類 | 評価の方法 |
|---|---|
| 一般的な 家財道具 |
売買実例価額・精通者意見価格等を参考にする。実務では家財一式を一括で低額評価するケースも多い |
| 美術品・骨董品・ 書画 |
原則として専門家(美術商・鑑定士等)の鑑定評価額を使用。高額な場合は必ず鑑定書を取得する |
| 貴金属 (金・プラチナ等) |
相続開始日時点の市場価格(金相場等)× 重量(グラム数)で評価。田中貴金属等の公示価格を参考にする |
| 宝石・ジュエリー | 専門の宝石鑑定士による鑑定価格を使用。高額なものは必ず鑑定書を取得する |
| ゴルフ会員権・ リゾート会員権 |
会員権取引業者の取引相場(売り気配値の70%)で評価するのが原則 |
相続税の税務調査では、美術品・貴金属・金の延べ棒等は特に確認されやすい財産です。金庫の中・タンス預金と並んで調査でよく指摘される項目のため、漏れなく評価・申告することが重要です。
預貯金・生命保険・その他金融資産の評価
| 財産の種類 | 評価方法 |
|---|---|
| 普通預金・ 当座預金 |
相続開始日時点の残高+未収利息(税引後)。銀行発行の残高証明書(死亡日時点)で確認する |
| 定期預金 | 元本+相続開始日までに発生した利息(税引後)の合計額 |
| 死亡保険金 (生命保険) |
受取保険金額。ただし法定相続人×500万円の非課税枠あり(非課税を超えた分が課税対象) |
| 解約返戻金 (保険契約継続中) |
相続開始日時点の解約返戻金の額。保険会社に「解約返戻金証明書」を取得して確認する |
| 仮想通貨 (暗号資産) |
相続開始日時点の取引所の取引価格(終値)で評価。取引所の残高証明書を取得する |
| ゴルフ会員権 | 取引相場のある会員権は売り気配の70%、取引相場のない会員権は預託金額等で評価 |
評価額と「実際の売値」は違う:遺産分割との関係
「相続税の評価額」と「実際に売った場合の値段(時価・市場価格)」は別物です。この違いが遺産分割のトラブルの原因になることがあります。
| 不動産(土地) | 路線価は公示地価の約80%。相続税評価額<実際の売値になることがほとんど |
|---|---|
| 上場株式 | 市場価格で評価するため評価額と売値は近い |
| 一般家財道具 | 相続税評価額は低く設定されることが多く、実際には価値がほぼないものも多い |
「相続税の計算には路線価を使うが、分割するときは実勢価格(売却見込み額)を使いたい」という場合、相続人間の認識がずれると対立に発展します。遺産分割協議で「どの価格を基準にするか」を最初に合意しておくことが重要です。
よくある疑問(Q&A)
📞 ご相談はこちら
ハートリンクグループでは、
行政書士を中心に税理士などの専門家が連携し、
相続手続き、遺言書作成、成年後見、死後事務などについて
一人ひとりの状況に合わせた相談対応を行っています。
相続専門 ハートリンクグループ
☎ 0120-905-336
まずはお気軽にご連絡ください。