相続財産の評価はどうする?不動産・株式・車・動産の基本
結論:相続財産の「評価(いくらとみなすか)」は、主に次の3つのために必要です。
- 相続税がかかるか(申告が必要か)を判断するため
- 遺産分割で不公平感を減らすため(「だいたいこの価値」の共通認識づくり)
- 売る/貸す/持ち続けるなどの判断材料にするため
ポイントは、「買った値段」ではなく、亡くなった日(課税時期)の価値を基準に考えること。そして財産ごとに、税務上の“見方(評価方法)”が違う点です。
※この記事は基本の整理です。土地の形状補正や非上場株式などは、専門家のチェックで評価が大きく動くことがあります。
1. まずは全体像:評価は「この順番」で進めると迷いません
相続財産の評価は、いきなり細かい計算から入ると混乱します。おすすめは次の順番です。
ステップ①:財産を「全部」書き出す(評価は後でOK)
- 預貯金(普通・定期)
- 不動産(自宅・空き家・土地)
- 株式(上場/非上場)・投資信託
- 車・バイク
- 家財・貴金属・骨董
- 保険(死亡保険金)
- 借金・ローン・未払金(マイナス財産)
ステップ②:評価の「難易度」で分ける
| 難易度 | 例 | まず何を集める? |
|---|---|---|
| 低 | 預貯金 | 残高証明・通帳 |
| 中 | 上場株式・車 | 証券の残高/価格、車の査定 |
| 高 | 土地(補正が多い)・非上場株式・骨董 | 路線価・固定資産評価・決算書・鑑定など |
ステップ③:税金の判断(相続税がかかるか)を早めに行う
評価が大きく影響するのは、「相続税の申告が必要かどうか」です。不動産や株があるご家庭ほど、ざっくりでも早めに見積もると、期限に追われにくくなります。
2. 不動産の評価:土地(路線価/倍率)と建物(固定資産税評価)の基本
不動産は、相続税の評価でつまずきやすい代表です。ここはまず「土地」と「建物」を分けて考えます。
(1)土地:路線価方式/倍率方式のどちら?
土地の評価には、大きく2つの方法があります。
- 路線価方式:道路に「路線価」が付いている地域の土地
- 倍率方式:路線価が付いていない地域の土地(固定資産税評価額×倍率)
まずやること
□ その土地の住所で「路線価図」を確認
□ 路線価があれば「路線価方式」、なければ「倍率方式」へ
(2)路線価方式の“ざっくり式”
基本形は、
路線価 ×(奥行補正などの補正率)× 面積
というイメージです。実際は、形がいびつ・角地・間口が狭い等で補正が入るため、土地は「同じ面積でも評価が変わる」ことがよくあります。
(3)倍率方式の“ざっくり式”
固定資産税評価額 × 倍率です。倍率は地域や地目で異なるため、確認が必要です。
(4)建物:基本は「固定資産税評価額」
建物(家屋)は、まずは固定資産税の評価(課税明細など)を基準に整理するのが入口です。自宅か賃貸か、敷地との関係(借地権など)があるかで、追加の検討が必要になることもあります。
不動産で揉めやすいポイント
「相続税評価」と「売れる値段(実勢価格)」はズレることがあります。
分割の話し合いでは、税務評価+実勢価格(査定)の両方を見ておくと納得感が出やすいです。
3. 株式の評価:上場株式と非上場株式で“まったく別物”です
(1)上場株式:4つの候補のうち「いちばん低い価格」を使う
上場株式は、一般に「亡くなった日の終値」だけで決めるのではなく、
- 亡くなった日(課税時期)の最終価格
- その月の月平均
- 前月の月平均
- 前々月の月平均
など複数の候補を比べ、最も低いものを使う整理が基本になります。
(2)上場株式:必要資料はこれだけでOK
- 証券会社の残高報告書(銘柄・株数)
- 課税時期の価格が分かる資料(証券会社の画面・明細でも可)
- 配当金の入金履歴(あれば)
(3)非上場株式:会社の規模で評価方法が変わる
非上場株式(自社株)は、ざっくり言うと、会社の規模に応じて
- 類似業種比準方式(上場会社と比べるイメージ)
- 純資産価額方式(会社の資産・負債を時価に近づけてみるイメージ)
- 両者の併用
などに分かれます。ここは、決算書の内容や株主構成によって難易度が上がりやすいので、早めに資料をそろえるほど安心です。
非上場株式で最初に集めるもの
□ 直近2〜3期の決算書一式(勘定科目内訳があると強い)
□ 株主名簿(誰が何株)
□ 会社名義の不動産・有価証券の資料(あると評価が大きく動きます)
4. 車の評価:よくある勘違いと、現実的な集め方
車は「相続税の対象?」と忘れられがちですが、財産に入ります。評価はざっくり言うと、亡くなった時点の時価(中古市場の価値)を意識します。
(1)勘違いしやすいポイント
- × 新車価格で考える → 実際は中古としての価値で考える
- × ローンがあるのに車だけ計上 → 残債(借金)も整理が必要
- × リース車なのに資産として計上 → 名義・契約形態の確認が必要
(2)現実的な集め方(おすすめ)
- 中古車販売店(買取)で査定を取る(紙 or 画面の控えを残す)
- 車検証のコピーを保管(車種・年式・型式・走行距離の根拠)
- 売却するなら、売買契約書・入金記録もセットで保管
5. 動産(家財・宝石・骨董)の評価:まとめてOK/個別評価の境目
動産は「家の中のモノ全部」と思うと途方に暮れます。ここは“まとめてよいもの”と“個別に見るもの”に分けるのがコツです。
(1)家財は「家財一式」でまとめられることが多い
一般的な家具・家電・衣類などは、ひとつひとつ細かく評価しない運用になることが多い一方、次のようなものは要注意です。
(2)個別評価になりやすい代表例
- 宝石・貴金属(指輪、金地金など)
- 骨董・美術品(掛け軸、壺、絵画など)
- ブランド時計、希少なコレクション
- 高級オーディオ・カメラなど
(3)動産の評価を「説明できる形」にするコツ
- 売買実例:同じような品の中古取引相場(根拠を残す)
- 査定:買取店・専門店の見積書や査定書
- 鑑定:骨董や美術品は精通者(鑑定)の意見が強い
揉めやすいポイント
兄弟姉妹の誰かが先に形見分けを進めると、「価値ある物が消えた」と疑われやすいです。
まずは写真を撮って共有し、目録を作ってから動くと安心です。
6. よくある漏れ:ゴルフ会員権・ポイント・サブスク・貸金庫
(1)ゴルフ会員権:評価対象になることがあります
ゴルフ会員権は、内容によっては評価し、相続税計算に入れることがあります(取引相場のある会員権など)。一方で「譲渡できない・預託金もない・単にプレーできるだけ」のものは評価しない整理もあります。
(2)ポイント・電子マネー・サブスク
相続税の評価というより、財産や支出の“漏れ”として問題になりやすいです。
- スマホ決済の残高(チャージ残)
- ネット証券の口座
- サブスクの引落(亡くなった後も続く)
「支出」として残り続けると、後で家族が気づきにくいので、早めに棚卸しすると安心です。
(3)貸金庫
現金・貴金属・証書などが入っていることがあります。開扉手続き・立会い・記録(写真)など、揉めない運用を意識するのが大切です。
7. 評価がズレやすい落とし穴:揉める前に押さえたい注意点
- 落とし穴 土地の評価を「路線価×面積」だけで終わらせる(補正が抜ける)
- 落とし穴 上場株式を「亡くなった日の終値」だけで計算する
- 落とし穴 非上場株式を“なんとなく”で決める(決算書・株主構成で大きく変動)
- 落とし穴 車や貴金属などを忘れて「預金しかない」と思い込む
- 落とし穴 借金・未払金(葬儀費用等)を整理せず、税額だけ増やしてしまう
争いを減らすコツ
相続税の評価と、遺産分割の「納得感」は別問題になりがちです。
不動産などは、税務評価+売却査定(実勢)を並べて説明すると、話がまとまりやすくなります。
8. 証拠の残し方:後から説明できる「資料のそろえ方」チェックリスト
評価で本当に大事なのは、「計算」より先に根拠資料をそろえることです。
不動産
- □ 固定資産税の課税明細・評価証明書
- □ 登記事項証明書(全部事項)
- □ 住所地の路線価(路線価図のスクショでも可)
- □ 賃貸中なら賃貸借契約書・家賃入金資料
株式
- □ 証券会社の残高報告書(銘柄・株数)
- □ 課税時期の価格根拠(画面・明細)
- □ 非上場なら決算書・株主名簿
車・動産
- □ 車検証・査定書(買取店の見積)
- □ 高額品は査定書、購入証明、写真
- □ 形見分け前に写真を撮り、家族に共有
9. 関連記事(内部リンク):手続きの全体像も一緒に確認
評価ができても、相続は「期限」と「手続きの順番」で詰まりやすいです。合わせて読むと迷いが減ります。
- 〖2026年対応〗相続手続きの全体像:やることチェックリスト(期限順)
- 相続登記はいつまで?義務化の期限・過料の考え方・間に合わない時の対処
- 遺産分割協議書の作り方:必須記載・よくある無効例・修正方法
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- 相続放棄の判断基準:3か月の起算点・やってはいけない行動・費用
10. まとめ:今日やるべき最初の一歩
相続財産の評価は、全部を完璧にやろうとすると止まります。まずは次の2つだけでOKです。
- 財産を書き出す(不動産・株・車・高額動産の“存在確認”)
- 根拠資料を集める(固定資産税・証券残高・車検証・査定など)
そこまでできると、「相続税の要否」「分割で揉めそうな点」「専門家に頼むべき範囲」が見えてきます。
迷ったらここだけ相談でもOK
土地の補正・非上場株式・高額動産は、評価が大きく動きやすい分野です。
“間違えると後から直すのが大変”になりやすいので、早めのチェックが安心です。