借地権の相続手続きは何をする?|死亡後の流れ・必要書類・地主への連絡方法

この記事の結論

借地権の相続手続きは大きく「①地主への連絡」「②建物の相続登記(3年以内・義務)」「③地代の支払い継続」「④遺産分割協議書の作成」の4本柱で構成されます。地主の承諾は不要ですが、死亡後1〜2週間以内に地主へ書面で連絡することが実務上の最優先事項です。建物の相続登記は司法書士に依頼するのが確実で、登記完了後に地主への通知を正式に行います。借地契約書が見当たらない場合は地主への相談・法務局での建物登記確認が最初のステップです。

手続きの全体像:4つのステップで整理する

借地権の相続手続きを「いつ・何をするか」の時系列で把握することが混乱を防ぐ第一歩です。

📋 借地権相続手続きの全体スケジュール
死亡後
1〜2週間
【最優先】地主への死亡連絡・地代支払い口座の変更連絡
借地契約書の確認・コピー取得
死亡後
2週間〜
1か月
戸籍謄本の収集開始・相続人の確定
遺産分割協議の開始(誰が借地権・建物を引き継ぐか)
司法書士への相続登記の相談
死亡後
1〜3か月
遺産分割協議書の作成・署名・捺印
建物の相続登記の申請(司法書士に依頼)
地主への「相続人確定・登記完了」の正式通知
以降〜
3年以内
建物の相続登記:3年以内が法定義務(2024年4月〜)
相続税申告(課税対象の場合:10か月以内)
借地契約の更新対応(更新期が来る場合)
💡 この記事でわかること:
地主への連絡方法・タイミング・内容、地代継続の実務、遺産分割協議書への記載方法、建物の相続登記の手順、必要書類の状況別一覧、借地契約書が見つからない場合の対処、地主宛て連絡文書の書き方まで解説しています。

ステップ①:地主への連絡(死亡後1〜2週間以内)

借地権相続で最初に行うべきことは地主への連絡です。法的義務ではありませんが、地代の継続・今後の関係維持のために実務上不可欠です。

連絡のタイミング・手段

📋 地主への第一報:何をどう伝えるか
タイミング 葬儀が落ち着いた後できるだけ早く、死亡後1〜2週間以内を目安に連絡する。地代の支払い日が近い場合はさらに急ぐ
第一報の
手段
電話で一報を入れた後、書面(手紙・内容証明郵便)でも通知するのが確実。書面は後日のトラブル防止になる
伝える内容
(第一報)
①被相続人(〇〇)が〇月〇日に死亡したこと
②現在相続手続き中であること
地代は引き続き支払う意思があること
④今後の地代振込先・支払い方法の確認をしたいこと
⑤正式な相続人確定後に改めて書面で通知すること
地主の
連絡先が
わからない場合
借地契約書・地代の振込先口座・地主から届いた郵便物等から地主の氏名・住所を確認する。それでも不明な場合は土地の登記事項証明書(法務局で取得)で土地所有者を確認できる
「連絡が遅れた」という状況を避けることが最優先です:
地主が被相続人の死亡を人づてに聞いて「なぜ連絡がないのか」と不信感を持つケースがあります。葬儀後できるだけ早く連絡することで、その後の交渉・更新・売却といった場面での地主との関係が大きく変わります。

ステップ②:地代の支払い継続(即座に)

相続発生と同時に地代の支払い義務も相続人に引き継がれます。これは遺産分割協議の完了を待つ必要はなく、直ちに対応が必要です。

  • 被相続人の銀行口座から地代が自動引落しになっていた場合:口座凍結で引落しが止まる。次回の支払い日前に相続人の口座から振込む手配をする
  • 地代の振込先(地主の口座)を確認する:借地契約書・過去の振込明細から地主の口座番号を確認する
  • 遺産分割協議が未完了でも地代は支払い続ける:相続人の誰かが立替えて支払い、後で協議の中で精算する方法が一般的
  • 滞納があれば速やかに解消する:被相続人が生前に地代を滞納していた場合、その分も相続人が支払う義務を承継している
  • 地代の領収書を受け取る・振込記録を保管する:支払い証明として保管しておく
地代を3か月以上滞納すると借地契約の解除原因になります。
「相続手続き中だから支払いを待ってもらえる」という前提は危険です。地主が特別に猶予してくれる場合もありますが、法律上の義務は相続発生の瞬間から引き継がれています。必ず継続して支払ってください。

ステップ③:遺産分割協議と誰が引き継ぐかの決定

借地権と建物を相続人全員でどう引き継ぐかを遺産分割協議で決定します。借地権付き建物は原則として一体として扱います。

📋 遺産分割協議書への借地権・建物の記載方法
建物の特定 建物は登記情報で特定します:
・所在・地番・家屋番号
・種類(居宅・倉庫等)・構造・床面積
法務局で建物の登記事項証明書を取得してそのまま記載するのが正確
借地権の
特定
借地権は「〇〇(地主名)との借地契約に基づく借地権(土地の所在:〇〇市〇〇町〇〇番)」のように記載する。土地の地番・地主名・借地契約書の日付等で特定できるようにする
記載例 「被相続人〇〇が〇〇(地主)との間で締結した借地契約(契約日:〇年〇月〇日、所在:〇〇市〇〇町〇〇番)に基づく借地権および同借地上の建物(所在:〇〇市〇〇町〇〇番地、家屋番号:〇〇番〇〇、木造瓦葺2階建、延床面積〇〇㎡)は、相続人〇〇(長男)が取得する」
共有にしない
ことが重要
借地権を複数の相続人で共有すると、将来の売却・返還・更新に全員の同意が必要になりトラブルの原因になります。特定の相続人が単独取得して代償金で公平性を確保することが推奨されます

ステップ④:建物の相続登記(3年以内・義務)

建物の相続登記は2024年4月から義務化され、相続を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になります。

1
建物の登記事項証明書を法務局で取得する 建物の「所在・家屋番号・種類・構造・床面積・所有者(被相続人)」を確認します。法務局の窓口またはオンライン(登記ねっと)で取得できます。1通600円(窓口)または500円(オンライン)
2
司法書士に相続登記を依頼する 相続登記は自分でもできますが、借地権付き建物の場合は借地権の記載等が絡むため司法書士に依頼するのが確実です。費用は10〜15万円程度が目安(登録免許税+司法書士報酬)
3
法務局へ申請書を提出する 司法書士が申請書を作成・提出します。審査期間は1〜2週間程度。登記完了後に「登記識別情報通知(旧・権利証)」が相続人に交付されます
登記完了後に地主へ正式通知を送る 建物の登記が相続人名義に変わった後、地主に「相続登記が完了した旨・新しい借地人の氏名・住所・連絡先」を書面で通知します。これにより正式に地主との関係を引き継いだことを明確にします
💡 「相続登記申請義務の履行が困難な場合」の猶予措置:
相続人が多数・住所が不明・複雑な事情がある等で3年以内に登記が難しい場合は「相続人申告登記」という簡易な方法で義務を一時的に果たすことができます(法律上の手当あり)。詳しくは司法書士に相談してください。

必要書類:状況別の組み合わせ一覧

借地権相続の各手続きに必要な書類を手続きの種類別に整理します。

📂 建物の相続登記(法務局への申請)に必要な書類
  • 被相続人の出生から死亡までの全戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本を含む)
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書(全相続人の署名・実印押印)+全員の印鑑証明書
  • 相続登記申請書(司法書士が作成)
  • 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
  • 相続人(新しい名義人)の住民票
  • 固定資産税評価証明書(登録免許税の計算に使用)
  • 登録免許税(建物固定資産税評価額×0.4%)
📂 地主への通知書類
  • 相続発生通知書(自由書式・氏名・死亡日・今後の担当者)
  • 被相続人の死亡を確認できる書類(死亡診断書の写しまたは戸籍謄本の写し)
  • 相続人確定通知書(登記完了後):新しい借地人の氏名・住所・連絡先を記載
  • 地代の振込先変更依頼書(相続人の口座情報)
📂 相続税申告(借地権の評価が必要な場合)
  • 借地権の評価:路線価図(国税庁ウェブサイト)で借地権割合を確認
  • 固定資産税評価証明書(建物の評価に使用)
  • 借地契約書の写し(借地権の種類・存続期間の確認)
  • 地代の金額・支払状況を示す書類
書類 取得先 費用目安
戸籍謄本・除籍謄本 本籍地の市区町村役場(郵送可) 1通450〜750円
住民票・住民票の除票 住所地の市区町村役場 1通300〜350円
印鑑証明書 住所地の市区町村役場 1通300〜350円
建物の登記事項証明書 法務局(窓口・郵送・オンライン) 1通500〜600円
固定資産税評価証明書 市区町村役場(資産税課等) 1通300〜400円
土地の登記事項証明書
(地主の確認用)
法務局 1通500〜600円

借地契約書が見つからない場合の対処法

実務上よくある「借地契約書が見当たらない」という状況への対処を整理します。

  • 被相続人の書類を徹底的に探す:金庫・書棚・タンスの引き出し・段ボール箱等。「地代領収書」「地主からの手紙」も手がかりになる
  • 地主に連絡して写しを依頼する:地主が原本を保管していることが多い。「借地契約書の写しを頂けますか」と依頼するのが最もシンプル
  • 土地の登記事項証明書を法務局で取得する:地主の氏名・住所が確認できる。また借地権(賃借権)が登記されている場合は登記記録から契約内容の一部を確認できる
  • 通帳の振込明細から地主を特定する:過去の地代振込先(口座名義)から地主の氏名・銀行口座を確認できる
  • 弁護士・行政書士に相談して「地主との間で新たな契約確認書を作成する」という方法もある
⚠️ 借地契約書がなくても借地権は有効に存続しています。
「借地契約書がないから借地権がない」ということにはなりません。ただし契約内容(存続期間・地代額・更新条件等)の確認が困難になるため、できるだけ早期に地主から写しを取り寄せることをおすすめします。

地主への連絡文書:書き方のポイント

地主への連絡は書面で記録を残すことが後日のトラブル防止になります。2段階(第一報・正式通知)に分けて送ることが実務上有効です。

第一報(死亡後1〜2週間以内)の書き方

【参考】地主への死亡連絡書の構成要素:

①宛先:地主の氏名・住所
②差出人:相続人の氏名・住所・連絡先(電話番号)
③題名:「借地人〇〇 死亡のご連絡」等
④本文に含める内容:
 ・被相続人(〇〇)が〇年〇月〇日に死亡した旨
 ・相続手続き中であること
 ・地代は引き続きお支払いする旨(最重要)
 ・今後の地代振込先・支払い方法の確認をお願いする旨
 ・相続が確定次第改めて正式通知をする旨
⑤日付・署名

正式通知(登記完了後)の書き方

【参考】相続完了通知書の構成要素:

①宛先・差出人・日付
②題名:「借地権相続完了のご通知」等
③本文に含める内容:
 ・相続人として借地権・建物を承継した旨
 ・新しい借地人(相続人)の氏名・住所・連絡先
 ・建物の相続登記が完了した旨(登記日・新所有者名)
 ・今後の地代支払い口座・方法の確認
 ・借地契約を引き続き誠実に履行する旨
④添付書類(任意):相続関係を示す書類の写し・登記事項証明書の写し
内容証明郵便で送ることで「送付日・内容」が公的に記録されます:
後日「連絡を受けていない」という地主側の主張を防ぐため、正式通知は内容証明郵便(配達証明付き)で送ることをおすすめします。郵便局またはクラウド内容証明サービスで送付できます(数百〜数千円程度)。

よくある疑問(Q&A)

Q. 相続人が遠方に住んでいて地主に会いに行けません。書面だけで対応できますか?
はい、書面(郵便)だけで対応することは可能です。第一報は電話で行い、詳細は書面で送るという方法が現実的です。内容証明郵便を使えば送達の証拠も残ります。地主から「直接会いたい」と言われた場合は、行政書士・弁護士に間に入ってもらって代理対応することも可能です。遠方の場合は専門家への代理依頼を早めに検討することをおすすめします。
Q. 借地権と建物を別々の相続人が引き継ぐことはできますか?
法律上不可能ではありませんが、実務上は極めて問題が起きやすく推奨されません。借地権(土地を借りる権利)と借地上の建物は本来一体として扱われます。別々の相続人が取得した場合、建物所有者が借地権なしで建物を持つ状態になり、建物の利用・売却・管理が法的に複雑になります。地主との関係でも混乱が生じます。遺産分割協議では借地権と建物を同一の相続人が取得することを強くおすすめします。
Q. 地主が高齢で、地主自身も亡くなっていました。連絡先がわかりません。どうすればいいですか?
土地の登記事項証明書を法務局で取得して現在の土地所有者を確認することが最初のステップです。地主が亡くなっている場合、土地は地主の相続人に引き継がれているはずです。登記上の所有者名・住所を確認して連絡を取ります。登記されている住所が古い場合は、その住所への書面送付や住民票の調査(弁護士・行政書士が職権で調査できる場合があります)で現住所を探す方法があります。地主側の相続が未整理で連絡先が全くわからない場合は弁護士に相談してください。
Q. 建物が未登記です。相続登記はどうすればいいですか?
未登記建物の場合はまず「建物の表示登記」を行ってから「所有権保存登記(相続)」を行う必要があります。表示登記は土地家屋調査士が担当し、所有権保存登記は司法書士が担当します。未登記建物の相続は通常の相続登記より手続きが複雑になるため、土地家屋調査士と司法書士に早めに相談することをおすすめします。なお未登記建物も相続登記の義務化の対象になりますので注意が必要です。

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