準確定申告とは:必要な人・期限(4か月)・やり方をやさしく整理
準確定申告とは「亡くなった方の代わりに相続人が行う、死亡年分の所得税の確定申告」です。申告が必要かどうかは被相続人の収入の種類で決まります。会社員で年末調整済みであれば多くの場合不要ですが、自営業者・年金受給者・複数の収入があった方は必要になることが多いです。期限は「相続の開始を知った日の翌日から4か月以内」で、通常の確定申告(3月15日)とは異なります。還付になる場合も申告で戻ってきますので、必要かどうかを早めに確認することが重要です。
目次
準確定申告とは:通常の確定申告との違い
準確定申告とは人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が代わりに行う確定申告のことです(所得税法125条)。
| 申告者 |
通常:本人が申告する 準確定:相続人(または包括受遺者)が代わりに申告する |
|---|---|
| 対象期間 |
通常:1月1日〜12月31日(1年分) 準確定:1月1日〜死亡日まで(死亡した年の途中まで) |
| 申告期限 |
通常:翌年3月15日 準確定:相続の開始を知った日の翌日から4か月以内 |
| 提出先 | 被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署(相続人の住所地の税務署ではない) |
| 署名 |
通常:本人が署名 準確定:相続人全員が連署する(または各相続人が個別に申告書を提出) |
| 還付金の 受取人 |
準確定申告で還付が生じた場合は相続人が受け取る(相続財産の一部になる) |
準確定申告が必要な人・不要な人の判断基準、4か月の期限の計算方法、対象となる所得の範囲、使える控除の注意点、申告書の作成と提出の流れ、還付になる場合の手続き、税理士への依頼費用まで解説しています。実際の申告は税理士に依頼することをおすすめします。
申告が必要な人・不要な人:チェックリスト
準確定申告が必要かどうかは被相続人の収入の種類・金額によって決まります。
・年金+給与など複数の収入があった
・公的年金が400万円超(または他の所得が20万円超)
・不動産賃貸収入(家賃収入)がある
・株式・投資信託等で利益があり申告分離課税を選択したい
・副業・フリーランスの収入(20万円超)がある
・医療費控除を受けると還付になる可能性がある
・給与以外の所得が20万円以下だった
・公的年金の受給額が400万円以下かつ他の所得が20万円以下
・源泉徴収のみで完結する収入しかない
| 医療費が 多かった場合 |
死亡年に医療費(入院・治療費等)が多くかかっていた場合、医療費控除で税金が還付される可能性があります。義務ではありませんが申告することで相続財産(還付金)が増えます |
|---|---|
| 年の途中で 亡くなった 会社員 |
年の途中に退職・死亡した場合、年末調整が完了していないため源泉徴収された所得税が過払いになっている可能性があります。準確定申告で還付を受けられます |
| ふるさと納税を していた場合 |
生前にふるさと納税をしていた場合、寄附金控除を申告することで税金が還付される場合があります |
「たぶん不要だろう」と思っても、被相続人が副業・不動産収入・株式の売却等をしていた場合は申告が必要になることがあります。確定申告書・源泉徴収票・年金の源泉徴収票等を探して税理士に確認してもらうのが最も確実です。
4か月の期限:計算方法と延長の可否
準確定申告の期限は「相続の開始を知った日の翌日から4か月以内」です(所得税法125条2項)。
相続開始を知った日:2025年3月10日(通常は死亡日と同日)
期限:2025年7月10日(翌日3月11日から4か月後)
| 「相続の開始を 知った日」とは |
通常は被相続人の死亡日と同じ日になります。「死亡の事実を相続人が知った日」であり、実務上は死亡日と一致することがほとんどです |
|---|---|
| 期限が土日祝日の 場合 |
期限が土日祝日に当たる場合は翌営業日が期限になります(国税通則法10条2項) |
| 通常の確定申告 期限(3月15日) より前の場合 |
例えば1月中に亡くなった場合、4か月後は5月になりますが、前年分の確定申告(3月15日期限)も別途必要になる場合があります。「前年分の確定申告」と「今年分の準確定申告」を混同しないよう注意してください |
| 期限の延長 | 準確定申告の期限は原則として延長できません。ただし相続人が複数いる場合に各自が申告書を提出する場合等、個別の事情がある場合は税務署に確認してください |
準確定申告が必要なのに期限内に申告しないと、追徴課税(延滞税・無申告加算税)が発生します。相続の手続きで忙しい時期ですが、4か月という期限は意外と短く感じます。相続発生後2〜3週間以内には税理士に相談して申告の要否・準備を始めてください。
準確定申告の所得の計算:1月1日〜死亡日まで
準確定申告の対象となる所得は死亡した年の1月1日から死亡日までの期間で発生した所得です。
| 給与所得 | 死亡日までに支払われた給与が対象。死亡後に会社から支払われた給与(死亡退職金・未払い給与等)の扱いに注意。未払い給与は「相続財産(所得税ではなく相続税の対象)」として扱われる場合と「死亡後支払い分として準確定申告に含める」場合があります。税理士に確認が必要 |
|---|---|
| 事業所得 (自営業) |
1月1日から死亡日までの事業収入・経費を集計します。帳簿・売上記録・経費の領収書を相続人が引き継いで申告します。事業を継続する相続人がいる場合は引継ぎの手続きも同時に進めます |
| 不動産所得 | 1月1日から死亡日までの家賃収入・経費(修繕費・管理費・減価償却費等)を申告します。死亡後に入金された家賃の帰属についても確認が必要です |
| 公的年金等 | 死亡日までに受け取った年金が対象。死亡月以降に振り込まれた年金(過払い分)は返還が必要であり、申告から除外します。年金の源泉徴収票(日本年金機構から届く)を使います |
| 株式・ 投資信託等 |
特定口座(源泉徴収あり)は原則申告不要。ただし損失を他の利益と通算したい場合は申告が有利になることがあります。一般口座の場合は申告が必要 |
準確定申告では「収入の計上基準(現金主義か発生主義か)」が重要です。個人事業主は通常現金主義・発生主義のどちらかを採用していますが、死亡日を跨いだ未収・未払いの扱いは複雑です。帳簿・契約書と合わせて税理士に確認してもらうことをおすすめします。
使える控除:通常の確定申告と違う点
準確定申告でも各種の所得控除を使うことができますが、通常の確定申告とは異なる点がいくつかあります。
| 控除の種類 | 準確定申告での扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| 医療費控除 | 死亡日までに支払った医療費が対象。死亡後に相続人が支払った医療費は準確定申告では使えない(相続人自身の確定申告で使う) | 領収書を全て収集してから申告する |
| 配偶者控除・ 扶養控除 |
死亡日時点の状況で判定。1年間の所得ではなく死亡時点の状況で判定するため、通常の確定申告と判定が変わることがある | 配偶者・扶養親族の所得を確認する |
| 社会保険料控除 | 死亡日までに支払った社会保険料(国民健康保険・介護保険等)が対象 | 支払った保険料の金額を確認する |
| 生命保険料控除 | 死亡日までに支払った生命保険料が対象。年払いで前払い分がある場合の扱いに注意 | 生命保険料控除証明書で確認 |
| 寄附金控除 (ふるさと納税等) |
死亡日までに支払ったふるさと納税・寄附が対象 | 寄附金受領証明書を収集する |
| 基礎控除 | 48万円(令和2年以降)を控除できます(月割り計算はしない・死亡日に関係なく全額控除) | — |
入院中に死亡した場合、死亡後に相続人が入院費・治療費を支払うケースがあります。この費用は被相続人の準確定申告の医療費控除には使えません(被相続人が死亡日に支払っていないため)。ただし「相続債務」として相続税の計算上差し引ける場合があります。税理士に確認してください。
申告の手順:書類・提出先・署名の方法
準確定申告の実際の手順をステップごとに整理します。
必要な書類の収集
- 源泉徴収票(給与・年金):勤務先・日本年金機構から発行される。死亡後でも取り寄せ可能
- 医療費の領収書(1月1日〜死亡日分):病院・薬局等のレシート・領収書を全て収集する
- 生命保険料控除証明書:保険会社から秋頃に届く書類(死亡前に届いているはず)
- ふるさと納税の寄附金受領証明書
- 帳簿・売上記録・経費の領収書(自営業の場合)
- 不動産収入の資料(賃貸収入がある場合):賃貸契約書・家賃入金記録・修繕費等の領収書
- 被相続人のマイナンバーの確認書類
申告書の作成と提出
| 申告書の 書式 |
通常の確定申告書(所得税及び復興特別所得税の申告書 第一表・第二表)を使用します。「準確定申告」という専用の書式は存在せず、通常の申告書に「準確定」と記入します |
|---|---|
| 相続人の 連署 |
相続人が複数いる場合は申告書に全員が連署・押印します。「準確定申告書及び付表」(付表2:各相続人の氏名・住所・法定相続分等を記載)も添付します。相続人の一人が代表して申告する場合も付表への連署が必要 |
| 提出先 | 被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に提出します。相続人の住所地の税務署ではありません |
| 提出方法 | 窓口持参・郵送・e-Tax(電子申告)のいずれも可能。e-Taxは相続人が自分のIDでアクセスして申告できます |
| 税金の 支払い |
申告の結果、追加で税金を払う場合(納付税額が発生する場合)は申告期限(4か月以内)までに相続人が納付します。納付した税額は相続財産から支払われたものとして扱われます |
還付になる場合:取り戻せるお金を逃さない
準確定申告の結果税金が還付(戻ってくる)になる場合があります。この還付金は相続財産の一部として相続人が受け取ります。
| 年の途中で 亡くなった 給与所得者 |
年末調整が未完了のため、源泉徴収された税額が過払いになっている場合が多い。基礎控除・扶養控除等が年末調整で反映されていない分が還付される可能性がある |
|---|---|
| 医療費が 多かった場合 |
年間の医療費が10万円(または合計所得金額の5%)を超えた場合に医療費控除が適用できる。入院・手術等で多額の医療費がある場合は申告することで源泉徴収税額の一部が還付されます |
| ふるさと納税 をしていた場合 |
寄附金控除の申告で還付になる場合があります。生前に寄附したふるさと納税の受領証を探して申告に含めましょう |
1. 準確定申告書に「還付される税金の受取口座」を記載する
2. 受取口座は相続人名義の口座を指定する(被相続人名義の凍結口座は使えない)
3. 相続人が複数いる場合は代表相続人の口座に入金して後で分配するか、各自の申告で持分に応じて受け取る方法があります
※ 還付金は相続財産として相続税の課税対象になります(相続税申告が必要な場合は税理士に報告してください)
義務的な申告ではなくても、医療費控除や年末調整未完了による過払い税額がある場合は申告することで数万〜数十万円が還付されることがあります。「申告しなくていい」と思っていても還付の可能性があるか税理士に確認することをおすすめします。
税理士への依頼:費用の目安と依頼のタイミング
準確定申告は通常の確定申告と同様に税理士に依頼することが可能です。
| 費用の目安 |
・給与所得のみ(シンプルなケース):3〜8万円程度 ・事業所得・不動産所得あり:8〜20万円程度 ・複雑なケース(複数の収入・株式等):20万円以上になることもある ※ 事務所によって異なります。相続税申告と合わせて依頼すると割安になる場合があります |
|---|---|
| 依頼のタイミング | 相続発生後できるだけ早い段階(2〜3週間以内が理想)で相談を始める。4か月という期限は書類収集・申告書作成の時間を考えると余裕がありません |
| 相続税申告と 同じ税理士に 頼む利点 |
準確定申告と相続税申告は情報が連動しています(例:未収の事業収入が相続財産になる等)。同じ税理士に依頼することで情報の齟齬を防ぎ費用も抑えられる場合があります |
よくある疑問(Q&A)
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