相続した不動産が“名義が違う”/未登記:直し方と優先順位
相続した不動産で「名義が違う」「未登記」が見つかると、
売却・賃貸・遺産分割が止まりやすくなります。
いちばん早く安全に進めるコツは、“直す順番”を間違えないことです。
この記事では、初心者の方でも上から読めば動けるように、直し方と優先順位をやさしく整理します。
まず結論:いちばん詰まりやすいのは「同一人物の証明」と「未登記の切り分け」
不動産の相続で手続きが止まる原因は、大きく2つです。
① 登記簿の名義人(住所・氏名)が、亡くなった方と一致していない
② 建物が未登記(または増築部分が未登記)で、そもそも“登記の土台”が足りない
最短で進める合言葉は、「特定 → 証明 → 切り分け → 登記 → 共有/境界/管理」です。
いきなり司法書士さんに丸投げ…の前に、“何がズレているのか”を先に整理すると、手戻りが激減します。
「名義が違う」って具体的に何が起きている?よくあるパターン5つ
まずは原因をタイプ分けします。ここが分かると、必要書類と手順が一気に見えます。
パターンA:登記簿の住所が昔のまま(引っ越し・住居表示)
例:登記簿は「○○町1-2-3」なのに、最後の住所は「○○一丁目2番3号」など。
これは「違う人」ではなく、住所の変遷が追えればOKなことが多いです。
パターンB:登記簿の氏名が違う(改姓・旧字体・通称)
婚姻・離婚・養子縁組、旧字体(﨑/崎など)でズレることがあります。
戸籍でつながりを示すのが基本です。
パターンC:名義が祖父母・曾祖父母のまま(相続登記が未了)
「父が使っていた家だけど、名義は祖父のまま」など。
この場合、相続が“飛び級”になり、戸籍が増えやすいのが特徴です。
パターンD:土地は登記あり/建物が未登記(または一部未登記)
固定資産税は払っているのに、建物の登記がない。増築した部分だけ登記がない。
ここは土地家屋調査士(表題登記)と司法書士(権利登記)の役割分担が重要です。
パターンE:境界・越境・共有など“別の火種”が潜んでいる
名義を直した途端に、売却や分割の段階で問題が表面化するケースがあります。
この記事の後半で、行政書士目線のリスクもまとめます。
優先順位はこれ:迷ったらこの5ステップで進める
やることが多く見えても、順番を固定すると迷いが減ります。
- 不動産の特定(地番・家屋番号まで)
- 同一人物の証明(登記簿の名義人=被相続人とつなぐ)
- 未登記の切り分け(土地/建物/増築、どこが未登記か)
- 相続登記(期限を意識。必要なら“つなぎ”)
- 共有・境界・空き家管理など、次の事故を防ぐ整え方
ポイント:先に「相続人の話し合い(遺産分割)」を完璧にしようとして止まるより、
“資料が揃う順”で動くと結果的に早いです。
ステップ1:不動産を漏れなく特定する(地番・家屋番号で整理)
不動産の手続きは「住所」ではなく、基本的に地番(土地)と家屋番号(建物)で動きます。
まずは次の3点を“紙に書き出す”だけで、だいぶ前に進みます。
- 土地:所在(市区町村)+地番
- 建物:所在(地番)+家屋番号(あれば)
- 種類:自宅/貸家/空き家/駐車場/農地など
手がかりになる書類(家にあることが多い)
- 固定資産税の納税通知書・課税明細(地番・家屋番号のヒント)
- 権利証(登記識別情報)や売買契約書、古い登記簿謄本
- 住宅ローンの書類、火災保険の証券
つまずきポイント:「住所が分かるのに地番が分からない」
よくあるのが、「住所は分かるけど地番が分からない」ケースです。
その場合は、固定資産税の書類から当たりを付けたり、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取って確認します。
地番が確定できると、次の“名義のズレ”が判断しやすくなります。
ステップ2:登記簿の名義人と被相続人が「同じ人」だと示すコツ
名義のズレを直す本質は、「この登記簿の人=亡くなった方」と分かる証拠を出すことです。
ここで役立つのが、住民票(除票)と戸籍の附票(改製原附票を含む)です。
よく使う“つなぎ書類”の考え方
- 住民票の除票:最後の住所を示す(亡くなった方の最終住所の確認に強い)
- 戸籍の附票:住所の履歴を追う(登記簿の住所とつながりを作るのに強い)
- 戸籍:氏名の変化や身分関係を示す(改姓・養子などの説明に強い)
この場面は要注意:登記簿住所が古すぎて、住民票除票だけでは追えない
引っ越し回数が多い場合、最後の住所しか載らない書類だけだと「途中が切れて」しまうことがあります。
そんな時は戸籍の附票(改製原附票)で、住所履歴をつないでいきます。
“登記簿の住所が履歴のどこかに出てくる”と、手続きが通りやすくなります。
実務のコツ:ズレを「直す」より先に、まず「説明できる状態」にする
「住所変更登記を先にやらないとダメ?」と不安になる方が多いのですが、まずは“つながりが分かる資料”を集めるのが先です。
そのうえで、ケースに応じて「相続登記の中で整理できるのか/別途の変更登記が必要か」を判断すると手戻りが減ります。
ステップ3:未登記(または一部未登記)を直す最短ルート
未登記が絡むと、やみくもに動くほど遠回りになります。まずは“どこが未登記か”を切り分けます。
切り分けの質問
① 土地は登記されている?(名義は誰?)
② 建物は登記されている?(登記があるなら、構造・床面積・増築の反映は?)
③ そもそも建物が「課税」されている?(固定資産税の明細に家屋の記載は?)
未登記建物があると、何が困る?
- 売却時に買主が不安になり、話が進みにくい
- 担保設定や融資が絡むと止まりやすい
- 遺産分割で「価値」や「取り分」の合意が作りにくい
最短ルートの基本:表題登記 →(必要に応じて)保存登記 → 相続登記
建物が未登記の場合、まずは建物の“戸籍”にあたる表題登記で存在を登記簿に載せます。
その後、権利の登記(所有権保存や相続による移転)へ進むのが王道です。
ここは専門家の役割分担が大事で、一般に
土地家屋調査士(表題部)と司法書士(権利部)で進めます。
書類がない・古すぎるときの考え方
建築確認や図面が見つからないケースも珍しくありません。
ただ、そこで止まる必要はなく、固定資産の資料や現地調査、代替資料で組み立てることもあります。
“ない前提で何が代替になるか”を一緒に整理すると、前に進みやすいです。
ステップ4:相続登記を進める(期限・つなぎ手段・注意点)
相続登記(不動産の名義変更)は、原則として「相続で取得したことを知った日から3年以内」が基本です。
過去の相続で名義が放置されている場合も、期限の考え方が変わるため、早めの整理が安心につながります。
間に合わないかも…のときに考えたい「つなぎ」
協議がまとまらない・相続人が多い・連絡が取れない…というときは、
“期限対応のためのつなぎ”を使って、時間を確保する発想が有効です。
たとえば相続人申告登記のように、「まず期限に間に合わせる」ための選択肢があります。
ここでの注意点:共有にすると“次の手続き”が重くなる
法定相続分でいったん共有にする方法は、期限対応としては有効な場面もあります。
ただし、売却・賃貸・解体などは共有者の同意が必要になりやすく、次で詰まりやすい点に注意が必要です。
2026年以降の実務で増える注意:住所・氏名変更の“変更登記”も義務化へ
相続登記で名義を整えた後も、住所や氏名が変わったら、一定期間内に変更登記が求められる制度が進んでいます。
「名義を整えたら終わり」ではなく、その後の管理もセットで考えると安心です。
行政書士目線で追加したいリスク:放置すると困る“二次トラブル”
私たちは行政書士法人として、相続の現場で「登記そのもの」だけでなく、
書類・合意・関係者調整が原因で止まるケースを多く見ます。
ここは、先に知っておくだけで防げるトラブルが多いです。
- 相続人が増えるリスク:先送りすると次の相続が発生し、署名押印が爆発的に増えます。
- 共有固定化のリスク:「一旦共有」が、そのまま動かない資産になりがちです。
- 空き家の管理リスク:費用(税・保険・修繕)と近隣対応が、じわじわ家族関係を削ります。
- 境界・越境のリスク:売却直前に発覚して、測量や交渉で時間が延びることがあります。
- 紛争化のリスク:「誰が悪い」論になると、解決の舞台が変わります(争いがある場合は弁護士領域)。
安心のための一言:揉めそうな要素が見えたら、“結論を急がず、論点を分解する”のが最短です。
「名義」「未登記」「共有」「境界」「管理」を切り分けて、できるところから進めましょう。
よくある質問:ここで止まりがちなポイントを先回り
Q1:登記簿の住所が昔すぎます。相続登記できますか?
まずは住所のつながりを示す資料(住民票除票・戸籍の附票など)で整理できるか確認します。
「直す登記」を先に入れるかどうかは、その後に判断すると手戻りが減ります。
Q2:建物だけ未登記です。土地は登記されています。
典型的なケースです。表題登記(建物の存在を載せる)→権利登記の順で進めるのが基本になります。
Q3:名義が祖父のまま。父も亡くなっています。
“相続が重なっている”状態なので、戸籍の範囲が広がりやすいです。
先に不動産の特定をして、必要な戸籍のゴールを決めると迷いが減ります。
Q4:急いで売りたいのですが、名義が直っていません。
多くの場合、売却は名義(相続登記)とセットで進めます。
ただし、共有・境界・未登記の有無で段取りが変わるため、“売れる状態にするための障害物”を先に洗い出すのが近道です。
Q5:書類がほとんど見つかりません。
大丈夫です。役所・法務局・金融機関から再取得できるものも多いです。
まずは固定資産税の資料など、家にある可能性が高い1枚から着手しましょう。
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