相続人が連絡不通・協力しない:進め方と法的に詰まるポイント

結論から言うと、相続人が1人でも「連絡不通」または「協力しない」状態だと、相続手続きは“止まりやすい”です。

  • 協力しない(居場所は分かる):家庭裁判所の遺産分割調停などで進めるのが現実的です。
  • 行方不明(住所が追えない)不在者財産管理人の選任が必要になることがあります。
  • 生死不明が長い:要件を満たす場合に失踪宣告という制度があります。

この記事では「何から手を付けるべきか」「どこで法的に詰まるのか」「詰まった時の選択肢」を、初心者向けに順番で整理します。


相続人が連絡不通だと、なぜ手続きが止まるの?

相続の手続きは、「相続人のうち誰か1人が進めれば終わる」ものと、「相続人全員の合意・協力が必要」なものが混在しています。

特に止まりやすいのは、この3つです
  • 遺産分割協議:誰が何を相続するかの話し合い。全員が関わる前提で進める場面が多いです。話し合いがつかない場合は、家庭裁判所の手続(調停・審判)に移ります。(裁判所)
  • 不動産の売却:売るには、名義の整理や、売却の意思決定が必要です。共有のままだと、売却が進まないケースが多いです。
  • 銀行・証券などの解約:金融機関ごとに必要書類は違いますが、「相続人全員の同意が前提」の運用になりやすいです。

注意点:「連絡が取れない人は抜きで進めよう」としてしまうと、後から手続きのやり直しが必要になったり、対立が深くなったりすることがあります。


まず最初にやること:止まってもムダにならない準備

相続人が連絡不通でも、先にやっておくほど、後で効いてくる準備があります。ここから始めると、精神的にもラクです。

(1)相続人の確定:戸籍で「法定相続人」を固める
  • 「誰が相続人か」が曖昧なままだと、連絡の取り方も、裁判所の手続も動きません。
  • 戸籍収集は時間がかかることが多いので、早めに着手するほど有利です。
(2)遺言書の有無を確認する(最優先級の分岐)
  • 遺言書があれば、遺産分割協議が不要になるケースもあります(内容次第)。
  • 自筆証書遺言の場合、家庭裁判所の手続が関係することがあるため、見つけたら扱いに注意します。
(3)財産の棚卸し:不動産・預金・保険・借金を“見える化”
  • 話し合いの材料がないと、協力しない相続人も余計に頑なになりがちです。
  • 「固定資産税の通知」「登記事項証明書」「通帳の写し」「保険証券」「督促状」など、まずは集められるところからでOKです。
(4)連絡の証拠を整える(後で裁判所手続に効く)
  • 手紙(投函日・宛先)、返戻、メール、LINE、電話の履歴などを時系列でメモします。
  • 「いつ、どの住所に、どんな方法で連絡したか」が整理されていると、その後の選択肢が広がります。

状況別:いまのケースはどれ?(対応ルート早見表)

「連絡不通」と一口に言っても、状況でやることが変わります。まずは近いものを選んでください。

状況 よくある例 まずの打ち手 詰まるポイント
連絡は取れるが協力しない 既読無視/署名しない/感情的に反対 情報共有 → 期限提示 → それでも無理なら遺産分割調停 協議書・売却・登記が止まりやすい
住所はあるが居住実態不明 手紙が返戻/住民票住所にいない 戸籍附票等で住所追跡 → 連絡履歴を整理 「不在者」該当か判断が必要
住所も分からない(行方不明) どこにいるか全く不明 不在者財産管理人の検討 裁判所の許可が絡みやすい
生死不明が長期間 何年も消息不明 失踪宣告の検討 要件(期間)を満たす必要
海外在住で連絡が難しい 住所はあるがやり取りが遅い 締切を共有 → 書類のやり取り設計(郵送・認証など) 署名・押印の取り方、本人確認

「協力しない相続人」がいるときの進め方(調停・審判の考え方)

相続人の居場所が分かっているのに、話し合いに応じない・署名しない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を使うのが現実的な着地になりやすいです。:contentReference[oaicite:1]{index=1}

まずは“揉めない材料”を揃えて、提案型で出す
  • 財産一覧(不動産・預金・保険・負債)
  • 分け方案(例:不動産は売却して現金で分ける/代償分割/共有を避ける)
  • 期限のある手続(相続登記の期限、税金の期限など)

この段階で、感情論よりも「事実」「期限」「選択肢」で整理すると、相手も話に乗りやすくなります。

それでもダメなら「調停 → 不成立なら審判」

遺産分割調停は、相続人のうち1人または複数人が、他の相続人全員を相手に申し立てます。話し合いがまとまらない場合は、審判手続に移る流れが案内されています。:contentReference[oaicite:2]{index=2}

ここが“詰まりポイント”:

  • 不動産があると、感情(思い出・住み続けたい)とお金(公平)のズレが出やすい
  • 「共有のまま」が一見ラクでも、将来の売却・修繕・固定資産税で揉めやすい
  • 書類の不備(相続関係・遺産目録の不足)で時間が延びやすい

「行方不明(住所が分からない)」ときの進め方(不在者財産管理人)

相続人の所在が分からず、連絡手段も尽きている場合、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる選択肢があります。申立てに必要な書類の例は裁判所が案内しています。:contentReference[oaicite:3]{index=3}

不在者財産管理人で“できるようになること”
  • 行方不明の相続人の代わりに、手続の土台を作れる可能性が出る
  • 遺産分割の場面で、裁判所の関与のもと進められる可能性が出る

注意点:不在者財産管理人が選ばれたからといって、すぐに何でも自由に決められるわけではありません。遺産分割など重要な行為では、裁判所の許可が必要になる場面があります(運用上、裁判所の監督が強い領域です)。

申立てで用意しやすい書類(イメージ)
  • 不在者の戸籍謄本・戸籍附票
  • 不在の事実を証する資料(手紙の返戻など)
  • 不在者の財産に関する資料(登記事項証明書・残高が分かる資料 等)

細かな要件や資料は事案で変わるため、「何を集めれば足りるか」を早めに整理するとスムーズです。:contentReference[oaicite:4]{index=4}


「生死不明が長い」とき(失踪宣告)

長期間にわたって生死が分からない場合、要件を満たせば失踪宣告という制度があります。失踪宣告は「法律上死亡したものとみなす効果」を生じさせる制度として裁判所が案内しています。:contentReference[oaicite:5]{index=5}

ざっくり要件(超入門)
  • 普通失踪:生死不明が7年間
  • 危難失踪:災害などの危難後、生死不明が1年間

申立先は、原則として不在者の従来の住所地等を管轄する家庭裁判所です。:contentReference[oaicite:6]{index=6}

ここは慎重に:失踪宣告は影響が大きい制度です。家族関係・財産関係に大きく作用するため、事前に専門家と全体設計をしてから動く方が安全です。


相続登記(不動産の名義変更)の期限が迫るときの現実的な対処

2024年4月から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務化されています。:contentReference[oaicite:7]{index=7}

協議がまとまらないときに「一時しのぎ」になる制度

遺産分割がまとまらず相続登記が進められない場合に備えて、法務省は相続人申告登記(相続人である旨の申出)という制度の案内をしています。:contentReference[oaicite:8]{index=8}

  • これは最終的な相続登記を不要にする制度ではなく、事情があって登記が進めにくい時に「申出」をしておくための仕組みとして整理すると分かりやすいです。
  • 具体的な手続は法務省の案内(申出書の作成・提出方法など)を確認して進めます。:contentReference[oaicite:9]{index=9}

注意点:登記は「期限に間に合えばOK」というだけでなく、その後の売却・賃貸・修繕・相続(二次相続)にも影響します。早めに“どこで詰まっているか”を見える化して、最短ルートを選ぶことが大切です。


よくある質問(家族が揉めやすいポイントを先回り)

Q1. 相続人が1人でも署名しないと、遺産分割協議書は作れませんか?

実務上は「相続人全員が合意していること」が前提になりやすく、1人でも協力しないと止まりやすいです。合意が難しいなら、調停で整理するという発想に切り替えると、前に進みやすくなります。:contentReference[oaicite:10]{index=10}

Q2. 連絡が取れない人を除いて不動産を売ってしまうとどうなりますか?

売却は特にトラブル化しやすい領域です。後から争いになれば、買主・不動産会社・金融機関も巻き込む形になりかねません。売却の前に「名義」「権利関係」「合意形成」の順番で点検するのが安全です。

Q3. 調停って難しそう…。何を用意すればいい?

裁判所は遺産分割調停の案内や書式を公開しています。大きくは「相続関係が分かる戸籍」「遺産目録」「不動産・預金の資料」などが軸になります。:contentReference[oaicite:11]{index=11}

Q4. 行方不明と、協力しない(無視)って、手続きは同じ?

ここが重要で、ルートが変わります。

  • 協力しない(居場所は分かる):遺産分割調停が中心
  • 行方不明(住所が追えない):不在者財産管理人などを検討

「どっちに近いか」を見誤ると、遠回りになりやすいので、最初に切り分けるのがコツです。:contentReference[oaicite:12]{index=12}


まとめ:迷ったときの判断順(この順でOK)

  1. 相続人を戸籍で確定(誰が当事者かを固める)
  2. 遺言の有無を確認(協議が必要か分岐)
  3. 財産を棚卸し(不動産・預金・保険・借金)
  4. 連絡履歴を整える(いつ・どこへ・どう連絡したか)
  5. 居場所が分かるのに協力しない → 遺産分割調停
  6. 住所が追えない行方不明 → 不在者財産管理人を検討
  7. 生死不明が長期 → 失踪宣告を検討
  8. 不動産がある → 相続登記の期限(3年)も同時に意識(必要なら相続人申告登記も検討)

相続の“詰まり”は、本人たちの努力不足ではなく、制度上どうしても起きることがあります。だからこそ、状況を切り分けて、使うべき手続を選ぶだけで、前に進むことが多いです。


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