相続の「まず最初にやること」完全版:死亡後24時間〜1か月の行動表

この記事の結論

身内が亡くなった後の手続きは「時間で区切って考える」のが最も迷わずに進められます。最初の24時間は死亡診断書の受け取り・葬儀社への連絡・近親者への通知。最初の1週間は死亡届(7日以内)・葬儀・役所手続きの第一弾。2週間〜1か月は年金停止・健康保険・銀行への連絡・戸籍収集の開始です。「全部一度に考えようとしない」ことが大切で、今日やるべきことだけに集中することで家族全員が落ち着いて動けます。

この行動表の使い方:「今日何をすればいいか」だけ見る

身内が亡くなった直後は「やることが多すぎて何から手をつければいいかわからない」という状態になりがちです。この行動表は時間ごとに区切って整理しているため、「今の自分はどの時点にいるか」を確認してから「その時点のことだけ」を読む使い方が最も効果的です。

今すぐ必須(期限が極めて短い)
急いで行動(1〜2週間以内)
進めると良い(1か月以内)
情報収集・検討事項
💡 この行動表を見ている方へ:
葬儀前後の数日間は「とにかく今日を乗り越える」で構いません。1か月以内の期限があるものはこの記事でカバーしています。相続の本格的な手続き(戸籍収集・遺産分割協議・銀行手続き等)は1〜3か月かけてゆっくり進めて問題ありません。

【死亡後〜24時間】最初にやること6つ

フェーズ1 死亡後〜24時間以内 ※ほぼ全て「今日」対応
死亡診断書(死体検案書)を医師から受け取る 必須
病院・在宅・施設等どこで亡くなった場合でも、担当医師が死亡診断書を作成します。必ず複数枚(5〜10枚程度)コピーを取っておいてください。原本は死亡届提出時に使います。死亡診断書は以後の全手続きの基盤になります
葬儀社に連絡する 必須
病院で亡くなった場合、病院から「提携葬儀社」を紹介されることがありますが、断っても構いません。事前に検討していた葬儀社・知り合いに紹介してもらった葬儀社に連絡します。遺体の搬送は24時間以内に行う必要があります
近親者・親族への第一報 必須
配偶者・子ども・兄弟姉妹・親等の近い親族に電話で連絡します。葬儀の日程は葬儀社と相談してから決めることになりますが、「亡くなったこと」の第一報は早急に行います
遺言書の有無を確認する 重要
自筆証書遺言が見つかった場合は絶対に開封しないでください。家庭裁判所での「検認」が必要です(法務局保管の場合は不要)。遺言書の有無は以後の全ての相続手続きの方向性を決めるため、早期確認が重要です
貴重品の保管場所を確認・鍵をかける 推奨
通帳・印鑑・権利書・保険証書・金庫の鍵等の保管場所を把握しておきます。実家に複数の親族が出入りするようになる前に、貴重品を安全な場所にまとめておくことをおすすめします
被相続人の銀行口座に触れない 注意
「相続放棄を検討しているか・するかもしれない」場合、被相続人の預貯金・財産に手をつけると「単純承認(相続を承認した)」とみなされる場合があります。相続放棄の可能性がある場合は口座から引き出さないでください

【2〜7日】死亡届と葬儀・役所の第一弾

フェーズ2 死亡後2〜7日以内 死亡届は7日以内が法定期限
死亡届の提出・火葬許可証の取得 7日以内・法定義務
死亡届(死亡診断書と一体になった用紙)に必要事項を記入して市区町村役場に提出します。24時間・土日祝でも受け付けている市区町村が多いです。提出と同時に「火葬許可証」が交付されます。葬儀社が代行することも多いです
葬儀の実施 必須
通夜・葬儀・告別式・火葬。葬儀社のサポートに従って進めます。火葬後に「火葬証明書(埋葬許可証)」が交付されます。この書類は後から納骨等に使うため大切に保管してください
勤務先(被相続人の会社)への連絡 早急に
被相続人が会社員だった場合は速やかに勤務先の人事・総務部門に連絡します。死亡退職の手続き・源泉徴収票の発行・未払い給与・退職金の確認等を行います。団体生命保険の受け取りに関する確認もこの段階で行います
関係者・取引先への訃報連絡 推奨
友人・知人・被相続人の取引先等への連絡を葬儀前後に行います。葬儀への参列の案内も含めて行います
⚠️ 死亡届の提出は葬儀社に代行してもらえる場合がほとんどです。
葬儀社に依頼すると死亡届の提出・火葬許可証の取得を代行してもらえることが多いです。ただし死亡届への署名(届出人)は親族が行う必要があります。

【1〜2週間】自動引落しの停止・保険・年金の連絡

フェーズ3 葬儀後〜2週間以内 生活インフラの切替えを進める
国民健康保険・後期高齢者医療保険の資格喪失届 14日以内・法定義務
市区町村の国民健康保険課に死亡の届出をします。健康保険証も返還します(会社の健康保険は勤務先が手続き)。高額療養費の未申請分がある場合は同時に請求します
年金の受給停止届出 早急に(国民年金14日以内・厚生年金10日以内が原則)
年金事務所または市区町村の国民年金担当窓口に連絡します。死亡後に振り込まれた年金(死亡月翌月以降分)は返還義務があるため、早急な手続きが必要です。同時に「未支給年金」(受け取れるはずだった年金)の請求も忘れずに行います
生命保険の死亡保険金の請求 3年以内の時効に注意
被相続人が加入していた生命保険を全て確認して、各保険会社に死亡連絡・保険金請求の手続きをします。保険証券が見つからない場合は「生命保険契約照会制度」(生命保険協会)で照会できます。保険金の請求には死亡診断書の写し・戸籍謄本等が必要です
自動引落しの切替え・停止 重要
被相続人の銀行口座から自動引落しされている費用(公共料金・携帯電話・ローン・保険料等)は口座凍結後に引落しができなくなります。各事業者に連絡して引落し口座の変更・解約等の手続きを進めます。特にローンの延滞は信用情報に影響するため最優先で対応します
携帯電話・サブスクの解約 推奨
被相続人のスマートフォン・携帯電話・各種サブスクリプション(動画配信・音楽等)は死亡後も月額料金が発生し続けます。月が変わる前に解約することで不要な支払いを防げます。各社の相続窓口に連絡します
相続放棄を検討する場合は弁護士・司法書士に相談開始 3か月の期限あり
被相続人に多額の借金がある・相続財産よりマイナスが多い可能性がある場合は、3か月以内の相続放棄の検討を早急に始めます。この段階で弁護士・司法書士に相談することが重要です

【2週間〜1か月】銀行・戸籍収集・相続の本格始動

フェーズ4 2週間〜1か月以内 相続手続きの土台を作る時期
銀行口座の凍結確認・相続手続きの申出 早めに
被相続人の取引銀行に死亡を連絡します。口座の凍結後は入出金・引落しが停止します。各銀行の相続窓口で手続き書類一式を取り寄せます。残高証明書の取得(相続税申告に必要)も合わせて依頼します
戸籍謄本の収集開始 早めに開始
相続手続き全般の基盤となる「被相続人の出生から死亡までの全戸籍謄本」の収集を始めます。本籍地の市区町村役場に郵送請求するのが効率的です。複数の市区町村への同時請求で時間を短縮できます
準確定申告の要否確認(4か月以内が期限) 4か月以内の期限あり
被相続人が個人事業主・不動産収入あり・複数の収入があった場合は準確定申告が必要です(相続開始を知った日から4か月以内が期限)。税理士に早めに相談して申告の要否・資料収集を始めます
全財産・全負債の洗い出し(財産目録の作成) 推奨
預貯金・不動産・株式・保険・借金・ローン等を全て書き出して「財産目録」を作ります。プラスの財産とマイナスの財産を把握することで相続放棄の判断・遺産分割協議の準備が進みます
専門家(行政書士・弁護士等)への相談 推奨
「遺言書がない・相続人が複数いる・不動産がある・相続放棄を検討している」等の場合は早めに専門家に相談します。初回相談は無料の事務所も多いため、何から始めるかの相談だけでも早めに行うことをおすすめします
遺言書がある場合:検認申立て(自筆証書遺言・法務局保管以外) 開封しないで家庭裁判所へ
自宅で自筆証書遺言が見つかった場合は速やかに家庭裁判所に検認の申立てをします。検認には1〜2か月かかります。法務局保管の場合は検認不要・「遺言書情報証明書」を取得します
✅ 「全部一度にやろうとしない」ことが相続手続きを成功させるコツです:
死亡後1か月は「手続きを完了させる」ではなく「手続きを始める・期限のある項目だけ完了させる」時期です。遺産分割協議・銀行の払戻し・相続登記等の本格的な手続きは2〜6か月かけて進めることが現実的です。

「やってはいけないこと」一覧:後悔しないための注意点

相続手続きの初期段階でこれをやってしまうと後から修正できない・大きなトラブルになる行為があります。

❗ 絶対にやってはいけないこと

・自筆証書遺言を開封する:検認前の開封は過料の対象。見つけたらそのまま家庭裁判所へ
・相続放棄を検討中なのに被相続人の預金を引き出す・財産を処分する:「単純承認」とみなされ放棄できなくなる
・急いで遺産を処分・売却する:遺産分割協議完了前の単独での財産処分は他の相続人との紛争原因になる
・遺産を特定の相続人が独占する:他の相続人の遺留分を侵害する恐れがある
・死亡後に振り込まれた年金を使う:返還義務がある。後から返還を求められる
・相続放棄の3か月期限を放置する:何もしないと自動的に単純承認になる

1か月以降の主な期限:見通しを持つために

1か月を過ぎてからも重要な期限が続きます。見通しを持っておくことで焦らずに対応できます。

期限 内容 担当窓口
3か月以内 相続放棄・限定承認の申述(延長申立ても可能) 家庭裁判所
4か月以内 準確定申告・納税(該当者のみ) 税務署・税理士
10か月以内 相続税の申告・納付(課税対象の場合) 税務署・税理士
3年以内 相続登記(不動産の名義変更・義務化) 法務局・司法書士
3年以内 空き家の3,000万円特別控除(売却する場合) 税務署・税理士
5年以内 相続税の更正の請求期限(払いすぎた場合) 税務署・税理士

よくある疑問(Q&A)

Q. 葬儀社から「役所の手続きは全て代行する」と言われました。本当に全部任せて大丈夫ですか?
葬儀社が代行できる手続きは限られています。葬儀社が代行できるのは主に「死亡届の提出・火葬許可証の取得」です。年金の停止・健康保険の脱退・銀行への連絡・相続手続き全般は家族が自分で行うか専門家(行政書士・司法書士・税理士)に依頼する必要があります。「全部任せた」と思っていたら重要な手続きが漏れていたというケースが実務上後を絶たないため、何を代行してもらい何を自分でやるかを明確に確認してください。
Q. 葬儀の直後で気力・体力がなく、とにかく「今日だけ何をすればいいか」を教えてください。
今日(葬儀直後)の最優先事項は3つだけです。①年金事務所に電話して「被相続人名・年金番号・死亡日」を伝えて停止手続きの方法を聞く(未支給年金の請求も確認)、②被相続人の銀行の通帳・カードを確認して口座番号を記録しておく(急いで引き出す必要はありません)、③生命保険の証書がどこにあるか探す。この3つができれば今日は十分です。残りは体調が戻ってから順番に進めてください。
Q. 相続人が私一人で、遠方に住んでいます。役所の手続きを郵送で進めることはできますか?
多くの手続きは郵送・オンラインで対応できます。死亡届は被相続人の住所地・死亡地・届出人の所在地のいずれかの市区町村に提出できるため、最寄りの市区町村役場に提出することも可能です。戸籍謄本の取得・年金の手続き等も郵送で対応できる場合があります。銀行の相続手続きも多くの金融機関が郵送対応しています。行政書士に代行を依頼することで遠方からでも多くの手続きを進めることができます。
Q. 被相続人に借金があるかどうかわかりません。どう調べればいいですか?
信用情報機関への開示請求と書類の確認の両方で調べることができます。CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターへ「相続人として開示請求」することで借入状況を確認できます(各機関への問い合わせが必要)。また被相続人の自宅に届く郵便物(督促状・請求書等)・通帳明細・確定申告書等も借金の有無を示す手がかりになります。借金の存在が疑われる場合は相続放棄の3か月期限を意識して早急に弁護士・司法書士に相談してください。

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