おひとりさまの家・不動産は死後どうなる?|空き家・売却・遺贈・国庫帰属の注意点

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ハートリンク行政書士法人 代表社員
行政書士 讓原 敬 (ゆずりはら ひろし)
日本行政書士会連合会所属(登録番号: 第13091504号)
東京都行政書士会 会員番号: 第14407号

相続手続き・遺言書作成・家族信託など、生前対策から死後事務まで累計5,200件以上の相談に対応。複雑な金融機関の手続きや、ご家族の状況に合わせたオーダーメイドの相続対策を得意とする。東京(中央区日本橋人形町)と横浜、千葉を拠点に、「ご家族の絆を守る円満な相続」の実現をサポートしている。

この記事の結論

おひとりさまの家・不動産は死後、「①遺言書で遺贈先を指定している→指定した人・団体に渡る、②法定相続人がいる→相続人に渡る(手続きしなければ空き家化)、③相続人も遺言書もない→最終的に国庫帰属または相続土地国庫帰属制度の活用」の3パターンになります。最大の問題は「誰も引き取り手がいない空き家が放置される」ことです。固定資産税・管理費が発生し続け、近隣への迷惑・損害賠償リスクも生じます。また2021年施行の相続土地国庫帰属制度を活用すれば、一定の条件を満たす土地を国に引き取らせることができますが、要件が厳格です。おひとりさまは生前に不動産の処分方針を決めて・遺言書に明記することが最も重要です。

おひとりさまの不動産:死後に起きる3つのパターン

おひとりさまの不動産は死後「遺言書の有無」と「法定相続人の有無」で行き先が決まります。預貯金と同じ構造ですが、不動産は「管理義務・固定資産税・名義変更義務」があるため問題がより複雑です。

📋 おひとりさまの不動産死後の3パターン
パターン①
遺言書あり
遺言書で不動産の遺贈先を指定している場合。指定した人・団体に不動産が移転する。遺言執行者が相続登記・移転登記の手続きを進める
パターン②
遺言書なし・
相続人あり
兄弟姉妹・甥姪等の法定相続人が不動産を相続する。ただし相続人が「要らない」「売りたくない」「手続きが面倒」と感じると空き家として放置されるリスクが高い。2024年4月から相続登記が義務化(3年以内)
パターン③
遺言書なし・
相続人なし
相続財産清算人が管理・清算する。売却できれば清算後の残余が国庫へ。売却できない「負動産」の場合は処分に長期間・高コストがかかる。最終的に国庫帰属だが国が引き取りを拒否する場合もある
💡 この記事でわかること:
空き家放置のリスク(費用・責任・法的問題)、遺贈・生前売却・賃貸・国庫帰属制度の4つの選択肢の詳細、価値がない「負動産」への対処法、生前に決めるべき処分方針と遺言書への記載方法まで解説しています。

「空き家放置」の深刻なリスク:固定資産税・管理費・損害賠償

おひとりさまの不動産で最も避けるべき結末が「誰も管理しない空き家として放置されること」です。

⚠️ 空き家放置で発生するリスク一覧
固定資産税の
継続課税
名義が変わらない限り固定資産税は毎年発生し続けます。相続登記がされないと故人名義のまま課税通知が来て、最終的に相続人・相続財産から徴収されます。都市部では年間数十万円に及ぶ場合も
管理費用の
負担
空き家であっても草刈り・清掃・害虫駆除・破損箇所の修繕等の最低限の管理が必要です。放置すると「特定空き家」に指定されて固定資産税の優遇(住宅用地特例:最大6分の1減額)が外れて税額が最大6倍になる場合があります
損害賠償・
近隣への影響
老朽化した建物が倒壊・瓦が飛ぶ・不審者の侵入等で近隣に被害が生じた場合、所有者(相続人等)が損害賠償責任を負います(民法717条:土地工作物責任)。誰も管理していなくても責任は発生します
相続登記
義務化違反
2024年4月から相続登記が義務化。相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象になります。おひとりさまの相続人(甥姪等)が遠方・高齢等で手続きを放置するリスクが高い
「誰かが何とかするだろう」では誰も何ともしません。
おひとりさまの不動産は「当然引き継ぐ家族」がいないため、放置リスクが特に高い。生前に処分方針を決めて・遺言書に明記して・遺言執行者が速やかに動ける体制を作ることが不可欠です。

選択肢①:遺言書で友人・団体に遺贈する

おひとりさまが不動産の行き先を「自分で決めたい」場合、遺言書による遺贈が最も確実な方法です。

📋 不動産の遺贈:相手別の注意点
友人・知人への
遺贈
友人に自宅を遺贈することは法律上可能です。ただし不動産を受け取った人には相続税(または受遺者に贈与税類似の課税)・その後の固定資産税・管理費が発生します。「受け取る側の負担」を友人と事前に話し合い・了承を得ておくことが重要です
NPO・団体への
遺贈
NPO法人・公益財団法人等への不動産遺贈は可能ですが、団体が不動産を受け取れるか・活用できるかを事前に確認する必要があります。現金化が困難な不動産(田舎の土地等)は団体も受け取りを断る場合があります
遺贈を受ける
人への課税
相続人以外への遺贈(特定遺贈)は相続税の2割加算の対象になります。また不動産取得税も別途かかります。受遺者の税負担を考慮した上で遺贈先を決める必要があります
「売却して現金で遺贈する」という選択肢も検討価値があります:
「友人に家を渡す」より「生前に家を売却して現金化し・その現金を友人や団体に遺贈する」という方が、受け取る側の負担(管理・税金・売却手続き)がなくてスムーズなことが多いです。不動産の遺贈は「渡せる」が「受け取る側が困る」というケースが実務上あります。

選択肢②:生前に売却して現金化する

「死後の不動産問題を最もシンプルに解決する方法」は生前の売却です。

  • 自宅を売却するタイミング:施設入居が決まった時点・同居する人がいなくなった時点が現実的なタイミング。元気なうちに自分で売却判断・手続きができる
  • 売却益への税金:自宅(居住用財産)の売却は「居住用財産の3,000万円特別控除」が使える場合がある。売却前に税理士に確認することで大幅な節税が可能
  • 売却後の現金の扱い:売却益を施設費用・生活費の原資にする・遺言書で遺贈先を指定して贈りたい人・団体に渡す
  • 「リースバック」の検討:自宅を売却した後も賃貸として住み続けられる「リースバック」という選択肢もある。住み慣れた自宅に住みながら現金化できる。ただし将来的に家賃が発生する・退去リスクがある点を理解する必要がある
  • 認知症になる前・判断能力がある間に売却の意思決定をすることが絶対条件
⚠️ 認知症になってからは自分で売却できません。
判断能力を失った後に不動産を売却するには「成年後見人(任意後見人または法定後見人)の権限+家庭裁判所の許可」が必要になります。「老後資金として自宅を売りたいと思っている」方は、判断能力があるうちに手続きを進めることが最重要です。

選択肢③:賃貸に出して収益化する

自宅を売らずに賃貸に出して家賃収入を得ながら老後・施設費用に充てる選択肢もあります。

📋 賃貸活用の実務と注意点
施設入居後に
賃貸に出す
老人ホーム等に入居した後、空き家になった自宅を賃貸に出す方法。家賃収入が施設費用の一部を賄える。ただし管理会社への委託費用・修繕費・固定資産税が発生する
管理の問題 認知症になった場合、賃貸管理の意思決定(家賃改定・退去交渉・修繕判断等)ができなくなります。任意後見人が代わりに管理する権限を契約に含めておくことが重要
死後の賃貸
物件の扱い
死亡後、賃貸中の不動産は遺言書または相続で承継される。賃借人への通知・家賃の振込先変更等が必要になる。遺言執行者が対応する

選択肢④:相続土地国庫帰属制度で国に引き取らせる

2023年4月に施行された「相続土地国庫帰属制度」は、相続した(または遺贈で取得した)土地を一定の要件を満たす場合に国に帰属させる制度です(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律)。

📋 相続土地国庫帰属制度:要件・費用・注意点
対象となる
土地
相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限る)によって取得した土地。購入した土地・法定相続人以外への遺贈で取得した土地は対象外(2024年時点。改正の可能性あり)
国庫帰属できない
土地の例
・建物が建っている土地(建物を取り壊す必要がある)
・担保権・地上権等が設定されている土地
・他の人の利用する境界が明確でない土地
土壌汚染・埋設物がある土地
・崖地・急傾斜地等管理が困難な土地
費用 審査手数料:1筆1万4,000円
負担金(10年分の土地管理費用相当):20万円程度〜(面積・地域・種類によって大きく異なる)
手続き先 法務局(地方法務局)への申請。審査期間は数か月〜1年程度かかることがある
おひとりさまへの
適用
遺言書で「法定相続人(甥・姪等)に土地を相続させ・その相続人が国庫帰属制度を申請する」という設計が必要。法定相続人以外への遺贈では制度が使えない点に注意
⚠️ 「国に返せばいい」は簡単ではありません。要件が厳しい。
相続土地国庫帰属制度は「建物がある・境界が不明・土壌汚染がある」等の場合は利用できません。また負担金(最低20万円程度〜)が必要です。制度の活用可能性は法務局または行政書士・司法書士に事前に相談することをおすすめします。

「負動産」問題:価値がない・売れない不動産の対処法

地方の土地・老朽化した建物・過疎地の物件等「売りたくても売れない不動産(負動産)」を抱えるおひとりさまも少なくありません。

🏘️ 空き家バンクへの登録
自治体が運営する「空き家バンク」に物件を登録して移住希望者等に売却・賃貸する制度。過疎地・地方の物件でも買い手が見つかることがある。登録・手続きは各市区町村に相談
🏢 不動産会社への買取依頼
仲介ではなく不動産会社に直接買い取ってもらう方法。市場価格より安くなることが多いが確実に売却できる。「訳あり物件・事故物件・空き家専門」の買取業者も存在する
🌳 隣地所有者への売却・寄附
隣接する土地・建物の所有者が購入・取得に関心を持つ場合がある。また自治体・NPO等への寄附という選択肢もある。ただし寄附を受け付けない場合も多い
🏗️ 建物解体後に売却
老朽化した建物を取り壊して更地にすることで売却しやすくなる場合がある。ただし解体費用(100〜300万円程度)がかかる。解体後は固定資産税の住宅用地特例が外れて税額が上がる点に注意
「どうしても処分できない不動産」の最終手段:

相続土地国庫帰属制度(要件あり):Section 5参照
法人への遺贈寄附:NPO・一般財団法人等で不動産を受け取れる団体もある(要事前確認)
「負動産信託」:信託銀行等が管理・処分を引き受けるサービス(費用・条件あり)
遺言書で処分方針を明記:「○○の不動産は売却して売却代金を○○に遺贈する」と記載して遺言執行者に処分させる

※ いずれも事前に専門家(行政書士・司法書士・税理士)に相談することをおすすめします。

生前に決めるべきこと:不動産の処分方針と遺言書への記載

おひとりさまの不動産は「生前に処分方針を決めて・遺言書に明記する」ことで死後の混乱を最小化できます。

  • 不動産の現状把握:登記事項証明書を取得して所有者・面積・抵当権等の状況を確認する。未登記部分がある場合は司法書士・土地家屋調査士に確認する
  • 処分方針を決める:売却・賃貸・遺贈・国庫帰属制度のうちどれが現実的かを検討する。不動産会社に査定を依頼して市場価値を把握しておく
  • 遺言書への記載(不動産):「○○市○○町○○番地の土地(地番:○○)および同地上の建物(家屋番号:○○)を売却し、売却代金から費用を控除した後の金額を○○に遺贈する」のように具体的に記載する
  • 遺言執行者に不動産情報を共有する:登記事項証明書・固定資産税納税通知書・鍵の保管場所等を受任者(遺言執行者)が把握できる状態にしておく
  • 施設入居・住み替えを考えている場合は、判断能力があるうちに自分で売却手続きを進めることを検討する
「生前売却+現金の遺贈」が最もトラブルが少ない方法です:
不動産のままで遺贈するよりも、生前に売却して現金にした上で遺言書で遺贈先を指定する方が、受け取る側の税負担・管理負担が少なくトラブルが起きにくい。元気なうちに「不動産→現金化→遺言書で遺贈」という流れで準備することをおすすめします。

よくある疑問(Q&A)

Q. 自宅を相続人(甥)に相続させたくありません。遺言書で「売却して代金を団体に寄附する」と書けますか?
はい、可能です。ただし甥には遺留分がないため(兄弟姉妹・その代襲相続人には遺留分がない)、遺言書で完全に排除することができます。「遺言執行者に自宅を売却させた上で、売却代金から諸費用を差し引いた残額を○○団体に遺贈する」という内容を遺言書に明記することで実現できます。遺言執行者(行政書士等)が売却手続きを進めて代金を団体に送金します。
Q. 親から相続した田舎の土地があります。おひとりさまの自分が亡くなった後に誰かに迷惑をかけることになりますか?
はい、管理者・相続人がいなければ周囲に迷惑がかかる可能性があります。雑草・倒木・建物の老朽化等で隣地・道路に影響が出た場合、最終的に所有者(相続人または相続財産清算人)が責任を負います。対策として①今すぐ売却・活用の可能性を不動産会社に相談する②相続土地国庫帰属制度の要件を法務局に確認する③遺言書で「売却して代金を○○に遺贈する」と書いて遺言執行者に処分させる、のいずれかを早めに動いてください。
Q. 賃貸マンションに住んでいるおひとりさまです。不動産問題は関係ないですか?
賃貸住まいの場合、死後の「住居退去・荷物処理」が主な問題になります。所有不動産がない分、死後の手続きはシンプルになりますが①死亡後の家賃が発生し続ける(退去手続きが完了するまで)②家財道具・遺品の処分を誰かがしなければならないという問題があります。これらは死後事務委任契約の委任事務として受任者に対応してもらう必要があります。また部屋の原状回復費用等が相続財産(遺産)から支払われることになるため、遺言書にこれらの費用の扱いも明記しておくことをおすすめします。

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